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歌集「春雪花」

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202




 眺むれば

  寒き弥生に

   光陰を

 川面にうつす

    夜半の月かな



 夜中…仕事を終えての帰り道。橋を渡りながらふと川面を見れば…月明かりがさざめく水面に映っていた…。

 揺らめく水面に光と影が交差し、恰も美しい紋様のように見える…。

 暫しその河の流れを眺めていると、様々なことが思い出され…月日とは足早に去るものだと沁々思ってしまい、彼への想いすらもこのまま過去へと流れ行くのだろうかと…侘しくなってしまった…。



 時虚し

  想ふは侘し

   花見月

 春ほころべど

    恋は咲くまじ



 時間とは老いを齎しながら去りゆくもので…何とも虚しいものだ。

 三月も終りに近づき、暖かな日々が増えようとも…彼のことを想えば、淋しくなって仕方ない…。

 確かに春は訪れた…しかし、私の想いはきっと…花咲くことはあるまい…。

 この恋は咲くことも実ることも…ないのだ…。



 
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