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Blue Rose

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第三話 変わらない声その四

「別に優花が優花でなくなる訳でもなし」
「僕は僕だね」
「人間でなくなる訳でもないし」
「そんな話はないよね」
「ええ、そもそも姿形が変わっても」
 それでもというのだ。
「心が人間ならでしょ」
「姉さんそのこともいつも言ってるね」
「人間よ、逆に姿形が人間でも心が人間でないなら」
「それで、だね」
「もう人間じゃないのよ」
「姉さんそのことも言うよね」
「実際にそうした人がいるからよ」
 優子は眉を厳しいものにさせて優花に言った。
「世の中にはね」
「頭がおかしな人?」
「そう、シリアルキラーのこと話したことあるわね」
「殺人鬼だよね」
「人をおもちゃみたいに殺していく奴がいるのよ」
 世の中にはというのだ。
「それこそね」
「バラバラにしたりとか」
「切り裂きジャックもそうだったけれど」
 十九世紀のロンドンに現れた連続殺人鬼だ、その正体は今も尚不明であり様々な説が挙げられている。
「あの殺人鬼もそうでね」
「他にもいるんだね」
「本当の化けものがね」
 生物学的には人間であってもというのだ。
「いるのよ」
「姉さんはそのことを知ってるから」
「姿形のことよりも」
「心を見ているんだ」
「そういう風にしているわ、だから優花はね」
 あらためてだ、優子は優花に言った。
「優花なのよ」
「僕の心が僕だから」
「これは仏教の話ね」 
 次に出したのは宗教のことだった。
「医学は科学で宗教とは無縁と思うわね」
「けれどなんだね」
「それはまた違うの」
 こう言うのだった。
「むしろ人の生死に関わるから」
「お医者さんは」
「それはお坊さん、神主さんや神父さんも同じで」
 彼等もというのだ。
「そうした人達が病院によく出入りするしお話もして」
「それでなんだ」
「宗教のことを聞くことも多いのよ」
「宗教とは無縁でないんだ」
「むしろ縁があるわ」
 無縁どころかというのだ。
「医学の世界はね」
「そうなんだね」
「そう、そしてね」
 さらに言う優子だった。
「仏教のお話も聞いてね」
「そこからもなんだ」
「考えていってるの、人間のことを」
 ワインを飲むグラスの手を止めてだ、優子は言うのだった。
「魂が主なのか身体が主なのかね」
「どっちが主なの?」
「医学は身体を扱うわね」
「うん、身体を治すものだね」
「けれど生きているのはどうしてかというと」
「魂があるからなんだ」
「私は魂を見たことはないかというと」
 それはというと。 
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