| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

乱世の確率事象改変

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

風吹きて月は輝き


 謁見に臨んでいたのは二人と一人。
 黒髪を流し、官位に見合った衣服を纏い、些か堅いがなるほどと納得せざると得ない気を発している春蘭と。
 わさわさと金髪を棚引かせ、普段通りの軍師服を着こなし、気付かれにくいが緊張からかいつもより緩さの薄くなっている風。
 そして最後の一人は侍女服を着た少女……月であった。

 華琳が行っている三点同時戦略は、益州、西涼、揚州に向けてであるが、他の二つに比べて西涼は少し毛色が違う。

 まず、益州の太守劉璋は、内部でのいざこざを平定したとは言っても、都に報告すらしていない太守である。当然、帝に認可されていない。皇室の血とはいえ、太守が変わったのなら報告くらいするのが義務であろう。漢の土地として認知されている以上は、益州は天たる帝のモノであり、治めよと命じるのも帝でなければならない。
 まさに群雄割拠の行いであり、秋斗が帝への報告を題材として謁見を行ったのもその点を突いているのだ。
 後継ではあっても正式な太守ではない。しかし太守として相応しいとは思っている。だからそれを証明しろ。秋斗と詠が用いた論は、こういうこと。
 話が僅かにズレたが、以上の点から益州は“まだ”漢の忠臣とは言えず、正式な官位持ちの使者を出すに値しないと見る事も出来る。それを劉璋も分かっている為、血統を理由にして取り合わない事を選ぶはずだったのだが……。

 次に揚州。
 知られている通りに孫策が取り返した土地である。こちらも劉璋と同じように、人々に太守として認知されてはいるが、帝の許可は得ていない。桃香のように正式な書簡で任命されたこともない。
 さらには、劉表暗殺の疑惑が仮釈放のようなカタチでうやむやにされており、漢の臣下達にとっては心象も悪い。故に、正式な官位持ちの使者を出すことなどしなくともよい。
 こちらに向かったのは一癖も二癖もある三人だったが、正式な位に付いているモノは皆無のいわば華琳の個人的な部下であり、その程度の扱いしかしないと面に出しているのだ。

 最後に西涼。
 他の二つと全く違う点は、西涼はいくつもの豪族や有力者の集合体からなる連合統治体制であり、あくまでその代表が馬一族であること。
 連合の代表者たる馬騰は、長きに渡る異民族からの防衛を一手に担い、軍事力によって皆に認められた王。
 その功績が評価され、漢は馬騰に官位を与えた。北西の大地を守り続ける誇り高き守護者に相応しいモノを。
 で、あるからして、形式を重んじるのならば……そして華琳があくまで漢の臣としての立場を取っている以上、馬騰の持つ官位を無視することは出来ない。

 官位……分かり易く言えば栄光と力。
 何かを為したモノが与えられる名誉であり、誇りであり……他者とそのモノの身分を明確にさせる記号でもある。
 身分という格式を使うとすれば、身分を持たないモノには取り合わないという選択肢も、やはり存在する。
 華琳が壊したいと思っているそういった思考への依存は根強い。古くからの慣習をいきなり無視すれば付いて来ない人々も出てくる。
 それならばと、華琳は曹操軍で自分以外に唯一官位を持っている春蘭を使って交渉を行うことにした。
 彼女本人が気付かぬ内に華琳が付けていた官位ではあるが、形骸化したとはいえ使える時もある。今回がその時であった。

 官位持ちが来るとなれば話が変わる。迎える側も正しい手順で使者を扱わなければならないのだから。
 ただ……春蘭と風が訪れた謁見の間の中は、彼女達二人に追随する一人の少女の存在によって、官位も格式も、全てが台無しとなっていた。

 玉座の間で迎えた馬騰は、臣下達が誰も……否、娘と姪ですら知らない真実を一人知っているが故に、彼女――――月の存在を目に入れた瞬間に思考が止まった。
 使者への挨拶を忘れるとは、長く西涼を纏めてきた王としては大失態と言っていい。
 しかし、それほどにその少女が其処に“存在している”ことは馬騰にとって異常事態だったのだ。

「なっ……と……」

――董卓っ

 口を突いて出かけた名を、どうにか馬騰は呑み込んだ。ぽろりと零さなかったのは僥倖だ。その名を口に出してしまえば、どんな不可測が起こるか分からないのだから。
 眠たげな半目に冷たい色を浮かべて、風はその様子を静かに観察していた。

――ふむ……さすがは西の英雄。其処で踏みとどまれるとは思いませんでしたよ。

 月を侍女姿で此処に連れてきたんは風の策略。わざとだ。馬騰に対して先手を取る為の。
 此処で月の嘗ての名を呼ぶということは、臣下達に何がしかの芽を与えることになる。
 董卓の名はもはや大陸全ての共通の敵であり、間違っても格式高い使者の連れに対して呼んでいいモノではない。

