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リリなのinボクらの太陽サーガ

作者:海底
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リスタート

 
前書き
最近はまだ寒いので風邪には注意して下さい。テスト当日にひくなんて、ベタなミスをやらかさない様に……。

ボクタイセリフ集を見直していたら、致命的なミスがあったので『事後処理』の会話を修正しました。ジャンゴから月光仔(マーニ)の血を吸血して記憶を取り戻したリンゴの件が前例にあったので……。

土台とかがようやく整ってくる回。 

 
新暦67年9月9日、9時09分。

先日、スカリエッティに依頼していた義手がマザーベースに届けられた。持って来てくれたのはセミロングの水色の髪の女性で、セインと名乗っていた。新顔の彼女はマキナの下に義手を届けた後、明るい性格のおかげもあってマザーベースの仲間達と訓練や遊びを通して打ち解けていったため、帰る頃にはすっかり仲良しになっていた。

なお、医療プラットフォーム内で行われていたなのはのリハビリを、アバラが完治したジャンゴ達が傍で見守っていたため、セインが来ていた事を彼らは知らない。そのためマキナとアギトは着ける前に念のため義手に不具合が無いか調べておき、その結果異常は一つも無かった事でこの日になのはに渡す事にした。……ちなみにロケットパンチ機能は密かに搭載されており、マキナはスカリエッティの健闘を頭に思い浮かべて自然と敬礼していた。

そんな事があって今日この時、なのははこれまでのフックみたいな簡易的な義手から、外見は人間の腕そっくりの新しい義手に取り換えたのだった。

「どう? 新しい義手、ちゃんと使える?」

「うん……まだ着けたばかりだけど、すごいよこの腕。見た目も手触りも動かす感覚も、まるで本物の腕そのものだよ」

「それを作った人の説明によれば、装着者の魔力を内部の神経回路と繋げる事で本物同然の感覚を与えているらしい。で、そのために魔力を体内電気信号に変換して流すためのエレクトロニクスが接合部に取り付けられているんだけど、同時に血中のアドレナリンやドーパミンといった物質を調整して痛覚などを抑制させる事で、義手を動かす際の僅かな違和感さえも抱かせないようにしてくれている。また、これは私達も言われるまで気付かなかったんだけど、高町の体内を流れるSOPナノマシンが“裏”のせいでIDロック機能が動いてリンカーコアを抑制する働きをしているんだ。だからこの義手から流れる“SOP停止電波”がそれを無力化、リンカーコアから魔力を通常通りに引き出せるようにしてくれて―――」

「姉御~姉御~、なのはの頭から湯気出てるぞ~」

「うにゃぁ~……いきなり滝のように説明されても、ちんぷんかんぷんだよぉ……」

「ごめん、僕にも正直さっぱりわからないや……」

「じゃあ噛み砕いてわかりやすく説明すると、その義手は魔力で神経を繋げている訳だから、本物のように感覚が伝わってくるわけ」

「あ、そうだったんだ。でもこれって結構すごい技術じゃないの?」

「いや、すごいなんてもんじゃない。これが発表されて公に作られるようになれば、身体が欠損しても高町と同じように機械でその部位を補えられる。例えば目を失っても、義眼を埋め込む事で視力を取り戻せたりね。今のままだとリンカーコアが無ければ使えないけど、カートリッジを電池みたく使えるように改善すれば万人に適用できるようになる。……流石は次元世界最高峰の天才科学者、さらっととんでもない開発をしてくる」

「?」

「で、もう一つ。体内のSOPナノマシンがIDロックでリンカーコアを抑制しているから、それを妨害する事で魔導師の能力も取り戻してくれている。つまりこの義手が無ければ、デバイスがあろうが高町はSOPのせいで魔法を使えなかったんだ」

「SOPが? 使ってた頃はかなり便利だったけど、今は逆に邪魔してきてるんだね……」

「管理機能を極めているシステムだから、管理局にとって色んな意味で好都合だったのさ。今回みたいに管理局にとって邪魔な魔導師は魔力を抑制して無力化する、という感じにね」

