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魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~

作者:かやちゃ
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第2章:埋もれし過去の産物
  第35話「狂気に堕ちし緋き雪」

 
前書き
余談ですが、もし優輝たちや転生者がいないと、この世界は間違いなくバッドエンドになります。
U-Dがとんでもなく強化されているので、誰も勝てません。(というか勝ててもその前に誰かが死ぬ。)
他にも、“カタストロフ”が襲ってきた時に、椿や葵、那美さんが死に、久遠が再び祟りを振りまくなど、ガチでやばい展開になります。 

 






       =緋雪side=







「(....あ...れ...?わた...し....?)」

  意識がぼやける。私が何をしていたのか、それが分からなくなる。

「(...そうだ...私は....。)」

  寸前までの記憶をなんとか思い出しかける。
  ...その時、何かの光景がよぎった。



  それは、私ではない“私”の記憶。

  忘れていた、忘れる事のできない、悲しい記憶。



「(っ.....!?)」

  夢で見た光景と同じ。

  ...いや、正確には違う光景。だけど、同じ場所の光景だというのが分かった。

   ―――怖い...怖いよ、()()()...。

  その記憶での“私”は、お兄ちゃんに似た“彼”に泣きついていた。

「(確かムートって....。)」

  私の闇の欠片が言っていた....。

  ...場面は移り変わる。

   ―――あは..あはははははは!!もっと!ねぇ!もっと頂戴よ!

「(ひっ....!?)」

  さっきとは打って変わって、私は狂ったように嗤いながら暴れていた。
  “私”と私は同じ視点になってるから、顔とかは分からないはずなのに、私は身震いした。

   ―――....っ、()()()()

   ―――あはは!...あは.....?

  そこへ、“彼”が誰かを引き連れて“私”の所へやってきた。
  そこで“私”も彼に気付く。

   ―――...あはっ♪美味しそうなの見っけ...!

   ―――シュネー!くっ...!オリヴィエ!クラウス!

  しかし、“私”はそのまま“彼”らに襲い掛かる。
  “彼”はそんな“私”を見て、隣にいた二人の男女に声を掛け、戦闘に入った。

「(なに...これ....?)」

  何が起きているのか全く理解できない。..いや、したくない。
  第一、私の今の状況が分からない。

  ...また、場面が移り変わる。



   ―――ひっ....!?....う、うぅ....。

「(ぁ.....。)」

  どこか、街の中で、“私”は周りの視線に怯えていた。

「(...そう、だ。()は....。)」

  ふと、見ている光景と同じ記憶が思い出される。
  ...私の記憶には、こんなのなかったはずなのに。

   ―――うあっ!?

「(やめて...!やめてよ...!)」

  “私”はただ怯えてるだけじゃなく、周りの人達に罵倒され、石を投げられた。
  まるで忌み子のように。化け物を見るかのように。

   ―――シュネー!

   ―――ぅあ....ムート...?

   ―――っ、これは....シュネー、城に来て。

  そう言って“私”は“彼”に連れられて城へと案内された。

「(...なんだろう、安心する...。)」

  “彼”の握る手が、とても安心できた。
  まるで、私がお兄ちゃんに慰められた時とかみたいに。

   ―――...ねぇ、ムート。

   ―――なんだ?シュネー。

   ―――私...ホントにムートの傍にいていいの....?

  場面はまた移り、傍にいてくれる“彼”に“私”は寄り添いながらそう尋ねた。

「(...怖い、不安、嫌だ、泣きたい、助けて....。)」

  ぐちゃぐちゃと、そんな風に掻き混ぜられたような“私”の想いが、私を襲う。
  本来なら私の心が乱されて、混乱するはずだけど、なぜかそれを“普通”だと捉えていた。...なんで....?

   ―――何言ってるんだ。当然、いてもいいに決まってるじゃないか。

   ―――....でも、私、吸血鬼になってしまったし...。

「(吸血鬼...!?)」

  それは、今の私の種族と同じ。
  そういえば、“私”の背中には羽の感触がある。多分、私と同じものだろう。

「(どうして...それに、この光景は....。)」

  私の吸血鬼化の原因は神様に願った特典なはず。
  でも、あまりにも“私”と私の共通点が多すぎて、無関係とは思えない。

   ―――...はい、これ。

   ―――これは...?

  “私”は“彼”にあるものを渡される。

「(あ、これって....。)」

   ―――シュネーのお守り。きっと守ってくれるよ。

   ―――....いいの?