 軍師にとってこの場は戦場だ。言葉を交わす前から戦は始まっている。曹操軍でも心理的な要素に重きを置く軍師は、月の存在を使って馬騰の心理的攪乱を第一手としていたのだ。
 言葉は流さずとも驚愕に支配されている馬騰の瞳を、ワインレッドの輝きが真っ直ぐ射抜いていた。昔と変わらぬ、穏やかな微笑みを添えて。それがどれほどに馬騰の困惑を呼ぶか、分からぬ風ではない。

「おやぁ? 顔見知りですかねー?」
「っ……よう来られた、曹孟徳が右腕、夏候元譲殿、程昱殿。おれが馬騰だ」

 しょうこともなし、と風が語り掛けるもまずは名乗った。
 そうやって無理矢理に意識を変えようと試みた馬騰の一手も、些か拙いながらも形式上は無視できないモノ。
 馬騰の狼狽を見た配下達には僅かに疑念を植え付けられた、最低限は得た、と内心でほくそ笑みつつ風は拳を包み一礼を一つ。

「お初にお目に掛かる、馬寿成殿。我が主、曹孟徳が一の臣、夏候元譲。主が意向をお伝えする為に参った次第に」
「お初にー。程昱と申します。右に同じく、我が主が望みをお伝えする為に参上した次第です」

 普段より堅くなりながらもどうにか語り切った春蘭と、ゆるりと普段通りの声で流した風。
 対照的な二人の後ろでは、侍女の姿で仰々しく書簡を掲げ持つ月が……静かに、馬騰に微笑んだ。

――やはり……あれは董卓。

 微笑みに確信する。
 生きていたのか、とは言えるはずもない。こんな場でそんな話題を投げかけるわけにはいかない。
 胸にジクリと湧く感情があった。それが何かは、馬騰も久しく忘れていた。掌をじっとりと湿らせるその感情は……恐怖だった。
 当たり前のことだ。隣の州の太守で、共に外界からの侵略者を追い返していた一族の末裔なのだが……顔を知っていながら切り捨てた英雄の一人が、どんな負の感情を宿していることか。

 春蘭の側まで寄った月が頭を下げてから書簡を差し出す。その一挙手一投足が気になって仕方なかった。馬騰にとって、春蘭よりも風よりも、月の方が警戒に値していた。
 するすると紐を解かれた書簡の端に目を向けて、春蘭が流麗な声を流して行った。

「では……拝啓、西を守護してきた英雄殿。冬の蓄えが気になりだす今日この頃、如何お過ごしか。
 北の大地との交流が盛んになった今でこそ分かるが、大陸の冬はやはり厳しく恐ろしい。まあ、こちらの領地は収穫に恵まれている為に問題はなく、人民の多くは暖かき冬を迎えられると思う。
 さて……あだしごとはさておきつ、今回の本題を話そう。
 かの袁家滅亡は其方も耳に聴こえていると思う。董卓の乱では見事に陛下を救い出したにも関わらず我欲を満たす為に北の英雄の大地を奪い取り、陛下のご愛顧を賜った劉玄徳が大地に侵攻し、あまつさえ皇帝陛下の膝元にまで攻め寄せてくる始末。
 ご安心なされませ。陛下の臣であるこの曹孟徳と、我が盟友である黒き大徳、そして愛しき我が臣下達の助力もあり、陛下の御威光に以って袁家の腐敗は取り除かれた。袁麗羽という最も忠実な陛下の臣を作り上げたことも、問題なく終焉を迎える為であること理解されていると思う。二度と腐敗せぬよう袁家全てに必罰を以ってして、此度の大乱は集結した」

 すらすらと読まれた内容は情報の通り。少しばかり癪な言い回しをされて不快に眉を歪めるモノが多いが、ただ事実を並べてあるだけの文を邪魔するほど野暮ではない。
 じっと聞いている文官や馬騰の前で、春蘭は尚も続けて行く。

「が、しかし。袁家の内部情報を洗っていく内に……面白い真実が分かった。其方の娘も参加したあの戦……反董卓連合について語ろうと思う。
 前々から不審には思っていたのだ。黄巾の乱は別として、その後の董卓の反乱は何処かおかしいと、私は訝しんでいた。
 あの連合戦、最後に洛陽は燃えた。董卓が逃亡を図る為に燃やしたと思っていたのだが……なんと袁家が燃やしたらしい」

 ざわり、と文官達がざわめく。隣と、後ろと、前と……何故、と疑問を零し合う。
 靴を一つ馬騰が鳴らした。それによってまた場は静寂に引き戻された。
 白々しいと思いつつも顔に出さず、彼女は首を頷けるだけで続きを促した。

