レインボークラウン
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第三百十七話
第三百十七話 博士の魔法
天本博士は実験でダイアモンドを造ってだ、小田切君に言った。
「今回もよく出来た」
「ダイアモンド造られたんですね」
「炭素からな」
ごく普通の炭素からである。
「造ったのじゃ」
「あれなんですよね、ダイアモンドは」
「そうじゃ、結局のところはな」
「炭素の塊ですね」
「だから火に燃える」
そうなるというのだ。
「火だけには弱い」
「幾ら硬いものでも」
「そうなのじゃ、それでじゃ」
「博士ならですか」
「ごく普通の炭素からもな」
「ダイアモンドを造られるんですね」
「その通りじゃ」
「ううん、凄いですね」
小田切君はその博士に唸った、だが博士は。
至って落ち着いた顔でだ、こうその小田切君に言ったのだった。
「これ位何でもないぞ」
「博士にとってはですか」
「ダイアも金もな」
そうしたものを造ることはというのだ。
「わしにとってはものの三分もあれば五トンは造られる」
「五トンもですか」
「それを売ればな」
そうすればというのだ。
「どれだけでもな」
「お金になりますか」
「昔はそうして資金を手に入れていた」
色々な研究なり開発なりのだ、こうしたことも金がなくてはどうしようもないのだ。何時の時代でも変わらないことである。
「金でピラミッドを建てられる位の金ののべ棒分のな」
「だからこのダイアもですか」
「これを売れば一千万じゃな」
今造ったダイアをというのだ。
「それ位になるがどうじゃ」
「売っていいんですか」
「暇だから造った」
その見事なダイアモンドをというのだ、五百カラットはある。
「だから別にじゃ」
「売ってもいいんですね」
「売った分の金は小田切君が貰うのじゃ」
「えっ、いいんですか!?」
一千万分のダイアを売った金がそのまま自分のものになると聞いて驚いた小田切君だった、だが博士は言うのだった。
「よいぞよいぞ」
「軽いですね」
「金なぞ何とでもなるわ」
その軽さが驚きだった、だが博士は小田切君に何でもない調子で言うのだった。
第三百十七話 完
2016・2・19
ページ上へ戻る