Blue Rose
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第五話 姉の苦悩その九
「そしてそのうえで」
「弟さんにお話してですね」
「あの子を守ります」
「そうされて下さい、私もです」
「院長先生もですね」
「私の範囲で、です」
院長として、というのだ。優花のこの事実を知っている病院の責任者として。
「弟さんをお守りします」
「そうしてくれるのですか」
「当然です、患者を守ることは医師としての義務です」
だからこそというのだ。
「その個人情報も決して漏らしません」
「そうしてくれるのですか」
「医師として当然のことです」
誇り、それから来る言葉だった。
「レントゲン科の主任先生も同じです、そして」
「弟のことを知っているのはですね」
「私達と主任先生だけです」
「三人だけですね」
「はい、レントゲン科ではそうした診察例があることを知っている方はいますが」
例えば優子の後輩にあたる同僚の医師だ、優子自身この話はまずは彼女から聞いた。
「しかしです」
「それでもですね」
「それが誰かは知られていません」
「個人情報はですか」
「漏れていません、あくまで知っているのはです」
「私達三人だけです」
このことをだ、院長は優子に保証した。
「そしてマスコミもです」
「近付けないですか」
「彼等は特にです」
院長のその顔が険しくなった、普段は温厚な顔がそうなった。
「悪質なので」
「人の個人情報をもですね」
「狙ってきます、そして」
そのうえでというのだ。
「それを自分達の新聞や雑誌、書籍の売上の為に世間に出します」
「プライバシーの侵害なぞですね」
「彼等にとっては都合よく解釈されるものです」
その解釈の為のスパイスもある、そのスパイスはというと。
「言論の自由、表現の自由等という言葉で」
「そうした言葉は便利ですね」
「情報公開という言葉もあります」
院長はこの言葉も出した。
「全て魔法の言葉です」
「言葉自体が魔法といいますね」
「そうです、普通に使えばいい言葉ですが」
「それが、ですね」
「悪用すればです」
「どんなことでも出来ますね」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「彼等は特にです」
「気をつけないといけないですね」
「そうです、これは私が何とかします」
マスコミについてはというのだ。
「八条グループのマスメディアはそこはしっかりしていますが」
「モラルがですね」
「はい、日本のマスコミはモラルが完全に欠如していますが」
某大手新聞は幾度も意図的な捏造記事を掲載しても倒産せずに企業活動を続けており社会の木鐸を気取っている、それが日本のマスメディアの実情だ。
「八条グループはです」
「八条新聞や八条出版社の雑誌はですね」
「全てです」
「モラルが維持されていますね」
「ですから安心ですが」
しかしというのだった。
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