「袁家のモノ達は洗いざらい吐いてくれた。正義を語ったかの連合は欺瞞に溢れていたと。
 袁家主導で行われしあの大乱は、陛下の元に召し抱えられた董卓と、董卓を指示する十常寺を失墜させる為に上げられた欺瞞正義であったと。
 なんとまあ、浅ましきこと。我らは袁家に踊らされていたらしいぞ。董卓は正義であったのだ。我らは……陛下の臣にあるまじき間違いをしてしまったのだ。陛下は憂いからか、はたまた袁家という大罪人が滅びたからか、最近になって漸くその事を話してくれたのだ」

 またざわめきそうになる室内に、今度は風の咳払いが響く。
 共通認識として居座っている董卓憎しという感情は、この西涼でも大きい。しかし西涼の民にあるのは憎しよりも恐れが大きかった。

 涼州を纏めていた実力者が悪に落ちたとなれば、世間の目は厳しくなるモノだ。西涼はあまり被害を受けなかったが、董卓の血族の住む天水等はそれはもう酷いモノであったらしい。
 董卓の親は自刃し、生き残った親族は蔑まれ追い込まれ、配下であったモノの家族も日陰暮らしに落ちていた。
 間近で見聞きできる事柄であるからこそ、その原因が偽りであったと明かされた今、被害を被ったモノでなくともその衝撃は大きかった。

 誰もがその文の内容に興味を持った。続きが気になる。あの曹孟徳が己の非を認めたことも相まって、文官の意識は惹きつけられた。

――女狐め。本心ではないことをつらつらと……

 ただ、馬騰は覇王とまで呼ばれるモノを見誤らない。文官の中には馬騰と同じようなモノもいるがごく少数。皇帝の名をだされようとも、事実を言っていようとも、文を送った相手を侮らない。
 だがどちらも、覇王の狙い、そして風の狙いには気付かない。

「陛下にその旨を伝えれば、悪しきは絵図を描いた袁家であり、董卓を知らぬ私に罪はないが……せめて、袁家を討ち取った功は、亡き英雄に捧げよとおっしゃられた。陛下の懐の深きを感じ、より一層の忠を尽くそうと思う」

 そこまで聞いて、馬騰の表情が固まる。

――董卓を知らぬから罪は無い……?

 違和感はそこだった。敢えて際立たされたようなその一文が、逆転された人物評価よりも異常だった。
 金髪の小さな少女がじっと見つめていた。エメラルド色に輝くその奥底には、冷たい冷たい光があった。
 文は続く。耳をふさぎたくなるような事が、きっとこの先に語られると、馬騰は歯をギシリと噛みしめた。

「ただ……其処でふと思ったのだ。
 西涼を治めていた馬騰殿は……何故に連合軍に参加したのかと。隣の涼州を治めていた董卓のことは知らなかったのかと。
 尋ねてみた所、陛下は、憂いていた。何故か。考えたくなかったのだよ、馬騰殿。
 漢の忠臣である西涼の英雄が……隣人であり、皇帝陛下に唯一絶対の忠誠心を示した英雄を殺しに来たなどという、そんな哀しい事実を」
「そんなことないっ!」
「はいー、というわけで……」

 春蘭が話していた途中で、翠が堪らず声を上げた……にも関わらず、風はのんびりと声を重ねる。
 困惑が溢れた室内で、その声は異質に過ぎた。翠が声を荒げたことを上手く利用した。
 口に手を当ててクスクスと、指を一本立てて妖艶に。間のずらし方は曹操軍でも随一。ゆるゆると巻き込まれながらも誘導するような黒や、わざと乗ってみせて遊ぶような華琳以外に彼女の敵はいない。

「風達は事実確認の使者としても此処に参りました次第にー。
 馬騰様は董卓の真実を知っていたのかどうか……そして知っていたのなら何故、連合側に参加したのか。外敵の侵略を防ぐ為に交流はあったはずですし、董卓の情報が上手く隠されていたとは言っても、国の主が隣の太守と面識がない、もしくは情報さえ知り得ないなんて……有り得ませんよね。董卓は黄巾の乱にも参加し勇名を得ておりましたしー。
 こちらが嘘をついている、ということはありませんのであしからず。何故なら、侍女として連れてきたこの子は天水出身でして、なんと、英雄董卓の侍女として仕えていたのですよー」

 語られる前に釘を差し、此処で月の存在を明かすことによって反論の多くを封じ込めた。
 話の主導権は既に風が持っている。
 此れは馬騰と風の一騎打ち。返答を誤れば損害を受ける……戦そのモノ。

「その辺りはどうなんでしょうかー?
 馬騰様の娘さん……馬超さんはどう思うのですか? というよりも……貴女はこの子を知っていますかー?」
「……見た事、ないよ。ってか侍女の顔なんか知るはずないだろっ!」
「では姪の……馬岱ちゃんは?」

