八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第六十五話 夏の花火その四
「もう降って欲しくないわ」
「そんなになのね」
「そう、普通にね」
「瀬戸内にいますと」
「雪が欲しいのね」
「冬は雪ですね」
小夜子さんは少し切実な感じで詩織さんに問うた。
「そう思っていますので」
「そうなのね、けれどね」
「秋田の人としてはですか」
「降り過ぎて嫌になるわよ」
「そこまでなのですね」
「実際にね、神戸にいたら少しは雪が減りそうだから」
それでというのだ。
「凄く楽しみよ」
「そこまでなのですか」
「毎年冬なったらメートルで積もるから」
「東北はそうですね」
「そう、秋田だけじゃなくて」
それこそというのだ。
「青森も福島も岩手もね」
「何処もですね」
「宮城もね」
まさに東北全県がというのだ。
「そうなの」
「そこが本当に違いますね」
「ええ、瀬戸内とはね」
「だから夏も涼しくて」
「あまり泳がないわ」
「海でもプールでも」
「そうなのよ」
小夜子さんに真剣な面持ちで話す。
「むしろ冬ね」
「ウィンタースポーツですね」
「スキーとかスノーボードとか」
そうしたスポーツをというのだ。
「そういうのをしているわ」
「そうなりますね、やはり」
「そう、やっぱりね」
「冬ですね、東北は」
「そのイメージ通りよ」
「奈良も寒いですが」
ここでだ、その奈良県民の円香さんも話して来た。
「東北程積もりませんわ」
「そうよね、奈良も寒いっていうけれど」
「盆地ですから確かに冬は寒いですわ」
その通りだとだ、円香さんは詩織さんに答えた。そうした話をする間も花火を見ている。それも皆がそうしている。
「ですが東北程は」
「雪もよね」
「あまり積もりませんわ」
「積もる回数も少ないでしょ」
「宇陀の辺りは違いますが」
「室生寺とかある」
「あの辺りは盆地のさらに盆地にありますので」
まさに二重だった。
「雪が積もる回数もその積もり方も違いますが」
「円香ちゃんは高田の娘よね」
「奈良県高田市です」
「そこは、なのね」
「そこまでは積もりませんわ」
その宇陀市よりはというのだ。
「積もるまで降るのは年に一度か」
「少ないわね」
「市街地ですとすぐに溶けますわ」
「車が通って人も多くてそういった熱気で」
「そうなっていますわ」
「ううん、そういうお話聞いてたら」
しみじみとしてだ、詩織さんは言った。
ページ上へ戻る