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ドラゴンクエストビルダーズ:アレフガルドを復活させられてます(新リュカ伝)

作者:あちゃ
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第0章:復活の為の復活編
  1:おはようから、お休みまで、扱き使われる

 
前書き
始めてしまいました、DQB!
皆様のお気に召せばと思います。
どうか感想を宜しくお願い致します。 

 
(時空の狭間)

暗い空間……
何も無い空間……
上も下も、右も左も、時間の概念さえも無い空間……
死者の魂が一時的に通過する為の時空の狭間。

そんな時空の狭間に、自らの意思で訪れた者がいる。
彼女の名はルビス。
元は高位な精霊だったが、ある世界を創造したとして、人々からは精霊神ルビスと呼ばれている。

そのルビスが自らの意思で、死者の魂が行き交う時空の狭間に来たのには訳がある。
ある者の魂を召喚する為だ。
別世界の神、マスタードラゴンからの信頼を大きく得ている者……
それでいて伝説の勇者などでは無く、各世界から引き抜いてはいけない存在では無い。

遙か昔に、一度だけマスタードラゴンの薦めで、自身が創造した世界を救済させる為に、生前の状態で召喚した事がある。
しかし、その者は大国の王だった。

その為、最高指導者不在となった祖国の混乱の責任をとるようにと、別れ際に脅されてルビスもトラウマになっている。
なので、その者が天寿を全うした後、この時空の狭間まで訪れて、魂を探し求めている。

そしてルビスは見つける。
一際輝く力強い魂を……
人々に英雄王と呼ばれ、神よりも崇められていた男の魂を……

「この男は、如何いう構造になっているの? 人間なのに、魂の輝きが大きすぎる」
ルビスは魂の行き交う空間に浮かび誰にとでも無く呟いた。
そして戸惑う。

この男のトラブルさ加減を……
さらに思う……
そのトラブルさ加減をも凌駕する程の能力を!






(闇の中)
リュカSIDE

………………死者も夢を見るのだろうか?
少なくとも俺は見ている。
死んだはずの俺だが、目の前には知らない光景が映し出されている。

『予は王の中の王、竜王だ』
目の前の変なオッサンは、自らを竜王と名乗り高圧的な態度で話しかけてくる。
だが俺に話しかけてる様には感じない。では誰に?

『ロトの勇者****よ……』
ロトの勇者?
もっと大きな声で喋れよ。名前が聞き取れなかったぞ。

『予の仲間になるのなら、世界の半分をお前に分け与えよう。如何だ……予と共に、このアレフガルドを支配しようではないか!』
アレフガルド?

アレフガルドって、あの闇の世界だった場所だろ。
あの世界を支配……しかも半分だけ支配して、何が楽しいってんだよ!?
悪の権化だったら、もっと気の利いた取引条件を持って来いよ。
こんな条件で“うん。半分頂戴☆”なんて言う奴はアホだ!

『竜王よ、その取引に応じようぞ!』
ええええぇぇぇぇ!!
ちょ、ちょっと待て待て待て!

『ふはっはっはっはっ! よろしい、では世界の半分をお前にやろう……闇の世界をな!』
ほれ見ろ馬鹿!
真面に取引する気なんてねーんだよ!

これ誰の夢だよ!?
何処の馬鹿の夢を見せられてるんだよ!?
って言うか、何なんだよこの状態は?

俺、死んだよね!?
家族に看取られて臨終しましたよねぇ?
ティミー達も涙流して送ってくれたよね!

「起きなさい……リュカよ起きなさい」
今度は誰だ、死者に“起きろ”と命じる馬鹿は?
とは言え、この不愉快な状態を説明させたいから、起きる事にしよう……

「目覚めましたかリュカ」
「……」
「如何しましたか?」
「……」

だるい……
何でこんなにだるいんだ?
やっぱり死者だから?

「リュ、リュカ……?」
薄暗く、ハッキリと周囲が見えない空間で、またどっかの馬鹿が俺を呼ぶ。
聞き覚えのある女の声だ。

この声に該当する人物は2人居る……
一人は俺の母、マーサだ。
もう一人は……

「お前ルビスか?」
「げっ!? き、記憶があるのですか?」
「お前何言ってんの? お前が俺を名指しで“起きなさい”と言ったんだよ」
「い、言いましたけど……普通記憶が無いものなんですよ、死者の魂を召還すると」

やはり俺は死者なんだな。
って事は……ゾンビ?
生きた人間の肉を喰らわなきゃダメなのかな? それとも脳味噌かな?