 食って掛かる翠の言葉を気にも留めずに、風は馬岱――蒲公英に話を振った。
 ぶんぶんと首を横に振る彼女も知らないようで、風はにやりと意地悪く笑った。

「では馬騰様はー?」

 馬騰は風と目を合わせず、ワインレッドをじっと見つめた。微笑みは穏やか。それは間違いなく……昔見たことのある少女となんら変わらぬモノ。
 部下と家族の手前で、明かしてもいいものか。考えずとも、一族を纏める王ならば答えは決まっている。

「……知らんな、そんな小娘。どうせそこいらの娘を見繕ってきたんだろうに。
 如何に悪辣な袁家であろうと、関係の無い赤子や老人まで虐殺し、あまつさえそれを陛下に黙認させるような輩がまっとうな使者を送るとは思っていなかったが、その通りかい。名が泣くぞ、夏候惇、それに程昱」

 威圧とブレない声は、臣下達や西涼の有力者達を安堵させるには十分だった。一声で取り払われた室内の空気は、馬騰による思考誘導で今度は敵意に溢れかえる。
 ただし……軍師が戦場に何の準備もせずに現れるわけがない。其処を馬騰は読み間違えた。

「おやおや、まさかまさかですねー。
 この子の存在を疑っているというのなら、その疑惑を晴らしてみましょうか。
 実はもう一通、文を預かっておりまして……」

 袖の中から取り出した書簡を紐解くことなく、風はそれを持ったままで馬騰の元に歩み寄って行く。
 すっと掲げた後、彼女はにっこりとほほ笑んだ。

「前の戦の結末を言い訳にして疑われるのは目に見えていたので、証拠を準備しました。
 漢の忠臣とまで謳われるモノが嘘など吐くはずがない、嘘を吐かぬ場合はこれを出すなと仰せつかっておりましたが、仕方ありませんよねー」

 まさか、と馬騰の頬に冷や汗が伝う。翠も蒲公英も、他の者達も不安そうに彼女を見つめていた。
 反して春蘭は目を伏せた。誇り高き武人としての馬騰が真実を暴かれる姿を、見たくなくて。
 月は……ただただ、微笑みを浮かべながら、馬騰を見つめていた。

「皇帝陛下は董卓と懇意にあったそうですので、当然のことながら専属侍女の顔も知っていらっしゃいました。そしてこの子は……馬騰様と董卓が対面したことがあると言ってます。この子が嘘をつくことは有りません。それは馬騰様ご自身がよぉくご理解されていると思われますけど。
 さて、風は皇帝陛下の臣ですので、馬騰様の言を信じることは出来ません。ややっ、どうしたことでしょー? まさか皇帝陛下を疑うモノなんてこの中に居るはずないですよねー? なにせ、漢の忠臣、ですもんねー?」

 おどけた調子の言葉であるのに、ズシリと馬騰達の胸に圧しかかる。
 目を通せば、その文の字が誰のモノかは一目瞭然。絶対の臣だと自負する馬騰は、幼き劉協の文を見間違わなかった。あまつさえ……劉協本人の指印、馬騰の知っている都の文官の押印までされていた。

――董卓が、生きていた。これじゃおれは……

 その沈黙が何よりの答え。その場にいる者達の心に不安の雲が湧き立って行く。

「か、母様? な、なんで黙ってるんだよ……」
「おばさま……?」

 二人は知らなかっただけだ。自分達が漢の臣であると信じて、信じて、信じ抜いていた。
 義を大切にする誇り高き一族なのだと。友を見捨てることなどしないのだと。真っ直ぐに育っているからこそ、彼女達は母を信じてやまない。

「ふふ……嘘つき」

 ぽつりと、風が零した。にやりと引き裂いた口から断罪の言葉を。
 銀月の少女を姉と慕う少女の為にと、風は言葉を並べ始める……自分達のことは棚に上げて。それが出来る図太さを持たなければ、軍師になどなれない。

「漢の忠臣、聞いて呆れるのですよ。その程度で漢の臣? 笑わせないでくださいねー?
 知っていて見殺した貴女は大罪人です。どちらが正義かを知っていた癖に、何かと理由を付けて董卓に味方することを拒んだのは、他の諸侯から狙われるのを恐れ、自分が手柄を上げる機会を虎視眈々と狙っていたからではー?
 我が軍の全ての軍師の見解をお伝えしておきますとー、董卓に勝ちの目はありましたよ? あなたが真実を暴露すれば、味方に付く諸侯も居たはずです。例えば劉備、例えば公孫賛……少なくともこの二つの勢力は味方に引き込めたと思います。
 ですが、あなたはそれをしなかった。どうして、手を拱いて見ていたのか。董卓は殺して、袁家討伐には参加しないのも忠臣と言うならおかしいですね。病を言い訳にするのはやめてくださいよー? なにせ、董卓を殺す為に娘を送り込むことは出来たんですから」

