ブロウクン=ハート
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
5部分:第五章
第五章
「それだけだね」
「わかったわよ。じゃあね」
「あんただってね」
「これから痛い目に見るから」
「好きにすれば?僕にとってはどうでもいいことだから」
ここまで言ってだ。彼女達の間を通り過ぎてだ。慎吾のところに向かう彼だった。
慎吾はここまで見てだ。それでだった。
すぐに教室の扉のところから離れてだ。校門のところに向かったのだった。
そして校門でだ。その博次と会った。
博次はその彼の姿を見てだ。笑顔で言ってきた。
「じゃあ帰ろうか」
「ああ、そうだな」
慎吾は微笑み博次に応えた。
そのうえで二人並んで歩きはじめた。その中でだ。
彼はだ。こう博次に言った。
「俺な」
「慎吾は?」
「最高に幸せな奴だよな」
こう言ったのである。
「そう思うよ」
「幸せって」
「なあ、今日な」
慎吾はさらにだ。博次に対して言った。
「これから飲むか?」
「お酒?」
「ああ、俺の家来いよ」
こうだ。微笑んで言ってだった。
「それでとことんまで飲もうぜ」
「何かあったのかな」
「何もないさ」
お互いにだ。隠して話をする。
「けれど。飲みたくなったんだよ」
「だからなんだね」
「ああ、飲もうぜ」
前を向いて微笑んでだ。博次に話す。
「俺の家でな」
「慎吾の家で?」
「全部俺の驕りだ」
こんなことも言う慎吾だった。
「今回はな」
「いつものワリカンじゃなくて?」
「ああ。今日はそうしたいんだよ」
教室でのことはあえて言わずにだ。博次に感謝してだった。
こう言ってだ。そのうえで。
「つまみもな」
「つまみも」
「酒はビールでいいよな」
慎吾が一番よく飲む酒だ。博次もだ。二人はよく一緒にビールを飲んでそのうえでだ。話をしているのだ。そうしているのである。
だからここでもだ。それでどうかというのだ。
「それとつまみは柿の種とな」
「ピーナツだね」
「そういうのでいいよな。何ならな」
他のものもだ。ここで出すのだった。
「他のつまみも買ってな」
「他のもなんだ」
「今日はとことんまで飲んで食おうぜ」
博次に笑顔を向けて話す。
「そうしようぜ」
「うん、じゃあ今回は」
「完全に俺もちだ」
彼のだ。それだというのだ。
「それでな」
「うん、じゃあね」
こう話してだった。二人でだった。
この日はとことんまで飲んで食べるのだった。それからだ。
慎吾はもう何を言われても動じずだ。博次と共にいた。
そして博次もだ。常に慎吾と共にいるのだった。
その中でだ。二人はやがて。
高校を卒業して大学に入りそして企業を立ち上げだ。一代にして世界に知られる経営者になったのである。そうなってからだ。社長になった慎吾は言った。
「俺が今あるのはな」
「今あるのは?」
「それはですか」
「一体」
「こいつがいるからだよ」
こうだ。副社長である博次を見て言うのである。
「だからここまでできたんだよ」
「副社長がおられてですか」
「それで」
「僕もだよ」
博次もだ。笑顔で話すのだった。その部下達に。
「社長と一緒だからね」
「つまりそれだけ絆が強いんですね」
「御二人は」
「そうなんですね」
「ああ。俺にとっては無二のパートナーだよ」
「子供の頃からね」
お互いに見合ってだ。こんなことも話す二人だった。
「だからこれからもな」
「ずっと一緒だよ」
二人で話してだった。その絆を確かめ合うのだった。高校のことは彼等にとってはほんの一ページだった。だが確かな一ページ、二人の絆として残っているものだった。
ブロウクン=ハート 完
2011・7・29
ページ上へ戻る