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修学旅行

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6部分:第六章


第六章

 そしてその顔で銀閣寺のところにいた。そして里香は。
「ああ、ここよね、ここ」
「そうそう、日本橋」
「似合う?これ」
「似合う似合う」
 彼女のグループは映画村にいた。そこでロケの場所を見たり時代劇の服を着たりしてだ。それぞれ楽しんでいた。町娘の格好をしている娘もいる。
「ねえ岡っちもさ」
「何か着たら?」
「どう?」
「ええと、私は」
 しかし気の晴れない彼女は困った顔で皆に返す。
「別に」
「いいからいいから」
「そうそう」
「まずは着替えましょう」
 周りはその彼女に対して少し強引に言う。
「いいわね。それじゃあ」
「里香だったら何が似合うかな」
「スタイルいいしくの一とかどう?」
「あっ、いいわねそれ」
「お銀とかね」
 そんな話をしているうちに彼女は何時の間にか忍者にさせられていたりした。だが彼女も楽しめないままで映画村の中にいたのだった。
 そんな状況で修学旅行を過ごしてだ。気付いてみたら終わっていた。結局二人は四条大通りでの店の中以外では二人きりになれなかった。そのまま帰ることになった。
 だがここでだ。先生が言った。
「帰りの席は全部自由席だからな」
「じゃあ好きな場所に座っていいんですか」
「それだったら」
「ああ、そうだ」
 先生は生徒達に話す。
「車両は決めているがな。好きな場所に座れ」
「よし、じゃあそれで」
「先生感謝しますね」
「感謝していいから行儀よくしているんだぞ」
 先生はこのことは注意した。流石にそれは忘れない。
「わかったな」
「はい、わかりました」
「それなら」
 こうして皆それぞれ好きな席に座る。そしてだ。
 雄大は結局里香と殆ど一緒になれずそのことに項垂れたままだ。席を探していた。
 見れば何処も埋まって場所がない。それに困っているとだ。 
 席はあった。二つだけ空いていた。そこに仕方なくといった感じで座った。
 それで晴れない顔で窓を見ようとした。しかしここで。
「あっ、ここ空いてるの」
「えっ、まさか」
 里香がその席に来たのであった。雄大は彼女の姿を見て驚きの声をあげる。
「来たんだ」
「席、空いてるわよね」
「うん、空いてるよ」
 それは間違いなかった。彼女に対して答える。
「それじゃあ」
「座らせて」
「うん、どうぞ」
 こうしてだった。里香は雄大の隣に座った。二人一緒に座ってだ。そのうえで静かに話をはじめるのだった。
「修学旅行どうだった?」
「この修学旅行ね」
「うん、それ」
 雄大が里香に問うていた。まだ新幹線は動きだしてはいない。だが周りはもう賑やかにお菓子を食べたりトランプをしたりして遊びだしている。
「それだけれど」
「何かね」
 里香は少し溜息を出してから述べてきた。
「あっという間だったけれど」
「うん」
「結局殆ど一緒になれなかったわね」
「そうだよね」
「けれどね」
 しかしなのだった。
 
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