 普段の風としては有り得ないくらいの言葉を並べ、思考を挟む隙を与えない。
 全て真実。全てが事実。証人が皇帝陛下のお墨付きである以上、馬騰達に言い訳は許されない。

 董卓が勝つ確率は存在したはずなのだ。すべては有り得ないもしもの話……ではあっても、手を貸さなかったモノが手を貸せば、何がしかの効果は得られたであろう。
 使うモノを全て使わず、自分に嘘をついてまで――義や忠を蔑ろにしてまで得たモノは……何であったのか。

「もう一度聞きましょう。今度は質問を変えて。
 貴女は……“誰の味方ですか”?」

 しん――――と部屋に静寂が行き渡る。答えを返せるのは一人だけ。固唾を飲み込んで見守る臣下達の視線がひどく痛かった。

――陛下の味方だと答えても、返されるのは従えという一言だろう。
 この論はおれの行く道を全て封殺している。董卓が生きていた以上、おれにはもう、逃げ場が無い。

「おー、お答え辛いご様子。やはり漢の臣というのは、嘘っぱちですかー」
「おいっ、黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって! 母様はなぁ! 先帝陛下に賜った西涼の守護をずっと担ってきたんだ! この荒くれもんだらけの大地を纏めて来たんだ! だってのに漢の臣じゃないなんて、そんなこと言うなぁっ!」

 激発。
 少し太い眉を跳ね上げて出た声が風に届く。少しだけため息を吐いた風は、しょうこともなしと首を振った。

「外敵から大陸を守るのが大切、と。それほど大切な任を放棄してまで董卓を討とうと挙ったあなた方は、やはり漢の忠臣ではないのでは? 後継者である馬超さんが死んだらどうするつもりだったんですか? それに董卓を失えば涼州の防衛力が低下するのは目に見えていたはずですので、西涼にも影響があったはずですけど?」
「う……な、それは……」
「馳せ参じて真実を見抜こう、なんて論理も崩壊してますよー。だって、馬騰様は真実をとうに知っていらっしゃったんですから、ね?
 裏で救援を手引くこともせず、娘にすら真実を教えず、真正面から叩き潰しに来たあなたの母親は……不義で、不忠で、不誠実なのですよ。勢力拡大を図るでなく、袁家が敵だと分かって侵略を開始していても何処にも力を貸さず、さしては西涼を守っているからいいのだーなんて、都合が良過ぎると思いませんか? 厚顔無恥にも程があると、どうして気付かないのですか。
 王としての判断だ、というのならより一層笑えますが」

 ふふふ、と小さく笑った。楽しそうに、風は喉を鳴らす。
 挑発の類、ではあったが、もはや誰も激発出来なかった。疑惑と困惑が溢れているのは、馬騰が慕われている事の裏返しでもあるがゆえ。

「国を守る為に英雄を一人見捨てた。民を守る為に英雄を生贄に捧げた。誠実を貫いたモノに石を投げて悪の片棒を担いだのは、民の為であり人の為であり国の為。
 そう言うのならこう言ってあげますよ。
 国の為、自領の為というのなら、今は亡き賢龍のように反董卓連合になど参加せず此処を守っているべきでしょう? 他の諸侯に狙われるから、という理由で参加したのならより下らない。怖い怖いと怯えて、誰も信用せずに自分達だけで生きている……そんなあなた達はただ独立独歩で歩んで行くだけの自分勝手な国です。どっちみちいつかは誰かに攻められる事を分かっていたでしょうに、信頼を置ける隣人を見殺しにして自分達が攻められる時間を先延ばしにしたに過ぎませんねー。王としても、他国に疑いばかりを向けている時点で落第点かと。
 それと、未だに陛下の元に馳せ参じず、民を、人を、国を戦火に落とさぬよう約を交わさぬのは何故のことですか? 国を守りたいのでしょう? 民を傷つけたくないのでしょう? 先帝陛下から任ぜられた命を大切にしているのでしょう? それならばなぜ、あなた方は陛下の元に文の一つも寄越さないで、早馬の一つも寄越さずに袁家との戦を眺めていたのですか。董卓を殺す為には兵を出すのに、袁家を滅ぼす為には兵を出さないんですよ? 檄文が無ければ動かないなんて忠臣と言えますか? 主に助けを求められないと助けに行かない、誰か他のモノが助けに行こうと言わないと救いに向かわない臣下に価値なんてあるんですか? 何がしたいんですかあなた達は? だから……西涼だけが国だと思っている、としか思えませんね、風には」

