喧嘩
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2部分:第二章
第二章
「あれが爆発したらどうなると思う?」
「取っ組み合いの喧嘩?」
二人をちらちら見ながら話していく。
「やっぱり」
「それで済むか?もっと酷いことになるんじゃないのか?」
しかしここで男子の一人が言った。
「この状態で爆発するともう」
「否定できないわねえ」
「だよなあ」
そしてその可能性を誰も否定できなかった。
「この状態って。もう」
「今にもだから。本当に」
「だから余計に何とかしないと」
あらためて言い合う。しかし答えは中々出なかった。
「とにかくよ。ここはよ」
「どうするんだ?」
女子の一人の言葉に皆が寄る。
「握手してもらいましょう」
彼女は思いついたように言うのだった。
「二人にね」
「何はともあれ手を握ってもらってってわけね」
「そういうこと」
思いつきのようだがその表情は必死なものであった。
「そうすれば元に戻るんじゃない?いつもあんだけいちゃいちゃしてるんだし」
「そうだよな。確かにな」
「それだといけるかも」
皆それに賛成して頷いた。
「じゃあそれでいきましょう」
「上手くいく筈だな、それで」
「そうね」
皆とりあえずはそれで行くことにした。そうして相変わらず顔を背け合っている二人に近寄りその手をそれぞれそっと持って握らせようとするが。
ここで二人は同時に動いた。そう、同時だった。
何と皆が持って握らせようとしたところでそれぞれの手を思いきり振り回してきたのだ。そのあまりにも凄まじい速さと威力の前に皆は吹き飛ばされてしまった。つまり握手は何があっても嫌だということだった。
「な、何てパワーなの!?」
「化け物!?」
吹き飛ばされた皆はまずはそのパワーに唖然となってしまった。
「皆が吹き飛ばされるなんて」
「しかもそれだけ嫌なの」
「握手さえも」
ここであらためて両者の今の対立の深さを知るのだった。
「こりゃ生半可なものじゃ駄目ね」
「そうね」
そうしてまた教室の隅に集まって二人をちらちらと見ながら小さくなって話をするのだった。
「オーラはさらに強く剣呑なものになってるし」
「もう魔闘気みたいじゃない」
二人から発せられるオーラはまさにその域にまでなっていた。
「どうしようかしら、これって」
「そもそも。何でなんだ?」
男子生徒の一人が腕を組みながら述べてきた。
「何であの二人今あんなに仲が悪いんだ?」
「昨日の続きじゃないの?」
女子の一人がここで言う。
「それでじゃないの?」
「それであそこまで魔闘気を撒き散らすのか?お互い」
「そこまではわからないけれど」
流石にこの娘もそこまでは答えられない。
「けれど理由それ以外にないでしょ」
「まあな」
それもその通りだった。何しろ昨日教室の中で喧嘩していたことはもう皆知っていることである。それが理由と考える方が自然であった。
「それはそうだけれどな」
「だからでしょ。だから今あんなふうになってるのよ」
「参ったな」
そしてここでまた言うのだった。
「こりゃな。どうしたらいいかな」
「とりあえず。何とかしないと」
「駄目だぜ、ありゃ」
既に答えは出ているのだった。仲を取り持つしかない。
しかしそれと共にそれが極めて困難なこともわかっていた。何しろ皆今さっき握手させようとして吹き飛ばされたばかりであるからだ。
「よし、それならな」
「秘策があるの?」
「これだよこれ」
男子の一人はここで何処からともなくケーキを取り出してきた。見事なチョコレートケーキである。上のチョコレートのラッピングもまた実にいい。
「これ食ってもらうってのどうだ?」
「ケーキを?」
「あの二人の大好物だったよな」
「ええ」
「確かにね」
皆このことも知っていた。ケーキは二人共よく食べている。大好物なのである。
「これを二人同時に食べてもらってな。それでどうだ?」
「大好物を食べて雰囲気をよくしながらってことね」
「ああ。それで仲直りしてもらう」
彼の考えた秘策とはこれであった。
「これでどうだよ、これで」
「悪くないかもな」
男子生徒の一人がそれに頷いてきた。
「少なくともやってみる価値はあるな」
「そうだろ?だったらすぐにな」
「よし、やりましょう」
「思い立ったが吉日よ」
こうして皆はまた二人のところに向かう。そうして相変わらず顔を背け合っている二人の前にそれぞれケーキを差し出すのだった。
「何だよそれ」
「何よそれ」
良美も美奈もまずはむっとした顔と声で皆に応えた。
「いきなり出て来たけれどよ」
「どうしたのよ」
「ほらほら、ケーキよケーキ」
「実はよ、さっき貰ったんだけれどよ、喫茶店でな」
この学校には喫茶店もあるのである。そこのケーキというわけだ。
「これ、どうかなって思ってな」
「ほら、美奈の好物じゃない」
男は良美の、女は美奈の周りに集まりながらさりげなくではなく露骨に態度に出して話している。
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