魔法少女リリカルなのはINNOCENT ブレイブバトル
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EXTRADUEL2 チーム結成
「この学校に転校してきたバルト・ベルバイン君です」
「………よろしく」
そう言うとクラスが一斉にざわめきだす。
しかし彼を初めて見ると言うクラスメイトは意外にも少ない。
何故なら彼は既に有名になりつつあったからだ………
「ふう………」
こんな高揚感は久々だった。
戦いを終え、現実世界に戻ってきたバルトだが、その顔はとても満たされている。
「凄いよバルト君!!初めてであんなに戦えちゃうなんて!!」
「それ以上にバルトのカードが強すぎたね………ダメージが通らないと勝てるにも勝てないよ」
とフェイトが少々悔しそうに呟く。
「擬似聖王の鎧か………聖王ってなんだ?」
「さあ?」
なのはは知らないのは察していたが、フェイトも首を横に振った事で、バルトもこれ以上聞くのを止めた。
「一定以上の威力のある技を当てるか、効力が切れるまでダメージを無効化って強すぎるね」
「………このアホの砲撃に貫通されたけどな」
「なのははアホじゃないもん!!」
「いくらでもゲームとはいえ、あんな強力な砲撃をゼロ距離で撃たれたらトラウマになるわ!!全く、とんでもない事を考えるよお前は………」
「えへへ………」
2人との戦闘は当然バルトの敗北だった。一番の敗因はやはり初心者で初めての戦いだった事が大きいだろう。それでも鎧の効果があるうちは充分善戦していた。しかしなのはのゼロ距離ディバインバスターを受け、破壊された後は、2人にされるがままとなり、そのまま敗北してしまった。
「褒めてねえよ!はぁ………!」
これ以上怒る気にもなれず、バルトは深いため息を吐いた。
「あはは………でもバルトならもっともっと強くなれるかもね」
「取り敢えず目標は本気のお前達に勝つことだな。その後はこのゲームの頂点に立つ!!………さっきチラッと見たがランキング戦ってのもあるんだろ?」
「そうだよ。フェイトちゃんがランキング2位!!」
「へぇ、凄いな………」
バルトが感心すると「そんなことないよ……」と恥ずかしそうにモジモジしだす。
(可愛いなぁ………)
と少し惚けてしまった。
「因みに私は3位!!」
「聞いてない」
「ええっ!?」
と表では軽く流したが、フェイト同様驚いたし、感心している。
(この2人がトップ3か………見えないな………)
「ううっ、バルト君が冷たいよ……」となのはは涙目で呟き、フェイトは苦笑いしながら宥めている。その光景からはとても上位ランカーだとは思えない。
「まあいい、さっさと俺も上位ランカーに食い込んでお前らを公式にぶっ倒して………」
「あっ、バルト君、それは無理だよ」
「無理………?」
「だって個人のランキング戦はそれぞれ階級毎に分けられてるから」
「ふぅ………」
授業中の中、バルトがため息を吐く。
「何であんなルールに………」
個人のランキングは4部門に分かれている。
先ずは初心者を中心に集まっているジュニア。次が現在1番多いランク、ノービス。更に腕の立つ者が集まるエリート。そして上位ランカーがひしめく100位迄がトップエリートとなっていた。
バルトはすぐ様ランキング戦をし、ノービスランクへとランクアップしたが、そこからは中々順位が上がらない。細かく言えば順位づ付けはまだされず順位が付くのはエリートからだ。人数が多い、ノービスはポイントがあり、それが一定を超え、尚且つ勝率など色々と吟味され、エリートに上がるのだ。
更にエリートまで上がると本格的にランキング戦となり、中々順位が上がらず時間がどうしてもかかるのだ。
「はぁ………」
バルトはすっかり意気消沈していた。周りから『期待の新星現る!!』と注目されているのだが、なのはやフェイト達と戦ったときのような血湧き肉躍る戦いが出来ず、鬱憤が溜まっていた。個人的に戦うにも上位ランカーであり、人気デュエリストでもある2人は店のイベントの手伝いや手合わせに忙しく、とてもバルトを相手にしている余裕が無いくらいだ。
「バルト君バルト君」
「………」
「バルト君!」
「………」
「バルト君!!」
「うっせえななんだよ!!」
「先生に指されてるよ」
と怒ったバルトにも動じず隣の席のなのはが呟く。
「ほう、うるせえとはいい度胸ねバルト君?」
「げっ………」
担任のシャイデ・ミナートがとてもいい笑顔でそう答えた。
「私が言った部分音読してみなさい」
「すいません、ボーっとしてて聞いてませんでした」