 すらすらと口が良く廻る。
 事実だけをそういった方向に言って並べれば、馬騰がいくら取り繕うとも非は覆せない。
 涼しげに、呆れたように、風はため息を吐いた。

「さて……風の発言を否定しないということは、もう確定でいいですねー。
 臣下の皆さまからも反論があれば受け付けますがー?」

 しん、と静まり返った場からは言の葉が飛ばない。苦く唇を噛みしめる馬騰や翠。暗い顔をして俯く蒲公英は震えていた。他の者達――西涼連合でも発言力が高い者達も怪訝な表情を隠せない。
 楔は強く、深く差すべし。一寸聞いては見た者の反論が上がる前に、風はにやりと笑って、彼女達の生き方を全否定する言の葉を紡ぐ。

「西涼連合は偽臣の集い、そして漢の敵。それでいいかと……風は聞いているのですが?」
「っ……あまり調子に乗るなよ、小娘。黙って聞いていれば自分達に都合のいいようにぺらぺらとよく口が回るもんだ」
「おお、やっと言い訳が始まるんですねー、分かります」

 おどけた様子で肩を竦めた風は、クスクス笑いの挑発を止める事なく。
 怒りを静かに波立たせて、馬騰は声を荒げずに玉座から彼女を見下した。
 ただ……口を開こうとした馬騰の視線の端で……ゆるりと一礼をするモノが、一人。

 彼女はずっと、何を喰らっていたか。
 彼女はずっと、誰を見て来たか。
 彼女は……黒を喰らっていたが故に、人の心を捻じ曲げる。

「……馬騰様は、これ以上何をおっしゃるのでしょうか?」

 たおやかな声はよく耳に響く。儚げな空気は見る者を魅了してやまないが、それでも纏う空気は……間違いなく王のモノ。

「曹孟徳に対して、お前達が言うな、とあなた方がおっしゃるのなら……地獄と絶望を知らない、無責任な傍観からの意見ではないでしょうか。
 貴女達は“私達”を攻めた。泣いた人が居ます。苦しんだ人が居ます。絶望した人が居ます。死んだ人が居ます。その事実は変わらない。
 陛下は……泣いてましたよ? 苦しんでましたよ? 絶望してましたよ? 人の死に嘆かれてましたよ? それなのに未だ嘘を吐き、自分達の手で壊した漢の忠臣と……そうおっしゃるのですか?」

 感情と理。
 誰よりも近くで見てきた彼女の言葉は説得力を持っていた。特に馬騰の心を揺さぶる。

「“悪逆の佞臣”は貴女のことを責めてなんていませんでした。ただ……陛下が救われるのならそれでよかった。
 だから今の貴女を責める事もしないと思いますが……陛下を苦しめるというのなら、やはり剣を取り戦おうとしたでしょう」

 ただの侍女にしか見えない少女の瞳には、昏さの一つも見当たらない。普通の少女であるならば怒りや憎しみを込めた眼で見るのだろう。しかし月は相手に向ける負の感情を持つ事をしない。故に……室内に居る人々は、勝手に彼女の内心を予測して恐れ慄く。
 ただの普通の少女に見えるからこそ……歴戦の武人であり、一州を纏める王である馬騰に真正面から向かう彼女を、恐ろしく感じていた。
 其処にはどれほどの憎しみがあるのかと。
 其処にはどれだけの怒りがあるのかと。

 悲痛に眉を寄せた翠が馬騰を見つめる。

――なんか言ってよ。あたし達は……ホントに……

 微笑みに込められた圧力が、あの連合に参加していた翠の心を深く抉り抜く。被害者の言葉は弾劾になる。彼女は参加していたからこそ、月の言葉に痛みを覚えた。

「あらら、華琳様のせっかちが移っちゃったようですね。まあ、お兄さんの悪戯心ともいえますけど」
「あ……ごめんなさい」
「いえいえ。でも……ふふっ、覇王の義妹(いもうと)らしくていいと思いますよー」

 会話の隙間を利用しない風でもなく、さらりと爆弾発言を投下した。
 理解をする為に、そして状況を把握する為に、さらには此れからのことも考える為に脳髄を回させ、混乱した頭に対して次々と情報を投げ与える。
 戦での常道をそのまま情報戦に持ち込んだようなやり方に、西涼の者達では誰も思考が追いつかない。

「……義妹、だと?」
「はいー。彼女は我が主が才覚を評価し、曹家の養女となることが決まっておりまして……。
 我らが掲げるのは、“才あれば用いる”、たったその一つなのですから」

 びしり、と指を立てた。皆に視線が風に集まる。
 のほほんとした声を紡いで、彼女はゆるりと笑う。

「では、馬騰様。事実確認は出来たので最後に一つ。
 そですねー……未だに漢の臣としての姿を示したいのなら、西涼連合の解体と再統治を行った上で陛下の御元に参上するのがよいかと。どちらにしても董卓の件で嘘をついていたと分かったら官位は剥奪らしいので、それくらいしてやっと陛下の疑心も憂いも張れるのではないでしょうかー」

