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魔法少女リリカルなのはINNOCENT ブレイブバトル

作者:blueocean
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DUEL7 VSヴィータ

「ぐぅ………!!」

出だしから悪かったのかもしれない。
スタートと同時に向かってきたヴィータに気がつき、慌てて鞘でガードした。


その威力は俺が想像していた以上だった。




「ほらほら!!」

鉄球を打ち、攻撃する変わったスタイル。これも誘導弾であり、迎撃は可能。
ただ空中で360°狙われれば対応しきれないだろう。だからこそ俺は地上で戦っていた。

これは今回の戦いに限った事では無く、空中を除いて、地上で戦う方が俺にとって戦い易いとシュテル達の戦いで学んだ。いくら魔力を回復出来るからと言って、操作して攻撃出来る誘導弾の攻撃を全て迎撃するのは今の俺には無理だ。だから少しでも狙われる箇所を少なくする為、地上、もしくは地上すれすれでの戦闘を心掛けいていた。

「まだまだ!!」

迎撃してる間にヴィータが突っ込んでくる。

「おらぁ!!」

男勝りな言葉と共に槌を振り下ろす。ハンマーは使用時に大きさを変化するようで今は1番小さい槌程の大きさになっているが、小さいからといって油断ならない。

先ほどの最初の一撃。あれを防御してから暫くの間、腕が動かし辛くなった。自分の腕じゃないような感覚を感じ、とにかく重いのだ。

(恐らく衝撃で相手を鈍らせるようなスキルだろう………)

ハンマーの形が変わるので事前に気が付けるが、防御出来ないのは中々辛い。

「くそっ、当たれ!当たれ!!」

何とか避け続けている内に、ヴィータの攻撃が単調になっていく。だからと言って油断は出来ないのだが………

「そこ!!」
「あぐっ!?」

タイミングを見計らって鞘をヴィータの鳩尾に突き刺す。その痛みに耐えきれなかったヴィータは呻きながら離れていく。

「魔神剣!!」

チャンスは見逃さない。もう大分立ち直ったものの、思うように動けないヴィータに抜刀と同時に「斬撃を飛ばす。

「っ!?」

だがヴィータは避けるよりもシールドを張り、攻撃を防いだ。

(魔神剣じゃ咄嗟に張ったシールドも貫通出来ないか………)

ようやく気持ちも落ち着いてきたのか思考がクリアになっていく。頼りにならない相棒の所為でパニックになっていたが、今であれば冷静に戦えるだろう。

(やはり決め手は砕氷刃で動きを止めつつ葬刃でトドメか………)

今ある手段で確実に勝てる方法だった。普段ならもう何度も戦っているシュテル達にはもう通じない手だが、初見なら有効な筈だ。

「もう一丁!!」
「そんなもの何度も!!」

魔神剣を何度か放つが、当然ヴィータを捉えるには至らない。
だがそれも計算の内だ。

「魔神剣!!」
「まだ同じ攻撃を……!?」

切り返し、横に避けたヴィータの目の前には、先ほど避けた斬撃が向かって来ていた。

(そう、斬撃が遅いならそれを利用すれば良い………)

シュテルの言葉をヒントに編み出した戦法。
無闇やたらに避けていても魔神剣からは逃れられない。

「くっ!?」

ヴィータは慌ててシールドを張り、防御する。攻撃は当然通らないが、足は止められた。

「砕氷刃!」

すかさず追撃に氷の刃で斬りかかる。
しかしそれもシールドに防がれてしまった。

「残念。そんな攻撃なら……ってあれ!?」

勝ち誇ったヴィータの顔に、焦りが生じる。
砕氷刃の氷は徐々にヴィータの身体へと広がっていく。

「これで!!」

ヴィータが何かする前に葬刃を放つ準備をする。ライの時のように逃げられては意味が無い。なので魔力は限界まで溜められないが、それでも大きなダメージは与えられる筈だ。





しかしそこでヴィータは俺の想像を遥かに超える行動をしてきたのだ。





「カードロード………」

その呟きと共にハンマーの形が変わる。最初の時の形態だが、後ろにはバーニアの様な放射口が付いている。

(だが遅い!!完全に動ける様になる前に、俺の攻撃が入る!!)

