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未来から過去へ

作者:プリニー
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 一刀が最初に行ったのは、今の状況の確認だった。

 どういった経緯でこの場にいるのか不明だが、自分の状態を見た限り、身体を拘束されている訳でもなく、堅牢な建物に囚われている訳でもない。

 そのため、誘拐の線は薄いと認識している。

 次に子供たち。

 どこか親近感を覚える子供たちを再度見てみるが、会ったことも無ければテレビ番組などで見たことも無い。

 子供たちに対して思うことは、一体どこの子供かということだ。

 よく考えてみれば、子供たちは一刀を見て、父親と勘違いしている点。

 それもこれだけの人数が勘違いするなど明らかにおかしい。

 これまで子供と接する機会はあったが、子供ができるような行為など一刀はしたことがない。

 しかもおかしいことはまだまだある。

 それは、子供たちの髪の色や肌の色である。

 髪が黄色なのはまだ許容範囲だ。濃い青色も黒に見えないことも無い。

 しかし、赤色や水色、ましてやピンクなど染めてない限り有り得ないのだが……

(これって地毛だよな?)

 寝ている子の髪の毛を触ってみれば、根本まで毛先と同じ色だった。

 そのため染めている訳でもない。

 子供たちの事をこれ以上考えても埒が明かないと感じた一刀は立ち上がり、寝ている子を起こさないように摺り足で移動し、部屋に唯一ある戸に向けて進んでいく。

 そいして辿り着いた戸をゆっくりとスライドさせた先には、扉から真っ直ぐに延びる廊下と、その両側に扉が幾つか有り、廊下の先には玄関と思われる戸がついていた。

 一刀は1つずつ部屋の中を確認していく。

 部屋はそれぞれが、台所、風呂、トイレ、そして小部屋が5つだった。

 小部屋には特色があり、子供たちの趣味であろう物が色々と置かれている。

 玄関に行ってみると、子供たちの靴が散乱しており、その中にずば抜けて大きな靴が転がっていた。

 一刀はそれを手に取り観察する。

(これってどう見ても俺の靴だよなぁ……)

 手に取った靴は、いつも履き慣れた学生靴。

 多少頑丈な至って普通の革靴であり、何処でも買えそうなものではあるが、長年使っていると持ち主の足の形に合うようになっているため、自分の靴であるとすぐに分かった。

(取り敢えず外に出てみるか)

 素足のまま靴を履き、玄関を開けようとしたところで、外から元気な子供たちの声が聞こえてくる事に気付く。

 まさかと思い、玄関の戸を少し開いてみれば、家から真っ直ぐに出ている道の先から、この家に向かってくる子供の集団がいる。

 それだけであれば良かったのだが、その集団が何をしているかを見て一刀は息を飲んだ。

 その子供の集団は、家の中にいる子供たちと同じくらいの年齢の子供たちばかりで結成されている。

 歌を歌いながら楽しそうに歩いてくる姿は、それだけを見れば心温まるのどかな風景で済んだかもしれない。しかし現実は違った。

 子供たちは数人掛かりで、大きな荷物を持っていたのだ。

 その荷物と言うのは鹿。

 確実に百キロは越えているであろうそれを、ほんの四人ほどだけで運んでいる。

 しかも、その首は営利な刃物で切り裂かれたように切断されており、切り裂いた直後程ではないだろうが、未だに血が滴り落ちていた。

「今日のご飯は鹿鍋~」

「ととさまの料理楽しみだね~」

「大きいの取れたから誉めてもらうんだ!」

 一刀はその子供たちの集団に釘付けとなり、子供たちが玄関を開けるまで満足に動くことができなかった。

「あっ! ととさまだ!」

「お父様。私たち頑張りましてよ!」

「麗華ちゃんも持ってよ~」

「嫌です。私はそのような重いものは持てません。それに華連だって持ってないです!」

 麗華は持っていた扇子で華連を指し示し、鹿に触れていないことを指摘する。

 しかし、華連は冷ややかな目線を麗華に向けると、片手に持った籠を目の前に持ち上げて見せた。

「これが見えないの? 目が悪いんじゃない?」

「私だって持ってます! この扇子が見えないのですか!?」

 全く威張ることではないが、華連は籠の中にキノコなどの食べ物を摘めており、麗華の方は扇子以外完全に手ぶらだった。

「父上ならば、どちらが良い子か分かりますよね?」

 小さいながらも無言の圧力を掛けてくる華連に、一刀は何も言えずただ呆然と立ち尽くす。

「父上?」

「お父様?」

 そんな一刀を不審に思ったのだろう。子供たちは心配そうに一刀を見ていた。

「取り敢えず、俺には子供を作った記憶は一切ない。どんな妄想なんだこれは……。もしかしてそういう欲求があったのか?」

 独り言を呟く一刀に、子供たちは顔を見合わせ頷く。

「ととさまが変」

「褒めてくれません……」

「怒ってるのか? 私たち悪いことしたのか?」

「姉様落ち着いて」

 一刀の姿を見た子供たちはパニック寸前の状態にまで達しようとしていた。

「静かに」

 華連の一言で、口々に自分の思いを話していた子供たちは、華連に向き直る。

「母上から聞いたことがあるわ。こういう時は、気絶させるのが一番だって」

 華連の言葉に、子供たちは一刀へ視線を戻す。

 一刀の表情は暗いまま、口元でぶつぶつと言うのみで傍から見ると不気味以外の何物でもない。

 そんな状態をこれ以上見たくはないと、子供たちは顔を見合わせて頷き、次の瞬間、一斉に一刀へ襲い掛かった。 
 

 
後書き
麗華───麗羽との子
華連───華琳との子 
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