 絶句。
 馬騰も、馬超も、馬岱も、西涼連合の有力者たちも、皆が一様に言葉を失う。風は最後に、西涼を治める者達にとって最悪の案を口にする。
 連合の解体と再統治命令。西涼内部を群雄割拠の様相にすると、風はそう言った。

 今回のことで馬騰の求心力は確実に下がった。この場に居合わせた西涼連合の者達は、隣人を売りに出した彼女に疑心を持ってしまう。

 我らが董卓と同じ立場になったのなら攻めるのだろう。
 自分達が危うくなったら義よりも自己の安定を求めるに違いない。
 連合とは名ばかり、統括になっている馬騰の独断で、全てを決めさせるわけにはいかない。
 そう思うモノは少なからずいるのだ。

「陛下から直々のご命令というわけではございません。あくまで我が主からの提案ですのであしからずー。
 誰が漢の臣として相応しいのかを示すよい機会でもありますし、戦上手なだけではこの乱世が終わった時に国をよくするには足りえない。これは西涼を治めるに足る政治屋を選別するのによい機会……馬騰さんであれ、他の誰であれ、劉備や孫策が怪しい動きをしている時分で自身の忠を示そうとする新しい西涼の太守はきっと、陛下からより深き御寵愛を受けられることでしょう」

 内に含んだ言い分。
 戦わずともよい。ただ国を纏めるに足る人物がいればよいのだ。
 そうやって不和の元をばらまいて、風は彼女達の心を惑わせる。
 連合国家は足並みを揃えなければ成り立たない。利害の一致で成立しているのだから、一歩先に出ようとするモノが現れれば疑心や猜疑心が芽吹いてしまう。

 馬騰はギシリと歯を鳴らした。風の手腕を見てか、否、してやられた自分の不甲斐無さに。
 不和の種は撒かれている。初めから戦うつもりではあったが、内部不振という不利な状況を押し付けられることが確定してしまった。
 だが、彼女は言っておかなければならない。太守として、西涼連合の代表として。提案されたのならば、返答を。

「……断る」
「へー、連合は解体しない、と?」
「そうさね。逆臣、佞臣……好きに言えばいい。おれ達が死ぬ時は馬の上、憎き五胡を一人でも多く打ち滅ぼして死ぬ。あいつらにこの大陸を食い散らかされるなんて、想像しただけで悍ましい。戦って、戦って、死んで風になって、おれ達はそうやって生きてきた。
 宣言してやる、程昱。お前達じゃ五胡には勝てない。あいつらの実力も、あいつらのやり口もおれ達が一番よく知ってる。西涼の防衛戦が突破されれば、大陸は瞬く間に五胡の餌食となるだろう。
 だけど、西涼は曹操に従わない。小娘に頭を下げてへこへこしてるようじゃあ、この大地を守れないんでね」
「……つまるところ、ただのわがままですか。国を個人の所有物としていませんかねー、馬騰さん?」
「ああ、そうさ。これはあくまでおれのわがまま。連合の代表の意見ではあるけど、総意じゃあない。
 どうとでも言えばいい。考えるのはもう止めだ。西涼流ってのはな、感じるままに生きることだ。国のあれこれの為に汚いことだってしてやるけど、根本にあるのは自分が正しいと信じる心さ。それでおれと肩を並べた友が離れて行くのも別に構わない。
 曹操のやり方じゃあホントの平穏なんてこないと思った。それでいい。あたいは陛下が、乱世を広げる曹操に誑かされているようにしか思えないねぇ」

 顎に指を一つ当て、風は思案に潜ろうとして……僅かに呆けた
 春蘭を見てみると不思議なことに落ち着いた様子だったのだ。あの春蘭が、華琳が正しいと言を上げることもせずに居た、それが異常だったのだ。
 此処は任せようと、風は一歩下がると察したのか、春蘭が少しだけ前に出た。

「馬騰殿……いや、“馬寿成”。
 お前の意思は分かった。馬の一族は我らの敵、ということだ。それならただ、首を洗って待っていろ」

 丸めた使者としての文をぽいと投げやりながら春蘭は言う。官位など意にも介さず不敵に笑って。

「私もお前が気に喰わん。月を……真月の輝きを知りながら全力を尽くさんかったお前がな。
 誰かのように野心があるのなら理解し、納得出来た。自らの力を高める為に切り捨てる選択肢を取ったのなら称賛すらした。
 しかし、現状維持を選択し、一時的な逃げに走ったお前には不快感しか浮かばない。西涼連合を纏め上げた所業を思えば……“覇王に最も近しいモノ”かと思ったが、所詮は綺麗事を並べるだけの矛盾した臆病者だ。
 せめて馬寿成という武人として、そして西涼の太守として、誇りを持ちて抗ってくれることを願うぞ」