   ―――ああ。シュネーのために技術の粋を集めて作ったからね。

   ―――....ありがとう。

  それは、蝙蝠の羽が張り付けられた赤色の十字架のネックレスだった。

「(....そっか、そういう事だったんだ。)」

  私は一人、納得する。なにせ、そのネックレスは...。

   ―――名前はなんて言うの?

   ―――まだ決めてないよ。...シュネーが名づけてあげて。

   ―――....う~ん...。あ、そうだ。あの日、ムートと見た夕日の色にちなんで...。

   ―――“あの日”か....懐かしいな。

「(あれ....?)」

  “あの日”。その単語で、なぜか“彼”と城のバルコニーから夕陽を眺めている光景が、フラッシュバックした。
  ...それこそ、懐かしい記憶のように。

   ―――さぁ、名前を呼んであげて。

   ―――うん。...起きて、“シャルラッハロート”。

「(...これが、シャルの誕生...。)」

  シャルと私。そして、シュネー。
  ...やっぱり、無関係とは思えない。



  ...また、場面は変わる。



   ―――また...!また私は.....!

「(ぁ...ぁあ....!ああああ.....!)」

  泣き崩れる“私”の想いが流れ込んできたのか、私も苦しくなる。
  悲しい、苦しい、辛い、もう嫌だ。そんな、暗い想いが、私を覆う。

   ―――もう、もう嫌...!いつも、いつもいつもこんな...!こんなっ....!

「(そう...“私”は....()は...!)」

  苦しかったから、悲しかったから、辛かったから。
  私は、殺されたかったんだ。“彼”に。大好きな“彼”に。

「(でも....。)」

   ―――.....っ!シュネー!!

   ―――......えっ?

   ―――...ガッ......!?

「(...それは、叶わなかった。)」

  私を何かから庇い、“彼”は何かに貫かれる。

   ―――え...ぁ....ムート...?

   ―――ぐ...ごほっ....!

  血に濡れた荒野。“私”を庇うように倒れる“彼”。
  ....どこか、見覚えがあった。

「(...これは...あの時の夢...?)」

  そう、夢で見た光景。それが“私”の記憶として映っていた。

   ―――....助けてあげられなくて....ごめん...な....?

   ―――ぇ.....。

「(ぁ.....。)」

   ―――ムート....?ムートってば...。起きて...起きてよ...!

「(ぁあ.....。)」

  ドクン、ドクンと、鼓動が速くなる。
  溢れ出る感情が抑えられないかのように、何かが爆発しそうなように。

   ―――お願い...!起きてよ...!私を...独りにしないで....!

「(あっ、ぁああ...!あああああああ!!!)」

  思い出すような“ムート()”を失うショックに、私は叫ぶ。

   ―――あ...あぁ...ああああああああああ!!!

「(あああああああああああああああああ!!!)」

  シュネー()も、緋雪()も叫ぶ。
  悲しみを共有するように。何かが一つになるように共鳴しながら。

   ―――....お前たちの....お前たちのせいで....!!

「(あぁ、そうだ。そうだよ、全部、全部...!)」

  “私”から、魔力が溢れる。
  私も、これ以上ないほどに怒りと憎しみを抱いていた。

  ...まるで、それが私自身の記憶であるかのように。

   ―――ムートは...!ムートは!!

「(...ああ、なんか()()()()()かも...。)」

  “私”の感情と、私の感情が段々と全く同じになっていく。
  忘れていた記憶を思い出すかのように。

   ―――....もう、いい。

「(....そうだよ。彼がいないならもういいんだよ。)」

   ―――....もう、いいよ。皆...ミンナ、壊レチャエ!!

「(ムートがいない世界なんて!いらないよ!!)」

  もう、第三者のように私は見ていない。
  “私”は私なんだ。緋雪()は、シュネー()だったんだよ...!

