マゾフシェの服
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第一章
マゾフシェの服
ウルシュラ=レシニエフスキは大学で物理学を専攻している、小柄で茶色の髪を左右で太い三つ編みにして伸ばしている。茶色の大きな瞳を持ち童顔である。
その為よく子供に間違えられるがいつもこう言っている。
「尊敬する人はキュリー夫人だから」
「あの人みたいになのね」
「ノーベル賞をっていうのね」
「これは夢だけれど」
それでもというのだ。
「立派な学者さんになるわ」
「あの人みたいになのね」
「立派な学者さんになるのね」
「専門分野は違っても」
「そう、物理学者になって」
そしてとだ、いつも友人達に言っていた。
「皆の役に立ってポーランドの名声も挙げるわ」
「結構我が国ってとろいって思われてるわよね」
「何かとね」
「いつもリトアニア頼りとか」
「そうよね」
「確かにリトアニアとは古い付き合いだけれど」
「同じ国だったし」
結構な間そうだった、その関係でリトアニアがソ連から出てから深い同盟関係になっているのだ。
「けれどね」
「ポーランドだってやる時はやるわよ」
「私達だってね」
「ポーランド騎兵甘く見るなよ」
「これでも強いし」
「いざって時は頼れるのよ」
「ドイツやロシアは怖くても」
最後のジョークはウルシュラのものだ、とにかくだ。
ウルシュラは友人達にだ、いつも言った。
「やるわよ、私は」
「立派な物理学者になる」
「そうなるのね」
「日本じゃリケジョっていうらしいけれど」
たまたまネットで検索していて知った言葉だ。
「世界的なそれになるわ」
「頑張ってね」
「そしてポーランドの名前挙げてね」
「とろくないってことを」
「馬だけじゃないってことをね」
「ええ、ポーランド人は頭もいいのよ」
ウルシュラはこうも言った。
「それを証明してみせるわ」
「世界にね」
「そうしてみせるのね」
「ええ、キュリー夫人に続いてね」
友人達にも誓う、そしてだった。
ウルシュラは学問に励んだ、だが。
その童顔で白い顔と大きなはっきりした目に見事な紅の唇、小柄であるが立派な胸がだ。周囲の目に入ってだ。
それでだ、友人の一人が彼女にこんなことを言った。
「ミスコン出てみない?」
「ミスコン?」
「そう、それにね」
どうかというのだ。
「出てみない?」
「ううん、私が出ていいの?」
「はっきり言ってね」
その友人は戸惑うウルシュラにあららめて言った。
「ウルシュラ奇麗だから」
「そうかしら」
「奇麗っていうか可愛い?」
「子供みたいに?」
実は童顔であるのをいささか気にしている。
「そう言うの?」
「違うわよ、言ったままよ」
「そのまま可愛いっていうのね」
「ええ、だからね」
「ミスコン出ればっていうのね」
「どうかしら」
「具体的にどんなコンテストなのよ」
話を聞いて興味を持ってだ。ウルシュラは問い返した。
「それで」
「この街でのコンテストでね」
ウルシュラ達が通う大学のある、だ。ウルシュラはこの大学に故郷から出てきて寮に入って通っているのだ。
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