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魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~

作者:かやちゃ
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第2章:埋もれし過去の産物
  第32話「集合」

 
前書き
優輝の攻撃はなぜU-Dに通じたのかと言うと、所謂防御無視攻撃です。
U-Dは某ドラ〇エで言う所のメタル系並の防御力を持っているため、防御力に関係なくダメージを与えられる“徹”を使う事で、ダメージを与えれます。(司達はそう言う技を使ってなかった。)

...あ、今更ですけど、U-Dは普段は敬語で、白兵戦モード(赤色になった時)は敬語じゃなくなります。 

 








  昔々、とある国に、一人のお姫様とその騎士様がいました。

  お姫様はとても可愛らしく、そしてとても優しい子でした。

  騎士様はそんなお姫様に心から仕え、ずっと支えてきました。

  しかし、ある日、お姫様は強大な災厄に取り込まれてしまいます。

  騎士様は慌ててお姫様の下へ駆けつけましたが、既に他の騎士達は倒れていました。

  お姫様は災厄に囚われながらも騎士様に言います。

   ―――あなただけでも逃げてください...!

  しかし騎士様はそんなお姫様の願いを跳ね除けます。

   ―――私は貴女の騎士だ。絶対に助け出して見せる!

  そう言って、騎士様はお姫様を救うべく、災厄へとたった一人で立ち向かいました。

  何人もの騎士を倒した災厄との戦いは、長きに渡りました。

  城は崩れ、街も壊れ、大地は荒れ果てて行きました。

  それでも、騎士様は決して諦めず、お姫様助けようと戦い続けました。

  一体、どれほどの時間戦い続けたのでしょう。

  国そのものがなくなりかけた時、ついに騎士様は災厄を打ち倒しました。

  お姫様も助けだし、二人は仲良く国の再建に取り組みました。



  人々はお姫様を助けた騎士様の事をこう呼びます。

   ―――“忠義を貫きし英雄”....と。

  お姫様はその事を聞いて、騎士様に問います。

   ―――あなたはいつまでも私に仕えてくれますか?

  騎士様は答えました。

   ―――もちろんです。我が忠義は、貴女のために。

  やがて、国はかつての賑やかさを取り戻し、二人は平和に過ごして行きました。





                       古代ベルカおとぎ話全集より一部抜粋













       =緋雪side=





「お兄ちゃん.....!」

  私は、モニターに映るお兄ちゃんの戦いを、祈るようにして見つめる。

  司さんが撤退した後、お兄ちゃんは自身も撤退するための隙を作ろうとしたのか、敵である少女へと攻撃を仕掛けた。
  でも、生半可に攻撃が通じたのがいけなかったのか、今は完全に防戦一方だ。

「早く!彼の援護を!」

「ダメよ!」

  クロノさんが援護するように指示を出そうとして、椿さんが止めます。

「何のために優輝は一人で出たと思っているの!?それに、助けに行く者が相手と戦える強さでないと被害を増やすだけよ!」

「っ......。」

  そういう椿さんも、助けに行きたいのか、手が握りしめられており、見るからに悔しそうな顔をしていた。
  ...お兄ちゃんが私達を置いて行った理由は分かる。
  ヴィヴィオちゃんとアインハルトさんはまだ実力がよくわかってないし、私は自分でも分かる程、戦闘技術が低い。お兄ちゃんにもよく負けるし。
  椿さんと葵さんは、空中戦に慣れていないから危険だし。

  ....だからこそ、悔しかった。

「っ....!今の爆発...推定SSSランクオーバー!!おそらく、トリプルブレイカーに匹敵します!」

「なっ...!?それほどの爆発を至近距離で!?」

「お兄ちゃん!!」

  映像で、お兄ちゃんが創造した剣と槍に細工をして相手にぶつける。
  すると武器群は大爆発を起こし、お兄ちゃん諸共相手を巻き込んだ。

「優輝君の反応....健在!無事です!」

「っ....よかった...!」

  爆風から弾かれるようにお兄ちゃんは姿を現す。
  確かに、爆風でだいぶダメージを受けているけど、何とか助かったみたい。
  そして、お兄ちゃんはすぐに撤退しようとして....。

「なっ...!?無傷だと!?」

「そんな...!あの爆発を喰らったのに!?」

「..........!」

  クロノさんとエイミィさんの声をバックに、私は頭が真っ白になる思いでモニターを見続けるだけだった。
  お兄ちゃんが、危ないのに....!

