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歌集「春雪花」

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 在るか無しや

   雲に隠れし

    月影を

 垣間見なくば

     心黄昏る



 今日の空は厚い雲に覆われ、そこに月が出ているかどうかも分からない闇夜…。

 どこか雲に切れ間があれば月明かりで分かるのだが…生憎、どこにもそれは見当たらない…。

 ふと…彼は本当に存在しているのか…などと馬鹿げた考えが頭を掠めたが、月さえ雲に覆われれば心許無いと言うのに…愛しい人が近くに居ないと言うのは…やはり侘しいものだと痛感する…。



 晩冬の

  春の香りし

   日の光

 叶わぬ夢ぞ

   影に落ちにし



 冬も終わりが近づき、晴れた昼下がりの陽射しには春の香りが漂っていた…。

 その心地好い陽射しに目を瞑れば、ふと…彼と共に生きる夢を見る…。

 叶わないと知りつつ見る夢…。

 それはいつしか足元の影に落ち、雪のように儚く消えてゆくのだ…。


 ただひとときの…淡い夢…。



 
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