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SAO二次:コラボ―Non-standard arm's(規格外の武器達)―

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prologue:Unexpected weapon(予想外なる武器)―――episode1

 
前書き
コラボ開始です。

先ずは誰が出てくるのか……?

では、本編をどうぞ。 

 
 
 
 ―――其処の街は不思議な雰囲気を漂わせていた。



 近未来の機械群と、日常的な街でありながらどこか寂れた空気、それが組み合わさって近未来の側面をより表に出した様な、そんな雰囲気を漂わせているのだ。


 そんな特異なオーラを放つ建物のうち一つ……ニューヨーク風の何処か派手な街並みとは対極的な、目立たない町外れにある地味な灰色一色で塗り固められている、倉庫らしき年を重ねたであろう古びた建造物。

 誰が利用するのかも分からないその建物の中に、鉄のサポーター状防具と黒尽くめの服を着た、仮面をかぶった集団が入っていく。
 一糸乱れぬ整然としたモノとは程遠い、荒くれ者と同義なバラバラ加減で次々と。


 まさか、この街でテロという最悪な行為を実行すべく、銃器片手に物騒な話し合いが行われるのだろうか……。


 不穏な気配を纏わり付かせながら、彼等の姿が第一のシャッター、第二のシャッター、そして扉の向こうへと消えた、その時―――――



「……」
「……」


 一組の男女が素早く、気配を殺して、まずは第一のシャッターの向こうへと侵入して行った。

 しかしその装いはテロリストとは違い……かといって警察官の様なものでもなく、目を誤魔化す私服警官の物ですら無い。
 もっと言えば、現実ではあまりに滑稽な姿でもあった。


 何故か……。

 片方は、青系統のサイバー風味な短めコートの装備で固め、何故か鞘が “シリンダー状” になっている刀を腰にさした、少々ながら尖った髪型と茶色気味な黒髪を持っている少年。
 その瞳は細められているが、口元の笑みからワクワクしているのが見て取れる。
 このまま確実性を期すか、それともギャンブルに出るか悩んでいる様にも見える。

 もう片方は腰までの伸びる桃色の髪を持ち、多少フリルで飾り付けられたメイド服にも似る装いの皮装備を着た、フワフワッとした色白な少女。
 が、機械で作られた様な造形で、中央に線の入った円盤状の刃が目を引く、バカデカい斧が目立つ。
 何処か酷くミスマッチだ。

 もう言うまでも無かろう……こんな姿をしていれば、何かが “おかしい” と誰でも気づく。


「……」
「……」


 そんな違和感を湛えたままに、二人とも辺りを確認してから、少年が頷くと同時に手を軽く振い、中へと入っていく。
 少女もスタートこそ遅れながら、それでもしっかり確実について行く。


 第二のシャッター、そして本命の扉をも越し、中に見えたのはだだっぴろい無駄な空間……


「……こりゃ、ビンゴだな」
「ん~、みたいですねー」


 ……では、ない。

 驚くなかれ―――要塞にこそ劣るものの、それでも迷う多少煩雑な作りをした通路だったのだ。
 巡回する見回り役の足音が聞こえる事からするに、どうやら単に話し合いの場を設ける為の、一時的なアジトではないと言う事も、第三者からですら理解出来た。


 時折曲がり角に身を伏せ、警備の目を躱しながら、二人は段々奥へと進んでいく。

 進むたびに錆びれた外観から手入れされた壁、果ては機械的な基盤の埋め込まれた物にまで変わり、中々にきな臭くなってきていた。


 と、順調に進んでいた矢先、その歩みが突然ストップする。


「なる程……分かれ道だ」


 少年の言う通りY字路が目の前に開けており、道を間違えれば延々と迷ってしまったり、敵と遭遇してしまう確率をぐっと高めてしまう。

 ならどうすべきかと、少年も少女も考えていた。

 そして、少女からまず口を開いた。


「私、【策敵】スキルあげてないですよ?」
「俺は上げてる。だから任せとけって、アマリ」


 スキル―――それは普通、資格や検定の話なら出て来こそすれ、こんな状況では先ず飛び出さない単語。
 なのに彼等は別段不可思議な事でもなく、むしろ日常的なモノの様に口に出した。