「最初聞いた時は便利かもと思ってたけど、いざ自分の身になると、これって実は怖い事なんだと実感してきたよ」

「そういえば気になったんだけど、アウターヘブン社の人達はSOPを使ってるの?」

「地球で活動する場合はPMC法が決められた事もあって地球産のものを使っている。だけど一方で、管理局製のものは誰も使ってない。大体、そっちを使ったら暗に管理局の支配下に置かれるようなもので、そんな風に全体主義に取り込まれるのを嫌がる人がここに来ているんだもの。使わないのも当然だ」

「そっか……ところで地球産と管理局産との違いは何?」

「一言で言えば統括サーバーが違うんだ。地球産は開発元のATセキュリティ社のサーバー、管理局産は管理局のサーバーを使っている。それによって効果範囲なども変わってくるけど全部説明しようと思ったら非常に長くなるし、とりあえず諸々ひっくるめてまとめたらサーバーの違いに集約するってわけ。あとは自分で調べるんだね」

「わ、わかった……善処するよ」

「あと、その義手にはデバイスの機能も搭載されている。タイプはストレージデバイスだからレイジングハートのようなインテリジェントデバイスとは気色が異なる所に注意。あと、シュテルとディアーチェが以前高町が使ってた魔法をインストールしてくれているから、コントロールのサポートこそ最小限にはなったけど、代わりに発動は早いから前と同じように使えるはずだ」

「ストレージ……わかった。マキナちゃん……この義手をくれて、本当にありがとう」

なのはの感謝の言葉が場を締めてから、各々解散してそれぞれの行動をする。なのははリハビリも兼ねて新しい義手に慣れるために運動をし、ジャンゴは改造が終わったブレードオブソルで魔法の使い方をアギトから学び、おてんこはそんな二人が努力する姿を見守る。そしてマキナはさっきの部屋を動かずに、スカリエッティへ通信を送っていた。

「高町がさ、“ありがとう”って言ってたよ」

『そうか……これまで色んな研究や発明をしてきたけど、お礼を言われたのは初めてだよ』

「ふ~ん、天才科学者なのに意外だ」

『これでも囚われの身に近い扱いだからね。いつもはあの脳ミソ連中に命令されて作って、命令されて作って……そんな事ばかり繰り返してきた。そしてどんなに良いものを作っても、お礼を言われるような事は一度も無かった。だから……新鮮なんだ。君達に頼まれて作って、それでお礼を言われるなんて経験は』

「そっか……」

『不思議だよ、今までずっと求めていた達成感をこんな簡単に感じられるなんて。今の私はまるで無垢な子供のように、純粋な喜びを感じている』

「それは承認欲求が満たされたから、じゃないかな? 認められたい、頼られたい、そんな自己顕示欲みたいな感情がずっと燻っていて、それが満たされたからあんたは喜んでいる。違う?」