魔力を込めた斬撃を放とうとした時だった。
バーニアから放出されるエネルギーを勢いに乗せ、ヴィータを軸に回転を始めたのだ。

「なっ!?」

そのスピードは速く、あっという間に一回転し、トップスピードに乗る。
タイミングは同時だった。

「葬刃!」
「ラケーテンハンマー!!」

踏み込んで放った抜刀による斬撃と回転力と共に勢い良く向かってくるハンマー。その強い力のぶつかり合いは周りに衝撃波が飛び交う程の激しいエネルギーを生み出す。

「ぐぅ!?」

2人のぶつかり合いは互いに弾かれる様に離れる。零治はバンザイした様に身体を大きく仰け反らされてしまった。

「くそ、何てパワー………全力とは言えないけど葬刃をはじき返すなん……まっ!?」

そこで零治は信じられないものを見た。

「嘘だろ!?」

零治の攻撃は完全に止まっていたがヴィータは違かった。弾かれた後も回転は続いており、こっちに迫っていたのだ。

「くっ!!」

すでに目前に迫っており、逃げるには遅かった。咄嗟に鞘を前に出してガードするが、ハンマーは鞘ごと零治に脇腹に打ち付けた。

「がっ!?」

鈍い音と共に零治が吹っ飛ぶ。地面をバウンドして、引きずられる様に転がって、やっと勢いが止まった。

「くそっ、しぶとい……」
「い、痛たた………」

しかし零治は立ち上がる。ダメージはあるものの、まだ普通に動ける。

(上手くいって良かった………)

ヴィータから目を離さないものの、心の中では大きく安堵していた。
咄嗟に後ろへジャンプした事で威力を逃がす事ができ、思いのほかダメージを受けずに済んだのだ。
これも喧嘩の時の経験だけでなく、レヴィとの戦闘が生きた。

「さて、ここからどうするか………」

互いに初めて同士の戦いでどう言った攻撃がくるか分からない。ましてや相手はランカーであり、俺よりも実力も経験も上なのだ。

「手の内を全て見せたしなぁ………」

使える技も全て使った。後はシュテルの言う通り、技の使い方だろう。

「もっと刀を上手く扱えれば………」

刀と言うよりは剣術か。未だにどう戦えば良いのか分からない為、どうしてもスキルに頼りがちになりつつある。それも含めてのシュテルのアドバイスだろう。

「いや、今は自分の出来る事で………」













「思ったよりもやる………」

ラケーテンハンマー後、ヴィータはその場に留まり、魔力の回復に専念していた。消費はまだまだ大したことはないが、出来る時にやらず、いざ大事な時に魔力切れなど起こしたくないからだ。

「スキルは今の所3つ。あの氷の刃には驚かせられたけど、威力は大したことは無い。あの飛ぶ斬撃も遅いし、もう同じ手は喰わない。………となるとやっぱり注意しなくちゃいけないのは………」

ラケーテンハンマーとぶつかり合った斬撃を思い出し、思わず身構える。
あの時は正直焦った。動きを止められ、あれしか対応する手段がなかったのだ。

「次はどう出る………?」

笑みを溢しながらヴィータが呟く。最近のデュエルで初見の相手と戦ってもここまで楽しいデュエルは久し振りだった。
もちろん同じランカーとの戦いはあったが、互いに手の内をほぼ見せている為、こう言った新鮮な戦いは久し振りだ。

