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進撃の幼子。

作者:夢兎。
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【第1部】
【第2章】新生活の始まり。
  そんな事より。

調査兵団の兵舎まで戻ってきたリヴァイは目の前で呆然と自分を眺めている2人の兵士を見据えていました。
どちらも精鋭班、別名リヴァイ班に所属している兵士で、ピンクブラウンの髪とブラウンの大きな瞳、可愛らしい容姿の女性兵士ぺトラと、イエローブラウンの癖のある巻き毛と少し目つきの悪い細目の男性兵士のオルオです。

「へ、兵長。おかえり、なさい・・・。」

「兵長。なんつう格好してるんすか。」

2人からは布でぐるぐる固定されているゆずの姿は見えておらず、このリヴァイという自分の上官である男が、奇抜な姿で立っているようにしか見えませんでした。

リヴァイは無言で歩きだし、後ろから着いてくる2人を横目に立体起動装置を外して整備用の棚へ置くと、だっこ紐を解き始めましたが、どこか機嫌の良さそうな、それでいてどこか怒っているような雰囲気のリヴァイに首を捻ったところで、リヴァイの固定している布の中から可愛らしい声が聞こえてきて、更に驚く事になりました。

ですが次の瞬間にはとんでもない事態に発展します。

「りぃー。りぃー。」

「・・・なんだ?」

「ちっちっ。ちっちー。ゆず、ちっちっ。」

「「・・・・・・え。ええええええええええええええっ!?」」

幼子がいたことに驚いて叫んでしまったぺトラとオルオでしたが、それを流してリヴァイは真剣に『ちっち』とは何だと悩みました。
どこか眉を下げているような表情になって必死に訴えかけているのは分かるのですが、その意味を理解できないリヴァイはぺトラへ視線を投げます。

「おい、ぺトラ。」

「はっ、はい!」

「ちっちとは何だ。」 

「へ・・・?ち、ちっち・・・ですか?」

少し考え込んだぺトラは、その意味を理解した瞬間、カアアアアーっと顔色が真っ赤になっていきましたが、『それは、あの・・・』と返ってくるばかりでリヴァイはイラっとしてしまいます。

「何だその反応は。早く言え。」

「え・・・いや、えっと、それは・・・。」

「兵長。あのー。ぺトラに言わすのは酷かと思いますがぁ・・・。」

「・・・?何故だ。オルオ。お前は分かるのか?」

言い出せないぺトラに助け舟を出したオルオに聞くと、オルオは苦笑いしながらも説明しますと言いました。

「あー。俺の親戚の子供がまだチビなんすけど、そのー。まぁ、小さい方。はっきり言えば小便がしたい時に『ちっち』とか『ちっこ』とか言ってたような・・・?要するに便所に行きたいと言ってるんじゃないっすか?」

「っ!?それを早く言え・・・!」

「ぴぇっ!ふぇ、ふぇえええええんっ。」

「「ああっっ!?」」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・チッ。汚ねぇ。」

そう、ゆずは余裕を持っておトイレに行きたいと主張したはずなのです。
ですがリヴァイたちの言葉のやり取りに時間がかかりすぎ、幼いゆずは我慢の限界に達してしまい、そのままリヴァイの腕の中でおもらししてしまったのでした。

オロオロと慌てたように叫ぶぺトラとオルオ、そしてリヴァイは自分の洋服が汚れ、なんとも生暖かい感触に『こいつ、マジか・・・』と思うしかありませんでした。
結局のところ、なかなかトイレに連れて行ってくれなかったこの大人たちが悪いのです。

リヴァイは汚れて濡れた床の掃除とゆずの服をなんとか用意しろと2人に言い渡して、自分の部屋に向かいました。
そして脱衣所に向かうと浴槽に湯を張り、自分の服を脱ぎ、ゆずの服も脱がせます。

「りぃ。おふおー?」

「うん?おふおじゃねぇ。おふろ、だ。」

「おーふーうぉ。」

「お・ふ・ろ。」

「おー・ふー・ろぉ?」

「ああ。そうだ。お風呂だ。覚えておけ。」

上官の階の部屋には各部屋浴室がついていたことに心の底から感謝する日が来るなどとは、リヴァイは思ってもみませんでした。
そして潔癖症である自分が、事故とはいえ、汚されてしまった挙句、お風呂にまで一緒に入る事になるなんてと、今日は何から何までペースを乱される日だと感じていたのでした。



 
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