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歌集「春雪花」

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 花ぞ待つ

  春を拒みて

   そぼ降るは

 音もなきにし

     細雪かな



 花が綻ぶような陽気もあれば、冬に戻るかのような寒い日もある…。

 早く暖かな日々が続くようになればよい…草木も人も、皆そう思う晩冬…。

 空が陰って寒くなったので、不意に外を眺めてみれば…細かな雪がただ静に降っていた…。

 彼が引っ越す前…私と彼が他愛ない話しをした…あの日と同じような細雪…。

 地に積もる程のものではないが…心に淋しさを募らせるには充分だ…。



 老いしきし

  わが身も侘し

   夕暮れに

 弥生の空も

    陰りたるなり



 老いてゆく私の躯…こんな私では、到底…彼に振り返ってはもらえない…。
 女性だったとしても、この年の差を埋めるものはない…。だったら…なおさら…。

 そんな侘しい私を慰めるものはなく…夕方になって曇りゆく三月の空にも、慰める意思は見られなかった…。

 所詮…淋しいという思いも、私の勝手と言うことなのだ…。



 
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