「....大丈夫。」

「...司、さん....?」

  お兄ちゃんの危機で私の頭が真っ白になったのに気付いたのか、司さんが私に優しく語りかけてくる。

「...志導君は...優輝君は、きっと大丈夫。...信じてあげて...。」

「.....うん。」

  司さんも、不安なのだろう。
  私を励まそうとする手が少し震えていた。
  ....でも、少し安心した。

「(....頑張って、お兄ちゃん....!)」

  きっと無事に帰ってきてくれると、私はそう信じ続けた。







       =優輝side=





「ぐっ....く....ぁあっ!」

  魄翼と魔力弾の攻撃に、僕は翻弄される。

「く...そ.....!」

  隙がない。逃げられない。攻撃も通じないから怯ませる事もできない。

「万事休すじゃねぇか....!」

  爆発に巻き込まれたのと、その後の攻撃のダメージも効いている。
  今はジリ貧とはいえ凌げてるけど、このままだと...!

「ぐっ...!っ、しまっ....!?」

「終わりだ....。」

  逸らすのに少し失敗し、体勢を崩す。
  さらにそこへ魄翼の手が背後から襲い掛かり、僕は魄翼に握られた状態になってしまった。

「ぐ....が...ぁ.....!」

「....その少ない魔力で、よくここまで戦ったと、褒めてあげたいくらいだ。....でも、その程度では、私を止める事など....不可能だ。」

「ぐっ.....!」

  全魔力を身体強化に回しても、びくともしない。
  まずい...!このままだと握り潰されてしまう....!

「リ、ヒトぉ....!カートリッジ、装填されている奴全てロード!!」

〈っ...!カートリッジ、全弾ロード!!〉

  体への負担だとか、そこらへんを考慮しない判断だが、そうでもしなければ抜け出せないとリヒトも判断したのだろう。素直にカートリッジをロードした。

創造(シェプフング)....叩き斬れぇええええええっ!!!」

「っ...!」

  斧を創造し、それを思いっきり僕を捕らえている魄翼に振り下ろすように操る。

「無駄だ。その程度では......?」

「まだ、まだぁああああっ!!」

  それでは斬れないので、巨大な剣を少し上に展開し、射出する。

「(...ダメだ!創造して射出しただけの武器じゃ、斬れない!)」

  だが、それも無駄だと悟る。

「...時間稼ぎのつもりか。」

「ぐ...がぁああっ!!?」

  少し強く握られ、身体強化した体でも悲鳴を上げる。

「(こう...なったら.....!!)」

  悲鳴を上げる体と頭を無視して、並列思考(マルチタスク)をフル活用する。
  視界がスローになり、御神流で言う“神速”の領域にも入る。

「(大気に漂う魔力は僕の魔力が切れない程多い。それを活用して、空間を遮断すれば...!)」

  思い描くは、かつて司さんと緋雪の模擬戦で、司さんが使っていた()()魔法。

「.....ん?」

「“模倣(ナーハアームング):スペース・カットオフ”!!」

  大気中の魔力を導き、まるでガラスなどのように形を整え、術式を組む。
  そして、僕を捕らえている魄翼に照準を合わせ、術式を発動した。

「なっ.....!?」

「がはっ....はぁ、はぁ....!」

  空間を一時的に遮断する司さんの魔法。
  それは、魄翼も一瞬とはいえ遮断できる程だった。

「(おかげで、抜け出せた....!)」

  しかし、あまり戦況は変わらない。
  今のはU-Dも動揺したが、素直に転移で逃がしてはくれないだろうし、戦況が圧倒的不利なのは変わらない。...正直、最悪を避けただけだ。

「ぐ....がふっ...!く...そ.....!」

  既に体はボロボロ。立っているだけでもキツイ...。

「...最後のには驚いた。だけど、これで終わりだ。」

  U-Dが魄翼を振り上げ、僕を叩き落そうとしてくる。
  逸らす、もしくは回避しようとするも、体が動かない。

「(...まだ、まだ終われない....!)」

  それでも、無理矢理にでも体を動かそうとした。

  その時....。

「っ!?......!」

     ―――ドォオオオオオン!!

