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ハーメニア

作者:秋月 俊
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襲撃!東北のずんだ娘!

 「ハーメニア?なにそれ、お菓子?」

マキが尋ねてきた。あまりに突然なことに俺ら三人が叫んでしまったが、知らない人からすれば、何を言ってるのかわかんないよな。とりあえずここはなんとか誤魔化しておくか。

「そ、そうそう。あのお菓子美味しいですよね、ゆかりさん」
「はい、そうですね。あのチョコレートでありながら、深い味わいは職人の技ですよね」

丁度二人が誤魔化してくれている。よくもスラスラと嘘が出るな……。その隙にIAを連れて屋上の隅に向かう。

「もしかして…なにかマズかった?」
「マズイというかなんというか。マキはハーメニアでも何でもないし、できれば知ってほしくないんだ」
「…分かった。何かあるんだね…後で教えて。困ってるなら力になる」

どうやら分かってくれたらしい。それにこちら側に何かあると分かられたあたり、洞察力やばいな。とりあえずあんまり席を外していると不審がられるし、急いで戻ることにしよう。

「あ、二人共。どこ行ってたの?」
「あ~、少し思い出話をな」

ゆかりとミクを見る。安心したような表情を浮かべている。誤魔化すのに相当疲れたようだな、後でジュースでも奢ることにしよう。おっと、それよりも早く飯を食わないとな、時間が無くなっちまう。

                PM16:45

「お~い、詠月。すこしいいか?」

帰りの準備をしようとしていたとき、水無瀬先生から話しかけられた。

「悪いが、これを保健室に届けてくれないか?」
「別にいいけど。先生は?」
「俺は少し用があってな。他の奴らはもう帰ったし、頼まれてくれないか?」

この後別に用事はないし、やってもいいか。

「分かった。それじゃ行ってきますわ。終わったらそのまま帰って?」
「いいぞ。明日にでもジュースおごってやるよ」

そう言って先生が教室を後にした。IAはもう帰っているだろうか、頼まれ事が終わったら教室を覗いてみるとしよう。俺も教室を後にして保健室に向かう。

                PM16:50

保健室の前までたどり着いた。中に誰か居るのか、ルカ先生以外の声が聞こえる。

「失礼しま~す」
「おや、噂をすれば影というやつだね。どうしたんだいマコト」
「あ、マコト…」

保健室に入ると、ルカ先生にIAが中に居た。何か体調でも悪いのだろうか。

「これ、水無瀬先生から」

頼まれていた資料をルカ先生に渡す。

「ありがとう。どうせだ、少し休んでいくと良い。IAに話したいこともあるんだろう?」
「えっ、なんで先生そのこと知ってるんだ?」

聞くと先生は悪戯な笑みを浮かべる。一体何を聞いたんだこの先生は……

「マコト……。昼休みの話…聞かせて」

椅子に座っていたIAが立ち上がり、袖をチョンチョンと引っ張る。話したいのは山々なのだが、ここには先生もいるしなぁ。

「あ~、事情は大体聞いてるよ。私に構わず話していいわよ」

軽く言うけど、今事情は聞いてるって言ってなかったか?えっ、まさかとは思うけども、先生も?

「おや、知らなかったのかい?私もハーメニアだよ?」

うん、もう驚くことでもない気がする。これ周りの奴ら全員がハーメニアって疑ったほうが良いんじゃないか?

「しかし、君たちとは違い響器を出したりはできないよ。ただ音を感じ取ることができるくらいさ」

そう言って資料に目を落とす。

「つまり…そういうこと」
「わかった」

IAに今までのことをざっと話す。俺が狙われていたこと、ミクの元仲間がいつか襲撃してくる可能性があること。と、言ったは良いもののもしこれ、IAがそのミクの元仲間だった場合、これはやばいんじゃないか?

「なんか…思っていたよりも大変なんだね」
「一応俺とゆかりもなんとか戦えるレベルまではいったけども、やっぱり不安なんだよな」

俺とゆかりの場合は二人が揃ってないと戦えないし、もし夜中なんかに襲撃された場合どうすることもできないしな。せめて俺が自分の響器が使えればいいんだが

「だったら…私が近くにいればいい」
「……はい?」
「だから、私が近くにいる。隣の部屋に住む。空いてたでしょ?」

空いてはいるけど……ちょっと待って、なんでそのこと知ってるの。

「弦巻先輩が…言ってた。部屋探してたから丁度良かったの」
「ああ、そういう。別にいいけども」
「はい決定。善は急げ…行こう」

そう言うとそそくさとIAは保健室を後にした。

「マジかよ…」
「追いかけなくて良いのかい?」
「そうする。それじゃ、また明日」
「ああ、気をつけてね」

先生に挨拶をして保健室を後にする。IAは……って、もう校門のところまで行ってんじゃねぇか!ああもう!