「休憩終わり!!ガッカリさせるなよ………?」

そう言い、ヴィータは再び零治の元へ向かって行った………







それは突然起こった。

『手を貸しましょう』

ヴィータ攻略に悩んでいた際、不意に聞こえた声。それは焔と違う声で、少し幼い。

「ラグナルが喋ってるのか!?」
『いいえ、私も焔と同じです。私を使って下さい』
「使えって………いきなり言われても何が何だか………」
『今のマスターじゃ勝てませんよ?』
「うっ………」

声の言う通りだった。ヴィータが何もしてこないうちに何か手をと考えていたが、一向に良い案が浮かばない。

『さあ、私を使って下さい。………ってかピンチに出現するヒーローみたいにババン!!と活躍したいのでお願いですから使って下さい!!!』
「おい、本音漏れてるぞ」

口調がいきなり変わった。しかもこいつ、ピンチになって出現すると言ったと言う事は、この戦いの前に既に使えるチャンスがあったって事では………?

『良いから良いから!!私を使えばきっとマスターでも勝てるよ!!』
「きっとってハッキリしないんだな」
『だってマスターだし………』

………焔もそうだが何故こんなにも評価が低いのだろうか?

『マスター!あの女の子来たよ!!』
「くっ………!!」

どうやら休憩は終わりのようだ。俺の方はいきなり現れたコイツのお陰で全く対策を練る事が出来なかった。

『もう迷ってる場合じゃないよマスター!』
「………くそっ!!」

コイツの言う通りにしなくちゃいけないのは悔しいが、今の現状を打開するにはコイツに頼るしかないようだ。

「おい、どうすれば良い!?」
『カードをかざして『黒衣装填!!』って叫んで!!』
「………リライズアップで良いな」

そう言って新たに光るカードを見る。
カードはスキルでは無く、焔のようなパーソナルカードだった。

「こっちにチェンジするって事か………」
『じゃあ詠唱みたく漆黒の鎧……』
「リライズアップ」
『えっ?ちょっ!?』

コイツがまた変な事を言う前にさっさと試してみる事にした。

「これは………!!」

光に包まれ、新たに現れた自分の姿はあまりにも自分の予想からかけ離れていた。

単純にカードに表示されている『ブラックサレナ』の装備を装備するのだと思っていた。刀から別の武器に………

しかし今の自分の姿は、全身に黒い鎧を纏い、顔だけ視界を得る為かバイザーだけ付けている状況だ。

「これが………」
『ブラックサレナ。………私を設計した早苗の好きなアニメのロボットを元に作ったらしいよ』
「母さんロボットアニメとか好きだったのか………」
『でないとロボット工学なんて勉強しないと思うよ?』

確かにコイツの言う通りだった。

「さて………どうしたものか………」

無駄話を終え、ヴィータを見る。俺の姿がまるまる変わった事にどうやらヴィータも驚いた様で、向かってきていたヴィータは警戒して少し離れ、止まっていた。

「驚いて様子見かな………今の内に戦い方を教えて欲しいんだけど………」
『マスター、この姿の時は一人称を我にしなきゃだめだよ』
「そんな事どうでも良いんだよ!!ディアとかぶるし………それにこれから強敵と戦うんだから戦い方を………」
『頭で考えるな、感じろ』

