コアフ
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第二章
「だからこそね」
「トップモードばかりというんだね」
「ロンドンはスーツはいいけれど」
しかしというのだ。
「ファッションではパリに一歩劣るかな、スーツは半歩だね」
「いやいや、我が国は昔のものも大事にしていてね」
負けじと返すガウェインだった、実際に彼は負けているつもりはない。
「昔の服もちゃんと存在しているよ」
「それは民族衣装かな」
「その通りだよ、スコットランドのキルトにね」
さらにというのだ。
「他にも色々な服が残っているよ」
「そしてパリにはだね」
「そんな服はあるのかい?」
同僚にだ、笑って問うたガウェインだった。
「見たことがないけれどね」
「あると言えばどうかな」
「見てみたいね」
売り言葉に買い言葉でだ、ガウェインは返した。
「是非ね」
「よし、じゃあ今度君にあるパレードを紹介しよう」
「パレード?」
「パリじゃなくて本来はブルターニュやプロヴァンスのものだけれど」
こう前置きしてだ、ジョアンはガウェインに話した。
「コアフのパレードにね」
「コアフ?服だとはわかるけれど」
「しかしだね」
「それはどんな服なのかは」
そこまではというのだ。
「わからないね」
「それは何よりだよ」
「僕が知らなくてだね」
「驚くことになるからね」
だからとだ、笑って言うジョアンだった。
「それは何よりだよ」
「やれやれ、人を驚かすのが趣味とはね」
肩を竦めさせてだ、ガウェインはジョアンに笑って返した。
「君も趣味が悪いね」
「フランス人は自慢と人を美しさで驚かせることが趣味だからね」
「不思議な趣味だよ」
「その趣味を満喫したいのさ」
「僕にそのコアフを見せてだね」
「今度の日曜だよ」
そのパレードの時はというのだ。
「楽しみにしておいてね」
「わかった、日曜だね」
「そう、その日曜にね」
まさにというのだ。
「君はコアフの美しさに驚くことになる」
「楽しみにしておくよ、それじゃあこの紅茶を飲んだら」
ジョアンが自慢するそのパリのミルクティーをだ。
「部屋に帰るとするよ」
「それで何を飲んで寝るんだい?」
「ウイスキーだよ」
にやりと笑ってだ、ガウェインはこの酒を出した。
「勿論ね」
「そこでワインとはならないんだね」
「フランスのかい?」
「勿論だよ」
「生憎僕は蒸留酒が好きでね」
それで、というのだ。
「寝る前はウイスキーと決めているんだ」
「ブランデーがいいと思うがね」
蒸留酒ならだ、ジョアンも負けずにやはりにやりと笑って言う。
「僕は」
「ははは、それは二番目だね」
「一番はだね」
「ウイスキーだよ、そちらだよ」
あくまでというのだ、こう言ってだった。
実際に彼はこの日帰ってベッドに入る前にウイスキー、イギリス産のそれを飲んだ。そして次の日ジョアンと共に仕事をした。
そして日曜にだ、ジョアンはガウェインをパリのある通りに案内した。その通りの街並みを見てだ、ガウェインはこんなことを言った。
「普通のパリじゃないか」
「普通に最高のだね」
「バーミンガムの次にね、とにかくここでだね」
「そう、パレードが行われるんだよ」
「コアフのだね」
「それを見てもらうよ」
「コアフねえ」
「服もね」
それもというのだ。
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