 そんな謎ばかり呼ぶ会話をする、“アマリ”と呼ばれた少女の問いへと、少年もまた同等の返答を返して答える。


「了解したです、リュウ殿」
「……その呼び方、やめねぇ?」
「あはー♪」
「いや、あはーじゃ無くてな?」
「うふー♪」
「笑い方の問題じゃねえって……!? もういいや……コッチだ」


 微妙な敬称をつけられて呼ばれた少年・“リュウ”の頼みも、アマリは涼しい顔―――もとい、フワ~ッとした笑顔で受け流してしまい、リュウは怒鳴る事が出来ないでフラストレーションを溜めながら、諦めからがっくり肩を落とした。


 緊張感に欠ける一幕の後、嘘のように張り詰めた気を放ちながら、【策敵】スキルらしきものを頼りにリュウが先行し、再びアマリがその後に続く。

 不自然なまでに見張りの巡回が少なくなり、徐々に徐々に道幅や向きが固定され、正体は不明ながらも『何か』に近付いている事だけは予感させてくる。


 やがて照明すらも規則正しく配置され、基盤剥き出しだった手抜きな作りの壁も、SF染みた装いへと変わっていき、其処までしてきれいに保たれている理由が…………その姿を現した。




 三十人は集まっている、余りに巨大なホールが。


「……ビンゴ中のビンゴ、ってな」
「……ドキドキしてきたですー」


 其処にはテロリスト集団と思わしき者達が、入る際のバラバラさをスズメの涙ほども連想させない、軍隊よろしく整然と並んでいる。
 彼等の目の前には長方形の台が置かれており、一段高くなっているその場所には三人の人間が彼等を見つめている。

 一番前で後ろ手を組み、何やら話しているのがリーダー格であり、後ろに居る武器を持った大柄な二人が、組織における幹部なのだと窺えた。


「もう少し近くまで行ければいいんだけどな……この位置じゃあ、何話してんのか聞こえやしないし」
「バレたら終わりとか、クエスト詳細には書いてなかったです。もう少し冒険するですよ」
「だな。リスクなくしてリータンは得られない、っと」


 クエスト―――またしても日常は愚か、非日常的な生活をしている者達でさえ……英語の発言に混ざるならともかく、日本語と組み合わせてなら滅多に口にしない様な、不思議な単語が耳を突く。

 違和感の二条連なるが、しかし、彼等はこれもまた気にしていない様子だ。

 それに彼等にとって今は、どうやって話を聞ける位置に飛び込むか思案する方が大事だ、と考えている様にも見える。
 それでも……馬鹿正直に突っ込んでいけば、御立ち台に居る三人には見つかるだろうと、タイミングを計るべく息を殺してリュウとアマリは待ち続ける。


「―――――!」

「今だっ……!」


 後ろをゆっくり振り向いたその隙を逃さず、全力で且つ音を立てずにダッシュし、廃材の近へ身を潜める事に成功した。

 同時に前方で行われている演説が、彼等の耳へと僅かながら、しかし確かに届いてきた。


「この二足歩行マシン、『Colossus:typeⅡ』を持ってして! 我らはこの歪み弛んだ偽りの世界に、戦火と言う名の真実を送り込んでやるのだ!!」
「「「おおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」」」


 響き渡る、雄叫びの大合唱。

 背後に佇む黒金造りの巨人は、製作途中で有ろう物も合わせれば三機あり、恐らくこの演説は組織から団員が離れていかないようにする為の、そして自分達がどれだけ強大な力を持っているか、知らしめる為のものだろうと推測できる。


「……あんなクソでっかいの、一人じゃあ確実にペチャンコにされて終わるな」
「……そう言われても、私には見えないです」


 背負っている武器が巨大な所為でより身を縮めねばならず、オマケに瓦礫の積み上げ方と身長という要因もあり、リュウには事態が認識出来ていてもアマリには声以外、何が起こっているか分かっていないらしい。


「……だったら横から見ればいいだろ」
「……あ、それもそうですねー……ではでは」


 アマリはちょっと体を傾け、瓦礫の上からではなく横から把握すべく、少しばかり身を乗り出した。




 ―――その瞬間。


“ガツン……! ガララッ……”