「リュ、リュカ……貴方を復活させたのには理由があります」
「復活? 俺ゾンビじゃないの? バタリアンじゃないの?」
「バタリアンが何なのか解りませんが、今の貴方は生きた人間です」
「良いのそう言うことして? 神様って何やっても良いの?」

「い、色々あるんです! 本来なら、死者の魂に手を加えるなんて禁じられてるんですが、今回は致し方ないんですぅ!」
「“ですぅ!”じゃねーよ貧乳女神。何で俺なんだよ? 天寿を全うし、やっと静かに眠れる……ビアンカの下に行けると思ってたのに、勝手に生き返らせるなよ」

そう……俺よりも10年早くに他界した妻のビアンカに、死後の世界で会える事を楽しみにしてたのに!
こんな事が出来んのならヒゲメガネを脅してビアンカを復活させとけば良かった。
ヤツには沢山貸しがあった事だし、最初は断ってきても最終的にはOKしたはずだ。

「今回の責務を全う出来るのは貴方しか居ないのです。幼き頃から冒険をし強さを身に着け、一国の王として並外れた手腕を持ち、先程夢で見せた者の様な誤った選択をしない者は、貴方しか居ないのです!」

「そんなわけねーだろ。幼い頃から冒険し、王としての手腕を持ち、悪に墜ちないヤツだったら、俺の息子のティミーの方がよっぽど適してる。アイツは正義の勇者様だからな……真面目だし強くて完璧だよ」

「全くその通りだと私も思います」
何だコイツ。
俺を勝手に召喚しておいて、もっと他の候補の方が粒揃いだと認めやがった。

「本心を言えばティミーを召喚したかったのですが、彼の魂はマスタードラゴンの世界で必要な存在なのです。なんせ天空の勇者ですからね……()の世界に悪が蔓延った時には、ティミーの魂を持つ者が世界を浄化する。なので貴方の息子さんの魂は召喚出来ないんです。残念ですよねぇ~」

「全然残念がってねーだろ、お前」
「はい。貴方じゃないとダメなんです……だからティミーを召喚出来なくても、全然残念じゃありません」
あっさり認めやがった。ムカつく女だな。

「ふざけんなよ。何で俺じゃなきゃダメなんだよ!? もう俺を利用するの止めてくれよ」
「人聞きの悪い事を言わないで下さい……利用なんてしてません。ただ貴方には、アレフガルドを復活させる義務があるのです」

「ねーよ、そんな義務! 俺はこの世界の住人じゃねーんだぞ!」
「そうです。貴方はこの世界の住人ではありません。でもあるんです……義務が。と言うより、貸しが!!」
先程までの柔らかい口調がなくなり、かなりキツイ喋り方で俺への貸しがあるというルビス。

「ふざけんなよ。ゾーマ討伐を手伝ったんだ……そっちに借りがあっても、俺に対する貸しは無いだろ!」
「憶えてないんですかリュカ!? まさにそのゾーマを倒したときのことを……貴方がやらかした大きなミスを!」
ミ、ミス?

「憶えてないようですので、私が説明しましょう」
何か何時になく上から目線なルビスだ。
怖いなぁ……俺、何しちゃったんだろ?

「光の玉を憶えてますか?」
「……アレだろ、竜の女王に貰った玉だろ」
股間を指さして『これ?』とか言おうと思ったけど、ものっそい怒られそうな雰囲気だから我慢した。

「その光の玉が最終的に如何なったか解りますか?」
「知るかよ。この世界に置いてきたんだから、行方なんて関知してない!」
「では、貴方が知ってる光の玉の最終状況は如何ですか?」
「え? 俺の知ってる光の玉の状況は……………あ」

「思い出しましたか……そうです、ゾーマの城に放置しっぱなしでした。言い切って良いです、私もあの場に居ましたから……誰も回収してないって事を!」
やべぇ~、今更だけど回収しなきゃ拙いじゃん。

「ちょ、ちょっと待って……」
ヤバいよ……俺等が放置した光の玉を、あの竜王ってオッサンが回収して、世界を滅茶苦茶にしちゃったの?
……でも俺だけの所為じゃないよね!?