即答で答えるバルトにシャイデは暫くバルトの顔を見ていたが………
「はぁ………まあいいわ、じゃあ隣のなのはさん、代わりに読んで」
バルトの顔をみて、しつこく言うのを諦め、代わりになのはを指名した。
「あっ、はい」
そう返事をして立ち上がり、なのはが音読を始めた。
(………結構面倒そうな担任だな)
今回は見逃してもらえたが、次は心ない謝罪を述べれば火に油だろう。
「とにかく今は地道にやるしかねえか………」
バルトはため息を吐きながらうな垂れた………
「バルト・ベルバイン!!」
「…………」
「ちょっと起きなさいよ!!」
「…………」
「起きなさいって!!」
「えい!!」
「がっ!?」
昼休み、気持ちよく眠っていたのに不意に頭に鈍い痛みを感じ、飛び起きた。
「なんだ!?」
「おはようバルト君」
「ああ、おはよう。………ん?国語辞典なんて次の授業使うっけ?」
「何言ってるのバルト君?次は算数だよ」
「そうだよな………まあいいか。ん?お前は………」
バルトとなのはを見て固まっていた少女は声を掛けられて我に返った。
「ちょっとバルト!!あんた私の事覚えてるでしょ!!」
「お前の事……………………さあ?」
首をかしげるバルトに少女は怒りを抑えながら話を進める。
「あんたって奴は………バニングス家って言えば流石に思い出すわよね?」
「ああ、確か取引先で親父も信頼を置いているグループだっけか?」
「私はアリサ・バニングス。………ってあんた会長が集まるパーティに出た事あるでしょ?そのとき私とも会ってしかも自己紹介した筈だけど?」
「………」
そう言われアリサの顔を見るバルトだが全く覚えがなかった。
「その様子じゃ覚えてないのね………全く、お兄さん達は優秀なのにあんたは本当に………」
「兄貴は関係無いだろ、勝手に比べるな」
アリサの言葉を遮り、バルトが言う。そしてもう話す事は無いと言わんばかりに再び机に突っ伏した。
(ここに来てもまたベルバイン家かよ………)
誰も自分の事を知らない場所。そこで家に縛られない生活に心地良さを感じていた。
(結局どこにいても家の名前に縛られる………俺はこれからもずっとこうなのか?)
『勝者、バルト・ベルバイン!!』
「ちっ………」
放課後のホビーショップT&H。
ノービスランクのランキング戦を行うバルト。放課後の出来事もあり、それを発散させようとチャイムが鳴ると同時に店に向かい、やっているが、一向に気分は晴れない。
「くそっ………」
不完全燃焼のまま、一旦ゲームを止めようとしたその時だった。
『乱入者が出現しました。勝負しますか?』
「乱入者?ランキング戦じゃ無いみたいだが………まあいい」
そう言って了承すると世界が変わる。先ほど戦っていた森林のステージが市街地に変わった。
「逃げなかったのには褒めてあげるわ」
「ん?お前は………」
現れたのは金髪の少女。片手剣を持ち、自信満々に仁王立ちしていた。
「……………………」
「ちょ、ちょっと!!今日改めて自己紹介したじゃない!!」
「あ、ああ。もうすぐそこまで出てきてるんだ。バニングス家の………えっと………」
「ア・リ・サよアリサ!!全く、普通1日持たずして忘れないわよ………」
「どうでもいい奴の名前は中々覚えられないんだよ………」
「あんた、所々で喧嘩売ってくるわね………それに家の関係上、ちゃんと覚えた方がいいわよ?」
「だったら尚更覚えたくねえよ………」
「?」
小さく呟いたバルトの言葉は聞こえなかったが、顔が一層険しくなったのには気が付いた。
「まあいいわ、話はこれ位にして戦いましょう?」
「いいぜ、簡単に負けるなよ?」
「上位ランカーを舐めないでよね!!」
「………エローシュ遅い」
「悪い佐助。………今日も来てるか?」
バルトとアリサが戦闘を始めて数分。話題のバルトと上位ランカーのアリサのバトルは来ている皆の注目の的だった。
そんな人並みの中に2人の少年がいた。
「今アリサ・バニングスと戦闘中………」
「上位ランカーの!!空さえ飛べれば1桁に間違いなく食い込む実力者………状況は?」
「バルト・ベルバインが劣勢。地上での戦闘はアリサ・バニングスの方が分がある………」
「空が飛べない分、地上での戦闘を極めた結果だろうな……」
「ボルティックランサー!!」
雷を帯びた槍型の誘導弾が一斉に発射される。
「当たれ!!」
槍はアリサ目掛けて飛んでいくが、アリサの切り返しのステップに翻弄され、1発も当たらない。
「くそっ!!ちょこまかと動きやがって………!!」
バルトのボルティックランサーはスピードが自慢の誘導弾だ。弾速が速い分、細かな動きに付いていけないと言う弱点があった。
