| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

とある地下の暗密組織(フォートレス)

作者:@観測者
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第1話
  ep.008  『赤く染まる幼い少女編 6』

 
前書き
もうそろそろ終わりそうですね。 

 
目が覚める。
「ん?   ここは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
全くに知らない部屋。

今わかることは、窓から射して来る光からここが地上だという事だけだ。

ベッドに横になっている夢絶は右手を布団から出し、右耳にあてる。


痛みすらも追いつかない衝撃だった。

と、あの時の戦闘を振り返る。
「『シ 302』、立前さん。どうしてあんたは、いっつも俺を引っ張るんすか。」
悔いではないが、あの人に対する哀しい感情がこぼれてくる。
愛ではないが、彼女に対する心配な気持ちがこみ上げてくる。


横開きの扉が閉まった。
「何か、問題を抱えているみたいだね?」

入ってきたのは医者。
(カエ・・・・・・・・・・・・、ル・・・・・・・・?)
そんな不思議と言うよりかは不気味というような顔をしている夢絶に一言。
「いや、僕は列記とした医者だよ?」

(こいつ、心を読めるのか?)
「なあ。」
思いきってみる。
「なんだい。」
と即答。

「ここは何処だ、どうして俺はここにいる?」


返答。
「ここは病院だよ。君は患者でここは病室。」

何も表情を変えないのが、真実だという事を告げる。
まあ、見た感じは病院か。

「ま、君が運ばれてきたときは僕もびっくりしたけどね。」
「え?」
何か嫌な予感がした。

「右耳が完全に吹き飛ばされてて、頭骨もヒビが入ってたんだよ。」
ベッドの上に置かれてあるそのレントゲン写真に目をやりながら、続ける。

「全く。」
頭をかきながら、
「ここによく来る『不幸』が口癖(くちぐせ)の少年がいるんだけどもね、君はその次ぐらいに重症になることが多そうだ。」

ベッドの前まで来てレントゲン写真を手に取り、
「どうしたらこんなことになるんだい?   まるで耳元で爆弾が爆発したような感じの怪我なんだったんだけど。」
「まあ、色々あるんだよ。   能力者には。」


レントゲン写真を置き、
「そうかい。まあ、その事はもういいとして、」
カエル医者がベッドの反対側に目をやる。

「隣のお連れさん。どうするんだい?」


そこには、ベッドに倒れ伏せながら眠っている御臼の姿があった。

「君がここに運ばれた時に女性がいてね、その女性から教えてもらった電話番号にかけて出た女の子なんだけど、手術が終わってからこの病室でずっと一緒にいたみたいなんだよ。」

「そうなのか。」
優しい気持ちになる。さっきまで立前さんの事でいっぱいだったが、この子は俺に心の安らぎをくれる。
「まあ、迷惑かけちゃったしな。   御臼ちゃん、お疲れさま。」

