ロックマンゼロ~救世主達~
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第35話 旧居住区
前書き
一方のゼロ
旧居住区に転送されたゼロは、辺りに生えている草が足に絡みつくため、草を斬り払いながら先に進んでいた。
『ゼロさん!所々に生えている蔦は炎属性の攻撃で燃やすことが出来ます。また、リコイルロッドのチャージ攻撃で壊せる所もあるようです。注意して下さい。』
「…了解した。」
ゼロはフレイムチップを起動させ、武器に炎属性を付加させると邪魔な草や蔦をチャージセイバーで燃やす。
草や蔦が無くなれば随分と進みやすくなった。
妨害してくるパンテオンをZセイバーで両断し、上空にいるメカニロイドにはバスターショットで対応し、植物型のメカニロイドはチャージセイバーで草や蔦もろとも消し飛ばす。
梯子を駆け登り、邪魔なブロックをリコイルロッドで粉砕しながら先に進む。
ブロックの陰に隠れていたパンテオンがバスターを構え、ショットを放ってきた。
「チ…」
咄嗟にロッドをシールドブーメランに切り替えると、シールドブーメランはショットを跳ね返してパンテオンに直撃し、跳ね返されたショットを喰らったパンテオンは爆散した。
そして梯子を駆け登り、邪魔なパンテオンとメカニロイドを返り討ちにしながら奥にあるシャッターを開くと、そこには何と二体のベビーエルフがいた。
「おかーさーん、おかーさーん。」
蒼い光を纏うベビーエルフ・プリエが辺りを見回しながら、ダークエルフを呼んでいるが、いないことが分かるともう一体の紅い光を纏うベビーエルフ・クリエの方を向いた。
「ねえ、プリエ。ここにもおかーさんいないね。」
「そうだねクリエ。ここにもおかーさんいないね。」
プリエの方もダークエルフがいないことが分かったため、クリエにそう返した。
「ねえ、プリエ。もっと奥を探してみようか。」
「そうだね、クリエ。もっと奥を探してみようよ」
ベビーエルフのプリエとクリエはゼロに気付かないまま、ダークエルフを探しに奥の方に向かっていった。
「………あれは…確か…。」
『ゼロ…!あなたに持って行ってもらった。携帯用スキャンに…ベビーエルフの反応が!!私が前に研究していたベビーエルフと同じ子かもしれないわ……。』
「母親を…ダークエルフを探しているようだったな。」
『ねえ、ゼロ…。あの子達を保護出来ないかしら…。ルインは…あの子達のことを許せないかもしれないけど…。』
ベビーエルフが危険な存在であるというのはシエルも分かっているだろう。
しかし、今のベビーエルフは善悪の区別がつかない子供なだけであり、危険というだけで問答無用で破壊するというのはあまりにも可哀想だ。
エルピスを利用してエックスのボディを破壊されたルインは烈火の如く怒るだろうが。
「分かった…。後を追う。」
『ありがとう…ゼロ。』
通信を切るとゼロもシャッターを潜り抜け、妨害してくるパンテオンとメカニロイドをセイバーで両断する。
そして不安定な足場に足を着けると足場が崩れ、すぐさま別の足場に着地し、その足場が崩れる前に次の足場に着地する。
それの繰り返しで一番下まで降りていき、そして広い通路に降りると、ゼロはすぐさまダッシュで駆け抜け、しばらく駆けると天井がない場所に出た。
天井がないため、月明かりが降り注いでいる。
次の瞬間、地面が震え、地面からムカデを思わせる巨大メカニロイドが現れた。
『ゼロ、聞こえる!?あのメカニロイドは体の中央にある緑のコアが弱点なの!そこを集中攻撃して!!』
「緑のコア…あれだな」
シエルの言う通り、メカニロイドの体の中央には緑のコアがあり、ゼロは近付いて破壊しようとするが、体中の砲門から光弾を放ってくる。
咄嗟にゼロはシールドブーメランを展開しながらバスターを構えた。
こういう大型メカニロイドは耐久性に優れており、並みの攻撃では破壊出来ないが、運良くこちらにも耐久性の高い敵に有効な技を会得していた。
「バーストショット!!」
チャージを終えたバスターから放たれた火炎弾がメカニロイドのコアに直撃し、爆発が起きる。
ルインとのトレーニングで放ったそれとは違い、最大出力で放ったために凄まじい威力を誇る。
地面に潜ったメカニロイドの出現に注意しながら、ゼロはシールドブーメランで攻撃を防ぎながらバーストショットをコアに炸裂させた。
