歌集「春雪花」
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静かなる
朝に烏の
啼きにける
曇りし空に
誰そ想ふや
然して車も走ってはいない…本当に静かな朝方…。
不意に…一つ二つと、烏が鳴いた…。
曇った冬空にその鳴き声が響くと、何だか淋しく聞こえ…烏でさえ相手を呼ぶのだから、人であれば…尚の事、こんな寒々とした季節には恋しさが増すものだと思えた…。
春風を
待ちてや冬の
暁に
鳥立ち落つる
松の白雪
少しずつではあるが、寒さの和らぎ始めた二月の半ば…。
さすがに朝も早ければ寒さも染みるが、そろそろ春を匂わせる風が吹いても良いのでは…と、白む景色を眺めていると、不意に鳥が飛び立ち、松の枝に積もった雪が落ちる音が聞こえた…。
あぁ…まだ春は先なのだと思い…一人彼を想う日々は延々と続くのだと…そう考えて溜め息を洩らした…。
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