コイツ、ぶっ壊してやろうか……
そんな事を思ってると、ヴィータが動いた。

「シュワルベフリーゲン!!」

先ほど俺に使っていた鉄球の玉が再び襲いかかってくる。

「くるか………!!」

腕でガードしようと腕を前に出す。腕にも黒い装甲が動きを阻害する部分以外しっかり付いていた。

『心配ご無用!!フィールド展開!!』

そう言うと身体全体を守る様に何かが展開された。透き通るその膜の様なものはヴィータの飛ばした鉄球を受け止め、消滅させた。

「なっ!?」
『見たか!これが私の防御フィールド、ディストーションフィールドだ!!』

先程まで対応するのに苦労したヴィータの攻撃をいとも容易く防いだ。
これは予想以上に凄いものなのかもしれない。

「くそっ、だったら!!カードロード!!」

ヴィータは効かないと分かると、すかさず先程使ったラケーテンハンマーを再び使ってきた。バーニアの点火と共に凄い勢いとスピードで向かってくる。

「流石にこれは………」
『ノープログレム!!』

イマイチ過ぎる発音と共に今度は徐々に光に包まれる。

「何だ!?何をする気だ!?」
『ジャンプ!!』

俺の問いに答えず、視界が一瞬真っ暗になった。
そして戻ったかと思えば、先程向かって来たヴィータがかなり遠くにいた。

いや………

「俺が離れたのか……!!」

信じられないが先程居た場所から今いる場所まで瞬間移動したという事だろう。

『驚いた!驚いた!!』
「驚いたよ。まさかこんな事まで出来るとは………」

相手の攻撃を寄せ付けない防御フィールド、そして一瞬で移動できる瞬間移動。防御面では完璧な性能なのではないだろうか?

そして驚く事に魔力が減った様に感じられない。恐らくこの鎧の能力が関係あるのではないかと思う。

「よし、次は攻撃だな。おい焔を出してくれ」
『?何言ってるの?出せるわけ無いでしょ』
「はぁ!?じゃあどう戦えばいいんだよ!」
『心配しなくてもちゃんとあるよ』

そう言うとそれに呼応した様にカードが光り出す。

『先ずは近接戦闘用に魔力刃。手の甲に展開可能!次にハンドガン。魔力弾を連射し発射できるわ!次に両腰のレールガン。弾速の速い直射砲をおみまいするよ。………そしてグラビティブラスト!!重力衝撃砲を相手に放つ、一番強い砲撃を持ってるわ!!』
「おおっ……!!」

やっと詳しく説明してくれたが、特にグラビティブラストは何か凄そうだ。

『ただ武装はこれだけ。焔と違って新しいスキルは追加されないから考えて使って!』
「なるほど………」

恐らく既に備えてある武装のみと言う事だろう。少ないスキルでの戦闘はまだまだ自信はないが、今回みたいな初見の相手ならば上手く戦える筈だ。

(しかしこれじゃあロボットに乗って戦っているみたいだ……)

そんな事を思いつつも両手をヴィータの方へ構えた。

「行くぞ!!」

そう叫んだ後、魔力弾を連射。
一発一発の威力は弱いようだが、大量の魔力弾を連射出来るのが利点だろう。

「鬱陶しい!!」

最初は自身の機動力で避けていたヴィータだが、何時までも終わらず、普通の誘導弾とは違って数が圧倒的に多いハンドガンの攻撃に徐々に避けきれなくなり、シールドを張って攻撃を防いでいた。

「よし、このまま近づく!!」

相手の動きは止められた。グラビティブラストを当てることがヴィータを倒す有効打となっているが、魔力の事を考えても出来るだけ無駄打ちはしたくない。

「………カードロード!!」

しかしやはり俺の予想に反してヴィータが動く。

「この際、多少のダメージは気にしない!!」

そう結論づける事も考えていたが、まさかこんなに早く踏み切るとは思っていなかった。

「はあああああ!!」

バーニアの噴射と共にヴィータが凄い勢いで向かってくる。

『マスター、転移を!!』
「……いや、距離を取った所でその場凌ぎにしかならない」
『だけど………』
「真っ向から受ける!!」

俺には考えがあった。焔が教えてくれたなのはと言う子の戦い方。

『ヤバいかっこいい!!凄く主人公っぽい!!』
「アホな事言ってないで、フィールド前面に集中展開!!出来るか!?」
『大丈夫、任せて!………じゃなくてイエスマスター!!』