「えっ....?」

  U-Dが何かに気付き、振り下ろそうとした魄翼を盾のように構える。
  すると、そこへ赤い砲撃魔法が直撃する。
  そして、僕は横か飛び込んできた水色の閃光に抱えられる。

「....危機一髪....という所ですか。」

「いやー、ギリギリだったよー。」

  U-Dから離れた場所で、僕は解放される。
  二人の少女の声が聞こえ、そちらを見れば、見覚えのある人にそっくりな少女達がいた。

「....二人は、一体....?」

「...今はそれどころではありません。...レヴィ。」

「スピード重視で攻撃に当たらないように...だよね?」

「...できますか?」

「もっちろん!!」

  そう言って、レヴィと呼ばれた水色の髪の子はU-Dの方へ凄まじい速さで飛んで行った。

「..さて、ここからレヴィが時間稼ぎをする間に隙を作り、転移魔法で撤退するという事をこなさなければいけません。」

「そうだな...。転移魔法、使えるのか?」

  今は緊急時故に、何も聞かずに協力する事にする。

「使えます。...しかし、隙を作る事はできません。」

「...なら、僕が隙を作るのか.....。」

  確かに、今この場には僕しか隙を作る事ができる人物はいない。

〈マスター!それ以上は体が...体が持ちません!〉

「だからって、何もしなければここで死ぬだけだ...!」

  共闘者が現れた事により、リヒトが自身の体を考慮するように言うが、僕はそれを断る。

「(幸い、防御を脆くするための術式は組める。後は、魄翼をそこまで拮抗せずに貫ける魔法があれば....!)」

  要はダメージが入る、もしくは怯むような魔法を当てれば、その隙に水色の子は離脱し、隣の茶髪の子は転移魔法を発動させれるようになる。
  後は僕がその魔法を当てればいい話なんだ。

「リヒト、グリモワールを!」

〈マスター...!....わかり、ました...。〉

  リヒトから悲痛な声が聞こえるが、今はこの窮地を脱しなければならない。

「っ...!(これなら...!)」

『ひ~ん!シュテるん!もう避けきれないぃ~!!』

「『耐えてくださいレヴィ。もう少しです...!』」

  一つの魔法が目に入り、両手を前に突きだす。
  あの子も限界だ。さっさとしなければ...!

「絶望を呑み込みし極光よ!黄昏に染めよ!」

〈“Twilight spark(トワイライトスパーク)”〉

  黄昏を連想する色の砲撃魔法が、U-Dへと迫る。

『わっ!?あわわわ...!』

  時間稼ぎをしてくれた子もそれに気づき、無理矢理U-Dから離れる。
  ...あのスピードなら逃げ切れるしな。

「今!」

「『レヴィ!こっちです!』」

  魄翼を貫く事ができ、そのまま防御魔法を削れる魔法としてこの魔法を使ったが、正直魔力がスッカラカンだ。大気中の魔力とカートリッジで増加した魔力も使い果たした。
  ぶっちゃけ、転移するまでの飛行魔法分の魔力しか残っていない。

「3...2....1...。」

「うわぁああああ!?もうこっち来たよ!?」

  レヴィと呼ばれる子が叫びながら転移魔法の範囲内に入る。
  それと同時に、やっぱり無傷なU-Dがこちらへと魄翼を伸ばす。
  間に合うか....!?

「....0!!」





「―――っ、はぁっ....!!?」

  魄翼の爪が目の前まで来た瞬間、間一髪で転移魔法が間に合う。
  放り出されるように僕は転移先で倒れこむ。

「お兄ちゃんっ!!」

「うごふっ!?」

  そこへ、緋雪が飛び込んできた。
  ちょ、鳩尾にクリーンヒットした....!?

「お兄ちゃん....!よかった...!よかったよぉ....!」

「緋雪....。」

  ずっと心配していたのだろう。緋雪は泣いていた。

「シュテル!レヴィ!」

  すると、他の二人に駆け寄る少女がいた。

「王さま~!やっと会えたよ~!」

「まったくです。迷子を捜すのは苦労するのですよ?」

「直接会って開口一番にそれか!?シュテル!」

  ....全員が全員、僕の知ってる人たちにそっくりなのは気にしたらダメなのだろうか?

