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魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~

作者:かやちゃ
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第2章:埋もれし過去の産物
  第38話「覚醒の時」

 
前書き
ようやく主人公復活の時です。

ちなみにプレシアさんとリニス、アリシアのようなGODでは生存してない三人は、アリシアはエイミィと一緒にバックアップ、他二人は闇の欠片を殲滅して回っていました。
 

 




       =優輝side=





「(...ここは....?)」

  どこかのお城のバルコニーらしき風景が視界に映る。
  しかも、夕陽に照らされていてそれがなんとも言えない美しさを醸し出している。

「(....緋雪?)」

  そんな僕の隣には、緋雪によく似た少女が嬉しそうに夕陽を眺めていた。

   ―――凄い!すっごく綺麗だよムート!

「(...ムート...か。)」

  どうやらこの光景での“僕”は僕自身ではないらしい。
  ...ムート...確か、リヒトの前の主だったか...。

   ―――そうだろう?シュネーに見せたかったんだ。

「(シュネー?シュネーって確か...。)」

  勝手に“僕”の口が動く。
  その口から発せられた名前は、確か緋雪を解析した時に出てきた...。

「(リヒトの前の主はムート。リヒトとシャルは知り合い。緋雪を解析した際に出た名前がシュネー...。)」

  ...何かが、パズルのピースが当てはまるように繋がっていく。

「(まさか...!僕がリヒトに会ったのも、緋雪がシャルに会った事も、全て必然なのか...!?)」

  根拠もない、無茶苦茶な理論。
  だけど、自然とそう思えた。



   ―――光景が移り変わった。



「(これ...は....!?)」

  かつて夢で見た戦場。それが僕の視界に入ってきた。

「(後悔、無念、悔しさ....あぁ、そうか。)」

  これは、“僕”が至らなかった結果か...。

   ―――助けたいと思った。でも、救えなかった。

「(...え....?)」

  さっきの“僕”とシュネーによる会話は映像の音声を聞くような物だった。
  だけど、今度のは脳に響くように聞こえた。

   ―――僕は精一杯頑張った。...それでも、届かなかった。

「(あ.....。)」

  目に映るのは、止められなかったシュネーの暴走。倒れ伏す数々の屍。
  シュネーの幼馴染として、導王として動いても、覆せなかった現実。

   ―――...君は、まだ間に合う。

「....シュネーの事か?」

  光景の中の“僕”とは関係なしに、僕は喋る事ができた。

   ―――ああ。だが、君は違うだろう?

「...緋雪...。」

  暴走し、狂気に堕ちた緋雪の事を思い返す。

   ―――例え人の身に戻せなくとも、彼女の心は救えるはずだ。

「....だけど、僕では緋雪には敵わないよ。」

  それは、緋雪と戦った時に悟った事だ。
  U-Dもそうだが、僕では時間を稼ぐ事しかできなかった。

   ―――そのはずはないよ。

「なに...?」

  しかし、“僕”...ムートは否定してきた。

   ―――僕は君で、君は僕。なら、扱えるはずだよ。“導王流”の極致を。

「導王流.....。」

  思い出すのは、かつて恭也さんと試合をした時、最後に使った技。
  確かにあの時、“奥義”と無意識に言っていた。

   ―――思い出して。かつての自分を。そして、彼女を...シュネーを...。

「っ.....!」

  ムートが光の粒子となり、僕の中へと入ってくる。
  その瞬間、僕は思い出した。

  僕が導王だった事。
  かつての名がムート・メークリヒカイトだった事。
  そして...シュネーを、救う事が出来ないまま、庇って死んでしまった事。

  ...それら全てを、鮮明に僕は思い出した。

「あぁ....そうか、そうだよな...。」

  そりゃあ、悔しいよな。こんな結果なんて....。

「...それを目の前で見たんだ。シュネーもああなるさ。」

  狂気に堕ちた緋雪を思い浮かべ、僕は苦笑いする。

「...いいさ、やってやろうじゃないか...!」





   ―――今度こそ、救って...いや、導いてやるよ、緋雪(シュネー)...!