何故かテンションが高いコイツの返事と共にフィールドが展開される。しかし前とは違い前面にしか展開していない。

「これが俺の思う通りなら可能な筈だ……行くぞ!!」

背中に集中すると付いていたバーニアから火が吹く。………実際は火では無いだろうが、身体が徐々に前進していく。

「行けえええええっ!!」

そして一気に加速していき、トップスピードでヴィータへと向かう。

『ディストーションアタック!!』

勝手に技名を言われてしまったが、今回は俺も納得の名前だ。
フィールドを前面に集中展開し、その盾ごと相手に体当たりする。……正に防御を得意とするこのブラックサレナらしい戦い方だろう。

「負けるかああぁ!!!」

対してヴィータも一歩も退くこと無く、互いのスキルとスキルがぶつかり合った。

「「うぐぐっ……!!」」

互いに歯を食いしばり、負けじと力を込める。
ハンマーとフィールドはバチバチと音を立てながら激しく押し合う。

「はあああああ!!」

均衡を破ったのは零治だった。バーニアの数か、身体の大きさか、暫く均衡を保っていたヴィータだが、徐々に押され始めた。

「!?くそっ、負けるか!!」

気合を入れ直し再度押そうとするヴィータだが、形勢を逆転する事は出来なかった。

「あっ!?」

ヴィータの方がスキルが先に消え、バーニアの噴射も止まった。

「ここだ!!!」

対して零治は止めと言わんばかりに、最後に全力で出力を上げた。

「喰らえ!!」

ハンマーをはじき返し、ヴィータを吹き飛ばす。
ハンマーにつられて、逃げてしまった為、ダメージはさほど無いが、今無防備のヴィータは隙だらけだ。

「コレで止めだ!!」

腹部に魔力を収束させていき、溜め込む。

「グラビティ……」
『あっ……』

グラビティブラストを撃とうとした直前に何か変な声が聞こえたが、既に発射態勢に入っていた為、止められない。

「ブラスト!!」

チャージしたグラビティブラストは巨大な直射砲として荒野の大地を抉り、消滅させながらヴィータに迫る。

(よし、もらった!!)

まだ反応を見せてないヴィータに手応えを感じた。


…………が、


「嘘だろ!?」

ヴィータのハンマーのバーニアが噴射し、ヴィータを砲撃の射線上から逃した。確かにハンマーはスキルを使用した時から形態が変わっていない。
左肩に僅かに当たったが、ヴィータのドレスを消し飛ばした程度で、ダメージは殆ど無さそうだ。

「ありがとう、アイゼン………」

デバイスにお礼を言い、ハンマーを構える。
疲労の色は出てるものの、ヴィータはまだ動けるようだ。

「だが有利なのは変わらない次で決め……」

と言っている途中に光に包まれ、鎧が消えてしまい、何時ものロングコートの姿に戻ってしまった。

「………おい」
『………テヘッ』
「テヘッじゃねえよ!!どう言うことだよ説明しろ!!」
『どうもこうも魔力切れ。バーニアとフィールドに全力で消費したから………』

(本当は私が魔力制御し忘れて垂れ流し状態で戦っていたのが原因だけど………)

「切れるの早いだろ!!全然攻撃してないぞ!!」
『だってこのブラックサレナ、防御、探索が主な戦闘スタイルだもの』
「説明してないよな………?」
『テヘペロ!』

音声で言ってる事が更に怒りを増長させているって分かっているのかコイツは……?