「誰だっ!!」


 積み上げられた瓦礫が僅かながらも崩れてしまい、鉄と鉄のぶつかる音が辺りに響き渡ってしまった。
 武器の全長が大きすぎて、引っかかってしまった様だ。


 隠密作戦に向かない者を持ってきている時点でどうかとは思うが……後悔しても後の祭り、既に手遅れ。
 これを聞き逃さない者など、最早この場に居る筈もない。


「しまっ……!?」
「おっとと、当たっちゃってたみたいですねー。あはー」
「呑気にやってる場合かよ!」


 ええいままよ! とばかりに飛び出した二人へと、一斉に抜き放たれ、手に保持された銃やナイフ……その刀身に銃口が付きつけられる。


「どうやら運良くここまで来れたらしいが……女神に見放されたようだな、ガキども!」

「リュウ殿、まだクエストは続いているですよー」
「どうやらそうみたいだな! ピンチだけどな!」


 何処まで行っても実に“マイペース”なアマリの発言に、真の敵は味方に居たかと実に“いや~”な顔をするリュウ。

 雰囲気は何処までも食い違っていて、まるで漫才でもやっていると、そんな気分にさせられた。


「死んでもらうぞ……構え!」


 ガチャッ! と金属の擦れる音が不規則に鳴り、威嚇の為に向けるだけだったソレが、今度は殺意を持って構えられる。

 正に絶体絶命、万事休す。

 そんな夢で終わってほしいと嘆きたくなる、異常事態の中で―――


「……やってやるよ。どの道逃げられねんだ」


 リュウの目はより一層鋭く輝き、


「あはー……パーティー、始まるですよー?」


 アマリの目が狂気を内包したこと、


「撃てえぇぇーーーーーーーーーっ!!」


 そしてリーダー格の男が発砲命令を出すのは、ほぼ同時だった。


 高らかな小気味よい断続的な音と、それに似合わぬ殺傷力を秘めた弾丸が殺到する。
 冷たい殺意に対して脅える事もなく、左右に分かれて直線的に飛んできた銃弾を回避する、リュウとアマリ。

 下手に動いて同士打ちが起こるのを避けるべくか、リーダー格が一旦発砲を止めさせた……その間隙をリュウは狙っていた。


「遅いっ!」


 声が響いた刹那、リュウの姿が青い稲妻を残して消えさる。


「せぇあっ!!」

「うげぇ!?」
「ぐほぁ!?」


 何が起こったのかと集団が悟る間もなく、肉薄してきていたリュウが一閃。
 二人の喉笛を切り裂き、瞬く間に絶命させた。

 いやその表現は不確かかもしれない……。
 ……何故ならば飛び散った赤い液体は、深紅ではなく細かな『網目模様』の走る緋色。
 肢体すらも、残る事無く『ポリゴンの様な欠片』となって四散したからだ。

 良く見ると彼等の頭の上に、逆さ台形の薄赤いカーソルまで浮かんでいる。


「うろたえるな、刃物で対処しろ!」


 リーダーの指示を受けて集団はリュウを囲み、次々と踊りかかっていく。


「ほっ!」


 先ず後ろから来た敵を鞘での一突きで牽制。

 そのまま刀を抜き放ち、前と右の敵を二振りにて斬り捨てる。
 左に位置していた男が隙ありと襲いかかる……が、それもまた鞘での打撃で引っ込められた。


「せぇいらあっ!」


 同時に回転切りで首を飛ばし、視線を前へ固定したままに、左方より迫る敵へ己の脇下を通す突きで貫く。
 間髪置かずに対象を蹴り、敵から刀を勢いよく抜いた。


「おらああっ!!」
「ぜぇぇええっ!!」


 同胞の仇打ちとばかりに、今度は二人同時に詰め寄って来た。

 対処すべくとリュウが彼等を睨み付け―――


「せっ!!」


 またも背後から迫っていた凶刃を、脚で手元から弾きあげた。
 それで終わらせないと彼の鼻っ面を掠め蹴りながら、持っていた大型ナイフを先の二人へ弾き飛ばす。


「あぶね―――」
「シッ!」


 手裏剣の要領で飛んでくる、恐ろしげな刃物に溜まらず仰け反った一人に接近、待ってましたと一刀をお見舞い。
 返す刀で構成員は真っ二つにされ、赤い光芒が飛沫の如く飛び散る。


「ゼッ!」
「うぎっ……!?」


 もう一人は柄で頭を殴りつけられ眩暈を誘発。
 すると……そこで何を思ったか、リュウは鞘の一部を握りしめた。


 瞬間、“バシュッ!”と奇妙な音が響き―――何とその一部が凹んで、『持ち手』を形成してしまう。
 驚愕的な事象はまだ終わらない。
 ―――その鞘、有ろう事かリュウから見て外側の位置に、『翡翠色の刃』まで生えているではないか。


