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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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GLORIA

 
前書き
今日はバレンタインということでバレンタインネタをやりたかった・・・
が!!前書きでやれそうなことが思い付かなかったので却下。
ストーリー的にバレンタインの季節になったら何かやってみよう。原作ではそんな季節来たことないですが。 

 
バタンッ

水と天空の2つの属性。それを合わせたドラゴンさえ倒してしまうほどの魔法を喰らったレオンは地面へと倒された。

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」

その魔法を放った少年は拳を振り切った状態で地面に仰向けになっている金髪の少年を見下ろしている。

「・・・」

倒れた少年は目を閉じたまま微動だにしない。それは、2人の死闘を終えたことを物語っていた。

『シリルだぁ!!蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のサブリーダー!!レオン・バスティアを下し、3ポイント追加!!』

これにより魔水晶(ラクリマ)ビジョンの順位にまたしても変動が起こる。

1位 妖精の尻尾(フェアリーテイル) 63P
2位 蛇姫の鱗(ラミアスケイル) 61P
3位 剣咬の虎(セイバートゥース) 59P

『逆転!!逆転!!妖精の尻尾(フェアリーテイル)がまたしても首位に返り咲き!!』
『さらにはグレイとジュビアがサブリーダーのリオンとシェリアを倒したことで4ポイント加算カボ!!』
『トータル67ポイント。こりゃすごいねぇ』

実況席もまさかの展開に大興奮。同じように観客たちも圧倒的実力を保有していたレオンをシリルが戦闘不能にしたことで大盛り上がりだ。
そして、残された最後の戦いにも終止符が打たれようとしていた。



















くだらない(ロ・ホウセト)くだらないんだよ(ロ・ホウセティア)!!」

金を主とした鎧を身に纏ったエルザに対し、ミネルバは叫びながら魔力を一点に集中させていく。

「これで終わりだ」
消えろ(イ・ラーグド)!!」

先程までの爆発よりも上をいく攻撃を試みるミネルバ。しかし、上がった爆風が突然真っ二つに切り離される。

「え?」

何が起きたのかわからず、驚愕するしかないミネルバ。エルザはミネルバの魔法を・・・空間を切り裂いたのだった。

「バカな・・・そなたのどこに・・・そんな力が残って・・・」
「お前は、私の大切なものを傷つけすぎた」

静かな威圧感を放つエルザ。彼女のあまりの迫力に、ミネルバは思わず1歩後ずさる。

「よ・・・よせ」
「報いを受けよ」
「やめろ・・・妾は・・・妾は!!」

冷や汗を浮かべ表情を強張らせるミネルバ。エルザは全ての怒りを手に持つ武器へと込める。

天一神(なかがみ)・星彩!!」

彼女の渾身の一撃は、ミネルバを確実に捉えた。エルザの攻撃を受けた彼女はその勢いに押され空中で体を何回転もさせ、地面へと叩き付けられる。

「う・・・う・・・うぅ・・・」

突っ伏して動くことができないミネルバ。エルザはその様子を表情を崩すことなく、静かに見届けていた。

『エルザだぁ!!剣咬の虎(セイバートゥース)のリーダーを倒し、5ポイント獲得!!現在妖精の尻尾(フェアリーテイル)が72ポイント!!
強い!!妖精の尻尾(フェアリーテイル)強すぎる!!1人も倒されずに優勝となるかぁ!?
他のギルドの魔導士たちもほぼ全滅!!残るは剣咬の虎(セイバートゥース)のスティング、ただ1人』

怒濤の連続勝利で次から次へと得点を加算していく妖精の尻尾(フェアリーテイル)。その様子を耳にしたスティングは建物の影で1人、不敵な笑みを浮かべていた。




















シリルside

「やった・・・」

目を閉じて一切の動きを見せないレオンを見て、勝利を掴んだことに徐々に実感が湧いてきた俺は、両手を合わせ天を仰ぐ。

「やったな、ガキ」

そんな俺の頭に後ろからガジルさんが手を置く。しかし、傷だらけの彼はかなりフラついており、俺を杖がわりにしているようにも感じられた。

「しかし・・・一撃で決められるわけねぇと思ってたのに、最後は案外あっさりしてたな」
「そうですね」

ガジルさんの鉄影竜の咆哮を受けても全くダメージを受けている様子がなかったレオン。俺の改良された滅竜奥義を零距離で受けたからって倒れるのか疑問だったけど、意外と効果的だったのか、あっさりと崩れ落ちていった。