〈....す..ー...すたー...マスター!!〉

「っ!!っ、がぼぼっ!?」

  リヒトの呼びかけに僕は目を覚まし、同時に溺れた。

「(し、しまった...!水中のままだった...!)」

  咄嗟に息を止め、なんとか溺死せずに済む。

「『リヒト、早速で悪いけど、短距離転移だ!』」

〈海の上にですね。分かりました!〉

  咄嗟に息を止めただけなので、当然長くは持たない。
  だから、さっさと転移魔法で海の外に出る事にした。



「...ふぅ。」

〈...海の底まで沈んだ時は、どうなるかと思いましたよ...。〉

  何とか転移に成功し、一息つく僕にリヒトがそう言ってくる。

「...海の底なら水圧とかが....。」

〈水圧は防護服が。息の関係はマスターが気絶している間は私が保護しておきました。〉

「そっか。助かったよ。リヒト。」

  すると、なぜか照れるような雰囲気で点滅するリヒト。

〈いえ...それより、マスターの雰囲気が...。〉

「....久しぶり、とでも言うのかな。フュールング・リヒト。」

〈....え...?〉

  いきなり正式名称で呼ばれたリヒトは少し驚く。

「....これで、本当に再会したんだね。リヒト。...もう、導王ではないけど、これからも頼りになる相棒として、よろしくな。」

〈ぁ...あああ...!ムート...!我が主、ムートなのですね...!〉

「....今は志導優輝だよ。」

  歓喜に打ち震えるリヒトに、僕は苦笑い気味でそう答える。

「...再会の喜びを分かち合いたい所だけど、それより優先すべき事がある。」

〈...緋雪様..いえ、シュネー様の事ですね?〉

「ああ。...行くぞ。」

〈分かりました。〉

  もたもたしていられない。そう思って、僕は魔力が蠢く街の方へ飛んで行った。







       =out side=



「あはははははははは!!」

「ぐっ...ぁあっ!?」

「っ、きゃぁあっ!?」

  避けきれず、受け流しきれず、ヴィヴィオとアインハルトはまたもや吹き飛ばされる。
  既に体をボロボロで、受け流しや攻撃に使う拳と腕は血まみれになっていた。

「(っ...私はともかく、ヴィヴィオさんがもう...!)」

  アインハルトはまだギリギリ戦える。
  しかし、ヴィヴィオはもう限界だった。
  当然だ。クラウスの記憶から経験を受け継いでいるアインハルトと、それがないヴィヴィオではダメージが違う。

「あははっ!まずは...オリヴィエから!!」

「っ、させ....!ぁあっ!?」

「アインハルトさnきゃあっ!?」

  ヴィヴィオを狙った攻撃に、ついアインハルトは庇いに行ってしまう。
  瞬間、受け流し損ねた攻撃はアインハルトを吹き飛ばし、後ろにいたヴィヴィオも巻き込んで下にあった街中に吹き飛ばされてしまった。

「ぁ...ぐ...!」

「ぅぁ...!」

「あはははははは!もう終わりだね!これで殺してあげるよ!」

  どちらもついに動けなくなり、緋雪は手を掲げ、そこへ魔力を集中させる。

「さぁ....穿て!神槍!」

〈“Gungnir(グングニル)”〉

  その魔力は大きな紅き槍となり、緋雪の手から放たれた。
  そして、その槍は二人が吹き飛ばされた場所へと着弾し...。

     ―――ドォオオオオオン!!

「...あはっ♪」

  大爆発を起こした。
  既に二人は戦闘不能になっており、回避も防御も不可能。
  よって、緋雪は二人が死んだのだと確信した。

「...さぁって、邪魔者はいなくなったし、U-Dを探しに行こっと。」

  そう言って、緋雪はその場から去って行った。









   ―――着弾地点に僅かに転移魔法の残滓がある事に気付かずに...。









「くっ....!」

   ―――“弓技・螺旋”

  椿は迫りくる魔力の矢を霊力の矢で相殺する。
  しかし、そこへさらに瘴気の触手が迫る。

「っと、はっ!!」

   ―――“戦技・四天突”

  それを軽やかに避け、四連続で矢を放つ。
  しかし、それは全て触手に叩き落される。

「くっ...!しまっ...!?」

   ―――“旋風地獄”