「早く医務室の手配を!....まったく、なんて無茶をするんだ君は!!」

  素早く指示を出した後、僕に対して叱ってくるクロノ。

「...はは、返す言葉もないな...。」

「....しかし、よくあの強さを相手に帰ってこれたな...。」

「...“白兵戦モード”とやらになった時は、死ぬかと思ったがね。」

  しかもあれで本気でないときた。チートすぎるだろ...。

「....色々と情報を整理したい....が、一度君の治療をしてからの方がいいだろう。」

「自分の魔力で治癒を続けてるけど...その方がいいな。」

  さすがにダメージが大きすぎる。
  気を抜けばそのまま気絶してしまいそうだ。







「....ふぅ、なんとか回復したな。」

  翌日、僕は魔力と霊力を治癒に回し、僕はだいぶ回復した。
  今から会議室にて現場にいた者達で情報を整理するようだ。
  ちなみに、アースラの戦闘員が闇の欠片をできるだけ抑えたり、交代制にして皆も仮眠を取っておいたようだ。
  まぁ、深夜だったからな。仮眠は取っておくべきだ。

「お兄ちゃんおはよー....。」

「...相変わらず朝に弱いな...。」

  それなりに時間は経っているのだが、緋雪はまだ寝惚けていた。

「...あれ?緋雪、その目....。」

「んー...?....あっ。」

「どうしたんだ?」

  緋雪の目には、泣いたような、涙を流した跡があった。

「な、なんでもないよ。」

「...そうか?」

  何かあるとしか思えないが....。

「まぁ、今は事が事だから、気にしないでおくが...。」

  今は会議に集中するべきだからな。

「.........。」

「(...ん...?)」

  今、一瞬緋雪が憂いを帯びた顔をしたような...。

「....では、一度情報を整理しよう。」

  ...っと、会議に集中せねば。

「ただいま偽物が大量発生しており、リインフォースが言うには闇の書の闇の残滓との事だ。そして、異世界からの渡航者と未来から飛ばされてきた者。そして、マテリアルと名乗る彼女達がいる。」

「偽物は基本的にオリジナルより弱く、性格も違っていたりします。」

「言わば、劣化コピーって所だな。」

  既に分かっていたらしい情報を改めて言うクロノ。

「そこで、偽物の被害が出ないように結界を張ってから手分けして情報を集めたが....まずは異世界と未来から来た者達などに自己紹介してもらおうか。」

  そう言ってクロノがこちら側...管理局側ではない人が座っている方を向く。
  それにつられて他の管理局の人達も僕らを見てくる。

「アミティエ・フローリアンです。えっと...“エルトリア”と言う世界から来ました。親しい人は“アミタ”と呼びます。」

「...キリエ・フローリアンよ。名前から分かると思うけど、私達は姉妹で、私が妹よ。」

  まず、おそらく異世界から来たと言われている二人が自己紹介をする。
  ...映像でチラッと見た時はボロボロで体が機械なのか、何か見えていたけど...直したのか?全くそんな様子が見られない。

「(....で、嫌な予感がすると思ったら案の定...。)」

  解析魔法で状態をほんの少しだけ覗く。

   ―――状態、“魅了”

「(また織崎か....!)」

  やはり織崎に魅了されていた。

「(....今はそれどころじゃない、気にしないでおこう。)」

  とりあえず今起きている事件が最優先だ。

「彼女らは“ギアーズ”と呼ばれる...まぁ、機械を使った体らしく、先程の戦いで体の一部が欠損していた。...まぁ、何とか直す事はできたが。」

「だからと言って、会話したから分かると思うけど、それ以外はほとんど人間と変わりないよ。...まぁ、そんな無粋な事を考えてる人なんてここにはいないだろうけど。」

  機械だから人間じゃないってか?確かに、ここにいる人はそんな事考えないだろう。

「....次は私達ですね。私はマテリアルS、“理”を司っています。星光の殲滅者シュテル・ザ・デストラクターと言います。シュテルと呼んでください。」

「ボクはマテリアルL!“力”を司っていて、雷刃の襲撃者レヴィ・ザ・スラッシャーって言うんだ!よろしくね!」

「我はマテリアルD、闇統べる王ロード・ディアーチェぞ。もちろん、マテリアルの中では“王”を司っておる。」

  次に、なんか2Pカラーみたいな三人。
  解析を少しかけるとどうやら魔法プログラムによるシステム構築体のようだ。

「彼女らは見ての通り、どうやらそれぞれなのは、フェイト、はやての姿を元にしており、適性魔法の傾向も似ている。最初は偽物と同じようなものだと思われていたが、強さは元にした人物に匹敵...いや、それよりも強い。」

