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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第六十二話 お祭りの日その十三

「寿君は素直になれ」
「ではわたくしは」
「八条君と一緒にお祭りに行くのだ」
「ですがそれは」
「そう言うとか」
「はい、ちょっと」
 円香さんが言うとだった、今度はジューンさんと水蓮さんが出て来た。ジューンさんは赤地に紫の薔薇の柄の浴衣、水蓮さんは青地に赤の牡丹の柄の浴衣だった。二人共髪型はそのままで帯は同じ黄色のものだった。
「まあ私達もネ」
「そのつもりあるからな」
「義和、行こうネ」
「お祭り案内するよろし」
「この二人が名乗りを挙げたとしてもだ」
 井上さんは二人を見つつ円香さんに言った。
「怖気付くな」
「私は別に」
「ただ一緒にお祭りに行くだけだ」
 井上さんは一言で言った。
「何の気後れがある」
「そうですか」
「私は行く」
 言葉で一歩踏み出した。
「八条君とな」
「じゃあ四人ネ」
「四人で行くあるな」
 二人もまた言った。
「義和、それでいいネ」
「断る選択肢はないあるよ」
「僕は別に」
 特にとだ、僕はこう答えた。
「じゃあ一緒に」
「さて、どうする」
 井上さんはまた円香さんに言った。
「選択肢はないぞ」
「ないですか」
「二つしかな。逃げるかだ」
「もう一つは」
「わかるな、ではだ」
「・・・・・・・・・」
 円香さんは立ち止まって俯いた、物腰では俯いているだけだったが考えが止まっていた。けれどすぐに顔を上げて。
 そしてだ、僕に言って来た。
「あの、義和さん」
「一緒にだね」
「お祭り行きましょう」
 こう言って来た。
「今から」
「うん、それじゃあね」
 僕は笑顔で応えた、これで決まりだった。
 僕達は五人で八条荘を出た、お祭りがこの時はじまった。僕達の中でのそれが。


第六十二話   完


                        2015・10・1 
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