Blue Rose
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第五話 姉の苦悩その五
「ないと思うよ」
「優子さんだけが悩む話じゃないな」
「まずないよ」
絶対にと返した優花だった。
「それはね」
「自分のことじゃないとなると」
「左遷、リストラね」
「転勤とかな」
「どれも違うね」
「そうだろうな、じゃあな」
それならと言った龍馬だった。
「後はな」
「後は?」
「仕事辞めないと収入はある」
龍馬はこのことから考えて言った。
「金のことでも家のことでもないな」
「そっちの話でもないね」
「じゃあお友達のことか?」
「そうかもね、姉さん面倒見いいから」
だからと言った優花だった。
「それかな」
「それか御前か」
龍馬は優花を見て言った。
「御前のことか」
「僕の?」
「やっぱり友達より家族だろ」
「そうなるね」
「ああ、だからな」
「僕のことなんだ」
「そうじゃないか?」
優花を見て言うのだった。
「友達より家族のことだと尚更だろ」
「うん、身近にいるだけにね」
「いつもな、だからな」
「僕のことなんだ」
「そうじゃないか?けれどな」
「うん、僕のことでもね」
「御前に何かあるとしたら」
余計にだった、龍馬は深く考えつつ述べた。
「身体か?」
「僕が病気とか」
「実はな」
「まさか」
龍馬のその仮説にだ、優花は笑って返した。
「僕が病気とかね」
「いつも体育も普通に出てるしな」
「そうだよ、何処も悪くないよ」
「普通に飲んで食っててな」
「顔色もこうだよ」
赤らんでいるうえに肌も奇麗だ、すべすべとしていてきめ細かい。まるで少女の様な肌である。
「それでね」
「何処か悪いとかな」
「ないよ」
「俺もそう思うけれどな」
「それでもなんだ」
「何かな」
どうもという言葉だった。
「気になるんだよ」
「そうなんだ」
「何もないと悩まないだろ」
「まあね」
「しかもあの優子さんがな」
その悩まない性質の彼女がというのだ。
「何日も飲んだくれるとかな」
「ないからね、そのことは僕も思うよ」
「けれどな」
「それでもね、僕の身体のこととか」
「別にないな」
龍馬はまた言った。
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