  御札を三枚投げ、大量の風の刃で触手を切り裂こうとしたが、切り裂ききれず、迫ってきた触手を躱しきれずに吹き飛ばされてしまう。

「はぁ、はぁ....っ、ホント、厄介ね...!」

  息を切らし、椿はそう言う。
  先程からなかなか攻撃を当てれないのだ。

「かやちゃん!」

「目の前の事に集中しなさい葵!!この程度、私一人で...!」

  そうは言うが、明らかに椿は劣勢である。
  葵も他の妖の闇の欠片を一人で相手しているため、防戦一方である。
  それでも一歩も引かないのはひとえに子供であるヴィヴィオとアインハルトが頑張っているのに自分達が倒れる訳にはいかないというプライドがあるからである。

「しまっ...!?ああっ!?」

「かやちゃ...ぐっ...!?」

  しかし、ついに二人して吹き飛ばされる。
  そして偶然、二人は同じ場所で体勢を立て直し、背中合わせになる。

「....ふふ...こんな危機に陥ったのは、とこよが未熟だった時以来かしらね...。」

「あの子、あの時はあたし達に護られてばかりだったからね...。」

  絶望的な状況。それなのに二人は笑う。
  この程度の逆境では、二人が止まる事はないからだ。
  そして、もう一度襲い掛かろうとした時...!

「っ!かやちゃん!上!」

「なに!?っ、あれは...!?」

  二人が上を見ると、なんと大量の剣や槍、はたまた斧が落ちてきた。
  それらは全て妖の群れを貫き、さらに椿の闇の欠片は念入りに貫かれた。

「これは...。」

「...っ、優ちゃん!」

「えっ!?」

  瞬間、武器群に込められた魔力が膨張すると同時に、上から優輝が降り立つ。
  二人を庇うように降り立った優輝に椿たちは驚く暇もなく...。

「―――“螺旋障壁”!!」

     ―――ドォオオオオオオオン!!!

  辺り一帯が爆発に包まれた。
  優輝は剣になっているリヒトを掲げ、魔力で渦を作るかのように防御魔法を発動させ、爆発の余波を完全に防いだ。

「優....輝.....?」

「お待たせ、椿、葵。」

「優輝っ!!」

  爆発が収まり、妖の群れが全滅した所で優輝はそう言った。
  椿はその瞬間、感極まって思わず優輝に抱き着く。

「....悪い、椿。まだ、戦いは終わってない。」

「っ、ええ、そうね。」

  すぐに平静を取り戻し、まだ少し遠くに残っている妖の闇の欠片へと目を向ける。

「...ヴィヴィオとアインハルトが緋雪と戦っているわ。」

「いや、二人はもう回収済みだ。」

「えっ?」

  すると、魔法陣が現れ、そこから気絶したヴィヴィオとアインハルトが現れる。

「...ちょっと無理に回収しちゃったから回復魔法を掛けてるけどな。」

「いつの間に....。」

「...緋雪を...シュネーを救うためには、これぐらいやってのけないとな。」

  どこか決意のある瞳で優輝は緋雪がいるであろう方向を見る。

「...それと、これで闇の欠片は全滅だ。」

「「えっ?」」

  二人が疑問の声を上げた瞬間、遠くで大量の剣が射出される。

「術式...解析!!」

  さらに、優輝は地面に手を付き、巨大な魔法陣を展開する。

「術式...掌握、解析...完了!....決壊せよ!」

     ―――パリィイン!!

