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レモン爆弾

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3部分:第三章


第三章

 そして彼等はだ。笑顔でシオンに言ったのだった。
「こういうのもな」
「中々スリルあるな」
「何だ?爆弾置くみたいだな」
「そんな感じだな」
「自然とそんな気持ちになったな」
 自分でも言うシオンだった。そしてだ。
 レモンを置いた文学のコーナーを見る。そのレモンは。
 ただそこにある。だがそれでもだ。
 何か妙な、神秘的でさえある輝きを見せてそこに置かれている。それを見てだ。
 彼はだ。こう言ったのである。
「満足したぜ」
「よし、じゃあこれで帰るか」
「店員さんに見つからないうちにだ」
「マクドに行ってお祝いするか」
 マクドナルドのことである。
「ハンバーガーとコーラでな」
「そうするか」
「ああ、行こうぜ」
 笑顔で言う仲間達だった。そうしてだ。
 シオン達は満面の笑顔で悠然とだ。大股で歩きながら店を後にした。それはまさに極秘作戦を成功させた特殊部隊のそれだった。ジェームス=ボンドだろうか。
 だが彼等が店を後にして暫くしてからだ。店員達がだ。
 その文学のコーナーに来たところでだ。笑顔で話すのだった。
「やれやれ、またか」
「梶井基次郎の檸檬だな」
「あれ読んでやったんだな」
「これやる人多いんだよな」
「そうそう、京都じゃ特にらしいけれど」
 何もかもわかっている口調だった。
 そしてその口調で話をしながらだ。そのうえでだ。
 本を元に戻しながらレモンを手に取る。その秘密兵器をだ。
 そのレモンを見ながらだ。彼等は話すのだった。
「じゃあこれどうする?」
「後で紅茶飲むからそれに使わないか?」
「ああ、レモンティーか。それいいな」
「いいだろ?じゃあそれに使ってな」
「それでいくか」
 こうだ。そのレモンを見ながら話すのだった。彼等にとってはそんなレモンだった。
 だが作戦を成功させたシオンはだ。仲間達とだ。
 マクドナルドでコーラやバニラシェイクで乾杯してだ。ハンバーガーやチキンナゲットを見ながら言うのだった。
「いやあ、やったなあ」
「ああ、俺達最初は白けてたけれどな」
「見ているうちに何かテンションあがってきたぜ」
「面白かったぜ」
 笑いながら話してだ。そうしてだ、
 祝いの御馳走を食べる。そうしたのだ。
 その主役のシオンはだ。ダブルチーズバーガーを食べつつ述べるのだった。
「じゃあ次はな」
「ああ、何するんだ?」
「梶井基次郎以外の文学も読んだのか」
「今度はどの作品の真似するんだ?」
「永井荷風か?」
 この作家の名前をだ。笑顔で出すのだった。
「四畳半襖のな」
「おい、あれはまずいだろ」
「というかあれ荷風が書いたのかよ、本当に」
「そこんところ色々言われてるだろ」
「それに荷風はちょっとまずいだろ」
「真似したら生活指導の先生が来るぞ」
「ああいうの凄い憧れるんだけれどな」
 思春期の少年としてだ。その立場からの言葉だった。
「あれは駄目か」
「あと谷崎も止めておけよ」
「やっぱり生活指導部行きだからな」
「そうか。じゃあ泉鏡花にするか」
 方向が変わった。それもかなりだ。
「ちょっと次の休み姫路城行って来るな」
「ああ、そうしろ」
「無難にな」
 そんな話をしながらだ。作戦成功を祝う彼等だった。彼等にすれば今回のことは大成功だった。そしてそれからもだ。そんなことをしようと笑顔で話す高校生活だった。


レモン爆弾   完


                    2011・12・21
 
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