夢値とあれと遊戯王 太陽は絶交日和
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レベル1 最高の鍵は最硬の槌である
前書き
※この決闘は3月に行われたものです
哀手 樢はなんとなく快晴の空を見上げた。
意味も無く見上げただけの空は、どこまでも明るくて、希望に満ちていた。
「いい天気だなぁー」
そう呟くと、彼女の体中に漠然とした期待が充満していった。
「なんかいいことありそう」
だが上ばかり見ていては歩けない。樢が目線を前に戻すと、
「探したぜぇ……。痛い目に遭いたくなければおとなしくサンサーヴを寄越しなぁ……!」
カードの束を構えた変な少年がいた。
「ひ、人違いじゃないでしょうか?」
樢は関わり合いたくなかったのでそそくさとその場を離れようとしたが、
「ごまかしたって無駄だぜオイヨォ」
首根っこをガッチリと掴まれてしまった。
「俺は最強のハンターになる男、ルベーサだぁ。この俺相手に嘘つくたぁいい度胸じゃねぇかよぉ」
ルベーサは樢と同じか少し下ぐらいの歳だろうか。だが少なくとも、中学生時代の後輩ではない。
見知らぬ少年が、目を危なげにギラギラさせながら、自分を凝視している。
「い、いや、そう言われてもそのサンサなんとかなんて全くもって知らないのですが……」
樢はとにかく去りたい一心で受け答えしたが、ルベーサの表情は変わらない。
「嘘言うんじゃねぇ。てめぇの体内からサンサーヴの気配をビンビン感じるんだよぉ」
「それ、気のせいじゃないんですか?」
「気のせいだぁ?ありえねぇ。馬鹿じゃねぇのかぁ?」
「なんで?」
樢は段々イライラしてきた。
「高かったんだぜぇセンサー。これでパチもんならセレブがバブルショックだぜぇ」
そんなことを言われても、樢自身に覚えが無い。
「知らないわよ。騙されたんじゃない?とにかく、私はそんなの知らないから」
「嘘をつくなぁ!」
「ついてないってば!」
(あぁもう、誰でもいいから助けて!)
樢が心の中でそう叫んだ時、
ピピピピー
突然、何かが起動したような電子音がした。
そして、樢とルベーサの周りの地面に丸い穴が空く。
何かよく分からないまま少年に首を掴まれて後ろに引っ張られていると、ウゥゥゥンというエレベーターのような音がして、半透明の筒状の物がゆっくり回転しながらせりあがってくる。
「……」
樢はその様を呆然と眺めていた。
せり上がるのをやめたそれから、プシュゥゥといった排気の音と流れがすると、筒状の側面が殆ど降りていって、その中身が、見えてきた。
男児だ。
小学生ぐらいの男児が、フカフカの椅子に座って、丈夫な机に突っ伏してすやすやと眠っていた。
「……」
わけが、分からない。
「おい、」
ドサクサに紛れて逃げられるかとも思ったが、それより速くルベーサが言葉を刺した。
「このまんまじゃ話が終わんねぇ」
ルベーサは樢から手を離した。
「最初からこれで吐かしゃあよかったんだよぉ」
「え?」
樢がギョッとして振り返ると、ルベーサはギラギラした笑みを浮かべながら、
なんかカードの束をまた構えてた。
「……え?」
「決闘だぁ。お前が勝ったらこれ以上何も聞かねぇ。だが俺が勝ったら知っていることまるっとゲロってもらうぜぇ」
「う、うわぁ……」
あのカードのデザインは遊戯王だろうか。樢は記憶を引っ張り出す。
遊戯王は今も主人公を変えて続いていること、ずっと昔に神のカードだのを賭けて戦っていたこと程度しか樢は覚えていない。
それよりも、目の前のいかにもアブナそう(少しオブラートに包んだ)な人が、まるでアニメの見過ぎであるかのような言動を取っていることが、樢にとって恐怖だった。まるで交通事故の話を聞いた帰りに車に轢かれかけたかのよう。
「……そういうの、やめたほうがいいよ。ホントに」
「早くデッキを出せぇ。サレンダーかぁ?敵前逃亡とは、俺の力に恐れをなしたかぁ?」
「いやだから、そもそも私遊戯王知らないし、デッキも何も……」
「じゃあ……」
子供の声が、背後からした。
「ぼくが樢さんの代わりに戦います」
振り向くと、先程まで寝ていた男児がデッキ?を構えていた。
「えぇ!?」
(な、なんかややこしくなっきた……!)
