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歌集「春雪花」

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 花待ちし

  春の弥生の

    遥かなる

 君を想へば

   日も陰るらむ



 日一日と暖かさの増す春…。
 桜の蕾が綻ぶのを待つ三月の暮れ…見上げた空には雲が広がっている…。

 穏やかな春の日射しは遮られ、まるで…彼を想うゆえに寂しくなる私の心を映し出したようで…。

 淋しいだけの春…彼を恋しく想うだけ…。



 侘び濡れて

  恋に焦がれて

   久方の

 夜霧よ隠せ

    虚しわが身を



 叶わぬ恋…そうと知りつつ彼を想い続ける…。

 春の夜の夢…いっそ、感情に身を委せてしまえたら…そう思うこともある…。

 しかし、それはあり得てはならない…いや、この想いすら知られてはならないのだ…。

 あぁ…虚しいばかりの私を、誰にも知られないところへと隠してほしい…。

 儚い春の夜を覆う…この夜霧よ…。



 
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