FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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反撃の狼煙
前書き
今週のFAIRYTAILを読んでなぜかレオンがカグラとのフラグを立ててしまうシーンが思い浮かんでしまった。
なぜだ!?最近シリルが主人公してないぞ!?レオンに主人公持っていかれそうな勢いになってるぞ!?
その上シリルはウェンディと男性キャラ以外からは対して恋愛感情を持たれないのに、レオンはいくらでも女性キャラとの恋愛フラグが立てるビジョンが思い付く。立てたことはないけど。
今回の話はシリルか主人公だということをちゃんと忘れていないことを証明するのを意識して作りました。よかった・・・まだ主人公みたいなことしてるよ、シリル。
『さぁ!!これはすごい展開になってきたぁ!!ソフィアとタクトがやられたため人魚の踵と青い天馬は全員敗退!!さらには妖精の尻尾vs蛇姫の鱗という構図が4つも存在している!!』
人魚の踵と青い天馬は現時点で優勝の可能性が完全になくなってしまったため順位表のギルド名に斜線が引かれる。
そしてシリル対レオン、グレイ対リオン、ラクサス対ジュラ、そしてジュビア対シェリアという対戦カードが現在繰り広げられている。
『ただいまの順位を確認しましょう。1位!!蛇姫の鱗61ポイント!!残るはリーダー1にサブリーダー2、ノーマル1』
『2位に剣咬の虎59ポイントカボ。こちらはリーダー1にノーマル1となってしまいましたカボ』
『3位に妖精の尻尾55ポイント。こちらはリーダー1、サブリーダー2、ノーマル3だね』
優勝の可能性が残されているギルド得点はこのようになっている。人数的には妖精の尻尾がもっとも有利ではあるが、蛇姫の鱗の勢いを止めるのはかなり難しい。
『勢いのある蛇姫の鱗がこのまま逃げ切ることができるのか!?はたまた剣咬の虎、妖精の尻尾が追い付き、逆転までたどり着くことができるのか!?』
『点差的には妖精の尻尾は厳しいね』
『いやいや、グレイは傷だらけではありますがルーファスにリベンジしたことで流れは悪くないカボ。ラクサスも無傷に近いですし、シリルに至ってはレオンはすでに満身創痍。まだまだ逆転の可能性はありますよカボ』
『剣咬の虎も残り2人と厳しい状況ではありますが、ミネルバもスティングも無傷。まだどのギルドも可能性は十分にありますね』
実況席はこう言っているが、戦っている魔導士たちからすれば違うように見える。
妖精の尻尾はメンバー全員が生き残ってはいるがうち3人はボロボロの状態。ガジルはその場からいまだに動けずにいるし、グレイとエルザはほぼ無傷の相手と戦わなければならない。
ラクサスはオルガを一撃で沈めたジュラに対しわずかながらに恐怖心が芽生えていた。いつもの余裕そうな表情は影を潜め、ひきつってしまっている。
こうなるとシリルが一番優位性を持っているように見えるがレオンの桁外れのパワーを間近で見せられたせいで頭の中がプチパニック。敵を倒すビジョンが頭の中に見えてこない。
「これは・・・厳しくなってしまったのぅ・・・」
妖精の尻尾のマスターマカロフは眉間にシワをよせ表情を大きく歪ませる。だが、それを見て後ろにいたフリードたち雷神衆が声を張り上げる。
「何言ってんのマスター!!」
「俺はラクサスを信じるぞ!!」
「ラクサスならジュラだって越えられる!!」
ラクサス親衛隊雷神衆。彼らも心のどこかで一瞬考えてしまっていた。「これだけの敵にラクサスが勝てるのか?」と。しかし、彼らは信じること以外することができない。大金星という奇跡を。
「っ・・・」
仲間たちが奇跡を信じている中、ラクサスは1人額から流れる汗を感じていた。それは完全にジュラの威圧感から来る冷や汗であるのは間違いないだろう。
「大丈夫だ!!いける!!俺はここにいるぞ!!ラクサス!!」
「雷神衆が付いてるぜ!!」
「あのラクサスが・・・緊張している?」