『いや、十中八九その通りだろう。どうやら私の思考は、自分が思っていた以上に単純だったらしい』

「単純でもいいじゃん。私だって似たようなものだし、高町やジャンゴさんも例外じゃない。それにさ、もっと喜ぶ出来事が起きる可能性もあるよ」

『ほう? それはどういうものだい?』

「高町がかつての名声を超え、世界に舞い戻った時。それはある意味、あんたの技術で作られた義手が世界に認められた瞬間とも言い換えられる」

『クックックッ、なるほど。それはまた随分と楽しみな事を言ってくれるじゃないか……! 良いだろう、面白い事を教えてくれた礼にこちらから少し情報提供をしよう』

「情報?」

『黒き戦乙女……この意味を君は知ってるだろう?』

「カリムの預言で聞いた事がある。加護がどうのって……それが?」

『実はこの少女が実際に現れたのだよ。まぁ、すぐに消え去ったのだけどね』

「現れて……消えた?」

『そう、まるで様子だけを見に来たように、一瞬でいなくなったのさ。……任務が終わった直後の八神はやての視界から』

「は、八神? なんでここに八神が出てくるんだ? というか何で他人のあんたに八神の見てる光景がわかるのさ」

『ちょっと色々あってね。まあとにかく、あまりに一瞬だったので八神はやてはカラスか何かの見間違いと思って気にせずにいるけど、空間を分析して実際に存在していた事は確認している。私としては非常に興味深い対象だから、もし遭遇するような事があれば会話や外見、能力などの記録を送ってもらいたいのだが……そこまで求めるのは贅沢か。ま、ひとまず黒き戦乙女が現れた、これが今回の情報提供の内容さ』

「そう……まあ黒き戦乙女の正体には私も興味はある。彼女が現れたというなら、もしどこかで会えた時に話してみるのも良いかもしれない。サンキュ、良い情報ありがとね」

そうしてマキナとスカリエッティは、内密の通信を切るのであった。



新暦67年9月15日、12時05分。

ジャンゴ達がマザーベースで暮らし始めてから約二週間が経った。甲斐甲斐しくマキナがジャンゴ達の世話を手伝った結果、ジャンゴは非殺傷設定の使い方などを覚え、なのはは撃墜する前までの身体能力を取り戻し、以降は比較的穏やかな生活を送っていた。

『―――ミッドチルダの質量兵器導入に関して本局から否定の声が上がる中、レジアス中将は「本局の主張はわからなくもないが、魔法だけで治安が守れるなら最初から導入していない。年々上昇していた凶悪犯罪と犠牲者の数を減らすために、そして市民の生活と治安を守るために必要だから契約したのだ」と述べ、この発言に対し本局は「まことに遺憾だ、質量兵器なんかに頼っていては治安を守れないに決まってる」とコメント。しかしミッドチルダの市民からはレジアス中将を支持するという意見が95パーセントを超えており、中には管理局法の是正を求める声も多数上がって―――』

休憩所でテレビから聞こえてくるニュースに、なのはは地上と本局の仲が悪い事は知っていたが、ファーヴニル事変で一度は協力し合ったはずなのに最近その溝がまた深まってきているように感じていた。マキナ達アウターヘブン社にとっては管理局地上本部はお得意様みたいな関係で、同時に次元世界を自由に渡り歩く自分達を快く思わない事もあって本局とは基本的に仲が悪い。尤も、理解を示して契約してくれる局員も中にはいるので、その人まで嫌っている訳ではない。

「マキナのおかげである程度わかったつもりだったけど、次元世界は想像以上にこんがらがっているんだね」

「本局の連中が頭カタ過ぎるだけなんだよ。いくら昔に質量兵器で戦が云々って言われても、結局は使う側の問題。魔法でも同じ……いや、むしろ魔法の方がそれ以上の破壊を簡単に起こせる。相手を救うも傷つけるも、最終的には当人の使い方次第なのさ」

「使い方次第……。私は……私の魔法は誰かを救うために使ってきたつもりだけど、マキナちゃんが前にアギトの自爆魔法を摘出したり、立ち寄った管理外世界の怪我人に治癒魔法を使ったりした事を聞くと、自分はちゃんと救えてるのかわからなくなっちゃうよ」

「変に思いつめなくても良いぞ、なのは。姉御はただ自分の気持ちに正直に行動してるだけだし。なのはが管理局で事件を解決した事で救われた人も、直接見たり会ってないだけでいっぱいいるだろうさ」

「ふむ、どうやら本局は管理局法やロストロギアにばかり意識が向いてるらしい。確かに回収しておくのは次元世界の平和に繋がる、というのはわからんでもない……。が、どうも他者の気持ちをあまり意識していないような印象もある。もう少し動向を見ておく必要があるな」

