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ほね・骨 ・Bone!!~【30万人の骸骨が、異世界に移住した結果がこの有様だよ!】

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16話  経済支配-3 「エルフ娘転生鍋」


セイルンの専用病院。それは現実の独裁者専用施設と同じく、医療チームをわざわざ国外で学ばせるという大枚を叩いて作り上げた代物だ。
人生を楽しいと思っている特権階級は、自身の健康のためならば、どんなに恐ろしい額でも『人民から絞り取った税金』で払おうとする。
だって他人の金だし、浪費しても懐は惜しくない。
こういう特権階級を放置し続けると、国ごと巻き込んで壮大に破滅するのが歴史のテンプレになっているが……今、病院はエルフ耳が可憐な女の子達が、ガールズトークならぬ、魔法トークを繰り広げる魔境と化していた。

「暗黒魔法が使えない~」
「大変なのです~」
「出力が低い精霊魔法で代用するのですよ~」

(ワ、ワシの病院はっ……?!専用スタッフはどこ行った!?
カモーン!お医者さんチームっ!)

特権の一つを奪われた事にセイルンは頭を真っ赤にして激怒しそうになったが、すぐにここに来た目的を思い出す。
エルフに転生して不老の身体を得る。そうすれば胃の痛みも収まるはずだ。
そう思い、彼は周りを見渡すと――巨大な鍋の前で、人間が一列に並んでいた。
どの人間も高価な絹の衣服で身を包み、籠に入れたアヘン紙幣を億単位でエルフ娘達に渡している。
そして、列の先頭にいたのは、セイルンの義理の弟テンソク。
恰幅の良い身体をしているオッサンだ。
王国の麻薬海外販売を担当する超重要人物が、野心にギラつく笑顔でエルフ娘達に頭を下げている。

「おーいっ!?テンソク!?
人間をやめるつもりかぁー!」

頭を真っ赤にして激怒したセイルン。これ読んでる読者から『お前も人間を辞めるために来たんだろ!?』とツッコミが入りかねない展開だった。
テンソクは振り返って、ふてぶてしい笑顔で返答する。

「ふははははははははっ!兄者ぁっー!
俺は今宵っ!人間をやめるぞぉっー!」

「なんだっ!その態度はっ!
また強制労働施設で熱い思いをしたいのかっ!」

苛立つセイルン。ずっと格下の飼い犬に過ぎないと思ったテンソクに舐められている事に気づき、余計に怒りを感じた。
この作品。登場人物の一部は、実在した人間の経歴をそのまんま採用しているから、創作的には無意味としか思えない過去がある。

「兄者っー!セイルン王朝はおしまいだぁー!
一緒に不老の体になって、ワルキュラ様に仕えようではないかぁー!
無論、兄者と俺は対等な関係になるっー!」

「ワ、ワシが居なかったら、お前は辺境に左遷されて底辺人生だったではないかっ!
父上に『噂ほど酷い奴じゃないですよ』と報告してやった恩を忘れたのか!」

「うるさぃっ!兄者の権力は喪失したのだっ!
これからはっ!ワルキュラ様に貢献できた人材が得をする世界が訪れるのだぁー!」

「この恩知らず!」

「俺は利で動くのだぁー!
兄者の妹に近づいたのもっ!全ては権力を得るためだっ!」

「ぐぬぬぬぬっ……!」

セイルンは幼い頃に、母親が死ぬわ、弟が泳いでいる最中に溺死するわと、身内が連続して死亡するイベントに遭遇しているだけあって、妹の事はとっても大事にしている。
だから、こんな男に妹を任せてしまった事を激しく後悔してしまった。

(こんな事ならっ……!
テンソクを強制労働施設に入れて、謀殺しておくべきだった……!
ワシに素直に従うから生かしておいたのに意味がないっ……!)

「俺は今っ!人間をやめるぞぉっー!兄者っー!」

このまま無駄に熱くなりそうな兄弟喧嘩が始まりそうだった。
だが、緑色のドレスを着た美しいエルフ娘のアトリが呑気そうに、二人の間に入り

「さっさと転生の儀式を始めるのですよ~」

その声とともに、テンソクの肥えた体をエルフ娘達が持ち上げて、問答無用で大鍋の中に放り込む。
銀色に光る謎の液体に瞬時に溶かされ、テンソクは絶命する間もなく死んだ。

「下等生物を卒業なのです~」

アトリは、その上から金属の棒で鍋の中をかき回す。
突然の事態に慌てたセイルンは鍋の隣へと来て、中を恐る恐る覗き込んでみた。

(全身が瞬時に溶けているじゃないか!)

憎たらしい義理の弟が殺された。そうセイルンは現実的な思考で理解する。
魔法には詳しくないが、液体に溶け切った人間を蘇生する方法なんてものは見た事も聞いた事もない。
そこでとある事に思い至る。

(ま、まさかっ……!
不老の身体を与えるというのはっ……壮大な罠っ!?)

不老長寿は歴代の権力者が追い求め、誰ひとり叶える事ができなかった人類の夢。
その夢を餌に、アヘン紙幣を大量に手に入れる事が可能な人間達――特権階級を根こそぎ虐殺する。そういう謀略だとセイルンは思った。

(やはりっ……!こやつらっ……っ!
おぞましい邪神の使徒だったかっ……!あわわわわわっ……!
ワシも殺されるっ!?)