その優しい心で御臼の頭を撫でた時、ちょうど御臼の目が覚めた。
「あ、叶先輩。  お帰りです。」
「おう。ただいま、御臼ちゃん。」

そして、起き上がった御臼が目を擦りながら、
「叶世先輩がとても怒っていましたよ。任務自体は成功だそうですが、ほとんど失敗なので給料アップはないそうです。」

「いや、俺給料はどうでもいいからね。」


「どうやら、もう大丈夫みたいだね。」
カエル医者が、横開きの入口を開ける。

振り返り、
「詳しいことはまだわからないけど、数日程で退院できると思うよ。」

「良かったですね、叶先輩!」
御臼が笑顔だ。久々に見た気がする、()の笑顔だ
「そうだな。ありがとう、御臼ちゃん。」














































4日後。

第0学区(ちか)、目的区『fortress本部』。

扉の前。夢絶が入る前にひと息()く。
「ああ、帰ってきた。やっとと思えてしまう。」


扉を開ける。
「ただいま、やっと戻ってきたぞっ!」


「あ、お帰り。お兄ちゃん。」
入ってすぐに、サプライズが待っているのはよくあることだが、こんなサプライズ(おどろき)は要らないと思う。

「え、あ。・・・・・・・・・・・・・、誰?」
つい聞いてしまった。4日前に会っていることに気づかなかった。あまりに立前との戦闘が記憶に強く焼き付いたのだろう。


「酷すぎます、叶先輩!   入院したショックで記憶でも跳びましたかっ!?」
「え、いや、マジでいつ会ったっ!?」
必死。本当に記憶から抜け落ちている。


「もう!   あの地下まであった実験施設で見つけた女の子です!」
と御臼ちゃんが女の子の肩を持ち大きな声で怒る。


「う、う、ううぅぅぅ~。」
目に涙が溜まってきている。危ない。

「ごぉ~めん、ごめん!  冗談(じょうだん)だよ冗談っ!」
と夢絶、必死の説得。


「ホントに?」
(ダメだ、罪悪感がすごい。嘘ってこんなにも重たかったっけ?)
「ホントホント、だから泣かないで。   お願い。」


「・・・・・・・・・・う・・・・・・、うん・・・・・・・・・。」
「まだいろいろしなくちゃいけないことがあるので、シーちゃんは連れていきますね。」

「え、シーちゃん?」
と、いつの間にか声に出ていた。何かが引っ掛かったので言ってしまったのだろうと後になって思う。

「はい。  この子、自分の事を『シ 296』って言うんです。」
(あれ?)
不快感が出てきた。

「名前を聞いたらそう言ったし、実験されていたからなのか自分の名前がなくて、囚人番号みたいな名前で自分を呼ぶのかなって。」
「わたし、『シ 296』。」
少女が言う。俺の左腕の(そで)(つか)みながら、何か別の事を伝えてくる。

「ああ、分かったよ。」
(ああ、分かった。分かったから、これ以上言わないでくれ。)
「ほら、お兄ちゃんも分かったって言ってるから、もう行こうね。」


本音を言えば、連れて行ってほしくない。あの子の事を問い詰めたい。そう思っても、あの子が地上の何処かに行くのは、もう決まっている事なのだろう。まあ、経験則だが。

この第0学区から地上に戻された後、彼女は何処に贈られるのだろうか。地上にいる学園都市上層部が決めた施設に贈られ、そこでまた実験させられるのだろうか。




そこで思い出す。4日前、立前の言っていた言葉を。
「今回は、私の勝ちみたいだね。   また近々会うと思うから、・・・・・・・・・またね。」




彼女も立前さんと似たような呼び名だ。同じ施設にいたことも気になる。
「じゃあ、行くね。(かな)お兄ちゃん。」
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。)


(間違ってるよ。)
































そして、夜。
自室にて、就寝。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・くん。」


誰かが身体をゆすりながら読んでいる、気がする。
学園都市に来た結果、ホラー的な事に対して科学者みたいな感覚を持ってしまっていることは確かだ。


「か・の・く・んっ!!」
腹を殴られた。剛速球の野球ボールを食らったかのような痛み。

腹を抑える俺に彼女が言う。
「起きたかな、叶くん?」
聞いたことのある声なのが、不運すぎる。


「なんで、こうも俺の悪い予感って当たるんでしょうね。」
もう名前も呼べなければ、顔も見たくないと目をつぶったまま言う。

「昔っからだもんね、君の『野生の勘』みたいな能力」


先ほどから腹の上に結構な重量を感じる。目を開ける。



































そこには、とても見たことのある童女が、乗り物の様に俺に乗っかり違う知り合いがよくする笑みを浮かべていた。




「先日ぶりだね、叶くん。」 
 

 
後書き
!コラボ情報!

コラボの方は、フェニックスさんと連絡を取りながら着々と進めています。
開始のタイミングの目安としては、フェニックスさんの方で出すキャラが(そろ)い、こちらの現在進行中の長編『赤く染まる幼い少女編』が完結したぐらいです。


この二人のキャラクター達が繰り広げる『コメディ』『バトル』各一話ずつ、計二話を二人ですので四つのお話で構成されます。

お楽しみに。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