歌集「春雪花」
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日も陰り
花ぞ冷えにし
春雨の
憂き心にも
そぼ降りにける
空は雲に覆われ、さめざめと雨が降っている…。
真冬のような凍てつく寒さではないが…上衣を着なくてはならい寒さだ…。
せっかく咲いた野の花も、この寒さでは萎れてしまいそうだ…。
眺める景色も褪せ、春と言うには寂しさが顔をみせる、どこかしら初秋を思わせる風景に…私の心の中にもこの春の雨が降っているかのるようで…。
いや…これは彼のことばかり考え…寂しくなっているだけなのだ…。
雨よけし
屋根を借りにし
鳥の音も
侘しく聞こゆ
君の居ぬ春
数匹の雀だろうか…雨宿りをしているように玄関先で鳥の鳴き声がしていた…。
それは何だか愉しげで…私は心做しか淋しさを感じてしまった…。
小鳥さえ愉しげに囀ずる春だと言うのに、ここに彼は居ないのだ…。
私は一人…鳥の鳴く音を聞くしかないのか…。
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