何度かそれを繰り返したことでコアが破壊され、メカニロイドは沈黙し、ゼロはメカニロイドが動かなくなったのを確認すると、再びダッシュで突き進んだ。
壁を蹴り上がり、パンテオンをセイバーで両断していき、爆弾を投下してくるパンテオンは出て来た瞬間にセイバーで叩き斬った。
パンテオンやメカニロイドを斬り捨てながら突き進み、途中で柱に隠れたメカニロイドに注意しながら足場に飛び移る。
そして奥のシャッターを潜り抜けると声が聞こえた。
「あなたはだあれ?おかーさんと同じ匂いがするよ。」
「あなたはだあれ?私達と同じ匂いがするよ」
クリエとプリエが不思議そうに一体のレプリロイドを見つめていた。
「ギチギチギチ…。こいつらがベビーエルフか…バイル様の命令でこいつらを探しに来たが…本当にガキのエルフじゃねえか…。こんな奴ら、役に立つのか?」
シャッターを抉じ開けたゼロが、ベビーエルフ達とレプリロイドを見遣る。
「…ベビーエルフを渡せ」
ゼロの姿を認識した途端、ベビーエルフ達が騒ぎ出した。
「あ!あいつ知ってるよ!こないだおかーさんをいじめた奴だ!!」
「私もあいつ知ってるよ!百年前もおかーさんをいじめた奴だ!!」
「偽者のくせにー!!」
「偽者のくせにー!!」
「…?」
自身を偽者と言うベビーエルフ達に疑問符を浮かべるゼロ。
「ギチギチッ…うるせえぞベビーエルフ共!ぶった斬られたくなかったら奥の部屋に引っ込んでろ!!」
頭の上で騒がれていたために、レプリロイドがとうとう怒声を上げた。
「うわぁぁぁん」
「うわぁぁぁん」
怒鳴られたベビーエルフ達は泣きながら奥の部屋に引っ込んだ。
「あいつらはバイル様の物だ…てめえなんかには渡さねえよ…!!」
レプリロイドの姿がフリザードと同じように変化した。
変化した姿はモニターで見たのと同じレプリロイドだ。
「俺はバイル・ナンバーズが一人、デスタンツ・マンティスク。てめえは俺が斬り刻んでやるよ!!」
両手の鎌を構えるマンティスクに対して、ゼロもセイバーとバスターを構えた。
「レイザーアーム!!」
腕を切り離してこちらに発射してきた。
ゼロはそれをセイバーで受け流しながら距離を詰める。
マンティスクは細身のレプリロイドなので、防御力はそれほど高くはないはずだ。
「バーストショット!!」
バスターから放たれた火炎弾。
しかしマンティスクはそれをジャンプしてかわし、壁に張り付いたかと思ったらこちらに向かってきた。
「くっ!!」
咄嗟にセイバーで鎌を受け止め、即座にショットを連射するが、通常弾ではマンティスクに大したダメージは与えられない。
「やるじゃねえか…だが、この程度では俺は倒せねえ…ダンシングサイズ!!」
両腕の鎌が高速回転しながら発射され、至近距離のために回避が間に合わず、ゼロの肩に掠る。
ダメージに構わずゼロはセイバーをロッド形態に切り替えると、ロッドのチャージ合計を叩き込む。
「ぐはっ!?」
全身を襲う衝撃にマンティスクは凄まじい勢いで吹き飛び、そしてゼロはロッドからセイバーに切り替えるとダッシュで距離を詰めてセイバーを振るった。
「光幻刃!!」
勢い良く振られたセイバーからソニックブームが繰り出され、マンティスクの胴体に傷を付けた。
「野郎!!」
再び鎌を高速回転させて繰り出す。
ゼロはシールドブーメランで受け流そうと考えたが、シールドブーメランが耐えられないと判断したゼロはロッドに切り替えた。
「ハアッ!!」
鎌にロッドのチャージ攻撃を叩き込んで吹き飛ばすと、吹き飛ばされた鎌は壁に突き刺さる。
「しまった…っ!!」
「バーストショット!!」
「ぐああああああっ!?」
鎌が壁に突き刺さったことにマンティスクが気を取られた隙に、バーストショットをマンティスクに炸裂させた。
しかし、それ以上の攻撃はマンティスクが片方の鎌を振るったことで出来なかった。
「こいつを喰らいやがれ!!」
尾の方からビームを天井に向けて放ち、マンティスクの目の前に岩石が落ち、それを鎌で斬り裂きながらゼロに飛ばしてくる。
それらをかわし、マンティスクにバスターを向けたが、マンティスクはジャンプして壁に張り付き、こちらに高速回転させた鎌を投げつけてきた。
「チッ…」
バーストショットを当てようにも、射程外だ。
マンティスクは尾からビームを放ち、ゼロが壁を蹴り上げようとするのを阻止する。
