喧嘩
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7部分:第七章
第七章
「これだけもう言い争ってたら」
「どうしようもないかもね、本当に」
「参ったなあ」
皆その考えを頭の中に浮かべはじめて頭を抱えだした。
「こんなことになるなんて。どうしよう」
「どうしようって言われても。肝心の二人があれじゃ」
「もう終わり?」
「そうかも」
最悪の結末が急速に現実のものとなってきていた。
「参ったなあ。これじゃあ」
「まあ成功するとは思ってなかったけれどね」
「って今更言うなよ。実は俺もそう思ってたしよ」
「まさかこんなことになるなんて」
言い争いは続く。しかしその言い争いが急に終わった。皆二人の声が止まってまずは何事かと思った。
「えっ、声が」
「止まった!?」
「止まったわよね」
顔を見合わせて言い合うのだった。
「間違いなくね。止まったし」
「何で!?」
「何でだ!?」
そして今度は皆で目を点にさせるのだった。
「ここで急に話が止まるなんて」
「何事かしら」
「ちょっと。想像がつかないな」
あれこれと考えたがその理由がわからない。屋上の扉のすぐ側で首を捻りはじめる。しかしそれでも誰もその理由がわからなかった。
「殺し合ったとかか?」
「馬鹿言いなさいよ」
それはすぐに否定された。
「そんな縁起でもない」
「幾ら何でもそこまではいかないだろ」
「それもそうか」
「大体。それなら最後に物凄い断末魔の声が聞こえてるよ」
こうした現実に予想される事態まで述べられて否定されたのだった。
「もうとっくにね」
「じゃあそれはないか」
「当たり前だろ。幾ら何でも」
「それじゃあ何かしら」
そうしてあらためてどうして静かになってしまったのか考えられるのだった。
「急に静かになったのは」
「何か屋上であったのは間違いないけれど」
そうでなくては静かになる筈がない。これはわかる。
「まさか宇宙人にさらわれたとか?」
「宇宙人!?」
「何だそりゃ」
皆女組の一人の言葉に眉を顰めさせた。
「ほら、よくあるリトルグレイに拉致されて」
「あんたそれ矢追さんの番組の観過ぎ」
「あれインチキなんだよ」
このこともすぐに否定された。
「っていうか何処をどうやったらあんな話が信じられるのよ」
「滅茶苦茶な話垂れ流してばっかりだろうがよ」
「あれ嘘だったの?」
彼女にとってはその方が驚きのようである。
「ひょっとして」
「ひょっとしてもしなくてもそうだから」
「嘘に決まってるだろ」
「そうだったの」
これでこの話は終わりだった。
「あれ嘘だったの」
「よく観なさいよ、おかしなところ一杯ある番組だから」
「他にもキバヤシだのそういうのは嘘というか電波だからな」
ついでにそちらも否定された。こうして宇宙人の拉致も否定された。しかしだからといってどうして静かになったのかはまだ誰にもわからなかった。
「何かあったのは間違いないんだけれどな」
「本当に大丈夫かしら」
皆今度は次第に不安になって心配になってきた。
「何かあったのかも、冗談抜きで」
「じゃあ見てみるか?そっと」
「そうね」
とりあえずは中を覗いて様子を見よう、そうした意見になってきたのだった。
そうしてそっと中を覗いてみると。何故か二人はいなかった。とりあえず扉の隙間からは彼等の姿は何も見えなかった。制服の端一つも。
「あれっ!?」
「いない!?」
「そうよね」
皆まずはそのことに目が点になってしまったのだった。
「これってどういうこと!?」
「何があったの!?」
「さあ」
皆それが何故かわからない。しかしいないのは確かだった。彼等は確かにいないのだった。
「どうしたんだろ」
「まさかと思うけれど」
女子の一人がここまた不吉な顔で言うのだった。
「飛び降りとか!?」
「だからそれから離れろっての」
そしてまたこのことが否定される。
「それだったら今時下の方が大騒ぎになってるだろ」
「そうよ。静まり返るどころじゃないでしょ」
女子の間からもそれが否定される。
「だからそれはないっての」
「絶対にね」
「じゃあ何故かしら」
そしてまたこの静まり返ってそのうえで姿が見えないことが話されるのだった。
「どうして二人がいないのよ」
「一応見てみる?」
ここで別の女子が怪訝な顔で言ってきた。
「何処にいるのか。見てみる?」
「そうだよな。常識で考えればあれだよ」
男子の一人が常識に立ち返って話してきた。
「二人はあそこにいるよ」
「あそこって?」
「屋上にな」
そこにいるというのだった。
「絶対にな。だって出入り口はここしかないんだぜ」
「まあそうだよな」
「それはな」
他の男子達がその言葉に対して頷く。
「ここしかないのは確かだな」
「他の校舎になんて」
このことも一応考えられていく。年を入れて考える為にだ。
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