「スゥ・・・スゥ・・・」
「「ん?」」

レオンの方から何かゆっくりと、規則正しく呼吸を繰り返す音が聞こえ、そちらに耳を澄ませてみる。
すると、なぜレオンが俺の一撃で沈んだのか、はっきりとわかることができた。

「こ・・・こいつ・・・」
「寝てやがる・・・」

どうやら彼の呼吸している音というのは、寝息だったようだ。
目を閉じて微動だにしなかったのはこれが原因か・・・気絶したとかじゃなく、眠ってるって辺りがこいつの化け物具合をさらに際立たせているな。

「そういえば・・・レオンの奴、今日ずっと眠そうでしたもんね」
「あぁ。隈がヤバかったしな」

レオンは今日の最終日を寝不足の状態で参加していた。入場の時なんか目の下が真っ黒になって全く覇気が感じられなかったぐらいだし。
ただ、戦っている中でそんなものは気にする余裕がこちらにはなかった。それを感じさせないくらい強かったのもあるけど、それ以上に集中力が高かったのが一番の要因かな。

「このガキ・・・お前の奥義でやられたんじゃなくて集中が切れて眠っただけとかじゃねぇだろうな?」
「やめてください。ありえそうでイヤだ」

奥義を放った時、確実に手応えはあった。普通の相手であれば間違いなく倒せるだけの手応えが。ただ、レオンを倒す上ではそれで足りるか予想ができなかった。もしかしたらガジルさんの言った通り、限界まで来ていた眠気が、俺の奥義を受けたことで集中力が切れ、彼を襲ってきた影響で倒れてしまったのかもしれない。その答えは、レオンだけが知っている。

「それでも勝ちは勝ちです!!俺たちの意地の勝利ですよ!!」
「だな」

拳を合わせて笑顔を見せる俺とガジルさん。でも、2人だけの力ではなかった気がする。あの睨み合っていた時、俺の方が集中力が間違いなく乱れていた。レオンは全然そんな様子もなかったし、あと1分・・・1分あの膠着状態が続いていたら、耐えられなくなって俺が突っ込んでしまったのは間違いないだろう。
レオンが俺から目線を切ったのは、シェリアの身に何かが起こったから。つまりジュビアさんが彼女を倒してくれて、直感が高まっていたレオンはそれを感じ取ってしまい、結果倒すことが出来たんだろうな。

「しかし・・・あれだな・・・」
「はい・・・」

1つ息をついたガジルさんと俺。俺たちは互いに視線を合わせた後、レオンと同じように地面へと崩れていく。

「「もう動く気力がないです(ねぇ)・・・」」

あまりにも激しすぎたレオンとの戦い。それを終えたボロボロの俺たち2人は大の字になり、しばしの休息を取ることにした。




















第三者side

『ヤジマさん、これはもう・・・』
妖精の尻尾(フェアリーテイル)はかなり優勝に近づいたねぇ』

興奮しているチャパティは解説者のヤジマにマイクを押し付けるように話を振っており、彼はかなりしゃべりずらそうにしている。

『す・・・すごいカボ・・・』

実況席にいるゲストのマトー君。彼はいまだに誰1人として倒されてない妖精の尻尾(フェアリーテイル)の6人を見て、ただただすごいと思うことしかできない。

「優勝・・・」
「俺たちが・・・」
「ずっと最下位だった俺たちが・・・」
「バカ!!泣くのはまだ早ぇ!!グスッ」

2位以下に10ポイントもの大差をつけ、さらには全メンバーが生き残っている妖精の尻尾(フェアリーテイル)。昨年まで万年最下位の不名誉な称号を持っていたギルドの魔導士たちは、現実味を帯びてきた“優勝”の2文字に昂る感情を抑えきれない。

「まだ、1人残ってる」
「でも、たった1人であのメンツ相手に何ができるってんだ?」
「そうだそうだ!!」
「もう妖精の勝ち決定だよ!!」

妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバー以外でまだ生き残っているのはたったの1名。シリルたちは波に乗る蛇姫の鱗(ラミアスケイル)の魔導士たちや完全優位な状況で現れたミネルバをも下すほどに力がある。そんな魔導士たちを1人で相手するのはみんな無理だと考え、会場は妖精の尻尾(フェアリーテイル)コールに揺れていた。
そして日が完全に落ち、夜になろうとしていた時、1人の観客があることに気付く。