「フレイムブレイバー!!」
そんなバルトに向かって炎の斬撃が飛んでくる。
「ちっ………!!」
バルトはそれを上昇する事で避けた。
「甘いわ、フレイムウィップ!!」
そんなバルトの動きを読んでいたアリサは上昇するバルトの足首を炎の鞭で捕まえ、地面に叩きつけた。
「ぐっ!?」
大したダメージは無いもののバルトの持つ、擬似聖王の鎧は今までしつこく受けていた攻撃のダメージが積み重なり、崩壊寸前だった。
「はああっ!!」
そんな中、アリサは攻撃の手を緩めない。一気にバルトに迫り、斬りかかる。
「……やられっぱなしで終われるか!!」
「なっ!?」
アリサが斬りかかって来る中、斧でその攻撃を打ち返した。
「何て力……!」
力任せの強打は斬りかかったアリサの方を吹っ飛ばした。しかし直接攻撃を受けたわけではないアリサは変わらずいつも通りだった。
「!?まずい!!」
既に斧に魔力を込め終わったバルトが視界に入る。
「ボルティックブレイカー!!」
斧を振り下ろすと同時に溜めた魔力が一気に放出される。
「間に合え……!!」
反応に遅れたものの、建物の陰に隠れるように横に逃げるアリサ。
「無駄だ!!」
しかしバルトの砲撃は関係無いと言わんばかりに建物ごとアリサを狙って砲撃を動かす。
「貫通!?なのはみたいな事を!!」
砲撃が建物を貫くとその建物は下へと崩れていく。
「やったか………?」
砂塵が舞う中、バルトの死角から黒い陰が現れた。
「!?てめえ!!」
「はあああぁぁ!!」
反応しきれないバルトに一閃。
(くっ、鎧が………!!)
その一撃にバルトの鎧は破壊された。
「紅蓮一閃!!」
「なっ!?」
更にアリサの攻撃はそれだけに終わらなかった。刃がある部分に炎が帯びるアリサのスキルだが、そのスキルは違った。刃が全体を覆うように炎が包み込み、完全に炎の剣と化した。
「このお!!」
バルトもそう簡単にされるがままに終わらない。体勢が整わない中、懸命に斧を構えガードする。しかしそんな頑張りも虚しく斧を弾かれ、アリサの一撃を無防備のままに受けたのだった………
「くそっ………」
「私の勝ちね!!」
悔しがるバルトをよそにアリサはVサインをバルトに見せる。
「アリサ、もう一回だ!!」
「やっと名前で呼んだわね。勿論良いわよ………と言いたい所だけど、私これから習い事があるから帰らなくちゃならないの」
「そうか………」
アリサの理由を聞き、バルトはそれ以上何も言えなくなる。
「毎日は来れないし、相手出来るか分からないけど、また戦いましょ」
「………ああ。次は負けねえ」
「それはどうでしょうね?またボコボコにしてあげるわ」
そう言い残しアリサは帰って行った。
「………」
ボロ負けだった。
なのはとフェイトの2人を相手した時よりもだ。
「あれがトップエリートの上位ランカー………」
最高に興奮した戦いの感覚が今もまだ残っている。
「早く俺も………」
そう言い、言葉を失う。
道は遠く険しい。退屈な戦いにストレスばかり溜まっていく。
「………」
せっかくの気分が一気に萎えてくる。
「満足していたのにいきなり意気消沈して………感情の変化が激しい奴だな」
「………何だお前?」
不意に声を掛けられたバルト。挑発にも近い事を言われ、不機嫌ながら相手を見た。
「失礼。俺は江口伸也と同じ5年生だ。こっちは小岩井佐助」
「よろしく………」
と軽く自己紹介する2人。しかし依然バルトの態度は変わらない。
「何の様だ?喧嘩売りに来たわけじゃないよな?」
「ちょっと提案があってね。単刀直入に言うよ。バルト・ベルバイン君、俺の作るチームに入る気はないか?」
「チームだと……?」
「そう。夏に開催されるチームのランキング戦に一緒に戦って欲しい」
「チームか………」
そう言ってバルトは難しい顔をする。
正直誘われるとは思っていなかったので嬉しい気持ちはあった。しかし……
「悪いが俺はチーム戦だとか強力だとかは興味がない。他を当たれ」
そう、バルトが望むのはあくまで1人で戦い頂点に立つ事。それ以外には興味は無かった。
「君にとっても得はあるぞ?何せチームの団体戦にはクラス分けが無い」
「何……?」
「去年の冬にあったチームのランキング戦はグループでの勝敗で1位を選出してその後トーナメントで決めていた。既に参加募集はされているけど内容は同じだった。だから運が良ければ初戦からって事もあり得る。………尤も今回は参加するチーム数も倍以上に増えているから勝ち抜かないと無理だろうけどね」
「だがそれだけでは………」
