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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第六十話 夕刻その二

「神社の人だったよね」
「はい」
 そうだとだ、円香さんも僕に答えてくれた。
「わたくしの神社でも今の季節はお祭りでして」
「こうした状況なんだ」
「はい、出店の用意がされてです」
「怖い人達も?」
「おられます」
 そうだというのだ。
「テキ屋の方々に」
「あの」
 円香さんの耳に口元を寄せた、息がかかる位の距離になって。そうして円香さんに対してこう囁いた。
「ヤクザ屋さんとか」
「はい、あの方々もテキ屋さんです」
「テキ屋さんなの?」
「全うな」
 そうだというのだ。
「あの方々も」
「そっちの人に見えるけれど」
 円香さんの耳元に口を近寄せたまままた囁いた。
「ヤクザ屋さんに」
「そうですね。ですが」
「違うんだ」
「はい、テキ屋さんです」
 今僕達の周りにいる如何にもな人達はというのだ。
「そうです」
「まあテキ屋さんからヤクザ屋さんになったけれど」
「後は賭場ですね」
「それでなんだ」
「今も一見そっちの筋の人ですが」
「真っ当なテキ屋さんなんだね」
「左様です」
「僕もそれはわかってるつもりだったけれど」
 テキ屋さんはヤクザ屋さんのルーツでそして真っ当なテキ屋さんとヤクザ屋さんはまた違う人達だということがだ。
「何かそう見えて」
「しかしなのです」
「違うんだね」
「わたくしのお家でもです」
 円香さんはお家の神社のことも話した。
「こうした方々がお祭りの時に来て下さっています」
「出店を出しに」
「それで出店を出したお礼にも来てくれます」
「お家にもなんだ」
「お父様もその方々とは親しいです」
「テキ屋さん達と」
「はい、確かに外見はそうですが」 
 そっちの筋の人にしか見えないというのだ。
「しかしです」
「それでもなんだね」
「とてもいい方々ですので」 
 だからだというのだ。
「ご安心下さい、こちらの方々もです」
「いい人達ですか」
「目ですわ」
 円香さんがここで言ったのはこの場所だった。
「そこを御覧になって下さいませ」
「あっ、目の光だね」
「どの方も奇麗です」
「そうだね、確かに」
 僕も周りのそうした人達の目を見てみた、すると実際にだった。
「どの人もね」
「これが悪い方々なら」
「目がね」
「濁っていますわ」
 お嬢様口調での返事だった。
「ああした方は目でわかります」
「目は口程にっていうけれど」
「目には生き方、人間性が出ますわ」
「それでだね」
「確かに神社やお寺はそうした方と縁があります」
 それも深い、代紋の人が神社やお寺に寄付なんて話はざらだ。それこそ昔の芸能界よりもそうした人達と関わりのある世界だ。 
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