「ハハハァ!なんだガキィ、騎士気取りかぁ?」
「騎士気取りではありません」
男児はとことこと歩くと、樢とルベーサの間に割って入った。
「正真正銘の騎士です」
それだけ言うと、男児は樢の方に向き直り、ぺこんとお辞儀をした。
「初めまして樢さん。老伍路 夢値といいます」
「え、初めましてだよね?なんで名前知ってるの?」
「元よりサンサーヴの保管に樢さんを使用したのはぼく達ですから」
「へ?どんだけ設定共有してんの?最近の遊戯王こんな感じ?」
樢は「遊戯王ごっこ」と一笑に付したいところだが、樢の名前を夢値が知っていることがどうも気味が悪かった。
「積もる話はありますが、まずは目の前のハンターを退けましょう。樢さんは少し離れていて下さい。あ、椅子がありますよ。ふわふわでした」
「帰っていい?」
「それは許さんぞォオィ!」
「えー」
「……樢さん、」
不満気な樢に、夢値はニッコリと微笑みかけた。
「樢さんは遊戯王初心者みたいなので、実際の対戦を見て勉強して下さい」
夢値はそう言うとルベーサと対峙した。
「ベンキョーになるまでもなくぅ、ギタギタにされなきゃいいけどなぁ!」
「そうなったら大変ですね」
2人はシャッフルしたデッキを相手に渡し、相手のデッキを軽くシャッフル(厳密にはカット)して返した。
「いくぜぇぇ!!」
ルベーサが空中にデッキを叩きつける。何故かドンという質量のありそうな音がして、手から離れたデッキが落ちない。
まるで、空中に見えない机があるようだった。
「対戦、宜しくお願いします」
夢値も一礼をしてからデッキを空中に置いた。
「え?、え!?浮いて……」
「「決闘!!!!」」
2人は合図すると共に、5枚のカードを手に持った。
「ではぼくの先攻。メインまで飛ばしますね?通常魔法、《E-エマージェンシーコール》を発動します。デッキから《E・HERO スパークマン》を手札に」
E-エマージェンシーコール 通常魔法
(1):デッキから「E・HERO」モンスター1体を手札に加える。
「次に、永続魔法、《王家の神殿》を発動します。そして、カードをセットして《王家の神殿》の効果で発動します。通常罠、《死なばもろとも》。ぼくは手札を3枚、ルベーサさんは手札を5枚デッキの下に戻して、5枚ドロー。2人がデッキの下に戻したカードは合計8枚なので2400のライフを失います」
「なっ!お前なんの為に《スパークマン》サーチしたんだよぉ!?」
王家の神殿 永続魔法
「王家の神殿」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分は罠カード1枚をセットしたターンに発動できる。
(2):自分フィールドの表側表示の「聖獣セルケト」1体とこのカードを墓地へ送ってこの効果を発動できる。手札・デッキのモンスター1体またはエクストラデッキの融合モンスター1体を特殊召喚する。
死なばもろとも 通常罠
「死なばもろとも」は1ターンに1枚しか発動できない。
(1):お互いの手札が3枚以上の場合に発動できる。お互いは手札を全て好きな順番でデッキの下に戻し、自分はこの効果でお互いがデッキに戻したカードの数×300LPを失う。その後、お互いはデッキから5枚ドローする。
夢値 LP8000→5600
「おぉー、我ながらいい引きですね。では、通常魔法、《名推理》を発動します」
名推理 通常魔法
相手プレイヤーはモンスターのレベルを宣言する。通常召喚可能なモンスターが出るまで自分のデッキからカードをめくる。出たモンスターが宣言されたレベルと同じ場合、めくったカードを全て墓地へ送る。違う場合、出たモンスターを特殊召喚し、それ以外のめくったカードは全て墓地へ送る。
「レベルを宣言して下さい」
「うーん、分かんねぇ。さっき《スパークマン》あったし4だぁ!」
「通常召喚可能なカードはさっきの《スパークマン》しかありません。当たったのでデッキを全部墓地に」
「はぁ!?マジかよぉ……マジじゃねぇかよぉ。くそっ、《死なばもろとも》でデッキの下に唯一のモンスターを仕込んでやがったのかコイツゥ」
「というわけで墓地のモンスター、《ライトロード・ビースト ウォルフ》3体の効果を発動します。デッキから墓地に送られたので3体とも攻撃表示で特殊召喚します。そして、墓地の《D-HERO ドグマガイ》《D-HERO Bloo-D》をゲームから除外して、墓地の装備魔法、《神剣-フェニックスブレード》の効果を発動します。《フェニックスブレード》を手札に。墓地に《フェニックスブレード》はもう1枚あるので墓地の《ドグマガイ》と《Bloo-D》を除外して手札に加えます」