「上位に入れば個人のランキングも一気に上がると言ってもか?」
そこでバルトは言葉に詰まった。
「その反応を見る限りやっぱり個人戦でくすぶってたみたいだな」
見知らぬ人間に見透かされ、気恥ずかしく感じ、ただ無言で黙って頷く。
「どうだ?俺達と一緒に先ずはチームで頂点を目指さないか?」
その誘い方にバルトは大いに惹かれた。バルトにとってデメリットも無く、誰かを誘って自分のチームを作るなんて出来る筈も無く、断る理由も無かった。
しかしバルトは言われるがままの様な気がして何だか悔しかった。
なので………
「………自信満々なのは良いが、お前達と組んで、本当に頂点なんて狙えるのか?実際組んでみて足手纏いなんて勘弁だぜ」
そんなバルトの発言に信也はニヤリと笑みを溢した。
「なるほどな。………だったら俺と一回戦ってみないか?」
「さあ、それじゃあやろうぜ!!」
そう伸也は楽しそうにバルトに叫ぶ。互いに距離を取り雪原のステージで相対する。
「お前、デバイスは!?」
「俺はこれでいいんだよ!!さあ来い!!」
既にバトルは始まっているが、バルトは中々動かない。相手の情報が無いので、様子を見ているが、伸也は煽るだけで一向に攻撃に移らない。
「だったら………」
取り敢えずバルトは動く事にした。
「ボルティックランサー!!」
雷の槍を一斉に伸也に飛ばす。
「来た来た~!!」
攻撃された伸也は嬉しそうに懐から小さく細い杖の様な棒を取り出した。
「その棒みたいな奴がデバイスか!?」
あまりにも細く弱々しい棒の様なデバイスに思わずバルトが驚き叫んだ。
「猪みたいにぶつかり合うだけがブレイブデュエルじゃないのさ!!………クリスタルフォール!!」
そう言うと伸也の目の前に2つ大きな結晶が現れ、それが盾となりボルティックランサーを防いだ。
「流石に誘導弾で破壊出来る盾じゃ………ん?」
そう分析しようとした瞬間に、クリスタルに亀裂が走り、2つとも粉砕した。
「でかい口を叩くわりにはあまり防御には自信が無い様だな」
「まさか1撃で破壊されるとは………」
予想外の出来事に伸也は動揺している中、バルトは畳みかける。
「悪いが、どんどん攻めさせてもらうぞ!!」
チャンスと察し、一気に伸也へ迫る。
「長引かせる気はねえ!!喰らえ一撃粉砕………ぐっ!?」
スキルを使うとしたバルトに痛みが走る。
「何だ………?」
痛みの個所を見るとそこには先ほど粉砕したクリスタルが刺さっていた。
「これは………!!」
「クリスタルリバイブ!!」
それと同時に先ほど粉砕したクリスタルがまるで復元するかの様に集まりだした。
「ぐっ!?ぐぅ………!!」
復元するクリスタルの破片にバルトの鎧が傷つけられていく。
(これは………まずい!!)
一つ一つは威力が低いが、積み重なるダメージにバルトが焦る。
「だが、突破出来ない………ほどじゃない!!」
クリスタルの嵐の中、無理矢理前に進むバルト。
「だが、それだけで終わると思うかい?」
その呟きはバルトには聞こえない。
クリスタルの嵐を何とか抜けたバルトだが、その瞬間、地面から大きな爆発が起こった。
「ぐうっ…………!!」
衝撃と共にダメージが響き、鎧が完全に破壊された。
「ナパームボム。踏まれないと発動しないスキルだけどその分威力は凄いだろ?」
「この………!!ボルティックブレイカー!!!」
反撃と言わんばかりに自慢の砲撃魔法を繰り出すバルト。
「悪いね、リフレクトミラー!!」
その瞬間、伸也を守るように巨大な鏡が出現し、その鏡はバルトのボルティックブレイカーをはじき返した。
「なっ………!?」
咄嗟に横に飛び、何とか避ける。
「こいつは………」
そこでバルトは気づく。
「援護、索敵タイプか!!」
味方の援護や索敵を得意とする戦闘スタイル。なのはからプロフェッサータイプと聞いていたがその言葉はすっかりと忘れていたが、それがどう言ったスタイルかは覚えていた。
「だが、こいつはそれだけじゃない………」
罠を得意とするタイプ。こう言った味方の援護につながるトラップを駆使する戦い方をする相手は初めてあり、次の手が読めない。
「押し切れればいいが………」
これまでの手を考えても押し切れるとは思えない。
「しかし………攻撃してきて来ないな………」
攻撃を弾き返したと言うのに伸也からの攻撃が無い。不思議に思いつつも次の攻撃の手を考える。
(奴のトラップは恐らく俺だけに狙って効果を与えられることは無い筈だ。だからこそ奴が本当に嫌がるのは………)
そこまで考えて一つ手を思い付いた。
(策を練るのが得意そうだが、そう何度も上手くいくとは思うなよ………?)