魔水晶ビジョンに映し出されている緊張の面持ちのラクサスを見てフリード、ビッグスロー、エバーグリーンの3人は声を大にして声援を送る。しかし、その声は遠く離れているラクサスには届かず、聖十の称号を持つ男を前にしたラクサスは険しい表情をし続けている。
一方、そのラクサスとは別のところでは同じように敵のプレッシャーに飲み込まれそうになっている男がいた。
「リオンの奴・・・タクトを一瞬で・・・」
黒髪をした青年は目の前の銀髪の青年が自分と戦っていた長身の男を一撃で倒したことに恐怖している。
長身のその青年は黒髪の青年のギルドの最強の女魔導士妖精女王と互角に戦えるほどの実力者。さらには4日目のバトルパートではその女魔導士と7年前五分とされてきた番犬を相手にし常に優勢を崩されることなく勝利を納めたのだ。そんな男が目の前で・・・しかもわずか数秒のうちに戦闘不能にされてしまったのは誰1人として想像することができる訳がなかった。
その光景を間近で見せつけられた者が冷静さを保っていられるはずがない。
「ヤバイ・・・グレイの奴、完全にリオンに飲まれてるよ」
「無理ないよ。だって天馬のタクトがあんなあっさり倒されたんだもん・・・」
「冷静でいられる方がおかしいよ」
カナ、リサーナ、レビィの応援席にいるメンバーは口々にそう言う。
「どうしたグレイ。何をそんなに怯えている」
「お・・・怯えてるだぁ?」
一歩詰め寄りグレイを挑発するリオン。しかし、2人の距離は詰まらない。その理由は簡単だ。グレイがリオンが詰め寄ってきたのと同調するように後ずさりしてしまったのだ。それを見たリオンは小さく笑みを浮かべさらにグレイを精神的に追い詰める。
「今、後ずさりしなかったか?」
「し・・・してねぇよ!!」
弱味を見せたくはないグレイ。しかし、リオンの言う通り自分は間違いなく後ずさりしてしまった、彼の力に圧倒され。
(リオンの奴・・・7年のうちにこんだけ力を高めていたのか?)
グレイは自分がいなかった7年のうちにリオンがここまで成長したのだと考えた。しかし、それだけではないとすぐに考えを改める。
リオンとジュラはあの少年が目覚めたことによりようやく本気になり敵を一撃で沈めてきた。確かに本来の力を最大限に繰り出しているのも要因ではあるが、それ以上のことがあるのだ。
それはレオンとの同調。レオンが氷の滅神魔法を取り戻したことて蛇姫の鱗は一気に戦力がアップ。加えてリオンとジュラの心のどこかにあった「ギルドを優勝させるためには自分たちがやらねばならない」という呪縛から解放されることにもなる。なんたってレオンのパワーはラミア最強のジュラをも越えるほどの力があるとされてるのだから。
(これ・・・勝てるのかよ・・・)
思わず頭の中にそんな考えが浮かんでくる。グレイはすでに全身ボロボロ。かたやリオンはほぼ無傷と言ってもいい状態。さらには相手の方が力が上だ。正直絶望的な気持ちになるのも無理はない。
(でも・・・勝たねぇと・・・)
7年間辛い思いをしてきた仲間のために出場した大魔闘演舞。彼らのために優勝して、前のような妖精の尻尾に戻してやりたい。その気持ちは確かにある。だが、リオンに向かって突っ込んでいく勇気が出ない。
(っざけんな!!エルザもシリルも、みんな戦ってんだぞ!?俺だけこんなところで終わっていいわけね!!)
それだけじゃない。ルーシィ救出に向かったナツたちのために優勝は必須だ。それでも彼は踏ん切りがつかずにいる。
(この感じ・・・どうすりゃいいんだよ・・・)
シリルside
レオンの魔力・・・昨日までとはうって変わり、それは今まで感じたことがないほどの大魔力となっていた。
空気全体が凍り付くような、そう思わせるほどに高まっている魔力。しかも彼はグラシアンさんをここから離れた場所にあるドムス・フラウに叩きつけ、俺の雲竜水を余裕で返したソフィアの返し魔法を一瞬のうちで破ってしまえるほどの魔法を使ったのに・・・その魔力は衰えているようには見えない。
「シリル。やっとここまでこれたよ」
レオンはいつも通りの冷静な表情でそう言う。それについては俺も同感である。やっと・・・待ち望んでいたレオンと1対1で対峙できるのだから。