「彼女達はヴォルケンリッターと同じように魔法プログラム生命体みたいだね。」

  エイミィさんもそこら辺は分かっているのか、ちゃんと説明しておく。
  ...それにしてもオリジナルより強いのか。

「...最後は僕らか。...今から四か月くらい未来から来た志導優輝だ。私立聖祥大附属小学校5年生...いや、この時間はまだ4年生か。...つまり司さんと同年代だ。」

「私は志導緋雪。お兄ちゃんと一つ違いで...なのはちゃん達と同じ年だね。」

  まずは僕ら。僕はともかく緋雪は少しとはいえ知られていたらしいな。

「私は草野姫椿。...優輝の使い魔よ。」

「あたしは薔薇姫葵!ユニゾンデバイスだよ。」

  次に椿と葵。
  予め、式姫や霊力の事は伏せておくように言っておいたからこういう自己紹介になっている。
  椿は耳と尻尾があるから使い魔の方が分かりやすいしね。

「えっと...13年だっけ?それくらい未来から来た志導ヴィヴィオです!」

「同じく13年先から来たハイディ・E・S・イングヴァルトです。アインハルトとお呼びください。」

  最後にヴィヴィオとアインハルト。
  ...もちろん、ヴィヴィオと僕らの名字が同じだから全員に驚かれた...。

「あー、ヴィヴィオは未来での僕の養子らしい。」

「....との事だ。まぁ、未来の事はあまり詮索するな。」

  一応、簡潔に説明しておく。

「....では、分かった情報を整理していこう。...と言っても、どうやら情報については僕らよりも彼女達の方がよく知っているようだ。」

  そう言ってクロノはマテリアルと呼ばれる三人の方を見た。

「...まず、あなた達の言う“偽物”ですが、あれらは通称“闇の欠片”と言います。どういったモノかは先程言った通り、闇の書の残滓です。そして、闇の欠片は人々の記憶から姿形を作りだします。“闇”と言うだけあって、大抵は負の感情を増幅させた性格をしていますね。」

  シュテルと呼ばれる子が説明する。
  ...大体、僕らが分析した情報と同じだな。

「次にU-D...先程戦闘を行った相手です。識別名“U-D(アンブレイカブル・ダーク)”、私達は“砕け得ぬ闇”と呼んでいます。彼女は私達マテリアル...紫天の書が闇の書に取り込まれる以前から闇の書の中におり、私達でも詳しく分かっていません。」

「なにやら重要な事項があったはずなのだが...如何せん、そこらの記憶がちと曖昧だ。」

  紫天の書...一部僕らには分からないキーワードがあるな。
  後で聞くか、気にしない事にしよう。
  ...それにしても、彼女達にもU-Dについてはよくわからないんだな。

「....U-Dについては僕からも。彼女の名前は“ユーリ・エーベルヴァイン”。体内にロストロギアを保有しており、ロストロギアの名前は“永遠結晶(エグザミア)”。効果は無限に魔力を供給するらしい。それと、彼女は半分暴走した状態だった。多分、エグザミアが関係してるのだと思う。」

  僕からも情報を提示しておく。

「ユーリ....そうか、ユーリか!思い出したぞ!礼を言うぞそこの男!」

  するとディアーチェと言われた少女が何かを思い出したようだ。

「彼奴は我ら紫天の書のマテリアルの盟主だ。かつて、彼奴になぜか掛けられていた封印が解けかけた時、その魔力の多さに我らは彼奴を盟主と定めた。尤も、魔力は多くとも暴走寸前だったが故に、咄嗟に全力で封印を修復したがな。おそらく、その後であろう。闇の書に取り込まれたのは。」

「封印されているため、闇の書に取り込まれても何の反応を示さなかったのでしょうね。」

  ディアーチェとシュテルがそれぞれそう言う。
  ...気になる事が次から次へと出てくるんだけど...これ、全部解決するか?

