真田十勇士
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巻ノ二十八 屋敷その二
幸村と十人の屋敷の中での暮らしがはじまった、早速薪を割ったり火を焚いたりその掃除をしながらだ。一行は修行もはじめた。
その中には特に幸村もいた、彼は時間があると常に書を読んでいた。猿飛は暇があると書を読む幸村を見て言った。
「いや、殿は学問がお好きじゃな」
「それはわかっていたことにしてもな」
清海も言う、猿飛に応えて。
「相当じゃな」
「古書も漢籍も読まれておられる」
「ふむ、だからじゃな」
穴山も唸って言った。
「殿はあそこまで学識がおありなのじゃな」
「いつも書を読まれているからこそ」
海野の言葉だ。
「様々なことにも通じておられるか」
「まことに頭のよい方であられるが」
根津は幸村が何故学識が深いのかあらためてわかった。
「あの様にして日々学ばれていたからか」
「仏典や儒学の書も読まれています」
伊佐は幸村が読んでいる書のことに言及した。
「兵法の書や軍記ものだけでなく」
「この前は源氏もも読まれておられた」
筧は幸村が源氏物語を読んでいたことを語った。
「様々な書を読まれている、それが人を見る目にもつながっておるのか」
「殿の視野の広さはそこにあるな」
霧隠は幸村が様々な書を読んでいるからこそ視野が広いことをあらためて知った。
「書は軍記ものだけ読んでいればいいのではないのだな」
「いや、あそこまで様々な書を読まれておられるとは」
「まるで学者じゃ」
「日々修行に励まれそして書も読まれる」
「凄い方じゃ」
「寸暇を惜しまず努力をされておるとはな」
こう言って唸るのだった、十人で。だが。
幸村はそうしたことに誇らず日々淡々と修行と家事、そして学問を続けていた。それでいて領地も見回り。
民達を見ていた、そうして十人に言うのだった。
「今日も皆穏やかに過ごしておるな」
「はい、上田の民達は」
「実にですな」
「餓えておらぬ」
これもないというのだ。
「よいことじゃ」
「この上田はです」
筧が目を光らせて幸村に言った。
「確かに山が多く石高も少ないですが」
「それでもというのじゃな」
「民は餓えておらず泰平ですな」
「父上と兄上が政にも心を砕いておられる」
幸村は筧に答えた。
「だからじゃな」
「左様ですね、どの町も村も決して豊かではありませぬが」
伊佐も話す。
「皆餓えず泰平です」
「まさにじゃな」
「どの様な場所の町や村も」
上田、即ち真田家の領地はというのだ。
穴山はここでだ、こう言った。
「信濃は広いですが山が多く」
「貧しいな」
「甲斐程ではないにしても」
「そうじゃ、山が多くその中に盆地が点々としてありな」
「皆そこにいますな」
「木曽なぞは相当に深い森ですしな」
由利は信濃の南西の地の話をした。
「ああした場所が多いので」
「どうしても貧しくなる」
「それが信濃ですな」
「そこが上方や東海と違いますな」
清海は自身がいた場所から話した。
「どちらも平地が多いですが」
「海もあってな」
美濃は別にしてもだ。
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