レーダーホーゼン
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第一章
レーダーホーゼン
ドイツは北は平原地帯だが南は山岳地帯だ、森も多い。
そのドイツ南部、バイエルンの中でも南の方に住んでいるオットー=ブラウンシュバイクは中学校に入りすぐにだ。
同じ小学校だった同級生のヴィルヘルム=リッテンハイムにこう誘われた。
「ワンダーフォーゲル部に入らないか?」
「部活は?」
「うん、そうしよう」
「ワンダーフォーゲルっていうと」
その名前を聞いてだ、オットーはその青灰色の目を瞬かせてヴィルヘルムの黒い目を見ながらこう返した。二人共髪は金髪だ。背はオットーの方がやや高く太っている。二人共鼻が高く彫のあるドイツ系の顔である。
「山を登って」
「そうそう」
「山登りしたいんだ」
「どうかな」
「そりゃね、スポーツはね」
山登りをスポーツと考えてだ、オットーはヴィルヘルムに返した。
「身体にいいし」
「ストレス解消にもなるしね」
「いいよ、けれどどうして山登りなのかな」
「普通にサッカーや陸上競技よりも」
そうしたものよりもとだ、ヴィルヘルムは言った。
「ちょっと変わった、しかも景色も楽しめる」
「そうした部活がいいと思ってなんだ」
「オットーも誘ってるんだ」
「山登りね」
「嫌いかい?山は」
「いや、別に」
そう聞かれるとだ、彼もだった。
「嫌いじゃないよ」
「そうだね」
「うん、別にね」
それこそとだ、オットーはヴィルヘルムに答えた。
「いいよ」
「それじゃあね」
「山は好きだよ」
実際にだ、彼は山は好きだ。昔からアルプスの青と白の山々も森も山の中の草原もそこにある草花達も好きだ。
「けれどどの部活に入ろうかは」
「考えていなかったんだ」
「それじゃあね」
「僕の誘いを受けて」
「決めた、じゃあ入ろう」
「一緒にね」
そのワンダーフォーゲル部にとだ、こう話してだった。
オットーは実際にヴィルヘルムと共にワンダーフォーゲル部に入った、女子部員が多くいてしかも部の雰囲気もよかった。
顧問の先生もいい人だ、それで山を登っていたが。
彼は一つ疑問に思うことがあった、それは部活の服だ。
上はシャツで下は靴と靴下にだ、それに。
サスペンダーで止めた膝までの半ズボン、その服についてだ、彼は部活で山を登る時にヴィルヘルムに対して言った。
「この服は」
「レーダーホーゼン?」
「もう半ズボンは」
その膝までのズボン、自分が穿いているそれを見つつ言うのだった。
「小学校でいいと思っていたのに」
「半ズボン嫌いだったんだ」
「どうにもね」
こう言うのだ。
「二度と穿かなくていいと思っていたら」
「だからなんだ」
「あまりね」
難しい顔での言葉だった。
「これだけはね」
「嫌なんだね」
「嫌かっていうとそうじゃないけれど」
それでもという口調だった。
「あまりね」
「いい気分じゃないんだね」
「どうにもね」
「気分的な問題なんだね」
「半ズボンはね」
「けれどこの服がね」
ヴィルヘルムもリーダーホーゼンを着ている、それで言うのだ。
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