「俺とお前はきっと最初からこうなる運命だったんだろうな」
「運命?」
俺が首をかしげるとレオンは1度小さくうなずく。
「そうだよ。入場の前に出会えたこと。幼馴染みの女の子が戦ったこと。そして2人が仲良く友達になったこと。すべては俺とお前を繋ぎ合わせるためのものだったんだよ」
言われてみると俺とレオンは接点がかなり多い気がする。
大魔闘演舞1日目の入場式の前に俺が道に迷わなければレオンと出会うこともなかった。だけど、それではまだ足りない。これだけだと俺とレオンは偶然会って年齢が近いから話せるようになっただけの“知り合い”とほとんど変わりはないだろう。
むしろ重要なのはこっちかもしれない。俺の恋人のウェンディとレオンの幼馴染みのシェリア。彼女たちが3日目のバトルパートで戦ったことだ。ウェンディとシェリアは2人とも天空の滅する魔法系の魔法を操る。おまけに2人はギルドの中でも年少組。そういう共通点があったこともあり彼女たちは友達になった。おかげで俺もレオンとそういうような・・・互いの力をぶつけ合えるような戦いをして、2人のような関係になりたいと思った。
「今がその時だよな」
レオンに聞こえないくらいの小さな声で俺はそう言う。ずっと待ち望んでいたし、もしかしたらいつかこうなるかもと俺は思っていた。その時が今来たのだ。そう考えると、さっきまで混乱した頭の中が次第に落ち着いてくる。
「やろうよ、シリル。シェリアたちのような互いの限界を引き出し合うような戦いを!!」
「うん」
俺は彼の意見に賛同するためにうなずくと、頭に付けているヘアバンドに手をかける。
「どうしたの?」
レオンは俺が何をしているのかわからずに訝しげにこちらを見ている。俺はそれにはっきりとは答えずに、ウェンディからもらったこのヘアバンドを頭から外し、ズボンのポケットへとしまう。
「その傷・・・」
レオンの目が大きく開かれる。恐らく、ドムス・フラウの会場からこの映像を見ている人も同じような反応をしているんだろう。チャパティさんとか変なテンションになっていそうで正直ヤジマさんたちが大変なことになってるような気もする。まぁ俺にはそんなの関係ないけどね。
「驚いた?これが俺がヘアバンドをしてる理由なんだ」
「どうしたの?その傷」
俺の額には弾痕のような小さく丸い傷がある。もうとっくに塞がっているが、この傷痕だけはまだ消えることなく残っている。本当に消えてくれるのかさえ謎だけど、確実にここにはその傷がついている。
「7年前・・・天狼島で悪魔の心臓と戦った時にやられたんだ。あの時はマジで死んだかと思ったけど」
「へぇ~」
カミューニさんと交戦した時に頭を撃ち抜かれて出来てしまった傷。ただあの時はあの人も結構ギリギリの状態だったし、俺もウェンディを傷つけられて冷静さを欠いてたからしょうがないと思う。ただ、もしカミューニさんがこれを見てたらいたたまれない気持ちになってるのかも知れないけど。
「でも、なんでそれを今外したの?」
レオンの素朴な疑問。それも俺は正しいと思う。なぜこれから戦うに当たってヘアバンドを外したか。これにはちゃんと理由がある。
「このヘアバンドはウェンディが作ってくれたんだ。つまり俺の宝物。だから破られたりするわけにはいかないんだよね」
昨日までのバトルや競技パートでは相手もそこまで強いという感じはしなかった。だからこの大切な人がくれたプレゼントを身に付けて戦うことができた。
でも、今は厳しい気がする。レオンのこの力を見せられたら魔法を回避するのはギリギリになってしまう。それだとこのヘアバンドが切れてしまうかもしれない。ウェンディなら直してくれたり新しく作ってくれるかも知れないけど、それでもやっぱり初めてもらえたものだから。大切に使いたい気持ちがある。
「そういうものなんだ。よくわかんないや」
「そう?」
レオンならシェリアやラウルに何かもらえたら同じ気持ちになると思う。やっぱり2人はレオンにとって大切な人だと思うから。
「こういう時なんて言うんだったかな?」
「?」
何かをブツブツと言い顎に手を当てて頭を悩ませているレオン。何を考えてるんだ?