「『アハ、アハハハハハハハハハハ!!』」

  シュネー()緋雪()の声が重なる。

  ...もう、全部思い出した。

  私が人体実験で吸血鬼にされた事も。

  私はずっとムート達に助けられてた事。

  私の目の前でムートが殺されてしまった事。

  ....私が、狂気を持っているって事。

「アハハハハハ!そうだ!そうだよ!ずっと、ずっとずっと疑問だったんだ!フランの特典を貰ったとはいえ、どうして吸血鬼になった途端狂気に呑まれるんだろうって!」

  止まらない。停まらない。トマラナイ。
  狂気は抑えられない。抑えない。

  ...だって、これが私の本当の姿なんだもん。

「当然だよ!だって、私はずっと狂気を持ってた!ムートが殺されたから狂った!当たり前だよ!大好きな人を目の前で殺されたんだもん!狂いたくもなるよ!!」

  まだ()の記憶は続いている。

「楽しい!愉しい!タノシイ!!」

  心の...狂気の赴くままに、ムートを裏切った...偽善を振りまく人間共を殺す。
  嗚呼...なんて楽しいのだろう!

「あはははははは!あは、あはははは....!」

  記憶は段々と早送りになる。
  人間を殺して、殺してころしてコロシテ...。
  殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して!

   ―――もう、止められない。止まらない。止めたくない。

「あは、あはは...あは、は......。」

  粗方殺し尽くし、とある洞窟に入る。
  ...そこは、まだムートと一緒に遊んでいた頃、秘密基地として遊んでいた洞窟だった。

「.....ぅぁ...ぁあ....!」

  その中で、私は泣く。
  失われた悲しみは、消えないのだから。
  例えそれは、狂気に堕ちても。





   ―――...いつの間にか、私がムートを殺した事になっていた。

  目撃した人間は全員殺したのだから、唯一生きている私がそう疑われる...いや、決めつけられるのは分かっていた。
  ...それでも辛かった。

「....壊れちゃえ。」

  だから殺した。壊した。見たくも聞きたくもなかったから。

「ふふ....あはは....あはははは...!」

  屍を積み重ね、血まみれになった私はその上で嗤う。

  ...もう、それしか私の心を壊れないようにする方法がなかったから。

「...あはは....あれ...?」

  誰かが、屍の山の前に来た。
  金髪の女性に、碧銀髪の男性。

「....あぁ、そっか....。」





   ―――私、ここで死んだんだったね。















「....アハ♪」

「っ....!!」

     ―――ギィイン!!

「ガッ....!?」

  シャルを振う。久しぶりにシュネー()として振るったなぁ...。

「...嘘....だろ....!?」

「あは、あはは、あはははははははははははははは!!」

  あの時は殺された。復讐は終わってなかったのに。
  ...だから、今度は成し遂げる!殺し尽くしてやる!

「さぁ、さぁ!さぁ!!さぁ!!!....狂気の宴を始めましょう?」

  私はシュネー・グラナートロート。ベルカ戦乱にて名を馳せた狂王。
  時を越え、今ここに復讐を果たすために君臨する!

「さぁ、恐怖に叫べ!愚かな人間さん!!ふふ、あはははははははは!!」

  嗚呼...楽しみ....!







   ―――.....お兄...ちゃん......。













       =優輝side=





     ―――ギィイイイン!!

「ぐぅうっ....!」

  振るわれたシャルを、リヒトで滑らすように受け流す。
  だが、それだけでも相当な力が僕にのしかかる。

「(なんて力....!さっきより増している...!?)」

  さっきまでの闇の欠片の時よりも段違いで力が強い。
  U-Dを軽く超えてるぞこの力は...!