「ハッ!」


 しかし、またも何を考えているのか、刃が無い尖端を迷わず眩暈を起こした敵に打ちつける。

 一体どんな意図が……そう疑問に思う時間を吹き飛ばし、“風船が割れたような”音がしたかと思えば、尖端で打たれた敵兵がぶっ飛んで数人巻き込み転がった。


 クルリと鞘を持ち直し、リュウは不敵に笑う。


「『風撃銃』仕込みの“鞘刀”だ―――これぞ、変則二刀流ってな……行くぞ!」


 遠くで此方の頭を狙う兵士を『鞘銃』で打ち抜き、反動から連動して後ろの兵を『鞘刀』で叩き切る。

 右方の兵士をソバットで吹き飛ばすと、またも数十センチまで近寄ってきていた敵兵を、尖端で叩き次なる銃撃で転がして、二刀を滑らかな傾斜を描いて左右へ振り下ろす。

 高らかな金属音が響き渡った。


「ぬ、ぐぐぐぐぐ……!」
「こん、のおぉぉ……!」


 火花を散らして鍔迫り合いを繰り広げ、必然的に仲間が前後両方から鋭利な刃を振りかざしてくる。

 我慢比べは趣味じゃない……リュウの瞳そう言いたげな色に染まり、突如として『翡翠色の刃』が鞘の中へ引っ込んだ。


「ぬえっ?」


 それなりの幅があった刀身が消えると言う事は即ち、その分強制的にバランスを崩される事に他ならない。
 あくどくニヤリとリュウは笑い、前へ寄りかかって来たその体重を利用して、流転し敵二人を衝突させる。


「シッ!」
「む!?」


 まず敵二人を目に留め、一閃も映らぬ居合切りの形で横薙ぎに。
 其処から鞘でぶっ叩く。


「うげっ!?」
「っ!」


 その敵に右側面を向けると同時、鞘をクルリ一回転させながら背面に持っていき……一瞬の構えも無く発砲。
 俗に言う “曲撃ち” だ。

 今までより一段ばかり上の轟音と、撃たれた男が高々跳ね上げられた事が、放たれた風弾の威力を物語っていた。

 されど、止まっている暇などない。

 さて次だ。
 そう言いたげに、リュウは遠方を睨んだ。


「……!? やろ……っ!」
「痛でっ!」


 ……かと思うと狼狽しながら、立ち上がるのもたついている二人を踏み台に、『鞘銃』での空砲で反動を付けてより遠くまで跳ぶ。


「は? なにが―――」


 ―――正しくコンマ数秒後、その言葉を言いきらせる気は無いとばかりに……リュウの居た地点でドーム状の爆発が巻き起こった。


「「「な―――ぎゃあああぁぁぁぁ!?」」」
「あっはぁ! ドカーンといきましたですねー!」


 引き起こした張本人はどうやらアマリ。

 しかし其処で疑問が生じる……何せ彼女の武器は、両手持ちの斧の筈。おまけに十メートルは距離がある。
 火薬を仕込み、思い切り叩き付けるならともかく、何故アソコまで離れた場所から爆撃が起こせたのか。


 ならば……と、良く見れば先程のリュウの刀と同じく、アマリの両手斧にも変化があった。

 刀身の真ん中に引かれた線から数十㎝分かたれて、幾何学模様が美しい筒状の砲身が現れている。
 更に刃が下側の方は若干、上側の方は大きく柄へ向けて後退しており、柄へ現れたトリガーも合わせて斧というよりも『バズーカ』を思わせる形を取っていた。


「もいっちょスッ飛ばすですよーっ! そーれバッコーン」
「てめっ……くおぉっ!」

「うぎあぁああぁぁぁ!!」
「ぐべはぁっ!?」


 味方であるリュウの存在すらお構いなしに、アマリは範囲爆破弾を撃ちまくる。

 碌に銃撃できず一塊になっている団体へ一発、ある程度散らばった数人のド真ん中めがけて一発。
 正確に狙い通り命中している辺り、どれだけの腕を持っているかが窺える。


「ドッカーン」

「やべっ……お借りしまーす!」
「うぼほ!? ―――にぎゃあああぁぁぁぁ!!」


 三人相手に刀を振るっていたリュウが嫌な予感を覚え、バク宙で男の顔を踏み台に更なる跳躍をすれば、眼下で数名を巻き込み爆破弾が着弾した。

 あくまで正確に……そうなると、このとばっちりは態となのだろうか………?