「あ!!そうだ!!」
レオンは手をポンと叩くと俺の方を指さす。
「“リア充は爆発しろ”だ!!」
「違う!!それ何か違う!!」
レオンのおかしな発言に思わず突っ込む。さっきの過去の話でもそうだったけどレオンはやっぱりどこかおかしいと思う。魔法を教えてくれた人の行動を見て真っ先に“厨二病”なんて単語が思い付くのはどこか変だ。普段の飄々とした佇まいがよりそのおかしい部分を際立たせてしまう。
「そうか。違うのか・・・」
俺に違うと言われてガッカリした様子のレオン。大丈夫なのか?こいつ。
「でも、そのヘアバンドを外したってことは前までの戦いよりも本気ってことなんだろ?」
「もちろん!!いつも以上に本気だよ!!」
いきなり冷静さを取り戻したレオンに一瞬驚いたけど、すぐさまそれに答える。当然だ、昨日までとは全然違う。全力も全力。ルーシィさんたちを助けにいったウェンディのために絶対に負けられないんだ。
「お前が例えどれだけ強くとも、俺は仲間たちのために絶対に負けない!!」
覚醒したレオンは強敵だ。パワーは三大竜の誰よりも上だと俺は思う。下手したらノーランやカミューニさんより強いかもしれない。
それでも俺は絶対に引かない。ウェンディのために、一緒に戦っているエルザさんやグレイさんたちのために、そして7年間俺たちを待ち続けていた皆さんのために。
「勝負だ!!レオン!!」
「うん!!絶対負けないからよ!!」
俺もレオンも笑みを浮かべ相手に向かって突進する。本日の大魔闘演舞、最も低い年齢の魔導士対決が始まった。
第三者side
「シリル・・・」
圧倒的なパワーを持つ強敵を相手に怯むことなく挑む小さな少年。それをクロッカスの街にセッティングされている魔水晶ビジョンを見上げて黒髪の青年と金髪の男は恥ずかしい気持ちになっていた。
「ったく。俺は何してんだよ」
グレイは頭を掻きながら兄弟子であるリオンに対しビビって縮こまっていた自分を責める。
「シリルが戦ってんのに、俺らが戦わねぇわけにはいかねぇだろ!!」
真っ直ぐに目の前の敵を見据えるグレイ。ようやく自分と対峙する気になった弟弟子を見てリオンは不敵に笑う。
「やっと戦う気になったか、グレイ」
「あぁ!!俺は絶対てめぇに勝つぜ!!リオン!!」
不安を振り払うように声を張り上げるグレイ。氷の造形魔導士対決が開始される。
「やれやれ・・・あいつもナツに影響されてきたみたいだな」
ラクサスは氷の神に「仲間のために戦う」と言った少年を見てある男と姿を重ねていた。桜髪をした、少年と同じ滅竜魔導士であるその男は、今は王国によって囚われの身になってしまった仲間を助けるために大会のメンバーを辞退してまで城へ乗り込んでいる。
「フーッ」
大きく息を吐き出すラクサス。自分たちが勝たねば、城に乗り込んだその男たちがどうなってしまうのかわかったものじゃない。そう思うと、相手が例え今大会最強だろうが、聖十の称号を持っていようが関係ない。
“挑む”それが今は大切なことなんだ。
「お主とは1度拳を交えてみたかった。かのマカロフ殿の―――」
「おっとその先は言うな」
視線を合わせる2人の男。ジュラがラクサスに対して言葉を発すると、それを彼は止めさせる。
「ここに立っているのは偉ぇ称号背負ったおっさんでも、誰かの孫でもねぇ」
ラクサスは羽織っていた上着を脱ぎ捨て、紫のワイシャツ一枚になる。
「ただの2匹の男だ」
「・・・よい目だ」
視線を反らすことなく自分を睨み付けるラクサスを見てジュラはどこか嬉しそうだ。
睨み合う2人に静かに風が吹き付け、服を揺らす。その風が止んだと同時に、金髪の男が猛スピードでアゴヒゲの男へと突進する。
「うおおっ!!」
雷をブースターに使い一瞬でトップスピードに入るラクサス。ジュラはその動きを見極めるために両手を体の前に合わせる。
「っおおおおおおおっ!!」
拳を掲げて先制攻撃を試みるラクサス。彼の拳がジュラの顔を捉えようとした刹那、
ドコォンッ
ジュラの手刀がラクサスの首もとを捉え、オルガ同様地面にめり込ませた。
『あ!!ああっ!!ああっと!!』
妖精の尻尾の最強候補に入るほどの実力を持っているラクサス。その人物が一瞬で地面に伏せられたとなれば動揺しない方がおかしい。マカロフも雷神衆も、応援席にいた魔導士たち全員があまりのことに言葉を失う。これを見て喜んでいるのは蛇姫の鱗だけだ。他の者たちは皆、唖然としている。
『ま・・・またしても一撃・・・』
『言葉も出ないねぇ・・・』
『・・・すごいペポ』
『キャラ設定・・・間違えてますよ・・・』
実況席も目が点となっており、このぐらいの言葉しか振り絞ることができなかった。それだけの出来事が1度ならず2度までも起きている。
「世の中、上には上がおる」
地面にめり込みピクリとも動かないラクサスを見下ろすジュラ。そして蛇姫の鱗にまたしても得点が加算されようとした時、
「それはよく知ってる」
「!?」
ラクサスが体から雷を放出しながらゆっくりと立ち上がり始めたのだ。
「だがたまには下も見るもんだぜ・・・そいつはすぐ足元にいるかも知れねぇ!!」
振り上げられたラクサスの拳がジュラの顎を撃ち抜く。この一撃が妖精の尻尾の反撃の狼煙となるのか!?
後書き
いかがだったでしょうか。
シリルにちょっとナツみたいなことを言わせてみたくなってやってみました。
そろそろクライマックスですね。ただ原作よりも複雑にしようかと思っています。果たしてうまくできるかな?
次回もよろしくお願いします。
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