「緋雪!聞こえているか!?緋雪!!」

「あははははは!聞こえているよ!私は緋雪だもん!緋雪だし、シュネーでもある!だから、聞こえてるよ“お兄ちゃん”!」

「くっ...!ガッ....!?」

  そう言いながら振るわれたシャルを受け流し損ねてしまう。
  本来なら少し体勢を崩す程度のそのミスは、僕を吹き飛ばす程の威力があった。

「(まともに喰らったら死ぬ....!)」

  すぐさま体勢を立て直し、追撃を喰らわないようにする。

「(どうなってる!?どうして緋雪は乗っ取られた!?闇の欠片にそんな力が!?それとも緋雪にそんな力があったのか!?)」

  今度は攻撃を受け流さずに積極的に避ける。
  避ける度に攻撃の余波が魔力の足場を木端微塵に砕く。

「(...違う。なにか決定的なモノを見落としている...!)」

  避ける。避ける避ける避ける。
  その合間に、緋雪に対して解析魔法を掛ける。

   ―――人物名、志導緋雪/シュネー・グラナートロート
   ―――所持品、シャルラッハロート
   ―――状態、覚醒・悲哀/狂気

「(....“シュネー・グラナートロート”....?)」

  見覚えのない名前だ。
  だが、そのはずなのに、懐かしいような、居た堪れないような感覚になる。

〈シャルラッハロート!貴女はまた....!〉

〈私はお嬢様が最優先。お嬢様が言うのなら、貴女にだって容赦はしない。〉

  ...どうやら、シャルも敵に回っているようだ。

「あは、あはははは!緋雪()になってから随分と“お兄ちゃん”にはお世話になったね!だから、殺すのは最後にしてあげる!あは、あははははははは!」

「くっ....!」

  叫びつつ振るわれるシャルを躱す。
  “最後にしてあげる”と言う割には完全に殺す気じゃないか...!

「(だけど、U-Dと違って逃げられない訳じゃない!ここは態勢を立て直して...!)」

  剣をいくつか創造して射出し、操作する事で動きをほんの少しだけ阻害する。
  ...すぐ壊されたけど。

  ...だけど、それだけで十分。

「っ......!」

  緋雪から逃げ出す。
  別に、臆病風に吹かれた訳じゃない。このまま戦っても負けるだろうから撤退するだけだ。

「(...ま、ただ逃げるだけじゃ追いつかれるけどね。)」

  追いかけてくる緋雪に対して、武器を創造して射出する。
  ダメージは一切与えられないけど、これなら少しだけ遅くできる。

「(よし、このままなら.....っ!?)」

  逃げ切れる。そう思った矢先に、視界に司さんが入る。
  しまった...!司さんが追い付いてしまった...!

「...あはっ♪」

「っ....!」

「司さん!!」

  司さんに緋雪は気づき、そちらへと襲い掛かる。
  司さんは構えるけど、さっきまで相手にしていた闇の欠片とは格が違うんだ...!

「....ッギ.....!!」

「く...ぅう......!?」

「し、志導君!?」

  リングバインド、チェーンバインド、“創造”による鎖。
  それらの拘束で腕、足、胴を抑える。
  一気に魔法を行使し、魔力を消費する事で頭に痛みが走るが、構ってられない。
  ...幸い、何重にも拘束を施したおかげで、司さんに攻撃が行くことはなかった。

「つか、ささん...!逃げろ...!今の緋雪は....普通じゃない!!」

「っ....!?」

「....もう、邪魔!!」

  バチィイッ!!という音と共に、全ての拘束が千切れる。
  ...おいおい...あまり魔力が感じられなかったって事は、ほぼ素の力かよ...!

「っ....!逃げろ!」

「し、志導君は!?」

  緋雪に斬りかかり、司さんにそう叫ぶ。
  言った通りに逃げようとする司さんは、僕にそう言うが...。

「...兄として、責任もって足止めするさ...!」

「そんな....!?」

  司さんと共に逃げるのは、少しばかり危険だ。
  なら、一人でも逃げられる僕が足止めした方が、片方は確実に助かるからその方がいい。

「あはっ、逃がさないよ。」

     ―――ジャララララ!

「残念だけど...しばらく僕の相手をしてもらおうか...!」

  司さんを再度攻撃しようとしたのを、僕が創造した鎖を腕に巻きつける事で阻害する。

「...ふふっ、それっぽっちなの?力は?」

「え?うおっ!?」

  デタラメな力で鎖を引っ張られる。
  やばっ、このままだと....!

「っとぉっ!?」

「...あれ?」

  魔力を固め、そこに手をついて逆立ちの要領で上を取る。
  振られたシャルはそれによって空振り、上手く攻撃を避けた事になる。

「(カノーネフォルム....は、さすがに威力不足か?)」

  カートリッジを弾丸として撃ち出して攻撃しようとしたが、威力固定なカノーネフォルムだと緋雪の力には弾かれてしまうため、却下する。

「(...とりあえず、司さんは逃げ始めたか。)」

  司さんは逃げ始めたので、感知できなくなるまで離れた所を見計らって僕も逃げるか。

「(それまでは....。)」

「ふふ...あはは...ムートと同じ事ができるんだ...。見た目だけじゃなくて、魔法も似てるんだね。....全く、癪に障るよっ!!」

「(こいつを抑えるのか....!!)」

  何かが琴線に触れたのか、さらに魔力が爆発する。
  ...U-Dと言い、なんで僕はこんな強敵とばかり戦うんだよ...。

「あはっ、シャル!」

〈“レーヴァテイン”展開。〉

  杖形態のシャルに炎のような魔力が纏わりつき、それが大剣と成す。
  ...今までよりも大剣の強さが違う。僕はそう直感した。

「リヒト、カートリッジロード!」

〈マスター...!....分かりました..!〉

  僕はU-Dとの戦闘での体への負荷がまだ残っている。
  その状態でまたカートリッジを多用すれば大変な事になるだろう。
  だけど、それ以前にこの戦いを生き抜けないと、リヒトも思ったのだろう。
  カートリッジを一気に三発ロードしてくれる。これでなんとか....!

