責任者出て来い
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第一章
責任者出てこい
滋賀富子はスーパーでゴキブリホイホイを買った。それを買った理由は簡単だ。
家にゴキブリが出て来たからだ、それでゴキブリホイホイを買った。それで家に帰ってからそのゴキブリホイホイを台所の端に置いた。
その富子にだ、娘の陽子が言って来た。母によく似て細長い顔出目は丸い。顎のところが目立ち顔が二段ある様にも見える。鼻立ちは整い黒髪を長く伸ばしている。背はそれ程高くはなく胸は地味だ。だが半ズボンから出ている脚がかなり目立っている。白くすらりとして奇麗な形をしている。。
その陽子だが、扇風機に当たりながら母に言って来たのだ。
「そのゴキブリホイホイ効くの?」
「効くでしょ」
あっさりとだ、富子は娘に返した。
「普通に」
「そうかしら、その会社のゴキブリホイホイね」
陽子はしっかりとそのゴキブリホイホイの箱をチェックしてから言うのだった。
「効き目がある時はいいけれど」
「ないとなの」
「全然かからないらしいわよ」
「ゴキブリがいても?」
「何か糊が弱い場合があるらしいのよ」
そのせいでというのだ。
「捕まらないらしいわよ」
「だから大丈夫でしょ」
「そう言う根拠は?」
「何となくよ」
「何となくは根拠じゃないわよ」
「だから大丈夫よ、ゴキブリホイホイがあればね」
それで、というのだ。
「もう大丈夫よ」
「ゴキブリを一掃出来るのね」
「ええ、最近うちガサゴソ言ってるでしょ」
物陰でだ、姿はまだ見えないがだ。
「あれは間違いないわよ」
「そうよね、ゴキブリよね」
「ゴキブリはお家の大敵よ」
まさにだ、存在が許されない虫だというのだ。この考えは富子だけでなく主婦ならば当然として持っているものである、
「それならね」
「それは私も同じ考えよ」
陽子にしてもというのだ。
「ゴキブリは家からいなくなるべきよ」
「ゴキブリ自体は不潔じゃないっていうけれどね」
「いていい筈がないわよ」
「生理的に受け付けないしね」
「まあ少なくとも清潔にして」
そして、というのだ。
「ゴキブリはね」
「ゴキブリホイホイで一掃よ」
「そういうことね、ただね」
それでもとだ、またこう言った陽子だった。
「その会社のは言われてるから」
「効く時とそうでない時があるって」
「正直安定感ないわよ」
「どれ位安定感ないの?」
「何でも伊藤宏光投手位だったそうよ」
「それって相当じゃない」
富子は阪神のピッチャーだったその人の名前を聞いてすぐに言い返した。
「あの人はね」
「調子がいい時は完封多かったのよね」
「悪い時はね」
「それこそ打たれ続けて」
「どうしようもなかったのよ」
そのことで古いファンから有名かも知れない。
「お母さんも見ていて呆れていたわ」
「けれど実際によ」
「このゴキブリホイホイはなのね」
「効かないのは徹底的に効かないらしいから」
「そうなの」
「ホウ酸入り団子の方がいいんじゃないの?」
こう言うのだった。
「むしろね」
「ああ、あれね」
「あれならそれこそね」
「ゴキブリが食べたら」
「終わりだから」
ゴキブリホイホイと違って、というのだ。ゴキブリホイホイは餌で釣ってその途中の糊で捕まえるものだからだ。糊が駄目だとどうしようもないのだ。
しかしだ、ホウ酸入り団子はというのだ。
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