そんな風にジャンゴ達が自分の胸の内を語ったりしている、その時……唐突になのはが言う。

「あの、皆に話したい事があるの」

「?」

「高町、その話って大事な話?」

「うん……」

その返事を聞いたマキナは、なのはを真剣な表情で見つめる。ジャンゴ達が黙って見守る中、話が始まった。

「内容を察するに……今後の身の振り方を決めたって事?」

「……うん。そろそろ決めないと、って思って新しい義手をもらった時から考えてた。それで思ったんだ、避難案を選べば私はもう危ない事をしなくて済むって」

「そっか。確かに高町は十分頑張って来たんだし、“裏”の思惑のせいで死にかけて左腕も失ったんだから、このまま地球に帰って安全に暮らしても誰も文句は言わないさ」

「うん、最初は私もそこまで考えた。でもね、それでいいのかって思ったんだ。あの病院の人達みたいに、私を守って犠牲になった人達に何もしないで逃げるように隠れるなんて……その……」

「納得がいかなかった?」

「……うん、でもそれだけじゃない。私が隠れた所で、“裏”は未だに残り、暗躍し続ける。その“裏”が私だけじゃなくて、今度はフェイトちゃんやはやてちゃん、まだ何も知らない皆にも襲い掛かる可能性がある。そんなのやっぱり放っておけないよ」

「理屈は分かった。しかしそれは何も高町がやらなくても、私やシュテル、アウターヘブン社の皆でも十分対抗できる。むしろそういう方向の対処に慣れている私達がやった方が、わざわざ高町が出張るより成功率は高いかもしれない。それも考えた上で言ってる?」

「それは……うん、そのつもり」

「本当に? 意固地になってたり、頑固に押し通そうとしてるだけなら私は止めるよ。生半可な気持ちで来られたら、せっかく助かった命をドブに捨てるようなものだから、そんな事にならない様に力づくでも静止する。……いい? 私は八神のように友達だから、知り合いだからって特別気に掛けたり、味方に徹する程優しくない。今回みたく、時には本人の意思に反して止める事だってある。実際、管理局で働き詰めだった高町は自らの意思を通し、周囲が無理やりにでも静止しなかった結果……ニブルヘイムで撃墜するという事態を招いた。“裏”との戦いはシビアだ、仲良しこよしでやってたらすぐ奴らの闇に飲み込まれる。管理局で今までやって来た戦い方じゃ生き残れないんだ。そこまで自覚して、終わりまで戦い続ける覚悟を抱ける?」

「マキナちゃん……そこまで言ってくれてありがとう。でも私、何も出来ないのは嫌なんだ。だから……誰にもわからなくたって良い、私の戦いを知らなくても良い、皆を守るために覚悟を決めたよ。愚かだった自分と決別するために……そして大事な人と生き残っていくために、理不尽な運命と戦う。マキナちゃんは私を助けてくれたけど、それでも再び私は魔法を手にする。もう誰も失いたくない、今度こそ絶対に守る! そして、私も生き残って見せる!!」

「そう…………何を言っても、その気持ちは揺らがない?」

「うん! これは私が選んで、決意した。家族を前にしても、この意思を曲げるつもりは無い!!」

そう断言したなのはの目には、強い決意の光が爛々と放たれていた。正面からその光を受け止めたマキナは、

「(デジャヴか……いや、違う。彼女も、あの時の私と同じだ)」

と、脳裏でニダヴェリール脱出時に自分が戦う決意を抱き、サバタに宣言した時の光景が浮かんでいた。

『サバタ様……私、もう何も出来ないのは嫌だ。だから……戦う覚悟を決めたよ。無力だった自分と決別するために……そしてシャロンと生き残っていくために、理不尽な運命と戦う。サバタ様は私を戦いから離してくれたけど、それでも再び私は銃を手にする。シャロンだけは何としても失いたくない……彼女だけは絶対に守りたい! だから……お願いします!!』