「ちょっと待ってくれ!あまりに一遍に分かりすぎて整理が追い付かない!」

  そこでクロノがストップを掛け、一度整理する。

「そのU-Dは“ユーリ・エーベルヴァイン”と言う名前で、君達マテリアルの盟主。そして体内にロストロギアを保有しており、ロストロギア名はエグザミア。効果は無限の魔力供給で、今は暴走している...と。これでいいのか?」

  クロノが情報を纏めて新たに言い、確認を取る。

「...一つだけ訂正を。私も先程思い出した事ですが、無限の魔力供給は特定魔力の無限連環システムによるものです。」

「...とのことだ。...ところで、君達が現れたのは暴走を止める事が目的なのか?」

「ふん、今はな。本来なら、目覚めた時に彼奴の力を我が扱い、この世界を闇に染めてやったものだが、ちと彼奴の力は規格外すぎる。」

  なんか怪しい事を言った気がするけど...。

「...二人の目的は?」

「私はただ妹を連れ戻しに来ただけですが....。」

  ギアーズと呼ばれる二人の目的も聞くクロノ。
  ...姉の方は妹を連れ戻しに来ただけのようだ。

「....私達の故郷、エルトリアは“死触(ししょく)”と言う現象で滅びかけてるの。水と大地は腐敗し、人が住める場所はもう僅か...。でも、私達の生みの親であるグランツ・フローリアン博士はずっと死触を何とかするための研究をしていたの。そして、その過程で生まれたのが私達“ギアーズ”。」

  ...彼女達の故郷も随分切羽詰っているんだな...。

「....詳しい事は省くけど、“砕け得ぬ闇”の無限連環システムに目を付けた私はそれさえ手に入れれば死触を祓えると思って、エルトリアから来たって訳。」

「....そうか....。」

  目的を一通り聞き終わって、クロノは難しい顔をする。
  多分、エルトリアの方も何とかしたいが、今は砕け得ぬ闇をどうにかしないといけないからそこら辺で悩んでいるのだろう。

「エルトリアは時間も違う異世界。特殊な装置を使ってそこからこの世界へ飛んできた際に、おそらく未来の人達は巻き込まれてしまったのだと思うわ。....ごめんなさい。」

「...別にいいですよ。時間を越える....って言うのは驚きましたが。」

  僕がいいと言うと、どうやら緋雪や他の皆も別に許すようだ。
  しかし時間も違う異世界か...。相当大がかりな装置なんじゃないのか...?

「......まとめると、今回の偽物...“闇の欠片”の原因は闇の書の残滓と言う訳で、直接的には“砕け得ぬ闇”などとは関係ない。そして未来から飛ばされた原因は二人のエルトリアと言う世界から飛んできた際に巻き込まれた...と言う事か。」

  大まかにはそんな感じだろうな。

「ちょお、待って。やとしたら、なんで砕け得ぬ闇は暴走してるんや?その話を聞いても、原因が分からへん。なんや、現れた時は“制御ができない”とか言ってた気がするけど...。」

「...その通りだ小鴉。彼奴は封印されていたのは、おそらくエグザミアを制御できないからだろう。彼奴自身、エグザミアの暴走を抑えようとはしているようだがな。」

  半暴走と言うのはそこから来ているのだろう。

「....さて、大体の事は分かったから、次はU-Dの対策を考えたいと思う。....まず、具体的なスペックを知りたいが...。」

「こちら側で分かった事は、“魄翼”と呼ばれる翼のような魔力の塊で様々な攻撃と強固な防御が行えること。貫通力の高い魔法でも貫けない防御魔法。圧倒的魔力量。....そして、AAAランク級の魔導師三人がかりでも一切敵わなかったという事実だけ。...あのトリプルブレイカ―並の威力を喰らって無傷だったしね...。」

  一番の問題点はそこだな。
  あの圧倒的殲滅力と防御力。...さらにはあれで全力じゃないと来たもんだ。

「...先にやばい点から言っていいか?...僕が最後にやられそうになった時、まだ彼女は70%の強さらしい。彼女自身がそう言っていた。」

「なっ....!?」

  ....あー、うん。驚くようなぁ...当然。
  あれだけ圧倒的強さを誇っておきながら全力ではないんだから。

「...優輝、あなたは最後まで戦って、その観察眼でどこまで分かったかしら?」

「....そうだな。まず、魄翼による攻撃は並大抵の防御魔法じゃ絶対に突き破られる。どこまで強固な防御魔法なら耐えれるかは分からないが...。そして、防御力の方だが...これはSランク級以上の砲撃魔法などなら、通じる可能性はある。」

「S級以上....最低ラインが恐ろしく高いな...。」

  椿の言葉に、僕が思ったスペックを述べるが、自分で言っておいて最低ラインが高すぎると思う。....でも、これだけじゃないんだよなぁ...。

「....問題は防御魔法の方だ。...あれ、純粋な火力だと僕がやった武器の爆発ぐらいの威力を出さなきゃ、通用しない。....通用しても“ちょっと痛かった”だし...。」

