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有り得ない強敵

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2部分:第二章


第二章

「何だよこいつ。気絶させないと倒せないのかよ」
 とんでもない奴がいると思った。だが一体だけなら何とかなると思った。しかしだ。
 何と今度は雑魚として出て来た。何人もいる。こうなってはたまったものではなかった。彼は鎧達の前に敗れた。
 彼にとっては忌まわしい敗北だった。敵はあまりにも強かったのだ。
「何だってんだよ、あいつは」
 その強さの前に唖然だった。だが何度もプレイして苦労してだ。鎧を倒していった。しかしその強さは記憶から離れなかった。
「あんな強い敵ははじめてだ」
 心から思った。もう二度と相手にしたくなかった。
 そう思ってから数年後。今度はこのゲームの続編『阿修羅の章』をプレイした。このゲームでも快進撃だった。
 進撃を続けながら。彼は思った。
「もうあいつは出ないよな」
 それは祈りだった。絶対に出ないでくれと思っていた。しかしステージを勧めていくうちに。
「・・・・・・・・・」
 何とだ。前作以上の数で彼の前に出た。彼はここでも負けてしまった。彼にとってはだ。実に忌々しい相手であった。強過ぎた。こちらの攻撃は効かずビームの如き弓矢を放つ。そうして今回もあえなく倒されてしまった。
 しかしそれにめげず彼はプレイをしてだ。遂に鎧達を何とか以前と同じ様に気絶させて倒していきクリアーした。しかしその感想はというと。
「ラスボスより鎧の方がずっと強かったな」
 こうした感想だった。とにかくだ。鎧は強かった。他のゲームでは有り得ない強さだった。その強さは彼の心から消えてなくならなかった。他のどんなゲームをしてもである。
 それから年月が経ち彼は結婚して子供ができてだ。自分の家でゲームをしている息子にだ。こんなことを言うのだった。
「お父さんが昔していたゲームにはな」
 その鎧のことを話す。そのあまりもの、えげつないまでの強さはだ。彼にとっては我が子に話しても遜色のないものだった。そして我が子もだ。そのあまりもの強さを聞きだ。こう言うのだった。
「昔のゲームの敵って酷かったんだね」
 そんな時代の話である。今となってはだ。懐かしい時代の話である。


有り得ない強敵   完


                 2011・3・18
 
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