ライトロード・ビースト ウォルフ 効果モンスター
星4/光属性/獣戦士族/攻2100/守 300
このカードは通常召喚できず、カードの効果でのみ特殊召喚できる。
このカードがデッキから墓地へ送られた時に発動する。このカードを墓地から特殊召喚する。
神剣-フェニックスブレード 装備魔法
戦士族モンスターにのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力は300ポイントアップする。
自分のメインフェイズ時、自分の墓地に存在する戦士族モンスター2体をゲームから除外する事で、このカードを自分の墓地から手札に加える。
「手札の《フェニックスブレード》を2枚捨てて墓地の《無欲な壺》を対象に、通常魔法、《魔法石の採掘》を発動します。《無欲な壺》を手札に。そして墓地の《マジカル・エクスプロージョン》と《残骸爆破》を対象に、通常魔法、《無欲な壺》を発動してこの2枚をデッキに戻します。《無欲な壺》はゲームから除外」
魔法石の採掘 通常魔法
(1):手札を2枚捨て、自分の墓地の魔法カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。
無欲な壺 通常魔法
自分または相手の墓地に存在するカードを合計2枚選択し、持ち主のデッキに戻す。
このカードは発動後、墓地へ送らずにゲームから除外する。
「無欲な壺」は1ターンに1枚しか発動できない。
「今のデッキはその2枚だけかぁ。これはまずいぜぇ。その2枚を引かれたら俺のライフは恐らく0になるぅ」
「じゃあこの2枚を引きましょう。ぼくは光属性レベル4の《ライトロード・ビースト ウォルフ》2体でオーバーレイ。《武神帝-ツクヨミ》をエクシーズ召喚します」
武神帝-ツクヨミ エクシーズ・効果モンスター
ランク4/光属性/獣戦士族/攻1800/守2300
光属性レベル4モンスター×2
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。手札を全て墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする。
また、このカードが相手のカードの効果によってフィールド上から離れた時、その時にこのカードが持っていたエクシーズ素材の数まで、自分の墓地からレベル4の「武神」と名のついた獣戦士族モンスターを選択して特殊召喚できる。
「武神帝-ツクヨミ」は自分フィールド上に1体しか表側表示で存在できない。
「げぇぇっ!」
「では、《ツクヨミ》の効果を発動します。手札を全て捨てて、2枚ドロー。では、カードを2枚伏せてターンエンド」
「くそぉぉぉぉ!俺のタァアアァァァンゥゥゥ、ドロオォォォォォォオオォォォオォォ!」
「ドローフェイズに、通常罠、《マジカル・エクスプロージョン》を発動します」
「チクショオォォォォォオ」
「それにチェーンして、通常罠、《残骸爆破》」
マジカル・エクスプロージョン 通常罠
自分の手札が0枚の時に発動する事ができる。
自分の墓地に存在する魔法カードの枚数×200ポイントダメージを相手ライフに与える。
残骸爆破 通常罠
自分の墓地のカードが30枚以上存在する場合に発動する事ができる。
相手ライフに3000ポイントダメージを与える。
「合計9000ポイントのダメージを与えます」
ルベーサ LP8000→5000→-1000
「……樢さん」
恐らく勝利した夢値は、くるりと樢の方を向いた。
「これが遊戯王です。分かってきましたか?」
「いや、全くもって」
後書き
この作品を書いている途中で制限改訂が来ました。臣杖特です。
これは「樢と一緒に遊戯王覚えよう!」という小説ではありません。騙されないように気をつけて下さい。
今回は尺の都合と俗に言うヤムチャ視点故にあっさりしていましたが、次回は、次回は、……次回もそうなっちゃうかなぁ。デッキは完成してますがそれ以外の構成は考え中です。
プレイングミスやふと思ったことがありましたら、
遅筆で飽きっぽいので、次作があなたの目に留まるかは分かりませんが、もし見かけたら読んで頂けると幸いです。
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