冬虫夏花
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3部分:第三章
第三章
「それはそうだけれど」
「私達もそうだけれどね」
「もうね」
「何よ、一緒じゃない」
「いや、一緒じゃないから」
「それは」
皆は今度はこう返した。
「あんたみたいに立派なスタイルじゃないし」
「冬にはそんなの全然見せなかったじゃない」
「だって寒いから」
冬の話になるとである。彼女は急に口を尖らせる。そうしてまた言うのであった。
「沖縄生まれにはここの冬はね」
「常夏娘ってわけね、全く」
「それでなの」
「そうよ。夏よ」
真紀は夏の話になると機嫌を戻した。言葉のテンションもあがる。
「夏は大好きよ」
「それじゃあ今度の休みよね」
「海ね」
こうして皆で海に行くことになった。海は白い砂浜と青い空の間にそのマリンブルーが広がっていた。そして女の子達の水着も。
皆それぞれ一生懸命に選んだ水着で着ていた。ワンピースにビキニでそのスタイルを誇っている。それは彼女達だけではなく真紀もだった。
その真紀は白いビキニである。豊かな胸に奇麗な腰のライン、そして脚線美が周りの注目を集めている。皆その彼女を見て感嘆さえしていた。
「反則ね」
「っていうか最終兵器?」
「もうその域に達してるわね」
真紀のそのスタイルを見て口々に言う。
「しかも顔もいいし」
「どうなのよ、これって」
「神様は不公平よね」
「不公平かな」
しかし当の真紀にはその自覚がない。それも全くである。
「皆だって可愛いじゃない」
「可愛いとかそういうのじゃなくてよ」
「そう言ってくれたのはいいけれどね」
「あんたは可愛いってレベル超えてるの」
「とっくにね」
羨望や嫉妬の目になっている。細めさせたその目をさらに横目にしてである。そうした目で真紀を見ながらそれぞれの口で話すのである。
「上に超がつくわよ」
「戦略兵器ってレベルでね」
「その域まで達してるわよ」
「言い過ぎよ、それは」
言っているその側から身体を動かす。すると胸が大きく動く。白いビキニからその豊かな胸がはちきれんばかりに動いている。ぶるぶると音さえ鳴りそうである。
皆はその胸を見てまた言うのであった。
「三桁いってるの?ひょっとして」
「サイズどれだけなのよ」
「何カップ?」
皆の言葉はさらに続く。
「天は二物も三物も与える」
「お尻もいいし脚も奇麗」
「どうなってるのよ、世の中って」
「だから私は別にね」
そう言われてもであった。真紀は何も気付いていなかった。自分ではである。
「そんなことは」
「はいはい、自覚がないから」
「夏の為に生まれた娘だから」
「本当にね」
「それでどうするの?」
真紀はここで話を切った。そうして言うのであった。
「これから」
「これからって?」
「何かあるの?」
「だから泳ぐの?それともビーチバレーでもするの?」
こう皆に尋ねるのである。
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