『……そうか。何を言っても、その気持ちは揺らがないんだな?』

『はい……! これは私が選び、決意したものです! 何者でもこの意思を変える事は出来ません!』

『わかった。そこまで言うならデバイスに解除コードを入力しよう、だがもう後戻りは出来ないぞ?』

『全て承知の上です!』

そこまで思い出して今の状況と配役が一部変わっているとはいえ、かなり一致していると思い至った途端、マキナは唐突に笑い出した。

「はは……あははは!!! なるほど……今度は私の番なんだね。あの時のサバタ様の気持ちが、今になってようやくわかった気がするよ」

「マキナちゃん?」

「わかった……高町の決意は我が身の様に理解した。……良いよ、高町が“報復案”を選んだ覚悟を、私は認める。そして認めた以上、私も全力を以って協力するよ……なのは」

「ッ!? マキナちゃん……! ありがとう……!!」

今まで苗字で呼んでいたマキナが名前で呼んでくれた事から、なのはは彼女に本当に認められたという喜びを抱き、それを隠さず顔に浮かべた。ジャンゴとしては一度死にかけた彼女が再び戦う事に内心懐疑的ではあったが、それなら自分が守れば良いと密かに決意しており、おてんこはそういう彼の気持ちを察したがあえて何も言わずに見守る事にした。

「じゃあ早速だけど、一度地球に帰ろうか」

「ってアレ!? なんでそうなるの!?」

唐突に地球に行く話になって、なのはは思わず仰天してしまう。アギトはマキナの意図を理解しているため、先んじてどこかに連絡を送っていた。

「なんでって、あのさぁ……まさか家族に何も知らせないつもりだったの? 家族はなのはが死んだと思って悲しんでるんだから、会ってからでも別に遅くは無いでしょ?」

「そ、それはそうだけど……前に友人と再会するのは危険だ~って……」

「それは管理局に所属する連中に限った話。八神達に伝わる事で“裏”にも知られる事を警戒して言っただけで、地球にいて管理局と関わりが無い友人や家族を含んではいない。第一、家族の下に帰るのが危険なら“避難案”も成立しないでしょうが」

「あ……」

「はぁ……なのはってどこか抜けてるよね。まぁそこが面白くて可愛いんだけど」

少し考えれば思い付く事に気付けず、赤面するなのはの頭を愛でるような手つきで撫でるマキナ。この面子の中で彼女は最も年下なので子供扱いされるのも仕方ないと思い、とりあえずされるがままになっていた。

「アギト……マキナって、実は母性本能に目覚めてたりするの?」

「いや、母性本能と言うより単なる性格じゃね? 姉御、あれで結構子供好きだし」

「好きの意味が少し違う気もするが……彼女の性格は元からああなのか?」

「多分な。姉御は憧れているサバタって男が愛情を注いでくれたおかげで今の自分があるって思ってるから、同じように姉御も誰かに愛情を注ぎたがってるんだろうさ。でも、そのおかげでアタシは救われてる。実は時々実験されてた頃の悪夢をまだ見るんだ。永遠に続くような、痛くて、怖くて、辛い記憶……だけどその時、姉御はいつも傍に居てくれる。そしたら怖くなくなる……心から安心できる。だから姉御は……本当に良い女だよ」

「なるほど、彼女はサバタの文化的遺伝子(ミーム)を受け継いでいる訳か。……あいつがこの世界に遺した心は、新たな太陽を芽吹かせているのだな」

「………サバタ……」

その後、家族に関して人一倍思う所があるジャンゴは、なのはが家族と再会すべきだというマキナの意見に賛同した。それによってなのはも別に嫌がってはいないので折れ、地球へ向かう事に決めたのだった。