  優輝がそう言った瞬間、緋雪が仕掛けていた闇の欠片を集める術式が破壊される。

「....弾けろ。」

「....えっ?ここら一帯の魔力反応が..消えた?」

  葵は辺り一帯にあった闇の欠片の魔力反応が消えた事に驚く。
  先程射出された剣が存在していた闇の欠片を貫き、爆発して全滅させたのだ。

「っ....一体、なにが....?」

「...パ、パ....?」

  そこで、ヴィヴィオとアインハルトも目を覚ました。

「悪いな。ここから、皆にはもう一仕事する羽目になるかもしれない。」

〈カートリッジロード。〉

  優輝はそう言いつつ、カートリッジをロードし、回復魔法を全員に掛ける。

「...来たか、管理局の者達よ。」

「志導君!?無事だったの!?」

  次々と降り立つ管理局の魔導師たち。
  その中でも、司は優輝が無事だった事に驚いた。

「...君の妹はどうした?」

「...今頃、U-Dを探し回っている所だろう。」

「そうか....っ!?」

  クロノが一歩踏み出そうとした瞬間、クロノの目の前に剣が刺さる。

「...どういうつもりだ。」

「緋雪...いや、シュネーの下へ行くつもりだろう?...残念だが、お前たちにあいつと戦う資格はない。」

「なに...?」

  “戦わせられない”なら分かる。だが“戦う資格がない”という事にクロノは訝しむ。

「今のシュネーには、誰の声も届かない。それこそ、当時に聖王や覇王でさえ。....あいつに言葉が通じるのは、いつだって、いつの時代だって、たった一人だけだ。」

  そう言って優輝は少し目を伏せる。
  ...かつて、助けきれなかった事を悔いているのだろう。

「だから僕達には戦う資格がないと?」

「そうだ。それに、多人数だとかえって邪魔だ。」

「....そうか。」

  クロノは執務官の経験としてか、ただただ直感でか、優輝の言う通りにするべきだと悟る。
  ...だが。

「そんな事はない!一人でも多い方が可能性はある!」

「...一人で十分だと言っているんだ!...部外者が、邪魔するな...!」

  こればかりは譲れないと、優輝は神夜を睨む。

「部外者だと...?そんな事、今は関係ないだろう!?」

「なら、はっきり言ってやろう!お前たちでは力不足だ!!」

  引こうとしない神夜に優輝はそう言う。

「そんな事はない!俺たちだって力になれる!」

「...そこまで言うのなら、試してみようか。この程度凌げなければ話にならん。」

  そう言った瞬間、魔導師たち目掛けて大量の剣が降り注ぐ。

「なっ....!?」

「遅い。」

  魔導師たちは各々防御や回避をするが、そこから全員拘束魔法で捕まってしまう。
  唯一、神夜だけがそれを偶然逃れた。

「今のが回避できないものは、いくら足掻いてもシュネーには勝てん!」

「優輝、アンタ....。」

  どこか焦ったような瞳でそう言う優輝に、椿が気付く。

「....椿、葵、ヴィヴィオ、アインハルト。...悪いけど、彼らの足止めを頼む。」

「パ、パパ!?」

「....分かったわ。」

「分かったよ。」

「椿お姉ちゃんと葵お姉ちゃんも!?」

  いきなりの指示にヴィヴィオは戸惑う。
  椿と葵はどこか察していたのか、すぐに納得する。

「....ヴィヴィオさん、優輝さんは今度こそ邪魔の入らない、シュネーを助けるための戦いに赴きたいのです。...だからこそ、邪魔の入らないように私達に足止めを...。」

「っ....分かった!パパの言う事だもん。信じるよ。」

  アインハルトも理解しており、軽くヴィヴィオに説明すると、ヴィヴィオも信じ、納得してくれた。

「....助かるよ。皆。」

「待て!!」

「っ....!」

     ―――ギィイイン!!

  刹那、優輝は襲い掛かってきた神夜の剣を防ぐ。

「どうして今になって状況をかき乱す!?」

「言っただろう?...邪魔だと!」

     ―――ギィイン!

  すぐに優輝は神夜の剣を弾き、改めて対峙する。

「俺たちはただ彼女を助けたいだけだ!どうして邪魔をする!」

「...うるせぇよ。あいつの気持ちを欠片も理解していない偽善者が...!」

  優輝は目の前の神夜をかつて偽善でシュネーを殺そうとした者達と重ねる。
  ...だからこそ、優輝は怒る。

「...いいだろう。お前の行いが(正義)で、僕の行いが間違い()というのなら、僕は何度でも悪を成そう。....覚悟はいいか?偽善者(正義の味方)...!!」

「志導優輝ぃ...!」

  言っても聞かないと互いに理解し、同時に斬りかかる。

     ―――ギィイイン!!

