役職?召喚魔術師ですがなにか?
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酒は飲んでも暴れるな?
翌日の昼頃。
ダンジョンにてリリルカと待ち合わせをした俺達は、早速行こうと歩き出した。
ダンジョンに到着するまでにリリルカが、
「装備はどうしたんですか?」
「ダンジョン舐めてるんですか?」
「何でだろうね?透明になるんですか!」
等と言ってきたが、全部スルーしてダンジョン内部。
「何でそんなにイライラしてんの?」
「タケル様が色々と常識はずれな事をするからじゃないですか!
そうですよねっ!冒険者でもないのに門番を通過できた理由がわかりましたよ!」
「しょうがねぇじゃん。あのおっちゃん通してくれねぇんだもん」
「当たり前ですよ!?」
キーキーと騒ぐリリルカだが、目の前にコボルトが現れれば直ぐ様態度を切り替える。
なるほど、冒険者の風格はこんな感じに現れるんだな。
「タケル様。リリが援護しますので「魔法、ファイヤーボール」…へ?」
ボウッと、リリルカの横を通りすぎた火球は、コボルトの顔面を吹き飛ばし、胴体だけを残す結果となった。
「何かいったか?言ったか?」
「…攻撃魔法が使えたんですね?」
「言ってなかったか?」
「聞いてませんよ!?」
取り合えず俺の力はダンジョンに通用していると分かって貰えたところで奥へと進むことに。
「おお。コボルトがいっぱい…養犬所か?」
小部屋の様な場所に出た俺たちが見たのは、コボルトが20程群れている光景だった。
「怪物の宴ですよ。あれだけ群れていたら太刀打ちなんて出来ません。
ここは―――」
「魔法、ライトニング・ボルテックス」
リリルカが何か良いかけた直後、その頭上を拡散する雷が通過し、コボルトの群を焼き付くした。
後に残ったのは魔石のみだった。
「よーし魔石拾おうぜ!リリルカー!」
「…セオリーって、何でしたっけ?」
余りにも規格外なタケルに自分が分からなくなるリリルカだった。
「どうよリリルカ。5階層までしか行かなかったけどそれなりに稼げただろ?」
「そうですね…」
取り合えず5階層で切り上げて帰ってきた俺達は、今日の魔石をリリルカにギルドで換金してもらい、半分にしてお互いの懐に潜らせた。
今日の収入は8200ヴァリスだった。
「さて、これからどうしようかな?」
「何かご予定はないのですか?」
どうにか復活?をしたリリルカに、そう聞かれた。
そう言われてもやることなんてほとんどないしな…。
「強いて言えばファミリア探しだな。どうせなら姿隠さずにダンジョン行きたいし」
「…」
何故かリリルカが黙り込んだ。
そして何かを溜め込んだ表情をした後、顔をあげて言い放つ。
「あの―――」
その表情と言葉には、リリルカの人生を掛けているような感覚が伝わった。
その頃、とある場所にて3人の男達が向かいに座る男に報告をしていた。
「ホントなんだよ!
昨日アーデを脅してたら割って入りやがって…」
「バカかテメェは。そんな言い訳が通用するとでも思ってんのか?」
「でもよぉ、ザニスも聞いただろ?
アストレア・ファミリアの奴等を助けた奴の話を」
「ソイツがアーデを連れていった奴だって言いたいのか?」
「ああ!いきなりかっさわれて、終いには消えやがったんだ!」
いまいち要領を得ない説明に、ザニスはイライラとしていた。
しかしアストレアファミリアを助けたと言う男の報告も耳にしているのは事実。
実際に見たわけではないが、そういうスキルを持っていることはないとは言えない。
「アーデをここに連れてこい」
「それじゃあ…」
「ああ。その男とダンジョンに潜れば一括千金も夢じゃねぇ。
何時ものようにやらせて金を持ってこさせろ」
男達はわらいあう。
その直後に正面から現れる話題の人物に痛い目に逢うのを、彼らはまだ知らない。
「どーもこんちわ」
「ああ?何だテメェ」
どうも皆さんこんにちわ。
私、リリから事情を聞かされたタケルともうします。
いやしかし、何と柄の悪い方なのでしょう?
