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天邪鬼

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第五章

「そのことをわかってね」
「ああ、わかった」
「今回のことでな」
「天邪鬼は嘘を言っていない」
「逆のことを言うのと嘘を言うのは違う」
「そうしたことか」
「つまりは」
 村人達皆で言うのでした。
「悪い奴でもないんだな」
「むしろいい奴か」
「そうだな」
「いい妖怪なんだな」
「そのことをわかってね」
 妖怪の皆がまた言いました。
「天邪鬼はそういう奴だってこと」
「悪い妖怪じゃなくて」
「いい妖怪なんだよ」
「ただ言っていることが逆なだけで」
「それだけなんだ」
「悪い妖怪じゃないんだよ」
「わかったよ」 
 人間達も答えるのでした。
「天邪鬼のことが」
「そうか、いつも逆のことを言っているだけで」
「それは天邪鬼の習性で」
「他のことはない」
「そういうことか」
「そうだよ、だから皆天邪鬼のことをわかって」
 河童がここでまた皆に言いました。
「話を聞いてね」
「うん、わかったよ」
「じゃあね」
「そのことを理解して」
「それでね」
「これからも付き合っていくか」
「そうしようか」
 村人達も頷きました、そしてです。 
 村の皆はこの時から天邪鬼のお話を聞く様にしました。天邪鬼がどういった妖怪であるのかがこれでわかったので。
 天邪鬼はいつも思っていることと逆のことを言います、ですがそのことがもうわかっているので。
 お話を聞きます、それはこの日もでした。
「皆明日はお家に来ないでよ」
「ああ、天邪鬼のお家に」
「絶対に」
「そうだよ、お父さんとお母さんが言っていないんだ」
 こう妖怪の皆に言うのです。
「お友達なんか呼ぶなって。だからね」
「うん、わかったよ」
「じゃあ行かせてもらうよ」
「それじゃあね」
「明日ね」
「待っていないから」
 笑顔で言う天邪鬼でした。
「それに楽しみにしていないから」
「そうだね、明日はね」
「皆で楽しもうね」
「天邪鬼のお家でね」
 皆は笑顔で言うのでした、そしてでした。
 天邪鬼も笑顔でいました、口ではそうしたことを言っても。


天邪鬼   完


                       2015・8・22 
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