「撃つ場所考えろよ!?」
「でも、リュウ殿なら避けられると思ってるですー」
「あぁ確かに避けられてるけど―――」

「ドォッカーン」

「またかよコラァ!!」


 実にいや過ぎる信頼の文句から、間をおかずに再びアマリが砲撃。

 思い切り地面に伏せれば、頭上を通り過ぎた風切る弾丸。


「チャ、チャンスだぜ……!」
「はっ!!」
「え……!?」


 またも聞こえる爆破音に耳を刺激されながらも、ブレイクダンスの要領で起き上りながら蹴りを放ち、囲みかけていた構成員を弾き飛ばして居合切り。

 回転のスピードから繰り出された虚ろな一閃に、成す術なく敵は一人、膝から崩れ落ちた。


「って、どわああぁっ!?」


 リュウはいきなり目を見開くと狼狽しながらブリッジし、間を置いて後転した。

 そして、三度通り過ぎる破壊を内包する鉄塊、そして響き渡り広がる灼熱のドーム。


「うぼああぁぁーーーっ!?」
「ぐぎああぁぁぁ……!」
「どうぅへぇぇっ!?」

「あっはぁ! ぼかっと命中するですー」


 言うまでもなく“彼女”の仕業だった。


「てめえぇぇっ!!」


 あんまりだといえばその通りな凶行に怒ったのはリュウ―――――ではなく、何時の間にか近づいていた構成員。

 既にナイフを振りかぶって、脳天目掛け攻撃する気満々だ。


「甘いですねー」


 言いながら柄を持ち上げて、潜り抜けながら一撃を受け止める。

 アマリは数秒で変形を終えた両手斧を少し持ち上げると、相手の胸部へフロントキックをかました。


「あっはぁ!」
「うぉ……うぶげっ!」


 轟々と唸りを上げ迫る肉厚な刃が、ナイフすら砕いて見事に命中。
 構成員である男の胴と脚は泣き別れし、いっそ可笑しくなる程にぶっ飛んでいく。


「もう一回ですよー!」

「へ……」
「うぎあ―――」
「な」


 重厚なる威力を乗せた戦斧がアマリの怪力によって本人ごと独楽と化し、三人纏めて真横にぶった切る。

 またも一回転、数人は斬られず転がされ、二人はまたも上半身が中空へ放り出される。

 中に舞飛ぶは哀れ、半身のみな人形と化した男達。
 優雅さのかけらもなく、水音が聞こえない程の凄惨さで地に激突し、他の構成員たちを足止めしてしまう。

 そこをアマリは狙っていたか、未だ回転収まらぬままに軽く飛び上がって振りかぶった。


「そーらぁ!」


 斧がハンマーよろしく叩きつけられ、一瞬にも満たぬ間隙の後―――


「「「ぎゃああぁぁぁぁぁっ!?」」」


 ズグアアアァァァッ!! と両手斧から爆炎が吹きあがり周りの敵を一掃、または一気に吹き飛ばしてしていった。

 
「あっぶねぇ……!!」


 地味にリュウをも巻き込みかけてはいたが。
 ……それでも傷一つなくやり過ごすのは、流石というべきだろうか。

 何時の間にか戦闘員の数は大分減っており、その残りもまた最早戦意が無いのか散り散りに逃げていく。


「はぁ、一先ず終わったか」
「メインディッシュは残ってるです」


 ウキウキの感情を隠すことなくアマリが視線を向ける先……其処には大型チェーンソーを携える幹部と、ハンドガンに長方形の刃を持った片手剣を両手に構える幹部が、リュウとアマリを睨みつけていた。

 次の相手はもしかしなくても、戦る気満々である彼らだろう。


「さぁて、やってやるか」
「あはー♪ 楽しみです」


 居合抜きの格好を取ったリュウと、最上段に斧を置くアマリ。

 チェインソーを腰だめにした幹部Aと、ハの字に武装を構えた幹部B。


 彼等が飛び出すのは―――


「「「「はあっ!!」」」」」


 同時だった。


 
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