危うく開幕ブッパするところでした。
「いえ、私はこちらにいるリリルカさんより、ソーマ・ファミリアを紹介されまして、是非とも加入させていただきたいと思った次第であります」
つーかここ「金持ってこい」って門前払いしやがった所じゃねぇか。
「ああ?だったら金持ってこい。話はそれからだ」
ほら。
「この方は直ぐにでも稼いでこられるほどの方です。
加入し、ダンジョンに潜れば一括千金となりましょう」
隣にいるリリがそう説明する。
一括千金って、どれぐらい稼げば良いんですかね?
「……着いてこい」
門の前にいた男はそう言うと、先導して歩き出した。
俺達はそれに続き、中へと入れてもらう。
「お?どうし、ってお前は!?」
「何だカヌゥ。知り合いか?」
「ザニス、こいつだ!例の男!」
「何!?」
何か俺が入ったとたんに空気が張り摘めましたけど?
て言うかアイツリリからカツアゲしてた連中の一人じゃん。
「貴方がザニスさんでしょうか?
私、こちらのリリルカさんより、ソーマ・ファミリアの魅力について教えていただきまして。
是非とも加入させていただきたいと想い、参上した次第です」
「加入…ですか?
失礼ながら、入団の決め事として金銭の納付が義務付けられているのですが」
ん?何かいきなり敬語になりやがったぞコイツ。
「ええ、聞いておりますよ。
10000ヴァリス用意しましたので、これで加入させていただければ、と」
「っ…貴方を歓迎しましょう!
さぁ、ソーマ様はこちらにいます。着いてきてください」
コイツ金見た途端に態度変わりやがった。
「ソーマ様、新しく加入する団員を連れてきました。
早速恩恵を刻んで貰いたいんですが」
ザニスと言う男が最奥にあった扉を開き、中に居るであろうソーマへと声をかける。
すると部屋の奥から気だるそうな顔をした男が歩いてきた。
「…早くしろ。俺は忙しいんだ」
「あ、はい。
確か上着脱げば良いんでしたよね…っと、お願いします」
俺は上半身裸になり、俯せになる。
ソーマが俺の背中に血を垂らしたと思うと、俺の背中が僅かに熱をもったのがわかった。
「終わりだ」
え?もう終わり?何も変わった気がしないんだけど。
「これがお前のステータスだ」
そう言ってソーマは1枚の紙を手渡してきた。
オオモト タケルLV1
力 I 0
耐久 I 0
器用 I 0
敏捷 I 0
魔力 I 10
【魔法】
『戦後罰束』
【スキル】
『決闘王』
常時発動。使用者の意志が続くほど経験値に補正。
使用者の思いが大きいほど効果上昇。
「おーすげー」
見事に0が並んでいる。
これ何?貴方は最弱ですよって意味合い含めてるの?泣くよ?
「最初は誰でもこんなものだ。
用が済んだのなら出ていけ。俺は「ソーマ様」……何だ」
ソーマの言葉を遮って、ザニスが声をかける。
その顔には悪どい影が浮かんでいる。
「出来れば彼にソーマを飲ませては如何でしょう?
入団祝いにソーマを飲めば、今後の酒造に貢献してくれることでしょう」
「………これを飲め」
ソーマは暫くの沈黙が続いた後、杯に入った酒を手渡してくる。
俺はそれを受け取り、ソーマを見る。
相変わらず気だるそうな顔をしているが、目だけは真剣そのものだった。
「いただきます」
本当はリリに、ソーマを飲むなと言われているが、実際に興味が無いわけではなかったので、一口含んで喉に流した。
「んぐっ―――!?げっほげっほ!ごーっほぇっ…」
「っ…どうだ?」
やべぇ、リリから聞いた話だと確実に心酔して理性が効かなくなるって話だったのに…!
「美味だろう?」
敬語消してんじゃねぇよ糞野郎!
「どうだじゃねぇよ!けほっ!
強すぎだ馬鹿垂れ!」
「何っ!?」
「……俺の酒はこうなんだ」
もう我慢しないよ?