「待て待て待て……確かに光の玉をゾーマ城に放置した。それは認めるけど、先刻(さっき)言った様にお前も居たじゃん! 何で俺だけの責任なの?」
そ、そうさ……俺だけが悪いわけじゃない。み~んな同罪さぁ!

「俺も悪いけど、ルビスだって忘れてた訳だし、あの場に居た皆が悪い訳じゃん。なのに俺にだけ罪を着せるのはどうかと思うけどねぇ……」
「えぇその通りです。放置してしまった事は、私を含めあの場に居た全員の罪だと思います」
「で、でしょ!」
だから、同罪としてあの場に居たウルフも召喚して……

「しかし思い出して下さい! 何故光の玉を忘れて、放置してしまう様な状況になったのかを!」
同罪と言う事を笠に、ウルフの召喚を提案しようとしたけど、俺の話を聞く感じになってない。

「本来なら、ゾーマと戦う前に光の玉を使用して、そのまま懐に仕舞い込めば無くす事はなかったのです。ですが今回は直ぐに仕舞い込めなかった。何故ですリュカ?」
「何故って言われましてもぉ~……………あ!」

「そうなんですよリュカ。今貴方が思い出した通り、一度ゾーマに奪われてるんですよ、光の玉は! しかも最終決戦の場でです。如何してそうなったんですかねぇ?」
「ど~してだったけかなぁ~……古い事だから憶えてな~い」

「では私が説明しましょう」
「いや、良いよ……」
うん。怒られてる感がハンパないから説明しないでよ。

「良くないですよ。貴方がゾーマの目の前で、『この光の玉があればお前を殺せるぅ』とか言って見せびらかすから、簡単に光の玉を奪われるんです! 誰だって自分を苦しめる存在を見逃すわけないでしょう」
怒ってる……うん。ものっそい怒ってらしゃる。

「わ、解った……それは俺のミスとしよう。でもさ……この世界の事は、この世界の者に解決させるのが筋じゃね? 異世界の俺を生き返らせてまでってのは……ねぇ?」
そうさ。世界を救済した勇者の……オルテガっちの子孫が居るだろう。

「当然ですよ。私だってそう思って、予言者ムツヘタにお告げを出し、勇者オルテガの子孫を探し出させましたよ。そしてラダトーム王の指示でオルテガの子孫たる者は、勇者ロトとして竜王討伐に出させましたよ!」

「じゃ、じゃぁ……俺を駆り出す必要ないんじゃねぇの?」
「勇者ロトが勇者として責務を全うすれば、私だって貴方なんかを呼び出したくなかったですよ! でも見せたでしょ……先程貴方の夢で、勇者が如何なる選択をしたか、見ましたでしょ!?」

やばいー!!
この神様、泣いてはるぅ~。
“貧乳”とか“役立たず”と言っても怒りもしなかった女神様なのに、相当辛い状況に陥ってるらしい。

「もう世界は滅茶苦茶なんですよ……人々からは“物作り”の能力が失われ、日に日に人口が減少し、取り返しの付かない状況にまで陥ってるんですよ! 勇者とか英雄とかが今更現れて、竜王を滅ぼしたとしても、世界が復活する(元に戻る)まで状況は変わらないとこまで来ちゃってるんですよ!」

「そ、そんな酷いの……?」
「酷いなんてもんじゃないですよ。人々は物作りを忘れた為、集団で生活する事が出来なくなり、木の実やキノコなどの加工不要な食材でしか命を繋げず、滅びに向かって進む事しか出来てないんです!」

本当にヤバそうだな……
俺は目の覚めた、この空間……薄暗い密室しか知らないけど、一歩外に出たら悲惨な現実が待っているのか。
断りてーなぁ……でも泣いてるしなぁ……

「先程も言いましたが、冒険者としての実力を持ち、王としてのリーダーシップを発揮出来、奇抜な思考回路を持った、大きなミスを犯した貴方じゃないとダメなんです! 能力・資質・責任が揃ってるのは、リュカだけなんです!」
嫌だなぁ……(ゼロ)からの出発どころじゃなく、(マイナス)からの復興だろ?

「リュカ……私も出来る限りにお手伝いはするつもりです」
「手伝い~……お前に何が出来んの?」
この状況まで何も出来なかった者に何が出来るってんだ?