「そーれっ!」

     ―――ッギィイイイン!!!

「ガッ....!?」

  嘘....だろ......!?
  あれだけ身体強化したのに、受け流し損ねる程の威力....!?

「(まずい...!まずいまずいまずいまずい!!)」

     ―――ギィイン!!ギィイイン!!

  何度もレーヴァテインが振るわれる。
  その度に僕は受け流し損ね、軽くダメージを受ける。
  ...軽くって言っても並の魔力弾が当たった程のダメージだがな...!

「(不幸中の幸いは、攻撃に雑な所がある事だな...!)」

  力が制御できないのか、使いこなせてないだけなのか。
  どの道、そのおかげですぐにやられる事はなかった。

「(そして....。)」

  攻撃の合間に剣を創造。射出する。

「っ!」

「(隙もできやすい!)」

  それを片手で破壊する緋雪。
  しかし、そこに隙が生じる。

「はぁっ!!」

  すれ違うように一閃。
  すぐさま魔力で足場を作り、それで反転してまた一閃。
  ...それも、殺傷設定で。

「ふふっ...無駄だよ!」

「...だろうな...。」

  斬りつけた傷は、浅かったのか、治っていくのが目に見えた。吸血鬼の再生能力だ。
  ...無意識に緋雪だからと手加減していたか...。

「うふふ...まだ力が体に慣れ切っていないみたい。なら....。」

「っ....!」

  緋雪の足元に三角形のベルカ式の魔法陣が展開される。
  っ...この魔力の規模は....!

「させ...っ!?」

「...残念♪」

  させまいと阻止しようとしたら、進行上の空間が爆発する。
  “破壊の瞳”か...!

「くそっ...!」

「今までのとは違うよ?...さぁ、具現せよ!我が分身よ!!」

〈“Alter Ego(アルターエゴ)”〉

  魔法が行使され、緋雪の分身が三体現れる。
  ...フォーオブアカインドじゃない...?

「(....いや、あれはフォーオブアカインドの本来の名前か...?似たようで違う...?...くそっ、なんだこのさっきからある違和感は...!?)」

  不思議とあれはフォーオブアカインドであってフォーオブアカインドではないと感じ取る。
  ...そう、まるで見たことがあるかのように。

「(..というかそれどころじゃない!これはまずすぎる....!!)」

  ただでさえ力が使いこなせてない一人でもきつすぎるというのに、それが四人になるだなんて....!
  ...例え、力が四分の一になっていたとしてもやばい...!いや、むしろ力が制御できる分、余計に危険だ...!

「(司さんは....もうだいぶ遠くに行った!これなら...!)」

「「「「さぁ!遊んであげる!!」」」」

「っ.....!」

  全員が全員、魔力の剣を生成して斬りかかってくる。
  おそらく本物であろう一人だけ、シャルを使ったレーヴァテインだが、どれもこれも掠るだけでも危険だ...!

「っ...ぁあっ!!」

  連続で降りかかってくる斬撃を、創造もフル活用して全力で凌ぐ。
  まだだ...一瞬の隙を....!

「....ここだっ!!」

〈“sprengen(シュプレンゲン)”〉

  魔力を瞬間的に開放し、四人の緋雪を吹き飛ばす。

「今っ!リヒト!転移魔法だ!」

〈分かりました!〉

  吹き飛ばした事によって、隙ができる。
  その間に転移魔法を組み立て、その場から脱する。

「(咄嗟だから短距離しか飛べないが...これで猶予はできる!)」

「....逃がさないよ?」

「残念、逃げるさ。」

  転移魔法に気付いた緋雪が飛んでくるが、ギリギリの所で転移する。



「っ....またすぐに飛ばないと...。」

  転移し、すぐまた転移魔法を使おうとする。







「―――“逃がさない”って言ったでしょ?」

「っ....!!?なっ...!?」

     ―――ガギィイイイン!!