 風を見た。しょうがない人ですねとため息をついていた。
 月を見た。優しい微笑みは、春蘭が何を想っているかを読み取っていた。
 居辛い空気の中でも三人は、何も気にしていないとお辞儀を一つ、そして両手を前に掲げて礼を一つ。

「ではこれにて。
 我、夏候元譲、西涼太守馬騰より敵対の意を得たり。よって後日、此の西涼の大地を我が主と共に頂きに参上致す。
 まだ生きたければ覇王に忠誠を誓うべし。大切なモノを守りたくば覇王に心底から頭を垂れるべし。永久の服従を約すモノは全て覇王の臣なり。
 自らの誇りを示したくば、力を示す為に覇王の前に現れよ。殴って、殴って、殴り抜いて、その気高き魂を我が主に捧げよ。乱世を彩る華として散るもよきかな。その時は、この魏武の大剣の名に於いて、そのモノの名を先の世に刻もう。
 ではな、馬騰。次は戦場で会おう。敬愛する愛しき主と、我ら魏の五将軍が……西涼の英雄に完全な敗北を教えてやる」

 もう用は無い、と彼女は背を向ける。
 倣って風も月も踵を返した。
 
 ギシリ、と歯を噛みしめた翠と蒲公英を見もせず立ち去る寸前……思い出したように、月は馬騰に振り向いて声を上げた。

「大病に掛かっていた貴女を華佗というお医者様が治療した、と聞きました。何処にいらっしゃいますか?」
「……教えるとでも?」

 風も振り向き、月が口を開く前にと言葉を並べ始める。

「おお、居るんですねー? でしたら……街中を引っ繰り返してでも身柄を頂きますのでご理解ください。
 華佗さんしか治せない病気に掛かっている人が居ますから“神医”が必要なのです。皇帝陛下のお気に入りの方なので、出来れば直ぐにでもお連れしてくだされば嬉しいのですが」
「……今はこの城に居ない」

 じっと、風の目が馬騰を射抜く。
 嘘か真かを見極める彼女の瞳は、僅かに思案したその所作を見逃さなかった。
 眠たげな瞼を一度閉じて、彼女はふっと笑った。

「そですかー。でしたら仕方ありません。次に来た時にお話しさせて貰うことにしましょう。
 ではではー、失礼いたしました。此度の謁見のこと、皆さんでよく話し合ってくださいねー。漢の忠臣とは何ぞや、と」

 先に出ることはせずに止まっていた春蘭に並んで、月と風は謁見の間を後にした。
 室内は異様な空気に支配されていた。
 曹操軍の宣戦布告にたじろぐモノも居る。覚悟を決めて心を高めるモノも居る。真っ青な顔で俯くモノも居た。

 皆の心には一つの言葉が突き刺さっていた。

 漢の忠臣とは何ぞや。

 風が去り際に打ち込んだ楔は、馬騰や翠や蒲公英に対してではなく、それ以外の者達の足並みを乱す為であった。
 それを分かっているからこそ、西涼の太守は瞼を閉じて口を噤む。
 今はもう、自分が何を言ってもダメだ、と。
 行動で示すことこそが、皆の心を纏める為の方法だと……ずっと昔から繰り返していた為に。
 ふと、彼女は思い出す。
 自分が思い描いていた道筋とは大きく変わってしまったことは、旧き敵が命を賭けてまで繋ごうとしている策が台無しになる事だと。

――悪龍……お前の策は筋書には嵌ってるけど乱れちまってるみたいだ。でもこれで、おれは劉備を頼るしかなくなっちまった。お前の描いた絵図の通りに。

 小さく首を振る。
 たった一人の少女によって引っくり返された乱世の様相は戻らない。
 いけ好かない悪龍の狙いの通りに、西涼は劉備と手を組むしかなくなった。

――感謝するよ、華佗。おれは最後の最後に大仕事を遣り切れる。癪だけど此処で覇王を殺しさえすれば……きっと、侵略の無くなる、平和な大陸になるはずだから。

 しばらく彼女は、皆がざわめく室内で目を瞑って想いを馳せる。生まれた時から今までの、長いようで短かった人生に。 
 

 
後書き
読んで頂きありがとうございます。

多忙の為、遅れてしまい申し訳ありません。

今回は西涼のお話。
漢の忠臣、と原作で話題になってましたけどどうなんでしょうね。
月ちゃんを知っているなら状況も分かっているはずなので、連合時に助力をするのが筋だと思うんです。自領の為、なんてのは言い訳かと。なのでこういう切り崩し方をしてみました。
正直な話、帝からすれば西涼は裏切り者ではないかなと。


次は益州か揚州です。
ではまた 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