龍が如く‐未来想う者たち‐
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秋山 駿
第二章 交わる想い
第四話 桐生を知る者
狭山は、以前の桐生を知る者だった。
近江連合と大規模な抗争の渦中に、2人は知り合ったという。
だが狭山は海外へと転勤、それ以来桐生とは会えなかった。
神室町へ休暇で訪れる最中に桐生の訃報を知り、足立組に近付いて真相を知る為に動こうとしていたのだ。
「情報を得る為、一番情報が集まる幹部に近付こうとした。狭山さん、思ったより行動派ですね」
「あら、そんなに行動派に見えなかったかしら?」
「あ、いえ。想像以上だったもんで」
狭山は酒を飲み干し、少し笑った。
「一馬が……あの人が、簡単に死ぬ訳ないのよ。私は、生きてると思ってる」
「えぇ、俺もそう思います。だから今、桐生さんを捜してるんです。力になってもらえますか?」
「勿論、喜んでお手伝いします」
バーを出た2人は、その足で足立の事務所へと急いだ。
事務所では、大吾が目を覚ましていた。
ソファーに項垂れて座り、まだ目は虚ろになっている。
無理をするなと麻田が言い続けているが、大吾はもう大丈夫としか言わなかった。
秋山は狭山に、ここにいる3人を紹介する。
「アリス、こちらが麻田さん」
「貴方が、麻田さんだったのね」
東城会に本名はバレたくない。
秋山に、本名を伏せるようお願いした狭山。
理由はわからなかったがそれを承諾し、基本的にはアリスと呼ぶ事にした。
だがこの嘘もいつかはバレると、お互い覚悟している。
「それで、こちらが東城会のトップの……」
「堂島大吾さん、ですね」
「な、何故名前を……?」
狭山は何も言わず、ただ不気味に笑う。
しかし秋山には、狭山が漏らした言葉を聞き逃さなかった。
「あの時の……側にいた、ね……」
その言葉の真意はわからなかったが、狭山は大吾の事を知っているようだ。
目を丸くしてジッと狭山を見る大吾を、秋山は遮るかのように遥を紹介する。
「それで、この子が……」
「狭山……さん?」
その言葉に、思わずドキリとする。
狭山も息を漏らし、何かを思い出したかの様な溜め息を吐く。
秋山の方を見た狭山は、小さく頷いた。
もう嘘はお終い。
まさかの知り合いの存在で、呆気なく嘘がバレてしまった。
麻田は相変わらずキョトンとしているが、大吾は何かを思い出す。
「貴方、確か関西で桐生さんと……」
「騙すつもりはなかったんよ。だけど一馬と関わった私だから、あの人に迷惑をかけたくない一心でアリスと名乗ってた。だけど私を知る人がいるんなら、そんな嘘もすぐバレるわね」
見上げる遥の頭を撫で、改めて再会の喜びに浸る。
「一馬の側にいたわよね、遥ちゃん」
「狭山さん、私の事……」
「大きくなったわね。全然気が付かなかったわ」
狭山は目尻に、涙を浮かべていた。
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