「そう言われると思ってました。ですから既に貴方には能力を与えてあります……私達、創造主と言われる者達の能力の一部を……」
「……つまり?」

「はい。つまり、多様な物を作り出す能力です。私達の様に命や魂までは、如何こうできませんが、それなりのアイテムを作り出せば、土壁を煉瓦や石垣に変えたりする事は出来ます。試してみますか?」

「試すって……如何するの?」
「はい。周囲を見回して下さい……白い花びらが3つ落ちてますよね」
言われるがまま、俺は薄暗い空間を見回してみる。

すると先程までは気が付かなかったが、5メートルくらい離れた場所に壁が有り、四方を囲んでる事が判明。
上に視線を向けると大分高い場所に出口らしき穴がある。
でも現状では登れそうにない。

仕方ないので手近な場所に視線を移すと、不愉快な事に墓石が置いてある。
俺の墓か? 生き返らしておいて、こんなモノ見せるなよ。
しかし、その墓の向こう側には、ルビスが言った白い花びらが3つ……

「どっこいしょ……」
オッサン臭い掛け声で立ち上がり、白い花びらの所まで歩む。
……にしても、だるい。

「……拾ったよ、3つとも」
「では、その先にある切り株の作業台へ行って下さい」
だるいんだから1カ所で済ませろよ。

「着きましたら、先程拾った白い花びら3つを加工して、傷薬を1つ作り出して下さい」
「はぁ? いきなり傷薬作れって言われても、如何すれば良いのさ?」
「先程も言いましたが、貴方には神の能力の一部を分け与えてます。物を作り出そうと意識すれば、身体か勝手に作業しますよ」
「何だそれ……人を改造人間にしたのか?」

「改造人間? 違います、神々の力を分け与えたんです!」
解っーた(わーった)解っーた(わーった)……そんなに怒んなよ」
俺は怒られつつも言われた通り傷薬を作ってみせる。

「ほれ、出来たぞ」
「如何ですか、簡単だったでしょ?」
確かに簡単だった。頭の中に勝手にレシピが浮かび、身体が勝手に動いてくれた。

「では早速その傷薬を使用して下さい。“傷薬”と呼ばれてますが、擦り傷・打ち身・捻挫等に効果ありますから。貴方のだるさもとれるはずです」
言われるがまま今しがた作り出した傷薬を身体に塗ったくる。

「あ、ホントだ……だるさが消えた」
「では次に、そこから脱出する方法を学びましょう」
脱出する方法って……お前がここに閉じ込めたんじゃねーかよ!

「周囲を見渡すと太い枝が落ちてると思いますので拾って下さい」
何でこんなに偉そうなんだ、この女は?
とは言え、また泣かれると面倒なので、言われた通りに従いますよ!

「そうしたら切り株の作業台で、その太い枝を檜の棒に加工して下さい」
「“檜の棒”って、素材が檜じゃないとダメなんじゃないの? これ多分違うよ」
「良いんですよ、そう言う名前なんですから! 言ったモン勝ちなんですぅ!」
「“ですぅ!”じゃねーよ貧乳女神」

まぁいい……
取り敢えずは言われた通りに従って、現状打破しなければ。
こんな暗い密室じゃ何も出来ん。

「では檜の棒を手に入れたら、それを装備して土を削り取って下さい」
「つ、土!? そんなの素手でもいけるだろ」
そう言い俺は足下から土を握る。

「ダメです。武器で削り取る事で、その土は土のブロックとして利用できるようになるんですから」
土のブロック?
また何だか訳の解らない事を言われた。

でも仕方ないので言われた通りに従う。
すると、檜の棒を振り削り取った土が、立方体の土のブロックに変化し俺の腰の袋の中へと入って行く。

「な、何だこの袋?」
「その袋は私からのプレゼントです。ある程度の量であれば、どんな物でも入れて持ち歩けます。あぁ、人間や動物はダメですよ」
ルビスのお手伝いその2かな?

「土のブロックを10個程集めたら、それを足場にして出口まで登りましょう」
なるほどね……これでようやく外へ出れるのか。
でも出るの怖いなぁ……

どんな状態なんだ、この世界は?

リュカSIDE END


 
 

 
後書き
何だかんだいってリュカ伝です。
DQBの面白さと、リュカらしさが発揮出来ればと思い頑張ります。 
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