「ん?」
「どうした?」
「なぁ、あの点差」

1位の妖精の尻尾(フェアリーテイル)が72ポイント。対して唯一他のギルドで残っている3位の剣咬の虎(セイバートゥース)は59ポイント。その点差は13ポイントとなっている。

「13点差がどうかしたのか?」
「あのさ・・・仮にスティングが妖精の6人全員を倒したらどうなるんだ?」

今大会最終日の得点はリーダーを倒すと5ポイント。サブリーダーを倒すと3ポイント。そしてノーマルを倒すと1ポイントとなっている。妖精の尻尾(フェアリーテイル)の残り人数はリーダーが1人、サブリーダーが2人、そしてノーマルが3人。これらを計算するとスティングが獲得できる最多ポイントは・・・

『14点!?スティングが妖精の尻尾(フェアリーテイル)全員を倒せば14点獲得!!剣咬の虎(セイバートゥース)の逆転優勝となります!!』

思いもよらなかった展開。あまりにもこれまでの戦いが激しすぎたために大半の人々は点数なんか気にしていなかった。それが今になって、奇跡の逆転劇の可能性が残されていたことにドムス・フラウ全ての人々が驚愕している。

『まさかとは思いますが・・・』
妖精の尻尾(フェアリーテイル)は全員負傷してるからねぇ』
『全員倒すつもりカボ!?』

にわかに騒がしくなってきた観客席。スティングが姿を現さないことに皆違和感を感じてはいたが、この状況を作り出すために隠れていたのかと考えると騒がしくならない方がおかしいとも言える。

すると、時は来たと言わんばかりにクロッカスに1つの大きな花火が打ち上がる。そこには剣咬の虎(セイバートゥース)のギルドマークが映し出されていた。

「俺はここにいる!!来いよ!!妖精の尻尾(フェアリーテイル)!!」

ついに姿を現した白竜(スティング)。彼の声を魔水晶(ラクリマ)ビジョンで確認したエルザたち4人、そしてその信号弾を見て事態を把握したシリルとガジルがゆっくりとその方角へと向かって歩き出す。

歩くことすらおぼつかないほどにボロボロの妖精たち。肩を取り合いゆっくりと歩を進めるものたちもいれば、落ちていた木の棒を杖の代わりにして向かうものもいる。

「どはっ!!」
「ぐはっ!!」

中でもこの2人は無茶苦茶だった。他の妖精たちはアザや傷でなんとか済んでいるにも関わらず、2匹の竜は普通なら致命傷でとうに気絶していてもおかしくない状態。それを支えているのは、仲間のために負けられないという強い想いなのかもしれない。

「う・・・動けねぇ・・・」
「水がほしい・・・」

地面に伏しながらそんなことを言う鉄竜と水竜。彼らはそれでも諦めまいと這いつくばるように進んでいくが、当然長い距離が持つわけもなく、すぐに止まってしまう。

「何やってんだ、おめぇら」
「「!!」」

そんな彼らの後ろから現れたのは、妖精の尻尾(フェアリーテイル)に所属しているもう1人の竜、ラクサスだった。彼は倒れているガジルとシリルの首元を掴み立たせると、背の高い方には肩を貸し、低い方には腰元に捕まるように指示する。

「ラクサスさん」
「ったく、めんどくせぇ奴らだな」
「うるせぇな。まぁ、感謝はしとくけどな」

雷竜も全身ボロボロではあるが、彼らに比べれば傷も少なく、立って歩くこともなんとかできる。第一から第三までのすべての世代の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)が共に信号弾が上げられたその場所へと向かって歩いていく。
そして、全ての人々が見守る中、満月の光に照らされたスティングの元に、6人の傷だらけとなった妖精たちがやって来る。

「壮観だね。みんな、俺が7年前に憧れた魔導士ばかりだ」

自分の目の前で、彼と対峙するために立っているシリルたちを見てスティングがそう言う。

「御託はいい。これが最後の戦いだ」
1対1(サシ)でやってやる。誰がいい?」
「まとめてでいいさ。そのケガで1対1(サシ)はつまらねぇ」

余裕綽々のスティング。それを聞いたジュビアは肩を貸していたグレイから1歩前へ出て、彼を見据える。

「あまり妖精の尻尾(フェアリーテイル)を、ナメないことです」
「とんでもない。あんたらには敬意を払ってるよ。だからこそまとめて潰す!!」

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)特有の八重歯を見せながら不敵な笑みを浮かべつつ言葉を発していくスティング。