早いとこ進言してこのファミリアを内部破壊しようと思ってたけど我慢しないよ?
穏便に進めようとか思ってたけどもう出来ないからね?全部さっきの酒のせいだからね?
「ソーマ様はさ、ファミリアの構成員のことどう思ってんの?」
「負い!お前無礼だぞ」
「はいウルサーイ。魔法、異次元の落とし穴」
瞬間、ザニスの姿が穴に落ちるようにしてきえさる。
俺、話を遮られるの好きじゃないんだ。
「で、どう思ってるんですかね?」
俺はソーマ様に向き直り、再度尋ねた。
「酒に溺れる子供達のことを、か…。興味はない。
頑張ってくれるように、俺は最高の酒を用意してやった。
そうしたらどうだ。奴らは酒に溺れ、醜く争いはじめおって。
そんな愚かな子供達に何を思えと言うのだ?何を求めろと言うのだ?
楽しく酒盛りも出来ぬ連中を語る口を俺は持たん」
リリから聞いた話では、構成員に興味はなく、ただ酒を造っているだけの存在だそうなんだが、なるほど。
そういう経歴があって引きこもったってことか。
ソーマ様には何の悪意もない。
つまり最初はただ頑張ってもらいたくて神酒を振る舞ったのに、構成員達が悪酔いをしてソーマ様ではなく、『神酒』しか見なくなった。
そんな愚かな子供達に手を差し伸べる理由がどこにあるって言いたいんだろう。
ソーマ様もまた愚かに争う人間達に見切りをつけて、【ファミリア】を『神酒ソーマ』の資金稼ぎに利用するようになったのだ。
本当は構成員達と楽しく酒を造って楽しく酒を飲みたかっただけなのではないだろうか?。
「神酒って神が飲む酒だろ?
そんなの人間に飲ませて普通でいられるわけがない。
レベルが高いやつには効かないと言うが、それは世間一般で言う神に近くなったからと言う理由で効きづらいだけ。
ソーマ様のお酒は確かに『最高の酒』なんだろうけど、飲み手のことを考えてない。
聞いた話だと酔いが醒めている団員がいるって話だぞ。
あのザニスってやつが提示した資金納付が原因で虐げられている者もいるって話だ。
まずは一度酔いを醒ましてやって、それから話し合うようにすれば良いんじゃないの?」
「それは俺も考えたことだ。
だが奴らは暴れ、もっと酒を寄こせと怒鳴り散らす。もううんざりだ。
お前は正しいことを言っているが、酒に溺れる者達はその正しさを理解しない。
酒に溺れる子供達の声は…薄っぺらいのだ。
どんなに綺麗事を語ろうとも全ての子供達がお前のように理性を保てる訳ではない。それでいて強くあろうとしないのだ。他人にすがり、弱者を虐げるだけの子供達の面倒を見るのはもう疲れた」
疲れたと来たか…けど、神がこんなんじゃ駄目だろう。
「ソーマ様はさっき、子供達と言った。
そう、貴方達神は下界の人々を子供達と称する。
それは自分の産み落とした子供を大切にするかのように、接して、振る舞う。
確かに言うことを聞かない子供も居るだろう。けどそこで諦めてしまったら、子供の悪意や憎悪は増すばかりで、挙げ句のはてには犯罪に走ってしまう。
時には飴を、時には鞭を。
アンタ達にとって俺達は子供達なんだろ?だったらファミリアに入った時点でそれは、家族だろう」
「……」
コイツの言っていることは正しい。
それでいてその正しさは、何処か危ないものを感じるのも否めない。
俺は酒が好きだ。出来ることなら酒だけを見ていたい。
そんな俺が作った酒を、コイツは咳き込むどころか不味そうな顔をする。
構成員達が喉から手が出るほどに欲する神酒をだ。
「子供達には、度数が高かったと言うことか…」
「度数…ああ。正直キツい。
俺は酒を余り飲む方じゃないが、あの酒だと酔う前に喉が焼けそうだ。
一応親なのだから、子供が飲んで良いものとそうでないものを分けるようにした方がいいと思う」
「…そうか。俺は、酔わせない酒も造るべきだったのか…。
人によって、感じる物は違うのだな…」
「例えば造った酒ごとに年齢制限を設けるのはどうですか?