  後ろから聞こえた声に、咄嗟に振り向いてリヒトで盾にする。
  そこに拳が当たり、大きく僕は吹き飛ばされた。

「(シャルを持っていた緋雪は分身...こいつが本物だったのか...!?)」

  無意識に掛けた解析魔法で目の前にいる緋雪が本物だと分かる。

「ふふふ...あはははははは!ねぇ!どんな気持ち!?必死で逃げたのに簡単に追いつかれた気持ちはどんなの!?ねぇ!ねぇ!!ねぇ!!!」

「ぐっ....!」

  再び四人の緋雪に包囲される。
  ...転移魔法の先を予測されていたか....。

「(万事休す...か...?)」

「「「「あはははははははは!!」」」」

  狂気に満ちた笑い声と共に、四人の緋雪が襲い掛かってくる。

「くっ....!がっ....!?」

〈マスター!?いけません!体が....!〉

  体に凄まじい痛みが走り、つい動きが鈍る。
  これは...!U-D、緋雪と続いた戦いの代償か...!

「あは♪もう終わり?じゃあ、死んじゃえ。」

「くっ....ぁあああっ!!!?」

  盾を重ねるように創造し、さらに防御魔法を張って腕をクロスさせてガードする。
  しかし、それらは度重なる激戦で疲労したせいか脆く、全て砕かれ、緋雪の拳によって腕のガードの上から吹き飛ばされた。

「ぐっ、がっ....っ!」

  下は海で、それに叩き付けられる。
  すぐさま飛行魔法で海面から上がり、飛び上がるが...。

「....あはっ♪」

「っ!?ぁああああああああ!!?」

     ―――ッギィイイイン!!!

  そこへ背後から分身の緋雪が、シャルのレーヴァテインを振りかぶってくる。
  それを避ける事もできず、僕はリヒトで直撃を避けるように盾にするしかなかった。
  もちろん、そんな事をすれば吹き飛ばされるのは目に見えていて...。

「.......――――。」

「っ..!?が..あっ!!?」

  本物の緋雪が、両手を組んでそれを振り下ろしてくる。
  それは僕の腹に直撃し、海へと叩き落された。





  緋雪に叩き落され、力尽きた僕は薄れゆく意識の中ただただ考えていた。

「(...どういうことなんだよ....緋雪....。)」

  拳を振り下ろす際、緋雪は確かに呟いていた。

   ―――.......ごめんね。

  ...と。

「(....ちく...しょう......。)」

  しかし、力尽きた僕には何も考える事ができず、そのまま意識が暗転した。









       =司side=



「....嘘.....!?」

  志導君が、やられてしまった。

「そんな....!」

  私は志導君の言うとおりに逃げて、随分と離れた所まで来ていた。
  ...その時だ。志導君の転移反応と、それを落とした緋雪ちゃんの魔力を感じたのは。

「あ....ああ....!」

  私が見捨ててしまったから...!私が犠牲になっていれば...!
  そんな後悔が渦巻く。



「―――あは♪見つけた♪」

  ...そんな私を追い打ちするかのように、緋雪ちゃんが現れた。
  志導君が言うに、彼女は緋雪ちゃんであってそうではないらしい。

  ...でも、今はそんなの関係なかった。

「っ、ぁあああああああ!!!」

  感情の赴くままに、魔力を込めてシュラインを振った。

「....弱いよ。」

     ―――ギィイイイン!!

「っ、ぁ.....。」

  しかし、それはあまりにも容易く上に弾かれてしまった。

「あは、“お兄ちゃん”よりも手応えがなかったね。さよなら。」

  そのまま彼女の杖が魔力の大剣となり、私に振り下ろされた。









 
 

 
後書き
Alter Ego(アルターエゴ)…分身のドイツ語。フォーオブアカインドの上位互換。
sprengen(シュプレンゲン)…爆破する、破裂させるのドイツ語。魔力を開放して周囲の敵を吹き飛ばす。間合いを取るための魔法で、ダメージ自体はほとんどない。

支離滅裂な感じで書く事により、狂気が表現できるのだと思ってる。(小並感)

...あ、古代ベルカ産の吸血鬼は普通の吸血鬼と違うので、明確な弱点は光属性的な攻撃と銀くらいです。
日光は当たると弱体化しますが、防護服を着ていると無効化されます。(つまり大した弱点じゃない。) 
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