「鍋~鍋~、鍋は子宮と同じなのですよ~。
再生して新しい命を作り出す~錬金術は料理から誕生したのです~」

可愛いエルフ娘達が次々と鍋に材料を投じる。
再生の力を齎す青金石。心臓代わりになる育金石の護符。峰蜜酒。チョコレート。ミルク。

(おいこらっ!?
ワシの弟を甘くして飲むつもりかっ!
本当に料理しとる!?)

全くもって不思議な事に、鍋の中に異変が起きた。
粘着く銀色の液体が……人の形になりつつある。
大なべを覗き込もうと近づいた権力者達は、その光景に神秘を感じた。
瞬く間に、生気に満ちたピチピチの白い肌が出来上がる。
肢体は軽くて芸術的でしなやか。
流れるような銀髪は、人形のように美しい。
アトリはエルフの完成品が出来上がりつつある事を確信し、最後に魔力を込める。

「これで完成なのです~。
同胞が増えて嬉しいのですよ~」

大鍋が一瞬大きく無駄に光る。遠くで見物していた日本人は「どんな物質を混ぜたんだよ!」と残酷なツッコミを入れた。
無意味な光が収まり、大鍋の中には――ピチピチで若々しい身体を得たテンソクが居た。
セイルンの目から涙が出る。不老長寿でも、これはないわぁー的な意味で。

(な、なんだとっ……!?こ、これが不老の体だとっ……!?)

「兄者っー!俺は不老の身体を手に入れたぞぉー!
全身に満ちる活力っー!俺は人間をやめたんだぁー!
あれっ……?」

義理の弟が、ツルペタでロリなエルフ娘。
どこに名家に売っても恥ずかしくない銀髪美幼女になっていた。

「え?え?」略してロリフになった事に、戸惑い焦るテンソク。

男の象徴である股間のアームストロング砲がなくなっていた。
代わりにあるのは、特殊な性癖がある男達からモテモテ確定の美幼女ボディ。
場にいる全権力者は絶望した。男の体で長い人生を生きるのだから意味があるのであり、ツルペタロリになって生きるのは人生の難易度が高すぎた。
基本、女性って差別されるし。就職でも不便だし。地域によっては『物』扱いだ。
そんな権力者達の反応を無視して、エルフ娘達が、新しいエルフの誕生を晴れやかな笑顔で祝福する。

「エルフに転生しておめでとうなのです~。
私の事を母親だと思っても良いのですよ~」

パチパチパチッ。自己啓発セミナーみたいな……いや、生暖かい拍手の波がテンソクを包み込む。
愛らしいエルフ娘達の目線が慈愛に溢れて優しい……

「おめでとう」新しい命の誕生に感謝を。

「おめでとう」見守り育ててくれた大鍋に感謝を

「おめでとう」転生の素材になった、たくさんの薬物に感謝を

「おめでとう」アトリの儀式による新しい犠牲者に感謝を

問答無用で祝福され、場の雰囲気に飲み込まれたテンソク。
彼、いや、彼女は涙を流しながら

「あ、うん、おめでとうございます?」

「「おめでとうなのです~」」

おめでとう、と言える事に感謝を。
犠牲者が新しい犠牲者(エルフ娘)を増やす未来に

 お め で と う  
 



即座に、セイルンは場から逃げ出した。
その判断は彼には正しいように思えた。
後ろから次々と悲惨な悲鳴が聞こえる。

「お、女になるのは嫌だぁー!」「うわぁぁぁっ……!骸骨に囲まれたぁぁぁ!!」
「助けてくれぇー!」「ろり娘になるのは嫌だぁー!」

国を腐らせた特権階級達が、問答無用で大鍋に次々と放り込まれ、謎の液体に溶けていく。
この大鍋に入ったら、もう後には戻れない。
エルフ娘になって、ワルキュラ陣営に協力せざる負えない。

(やはり罠だった……!あの耳が長い化物どもはっ……!
ワシらを女子にする事でっ……!国を丸ごと支配しようとしているに違いないっ……!
あわわわわわわっ……!)

この日、セイルン王国の旧特権階級の一部は、一滴の血も流さず、効率良く『粛清』され、エルフ娘の数が増えた。



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今回のコメントをまとめたページ

http://suliruku.futene.net/Z_saku_Syousetu/Tyouhen/Fusiou/c19.html

【小説家になろう】 無職転生「パンツを御神体にして、クンカクンカするのは間違っているだろうか?」
http://suliruku.blogspot.jp/2016/02/blog-post_9.html

【内政チート】 「人型の的で銃の訓練して、戦場で人を殺せる兵士を育成して軍事チート」
http://suliruku.blogspot.jp/2016/02/blog-post_7.html


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ルビー(´・ω・`)ワルキュラ様、特権階級の処分が済んだそうです。


ワルキュラ(´・ω・`)(怖っ!?殺したのか……?
やばいなぁ……恐怖政治やってると勘違いされちゃうなぁ。
粛清なんて命じてないのに、なぜそうなった・・・)
 
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