キングー
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第一章
キングー
ティアマトは決意した、そして彼女の周りにいる神々に対して告げた。
「わらわは世界を滅ぼす」
「この世界をですか」
「そうされるのですか」
「この世界はあまりにも騒がしくなった」
それ故にとだ、他の神々よりも遥かに巨大な身体から言うのだった。その身体はまさにこの世界と同じだけのものだった。
「それでじゃ」
「元の様にですか」
「静かな世にされますか」
「わらわに従う者達はよいが」
周りにいる神々はというのだ。
「エアやマルドゥク達はじゃ」
「今神々の主の座にいる」
「あの者達は」
「滅ぼす」
そうすると宣言するのだった。
「夫の恨みもあるしのう」
「アプスー様の」
「あの方のことも」
「夫も同じ気持ちだった」
世界に神々が増えそれだけ騒がしくなったことに耐えられなくなっていたのだ。世界は最初彼等二人と仕える神であるムンムーの三柱しかいなかったからだ。
「それで世界を滅ぼそうとしたが」
「眠っている隙をでした」
「衝かれそのうえで倒されました」
「そうなりましたが」
「わらわも我慢出来なくなった」
それで、というのである。
「だからじゃ」
「エア達を倒し」
「そのうえで世界を滅ぼし」
「世界を元の様にですか」
「静かにしますか」
「そうじゃ、だからこれより動く」
まさにというのだ。
「御主達もよいな」
「わかりました、ですが」
ここでだ、神の一柱がティアマトに言って来た。神々の母である彼女に。
「神々の盟主は」
「それか」
「はい、お言葉ですが」
こう前置きして言うのだった。
「女はです」
「盟主にはなれないな」
「はい」
そうだというのだった。
「ですから貴女はです」
「わかっている、だからな」
ティアマトもそのことは理解していた、それでだった。
神々の中でとりわけ風采が上がらず卑屈そうな外見の男を見てだ、それから言った。
「キングー、御主がなれ」
「わ、私がですか」
「そうじゃ」
そのキングーを見下ろして言ったのだった。
「御主がなれ」
「ですが私は」
「わらわの言葉じゃ」
神々の母である自分のとだ、ティアマトは告げた。
「ならよいな」
「は、はい」
怯えながらだ、キングーは答えるしかなかった。何しろ相手は神々の母だからだ。
それでだ、こう言ったのだった。
「わかりました」
「それではよいな」
「私が神々の盟主ですか」
「そうじゃ、しかし全てはわらわが動かす」
その軍勢をというのだ。
「だから御主はいるだけでよい」
「そうなのですか」
「そしてじゃ」
さらに言うのだった。
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