歌集「春雪花」
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
195
花ぞ待つ
春を拒みて
そぼ降るは
音もなきにし
細雪かな
花が綻ぶような陽気もあれば、冬に戻るかのような寒い日もある…。
早く暖かな日々が続くようになればよい…草木も人も、皆そう思う晩冬…。
空が陰って寒くなったので、不意に外を眺めてみれば…細かな雪がただ静に降っていた…。
彼が引っ越す前…私と彼が他愛ない話しをした…あの日と同じような細雪…。
地に積もる程のものではないが…心に淋しさを募らせるには充分だ…。
老いしきし
わが身も侘し
夕暮れに
弥生の空も
陰りたるなり
老いてゆく私の躯…こんな私では、到底…彼に振り返ってはもらえない…。
女性だったとしても、この年の差を埋めるものはない…。だったら…なおさら…。
そんな侘しい私を慰めるものはなく…夕方になって曇りゆく三月の空にも、慰める意思は見られなかった…。
所詮…淋しいという思いも、私の勝手と言うことなのだ…。
ページ上へ戻る