「あのトリプルブレイカ―並の威力でか!?...いや、むしろ無傷じゃない事を喜べばいいのか..?」

  そう言えばさっきトリプルブレイカ―並の威力でも無傷とか言ってたっけ?
  ....一応、効いてはいるんだけどな...。

「あの防御魔法を破るには、魄翼をどうにかしてから防御魔法の術式を壊さなければ無理だろう。僕がやったあの爆発は多対一には向いてないし。」

  尤も、あの威力を出そうとすると必然的にあれぐらいの爆発は起きるだろうけど。

「....この中でU-Dの防御を破れると確信できる術を持っている奴は何人いる?」

  クロノの言葉に、僕、緋雪、ヴィヴィオ、アインハルト、フローリアン姉妹、織崎が手を挙げる。
  ....結構いるな...。

「...優輝は戦っていたのを見ていたから分かるが....他の皆は一体どんな手段だ?」

「私は防御魔法とか関係なしに内部を攻撃できるよ。」

  ...そういえば、緋雪の“破壊の瞳”はそんな事もできたな。

「私はパパに教えて貰いました。防御魔法に適した破り方を!」

「同じく私もです。防御を徹す攻撃も少々。」

  ヴィヴィオとアインハルトは未来の僕からそういった術を教えて貰ってたようだ。
  ....だがアインハルト。防御を徹す攻撃はあまり効果ないんだよな...。

「私達はほぼ自爆攻撃ですが、威力には自信があります。」

「...悪いが、そういうのは却下だ。できれば犠牲を出したくないのでな。」

  自爆攻撃は例え自身が戦闘不能にならなくても相当危険な技だ。
  クロノの言うとおり、却下しておくべきだな。

「....シールドブレイクと併用した強力な斬撃で破れるはずだ。」

「...なるほど。他にいないか?」

  織崎の案を聞いた後、もう一度クロノは聞き直す。
  ...が、さすがにいないようだ。

「...倒すのは厳しいな。トリプルブレイカ―でも少々のダメージしか与えられなく、しかも全力でないと来た。どうすれば....。」

「その事ですが執務官。我々に秘密兵器があります。」

「秘密兵器!?ボク聞いてないよ!?なんなのなんなの!?」

  シュテルの言葉にレヴィが反応する。
  ...って、仲間同士なのに聞かされてなかったのかよ。

「我らマテリアルは彼奴を盟主と定めたのだぞ?暴走する事も承知しておる。....なら、それを弱体化させるワクチンプログラムぐらい作っておるわ。」

「ワクチンプログラム...どういった物なんだ?」

  ディアーチェの言うプログラムについてクロノが聞く。

「ディアーチェの言った通り、弱体化させるためのプログラムです。かつて暴走の一端を見た時から少しずつプログラムを組んでおきました。...これがその専用カートリッジです。」

「カートリッジか...システムを組んでいる人にしか渡せないな...。」

  シュテルがそう言って机に置いたカートリッジを見てクロノが唸る。

「そのカートリッジはいくつあるんだ?」

「3ダースほどは作り置きしてあります。...ただ、重複させる事はできないので効くのは一回だけです。」

「36個...とりあえず、カートリッジシステムを持っている者は一つずつは持っておいてくれ。」

  いや、勝手に借りる発言してるけど、いいのか...?

「どうぞ。使う人数は多い方が確実なので。」

「(あ、いいんだ。)」

  ディアーチェの方はなんか渋々と言った感じだけど。

「....とりあえず、ワクチンプログラムで弱体化させ、そこを火力のある者で攻撃、後は....。」

「我が暴走するシステムを上書きすれば沈静化できる。」

「...と言う訳だ。作戦は後で伝える。一端休憩してくれ。」

  クロノのその言葉に、場の雰囲気が少し楽になる。

「(厄介な事になって来たな...。)」

  ....それに嫌な予感もする。気を引き締めなければ....!








 
 

 
後書き
一人が囮になり、一人が怯ませ、一人が転移魔法を使うなら、司達の時も同じように行けると思いますが、あの時ははやてなど戦闘不能になった人を保護していたので無理でした。

....あれ?いつもより長くなってる....? 
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