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真田十勇士

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巻ノ三十四 十勇士その六

「そして真田家もです」
「全て聞いた」
「では」
「御主には駿府の城の普請を命じる」
 処罰を待つ鳥居にだ、家康は穏やかな顔と声で告げた。
「明日よりな」
「しかしそれがしは」
「全て聞いたが」
 その話をというのだ。
「御主は武士として恥じるところはない」
「だからですか」
「ならよい」
 こう鳥居に言うのだった。
「このことで誰も罰することはせぬ」
「有り難きお言葉」
「それよりも御主は今日は休め」 
 微笑んでの言葉だった。
「よいな」
「それでは」
「うむ」
 こうしてだった、家康はまずは鳥居を下がらせた、しかしそのうえでだった。
 四天王だけを集めてだ、こう言うのだった。
「侮ったか、わしは」
「真田殿をですか」
「あの家を」
「うむ、彦右衛門に七千の兵を与えてな」
 それでというのだ。
「充分と思ったが」
「対する真田家は三千」
 酒井が言った。
「それではですな」
「勝てる、降せると思ったが」
「はい、我等の力からすれば」
 酒井は徳川の国力から述べた。
「敗れてもです」
「まだ出せる」
「ですから彦右衛門の七千はほんの尖兵」
「まだ出せることはな」
「言うまでもないですが」
「しかしじゃ」
 その実はというのだ。
「それは出来るかどうか」
「真田殿はそのことを、ですな」 
 次に言ったのは榊原だった。
「読んでおられましたな」
「彦右衛門の兵を破ればな」
「我等はそれ以上兵を出せませぬ」
「それがわかっていてじゃ」
「あの七千の兵を全力で叩き潰した」
「そうしたわ」
「我等は今はです」
 難しい顔でだ、榊原は言った。
「羽柴家と話をしますが」
「それでもな」
「はい、兵は羽柴家に向けていますので」
「将も出せぬ」
 彼等もというのだ。
「当家で最強の御主達もな」
「全て読まれていましたな」 
 本多も言った。
「そして攻め方も」
「うむ、真田家を滅ぼすつもりがないこともな」
「全て読まれていましたな」
「そして戦になりじゃ」
 そしてだったというのだ。
「後は真田家の鬼略でじゃ」
「彦右衛門殿を破った」
「彦右衛門が率いる七千の兵を破った」
 そのことがともだ、家康は言った。 
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