「待ってってIA!」


                PM17:00 保健室

「いやぁ、まさかここまでハーメニアが揃うとはね」

ルカが資料を机に置きながら呟く。

「私を含めて六人。いや、まだいるね。全く厄介なものを起こしてくれたね彼は……」
「とはいえ、大方は予想通りといったところかな?」

窓のそばに誰かが立っていた。逆光で顔までは見えないが、異質な雰囲気を醸し出している。

「あなた達のね。しかし、これから先何が起こるかはわからないわ」
「おや、やっぱり介入はしないつもりなんだね」
「当たり前だ。私はただの教師さ、それ以下でもそれ以上でもない」
「頑固だねぇ。それならそれでいいさ、どちらにしろこのまま計画通りにいけばそろそろ第二陣が行動を始めることだろう」

窓のそばに立っていた人物が踵を返す。

「ああ、一つ言い忘れていた」

ルカが立ち上がり、その人物のもとに歩み寄っていく。その手には鈍く光る、鋭利なナイフが手にされていた。

「私はここの教師だ。もしこの学校でおかしな事でもしたら」

「貴様ら全て……皆殺しだ」

「くっ、ククク、アッハハハハハハハ!なぁんだ、結局はそちら側か。わかったよ、皆にも伝えておこう」

そう言ってその人物は姿を消した。ルカはそれを確認すると、ナイフを足のホルダーに収納する。

「……ここからが大変だ。気をつけるんだよ、マコト、結月」

                PM19:00

 あれから約二時間が経った。一体どうやったのか、俺がIAに追いついて、家まで向かった頃には既に引越し業者が隣の部屋に荷物を運び込んでいた。流石にこれは予想外だったのか、下の階の人達も何事かと外を覗いていた。

「これで安心。マコトは…私が守れる」
「それはそれで嬉しいけども」

そういえば、今になって気づいたがIAって俺のこと呼び捨てだったっけ。夢のなかというか、昔の記憶じゃマコトくんって呼んでた気がするが……

「なあIA。昔俺のこと君付けで呼んでなかったか?」
「うん…。でもなんか…呼び捨てのほうが仲いい感出るかなって」

なんとも言えない理由だった。いや、別に呼び捨てでも良いんだけども。最初に君付けで呼んでもらえてたら少しは気づきやすかったものを

「そういやなんであの時アメリカにいったんだ?」
「実はそのことを話したかったの」

IAが背筋を正す。

「私がアメリカに言った理由は、ハーメニアの能力の研究のため」

ハーメニアの能力の研究?と言うことは、既に小学生の頃にIAはハーメニアに目覚めていたってことか?

「うん。そして、そこで私は…ある人にあったの」
「ある人?」

その時だった。ほんの一瞬だけだが、世界の時が止まったのを感じた。この感覚は、ステージの発生!?まさか、また同じようなタイミングで襲撃が!?

「マコト…これ」
「ああ、敵の襲撃だな。くそっ、こんなところで!」

急いで外に出る。予想通り、外には透明なステージが張られていた。その大きさは恐ろしく、大体2キロ程度だろうか、そのくらいの大きさを覆っていた。俺の実家もぎりぎり範囲内、なんとかゆかりと合流することさえできれば。しかし、敵の姿は見えない。どこかに隠れているのだろうか。

「チャンスは今しかない!」

下へと続く階段を飛び降りる。普通ならば骨折するだろうが、ステージ内の恩恵で着地と同時に加速する。まともに地面を走るよりも家の屋根をつたっていったほうが速い。足に音を溜めてジャンプをする。

「と、そう簡単に行かせるとお思いですか?」

屋根に着地をした瞬間、声が聞こえた。俺の第六感が危険を告げる、俺は半歩後ろに下がる。そして俺の足元に1本に矢が突き刺さった。

「やっぱりそう簡単には行かせてもらえないか」
「当たり前です。敵に武器をもたせる前に倒せれば、御の字ですから」

俺の目の前に一人の少女が現れる。弓道の道着を着た、緑色の髪をした弓を持った女の子だ。しかしその雰囲気は確実に敵のものだ…。

「私の名前は東北ずん子といいます。あなたの命を貰いに来ました」
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ニッコリと笑った。しかしその笑顔は狂気に満ちており、俺の恐怖を更に加速させた。
その時、俺の中の音が何かに共鳴した。これは……ゆかりの音か!この事態に気づいてくれてこちらに来てくれているようだ。なんとかここに来るまでの時間を稼がないと……

「どうやらあなたの援軍が来ているようですね。では、合流する前に……死んでもらいましょうか」

東北が弓を引く。

「しまっ!」

ゆかりの音に気を取られすぎた。弓が引かれた音を聞いて、そちらを見た時には既に矢が俺に向かって発射された後だった。身体をねじらせなんとか回避するが、既に東北は二本目の矢を番えていた。それが発射される、その速度は先程の倍近くあり、視認することはできても、身体の反応が追いつかない!

「ぐっ!」

左足に矢が刺さる。焼かれたような痛みが走る、ミクに剣でたたかれた時よりも遥かに痛い。

「あれ、貫通する強さで放ったのに。すごいですけど、これでもう動けませんよね?」

再び矢を番え始める。くそっ、足がろくに動かねぇ。足に音を溜めて動こうとするが、刺さった矢から逆の音を流し込まれているのか、全く溜まらない。

「では、こんどこそさようなら」

矢が発射される。

「マコト…速すぎ」

発射された矢が何かに真っ二つにされる。目の前には大きな鎌を持ったIAが立っていた。

「あらぁ。全く音が聞こえませんでしたが、あなたは?」
「応える必要…ある?」

鎌を一回転させて構える。IAから音が聞こえ出す。ゆかりと似ているが、ゆかりのそれよりも更に静かだ。

「結月先輩が来るまでの時間は稼ぐ。マコトには…これ以上攻撃させない」
「また面倒ですね。なら仕方ないです、殺っちゃいますか」

   東北ずん子 VS IA 戦闘開始


続く 
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