「流石にバレたかな………」
バルトが伸也を不自然そうに見ている様子を見て小さく呟く。
「だが、バレたとしても俺にはどうする事も出来ないけどな………」
そう言って新たな手を考える。恐らくバルトは直接近接戦闘に持ち込もうと近づいてくるだろうと予想していた。
「まあそう読み通りにはいかないだろうけど、気が付いているのなら恐らく………」
「ボルティックランサー!!」
先に動いたのはバルトだ。一番初めに放った雷の槍を再び伸也に向かって放つ。
「クリスタルウォール!!」
そこからはまた同じだ。ボルティックランサーが当たりクリスタルが崩れる。
「まだまだ!!」
しかしバルトは構わず動きながらボルティックランサーを撃ち続ける。
それに対して伸也は同じ様にクリスタルを召喚しては砕かれた。
「さて、いつまでこんな事を続けるつもりだ?魔力切れでも狙ってるのか?」
「そう思ってるのなら俺の勝ちだ!!」
そう言いながら伸也を回るようにボルティックランサーを撃ち続けた。
そして1週した辺りでバルトは止まった。
「どうやら諦めたかな?」
「いいや、俺の作戦勝ちだ。お前の周りを見てみな」
「何を言って………!!」
そこで伸也はバルトの言葉の意味を理解した。
「クリスタルの破片が俺の周辺に………!!」
「これで逃げられないだろ?そして………!!」
そう言ってバルトは飛び上がる。
「上からお前を直接叩く!!これで終わりだ!!!」
そう言ってバルトは動く。真っ直ぐと伸也の方へと向かって行った。
「さあ、俺の一撃を耐えて見せろ!!」
この時点でバルトは勝利を確信した。相手のスキルを利用した完璧な作戦に手ごたえを感じたのだ。
だが、バルトは忘れていた。伸也が仕掛けていない事を………
「残念。俺と知恵比べは愚策だよバルト」
「何を………」
「スキル、シフトチェンジ」
スキルを発動すると、バルトと伸也の場所が一瞬で入れ替わった。
「これは!!」
「さて、せっかく作った檻だけど自分で入った感想はどう?」
「くっ………」
バルトは直ぐに飛び上がろうとしたが、身体が動かない。
「何が………!!」
確認するとバルトの身体をチェーンがしっかりと固定していた。
「チェーントラップバインド。設置型のチェーンバインド。これで空には逃げられくなったな」
「お前………!!」
「そしてもう1つ。同じクリスタルだからってまた同じとは限らないぜバルト」
「なっ………!!」
伸也の言葉と共にクリスタルの破片に変化が現れた。
光だし、その光はどんどん強くなっている。
「これは………!!」
「砕いた分、威力は何倍にもなってるぜ。歯を食いしばれよな。………クリスタルエクスプロージョン!!」
クリスタルの光は最高に輝きそして一斉に爆発を起こし、バルトを大爆発で包み込んだのだった………
「ふぅ………勝てた勝てた!!」
戦闘後、伸也はやりきった顔で笑顔だが、バルトはずっと伸也を睨んでいた。
「そんなに怒るなよ………まあ気持ちは分かるよ。いつもデュエル後、二度と戦わないってよく言われるし………だけど仕方がないだろ?俺、攻撃魔法一切使えないからさ」
「一切使えないだと………!?」
「そう、だから自然とああいう戦い方をしなくちゃいけないのさ。………だけどこのスタイルはチームであれば最高に役に立つ。それは身に染みて感じたろ?」
「………」
その問いにバルトは答えない。だが心はもう決まっていた。
「もう一度聞くよ。バルト・ベルバイン、一緒に頂点を目指さないか?」
「……………ああ、こちらこそよろしく頼む」
こうしてバルトは江口伸也の率いるチームに入る事となるのだった………
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