攻撃をかわし続けるが、このままでは埒があかないと判断したゼロはロッドのエネルギーチャージを始めた。
「こいつでとどめだ!!」
ゼロに向けて鎌を高速回転させて繰り出した。
こちらに当たる直前で片方のロッドのチャージ攻撃を地面に繰り出し、大ジャンプをして壁に張り付いているマンティスクの真上付近にまで上昇した。
「なっ!?」
驚愕に目を見開くマンティスクの脳天にもう片方のロッドのチャージ攻撃を叩き込んで地面に激突させた。
「グギ…ッ!!て、てめえ!!」
起き上がり、上を見上げた瞬間ゼロがセイバーを構えて回転しながら降下してきた。
「ハアアッ!!」
「ガハアッ!?」
ゼロの回転斬りはマンティスクの体を見事に両断した。
「ギチギチッ…例え俺がここで倒れても…仲間が…必ず……世界を縛る…古き…鎖を…断ち切ってくれるはず……。新しい世界を…新しい秩序を…!バ…バイル様ーーーーーーっ!!」
マンティスクはバイルの名を叫びながら爆散した。
一方、奥の部屋ではベビーエルフ達の前にバイルの姿があった。
「おじちゃんはだあれ?見たことあるような気がするよ」
「おじちゃんはだあれ?私も見たことある気がするよ」
ベビーエルフ達の問いにバイルは醜悪な笑みを浮かべながら答える。
「クーックックックッ…わしの名はバイル…。お前達の母親、ダークエルフを造ったのはこのわしじゃ。謂わば、お前達のお祖父さんというところじゃな」
それを聞いたベビーエルフ達が騒ぎ出した。
「聞いた?プリエ!私達のおじーちゃんだって!!」
「聞いた!クリエ!私達のおじーちゃんだって!!」
「わしもダークエルフを探しておる。お前達の力を貸しておくれ。わしと一緒にネオ・アルカディアへ来るといい。新しい力と体を…与えてやろう。」
その言葉にベビーエルフ達は深く考えずにバイルについて行くことに決めた。
「よし!行こう!!プリエ!!」
「うん!行こう!!クリエ!!」
「待てっ!!」
マンティスクを倒し、シャッターを抉じ開けて入ってきたゼロが呼び止めるが、一歩遅かった。
ベビーエルフ達とバイルは転送の光に包まれ、この場を去ってしまった。
「ちっ……シエル、奴らの反応を追えるか?」
『ごめんなさい…その携帯用スキャンでは、ちょっと無理みたい…。』
「………」
つまり現状ではバイルに連れていかれたベビーエルフをどうすることも出来ないということだ。
『ゼロさん…ベースに帰還して下さい。転送を開始します…。』
転送の光に包まれたゼロはレジスタンスベースに転送された。
「転送完了まで…2…1…転送!!」
「お疲れ様でした」
そしてレジスタンスベースの司令室のトランスサーバーにゼロが出現すると、シエルとルインがゼロに歩み寄る。
「ゼロ、ありがとう…。報告にあったダークエルフって…ベビーエルフ達の事だったのね…。ネオ・アルカディアは…あの子達を使って、何をするつもりなのかしら……」
「…さあね、でもこれで全てのミッションは終了だよね?」
ルインがオペレーター達に尋ねると、ジョーヌが頷きながら答えた。
「はい、これで全てのミッションが終了しました。今回のミッションで新たに発見されたミサイル工場をどうするか…。現在、ダークエルフの探索と同時に…この問題への対応を検討中です。」
「一刻も早く、あのミサイルを何とかしたいんだけど…。ミサイル工場への転送座標は、古い衛星写真を基に計算しただけだから……転送ルートとして使うにはあまりに危険過ぎるの。」
「ミサイル工場への地上ルートは、偵察部隊が捜索中ですが、難航しています。ダークエルフの方も、スキャニングを続けていますが、まだ反応がありません」
「そう…」
「分かった…状況が変わったら教えてくれ…。」
「分かったわ…何か分かったら、すぐに連絡するから…それまで、ゆっくり休んで…ね。」
「いや、それまでに出来ることはある。ルイン、トレーニングルームに行くぞ」
「ああ、新技開発?でも、その前にメンテナンスルームに行きなよ。かなり消耗してるんだから」
「…分かった」
ルインに促され、メンテナンスルームでメンテナンスを受けに行くゼロ。
ネオ・アルカディアに大きな異変が起きようとしていることなど、今のゼロ達には知る由もなかった。
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