「シュテルに地球に出発するとの連絡を送っといたぜ。出かけるなら気を付けてください、だとよ」

「流石、アギト。言う前にやってくれる所はホント、気配り上手だね。さて、それじゃあ早速地球へ行こうか!」

「ちょっと待って! マキナちゃんとジャンゴさんはバイクで行くつもりみたいだけど、私はどうすればいいの?」

「あの時のように前に座るか、もしくは後ろから抱き着いて二人乗りすればいいんじゃない?」

「二人乗りかぁ……でもマキナちゃんのバイクに乗るのはちょっと怖いかな……」

「ああ、マキナの運転はちょっと激しいからね。じゃあ僕と一緒に行こうか、なのは」

「お言葉に甘えて、よろしくお願いします、ジャンゴさん」








新暦67年9月15日、12時42分。

地球、海鳴市の空き地。

「地球よ、私は帰ってきたぁああああああああ!!!!!!」

「ね、ねぇ……なんでおてんこさま、急に叫んでるの?」

「魂の衝動って奴でしょ。ああいう突発的なのは放っておくのが一番」

「あはは……まぁ偶には叫ぶのもいいと思うよ?」

「そう言うジャンゴも疑問形じゃねぇか。説得力ねぇじゃん」

到着した矢先に気楽な事を話すジャンゴ達だが、この時期の日本はまだ残暑が厳しいため、彼らはここに来る前から夏向けの服装にしている。ジャンゴは昔の格好とかなり似て動きやすく、マキナは快適性を重視してタンクトップにホットパンツと露出多めで大胆に、アギトは身体を大きくしたフォームの状態で赤いカーディガンを中心にしたコーディネート、なのはは白い大きな帽子を被って暖色系のワンピースという清潔感のある服装にまとめてある。ちなみになのはの服はディアーチェが用意したもので、家族との再会に変な格好をさせる訳にはいかないという配慮が入っている。

まあそんな訳で再会ついでに昼食もそこで済まそうと翠屋へ向かうジャンゴ達に、周囲からある程度の注目は集まる。しかし彼らにそんな事はどうでもよく、翠屋の前へ普通にたどり着いたのだった。

「な、なんだかドキドキしてきたよ……」

「こういうのは勢いが肝心。じゃ、お先~♪」

「え、ちょっと!? こんな時って普通、心の準備が整うのを待ってくれたりするものだよね!?」

「いい、なのは? 私は腹が減った。要するにさっさと飯食いたい!」

「単純明快な動機だね! 時々その性格が羨ましく感じるよ……」

「まぁ、なのはが緊張するのも何となくわかるけど……家族の喜ぶ顔が見れると思えば少し緊張もほぐれるんじゃない?」

「ジャンゴさん……うん、そうだね。……すぅ~……はぁ~……よしっ! 行こう!」

深呼吸をして意を決したなのはもマキナに続いて店の扉を開ける。すると中から眼鏡をかけた女性の挨拶が聞こえてきた。

「いらっしゃいま……せ!? え、ええっ!!?」

「お、お姉ちゃん……あの……」

「いきなり叫んでどうしたんだ、美由希? …………なっ!?」

「おいおい、二人ともそんな所で固まってないで……ッ!? ま、まさかそんなはずは……!」

「お兄ちゃん、お父さん……」

「………なのは……なのか? 生きて……いたのか? 夢じゃない、よな!?」

「うん、よく見てお父さん。私、ちゃんと生きてるよ。生きて……帰ってきたよ……!!」

「「「なのはっ!!!!」」」

次の瞬間、高町美由希、恭也、士郎が凄まじい速度でなのはに抱き着き、確かにある生命の鼓動を感じて彼らは大声で涙を流した。家族全員そんな事をしていたら当然、厨房にいた高町桃子も気づいて様子を伺いに来る訳で、そして娘が生きていたという衝撃の光景を目の当たりにする。そうして母親たる彼女もまた、感激のあまり彼らの抱擁に参加した。

こうして高町家は、死んだと思っていた娘との再会を果たしたのであった……。
 
 

 
後書き
八神の視界:ナノマシン経由でスカさんの所に送られています。真実を知る者からすれば、プライバシーも何もあったもんじゃない。
文化的遺伝子:MGS2のテーマ。遺伝子では伝わらない意志や記憶のこと。サバタはある意味ソリダスの目的のような事を果たしている訳です。

今の所大人しいですが、ジャンゴはいざという時にガッと行きます。 
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