「っ、なっ...!?」

  あっさりと受け流され、吹き飛ばされた事に、神夜は慄く。

「力も速さも不足している。かといって、それを補う程の能力もない。...お前がいても足手纏いだ。」

「くっ....これならどうだ!!」

  神夜は一息で優輝の急所を狙い澄ました九連撃を放とうとする。
  もちろん、非殺傷設定なので、当たっても死ぬ事はないが...。





「....それが本気か?」

   ―――導王流奥義“刹那”

「がっ....!?」

  それを優輝は、全て受け流し、強力なカウンターを攻撃の数だけ喰らわした。
  カウンターを受けた神夜は、デバイスであるアロンダイトを遠くに弾き飛ばされ、ビルへと突っ込むように吹き飛ばされてしまった。

「....本気の攻撃でそれならば、どの道無駄だ。」

  優輝の言うとおり、神夜はこのままでは力不足だった。
  神夜の防御力では緋雪の攻撃力の前では無意味であり、緋雪は神夜に対して容赦はない。むしろ、偽善者に対する憎悪で本気で殺しにかかってくるだろう。

「...じゃあ、椿、葵、ヴィヴィオ、アインハルト。足止めを頼んだ。」

「任せてよ!」

「...頑張ってください。」

「...行ってらっしゃい、パパ。」

  優輝の言葉に、頼まれた四人の内三人はそう返し、椿は優輝に背を向けるように一歩前に出て、顔だけ振り返り...。

「ねぇ、優輝。...足止めするのは構わないけど、別に、倒してしまっても構わないのでしょう?」

「...ああ、遠慮なくやっていい。」

「了解よ。」

  椿の言葉に優輝は不敵な笑みを浮かべ、後は任せて緋雪の下へ向かおうとする。





「待たぬか。」

「...なんだ?」

  そこへ、ディアーチェ達マテリアルの三人が現れる。
  アースラから転移してきたようだ。

「...ユーリが貴様の妹と戦闘を始めたのを観測した。さすがのうぬでも二人の戦いに介入するのは厳しいだろう。」

「...そうか。...それを伝えに来ただけではないだろう?」

「ふ、知れた事。貴様の想い、同じ王として我も分かっておる。...ユーリは我らに任せるがよい。」

  確かに優輝だけではさすがに二人相手では勝てない。
  だからこそ、ディアーチェ達がユーリの相手を買って出たのである。

「....勝てるのか?」

「...正直に言えば、我らだけでは足止めもままならぬ。...だが、それしきで諦める事など、貴様の前ではできないのでな。」

「...そうか。なら、行くぞ....っ!?」

  今度こそ行こうと優輝が飛ぼうとした時、大きな魔力反応を近くから感じ取る。

「っ...誰だ...?」

  すぐさま、そっちの方へ優輝は向かう。

「ま、待て!」

「...ちょっとひどいけど、もう足止めは始まってるの。行かせないわよ。」

  追いかけようとバインドを解こうとするクロノだが、その目の前に椿が短刀を突きつける。

「くっ....。」

「.....必ず、緋雪を助けなさいよ...優輝。」

  義務とか役目とか関係ない。ただ自身がそうしたいから動く優輝。
  そんな彼の想いを、椿はある程度理解していた。
  ...故に、こうして彼の手助けをする事に今は集中する。







「....ここは...織崎のデバイスが飛んで行った場所...。」

  優輝とマテリアルの三人が魔力反応のあった場所へ辿り着く。

「シュテるん!王様!あそこに誰かがいるよ!」

「あれは....。」

  デバイスが落ちたはずの場所には、一人の女性が立っていた。
  長い黒に近い紺色の、ウェーブのかかった髪を後ろで束ねており、顔は凛々しい雰囲気を醸し出す目つきをしている。
  手には、神夜のアロンダイトが剣の形態で握られており、体は紺色の騎士服と毛皮の腰布、そして肩や手などに僅かな甲冑で身を包んでいる。

「誰だ...?」

  見覚えもない。味方なのかも分からない。
  だが、優輝は目の前の騎士の強さを、瞬時に自身と同等だと悟った。











   ―――終わらなかったかつての悲劇は、もうすぐ終わろうとしている...。









 
 

 
後書き
椿が某弓兵の死亡フラグなセリフを言ってますが大丈夫です。
なんてったって椿は弓を使ってますからね弓兵じゃないんです。だから死にません。(あれ?

クロノ達が戦闘から外されたのは単純に足手纏いは来てほしくないからです。
GODではユーリに対して大人数で挑んでいましたが、あれはここのユーリよりも弱いからこそできた事です。ここのユーリに対してそれをしても羽虫のように叩き落されます。
緋雪の場合も同じです。...なので、クロノ達は戦闘から外されました。 
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