「この時を待っていた!!レクターに見せてやるんだ!!俺の強さを!!」
「レクター?」
「そういえば・・・あの子見てないような・・・」

突然名前が挙げられたスティングの相棒。それに対しグレイは訝しげな表情を浮かべ、シリルは入場の時から姿を見ていないそのエクシードに首を傾げていた。

「何のことだか知らねぇが、本気か?」
「本気だ!!俺は強くなった!!レクターを失うことで、新しい強さに覚醒したんだ!!レクターのために!!親友のために!!俺はあんたらに勝つ!!」

声を大にして、自分の決意を言い放つスティング。それをただ黙って聞いていたエルザは、杖がわりにしている木の棒を使って半歩前に出る。

「よかろう。そこまでの覚悟があるのなら・・・相手になるぞ!!スティング!!」
「そうこなくっちゃ」

嬉しいからなのか、嬉々としてそう返すスティング。そんな彼とは対称的に、シリルたちは全員表情を崩すことなく彼を見据えている。

「見せてやるぜ、覚醒した俺の力」

彼の周りに光の輪が現れ、スティングを照らしていく。彼のその魔力の高さは、4日目にシリルと戦った時のそれを遥かに上回っていた。

「へへっ」

大いなる光に包まれた彼は、自分が負けることなど一切考えていないようで、表情にも自身が溢れていた。
そしてゆっくりと目を開けて敵を見据えた時、彼は思わず息を飲んだ。
傷だらけで、立っているのがやっとのような妖精たちが、動じることなく彼を見据えていたからだ。
思わずハッとしたスティングは、自身を包み込んでいた光を閉まってしまう。

(全員・・・もうボロボロじゃねぇかよ・・・)

ここに来るまでに激しい死闘を繰り広げてきた彼らは、魔力も体力も、そして肉体も限界を迎えていた。それなのに、一切の傷を負っていない自分が、逆に圧力で押されてしまっている。

(押せば倒れるくれぇにボロボロで・・・ここまで来たんだろ?)

彼の手が少し触れれば、瞬く間に地面に伏してしまうような、それほどの状態。なのに、彼らはそれを感じさせないほどに堂々としている。

(バカやろう!!何怯んでんだ!!)

目の前の敵の威圧感に負けそうになっていたスティング。そんな彼は右手を強く握り締め、プルプルとそれを震わせる。

(こいつらをまとめて倒せば、お嬢との約束を果たしたことになる。レクターに会えるんだ・・・そう、レクターに!!)

目を閉じれば浮かんでくる大切な相棒の顔。その相棒に対する想いが彼を、なんとか突き動かそうとする。

(進め・・・俺は強くなった・・・レクターへの想いが、俺を強く・・・)

顔を上げるスティング。その瞳に飛び込んできたのは、1列に並んで彼のことをずっと見ている妖精の尻尾(フェアリーテイル)の6人。

(強く・・・強く・・・勝てる・・・)

ゆっくりと、少しずつ目の前の敵に近づこうと足を擦らせながら前進していくスティング。

ガクンッ

しかし、そんな彼の足が止まり、スティングは地面に膝をつき、項垂れるように顔をうつ向かせた。

「勝て・・・ない・・・」

スティングが何を言っているのか、事態を把握しきれていない観客たちは黙ってことの成り行きを見守り続ける。

「降参だ」

スティングの口からその言葉が発せられたと同時に、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の得点に1ポイントが加算される。

ワアアアアア

それと共に歓声に包まれるドムス・フラウ。その中の一角では、多種多様な反応をしているギルドがあった。
7年間、辛い想いをしてギルドを守り続けてきたメンバーは溢れ出る涙を堪えられずいる。そして天狼島から帰還したメンバーたちは、ブランクをものともせずに大会を戦い抜いた仲間たちの戦いを振り返り、皆で笑顔を溢していた。

『決着!!大魔闘演舞優勝は・・・妖精の尻尾(フェアリーテイル)!!』

何発も打ち上がっていく大きな花火。さらには会場を埋め尽くさんと言わんばかりに舞い降りてくる紙吹雪。
今ここに、5日間に及ぶ熱き死闘に幕が下ろされた。妖精たちの悲願達成と共に。








 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか?
長かった大魔闘演舞もとうとう終わりを迎えてしまいました。
そろそろウェンディも帰還してくる頃ですね。
次回もよろしくお願いします 
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