『本当は私が魔力垂れ流しのままで制御し忘れたからなんだけど………』
「何か言ったか?」
『いえ、何でも無いです』
「おい、作戦会議は終わりか?」

ヴィータの声が聞こえ、慌てて声の方を向く。

「えっ……?」

ヴィータは空へと飛んでおり、そして更に上には今までとは比べものにならない巨大なハンマーが見えた。

「嘘でしょ?」
「轟天爆砕、ギガントシュラーク!!」












「衝撃的だった………」

巨大なハンマーに潰され、勝負は終了。あまりの衝撃に反応出来ず、無防備のまま受けてしまった。

「……まあそれだけじゃないが」

ラグナルを手に取り、見つめる。あのお喋りな声は嘘の様に無言を保っている。

「おい」

声を掛けても返事がない。

「だんまりか?だったら後で博士にお前の人格を削除してもらって、その代わりを新しく……」
『すみません、聞いてます!聞いてます〜!!』

流石に冗談だとは思わなかったのか、観念して応えてきた。

「それがレイの新しい能力ですか?」
「シュテル」

シュテルが呆れた顔で俺を見てくる。

「凄いだろ?」
「ええ。魔力切れを起こすまではですけどね」
「うっ………!!」

返す言葉も無い。

「しかし凄かったで!!お兄さんもユニゾンリライズ使えたんやなぁ!!」
「ユニゾンリライズ………?」

はやてから聞いた、聞きなれない言葉に俺は首をかしげた。

「簡単に説明すればパーソナルカードに更にリライズする戦闘方法です。私も使えますが、まだ使えるのはごく少数ですね」
「………何で俺使えるの?」
「それはこっちが聞きたいですよ」

シュテルの言う通り、シュテルが知っているわけがない。

「………もしかして初めて使ったのか?」

それを聞いたのはシュテルでもはやてでも無い。

「ヴィータ、サンキューな。ハンマーは少しトラウマになりそうだけど、楽しかったわ」
「そんなのどうでもいい!!初めてのスタイルで戦ってたのか!?」
「そ、そうだけど………」

鬼気迫る勢いに圧倒されながら答える。

「ぐっ………次も絶対に勝つからな!!」

そう言ってヴィータは行ってしまった。

「何だ?」
「多分悔しかったんやろな………まさかあそこまで追い込まれるとも思っていなかったと思うし、何よりダークマテリアルズの関係者やったから………」
「それが何か関係してるのか?」
「………ヴィータはダークマテリアルズの面々、特にシュテルに関してはまだ一度も勝ててへんからなぁ………それも相まってどうしても感情的になると言うか………要するに負けず嫌いなんや」
「そうか………」

そう言う性格は嫌いじゃない。

「だったら俺も負けない様に頑張らないとな。………取り敢えず、先ずはこいつに使い方や技を詳しく聞かないとな。………それに魔力切れの原因も知っとかないとまた同じ事になりかねないし」
「そうですね。………それとレイ、その子の名前は何て言うんですか?」
「名前……………そう言えば聞いてなかったな。おい、名前は何て言うんだ?」
『よくぞ聞いてくれました!!私の名前はクロユリ!!漆黒に染まった堕天使のごとく、闇夜を生きる花と同じ名前です!!!』
「うん、意味分からん」

俺と同様にシュテルもはやても困った顔をしていた。
面倒なので詳しく突っ込むのは止めておこう。

「それじゃあ私達はこれで失礼しましょう」
「そうだな。これ以上長居したら夕飯に遅れそうだしな………」

スマホの時間を見ると時刻は17時半を回っていた。シュテルと公園で会ってから時間を確認してなかったが、かなり時間が経過していたようだ。

「ありがとうなはやて。また遊びに来るよ」
「ぜひまた遊びに来てな~」

と軽く挨拶をすませ、再びあのリフトの方へ行く。

「………ん?まさかこれ」
「大丈夫です、帰りはゆっくりですよ。もし不安なら奥にエレベーターもありますが………」
「普通の移動手段あるのかよ!!」
















「また面白い人が現れたなはやて~」
「………何であんたが居るんや?」

零治達を見送った後、はやてに1人の男の子が話し掛けて来た。

「何でって遊びにだよ。確かに俺はエロの探究者。忙しい身ではあるが、これでもチームのリーダーなんだ。情報集めは欠かさないんだよ」
「でもって本当は………?」
「佐助にお願いしてちゃんと可愛い子のバリアジャケット姿を写真に………」
「もしもし警察ですか………?」
「スマホ出すの早い!!………ってかマジで電話するなはやて!!」

男の子は慌ててはやてのスマホを奪おうと2人は鬼ごっこを始めるのだった………
 
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