酔わないけど美味しい酒、程ほどに酔うけど溺れない酒って具合に。
それを決めるだけでもかなり違ってくると思うんですけどね」
「…そうだな。まず酔わない酒を製造して―――」
「…どしました?」
急に言葉を止めたソーマ様に、不思議に思ってタケルは訪ねる。
「…金がない」
俺にとって死活問題だった。
「…………そうだった。
リリルカ・アーデから聞いた話によると、さっきのザニスってやつが横領を働いているらしいんだよね。
他にも何人かその手伝いをしてるとかで。
多分ファミリアの2/3は持っていってるんじゃないか?」
「………………………!!!!!」
ああ、これは怒っていらっしゃるな。
まぁあの男も気に入らないし、一度洗い出す気前を見せるってことで―――
「魔法、異次元の帰還」
魔法を使ってザニスを呼び戻すとしよう。
突如として裂けた空間からザニスが転がり出てきた。
「さぁてザニス君。君には聞かなくてはならないことが幾つかあるわけだけど」
「て、テメェ!新人の癖に調子に乗ってんじゃねぇぞ!?」
「黙れザニス。貴様、酒のための資金を横領していたそうだな…!」
「なっ!?馬鹿な事を言わないでくださいソーマ様!
私は懸命に団員達と結束し―――「嘘だな」っテメェは黙ってろ!」
必死に言い訳をするザニスに横やりいれたら怒られた。
「罠、真実の目」
皆さんご存知のピーピングカードで御座います。
使ってる人は少ないでしょうが、これが以外と使えるんですねぇ。
取り合えずこの世界でいう真実の目は、その名の通りに真実を見る目と言うもので、相手の思惑、嘘等を視ることで感じる物だ。
簡単に言えば、相手の考えていることや思っていることを、自分が思考していると錯覚させることによって読み取ると言うことだ。
それはつまり―――
「ソーマ様ソーマ様。
コイツ夜な夜な一人酒してるみたいですよ?」
「一人酒…?うちのファミリアに他所の酒を買うほどの余裕はない。
……まさか、最近俺の試作品が減っているのは…」
「で、デタラメだ!おいお前ふざけんなよ!
新人の分際で団長に楯突きやがって!」
キレるザニス。
恐らくソーマ様も、ザニスが嘘をついていることが解っているだろう。
「えーっと、横領の手伝いしたやつは…ほぼ全員じゃん」
やってないのは10人いるかいないか。
因みにリリはやってない。
「まぁ名前は記憶したし、後で追放でもしたら良いでしょ」
「ふざけんな!俺がどんな想いでやって来たと思ってやがる!」
「えっーと、『酒しか頭にない形だけの神だ。ふんだんに金使って期を見て逃げよう』って事だそうだよ?」
「ザニス…!」
う、嘘だ!と供述するザニスだが、もうすでに信じられる要素がない。
ソーマ様も、怒りの眼でザニスを睨んでいる。
「ザニス、そしてお前に荷担した者達は、ファミリア脱退を命じる。
恩恵剥奪の上、ギルドへと引き渡してやる」
「なっ―――」
目を見開き、唖然となるザニス。
そして俺を見たかと思うと、ものすごい形相で襲いかかってきた。
「お前さえ居なければぁ!!」
「”たられば”は社会人として致命的だぞ。
魔法、光の護封剣」
俺に拳が届くかと言うところで、ザニスは降り注いだ光の剣郡に身を固められ、動くことが出来なくなった。
因みに任意解除となっております。
「ソーマ様。酒の資金は俺とリリで稼ぎます。
だから、ファミリアの汚れを掃除しましょう」
「………そうだな」
少しだけ、悲しそうな顔をしたソーマ様だったが、意を決して頷いた。
その日のソーマ・ファミリアでは、泣き叫ぶ声や悲鳴が聞こえてきたと言う。
後書き
追記。
『決闘王』は、前世での大会優勝者が元となってついたものです。
憧憬一途と同じようなものと思ってください。
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