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アインクラッド篇
movement Ⅰ 白き夜のクリスマスソング
古城にて
「全く………、あなたって人は………。」
「悪かったよ………。条件反射で、」
「それで喧嘩吹っ掛ける?フツー。」
「返す言葉もございません。」
今、俺達はNPCレストランでグラタンぽいものをつついている。ソラをこっちのクエストに付き合わせたお礼をしているのだが。
「もう、攻略により参加するのが目的なのにこれじゃ逆にハブられちゃうよ。」
なんと、転移門広場で遭遇したKoBのパーティー。そのリーダーにしてKoB副団長『閃光』アスナと売り言葉に買い言葉でデュエルしてしまい、しかも完全に負かしてしまった。
「いや………、向こうだって納得の上で受けたんだよ?さすがにそれじゃあ向こうの恥の上塗りだろ。」
「だといいんだけど。」
それに、と続ける。
「あの女は徹底した効率優先主義だからな。実力見せとゃ大丈夫だろ。」
「まぁ、確かにアスナさんは攻略に私情を挟まないだろうなー。」
その時丁度お互いに食べ終わる。
「さて、どうする?」
「んー、取り敢えず明日からでもいいんじゃない?」
「だなー。じゃ、今日はこの辺で解散でいいか?」
「うん。」
「じゃ、転移門まで送るよ。」
「あ、ありがとう。」
心なしか、ソラの頬が赤く染まって見えたのは気のせいだろうか?まぁ気にせず門まで送る。
「じゃ、また明日。」
「ええ、明日ね。」
そう言ってソラは転移門をくぐって行った。
「さて、どうするかな?」
時刻は午後8時、まだ寝るには早い。
「……確かこの層のサブダンジョンはっと。」
俺は転移門に背を向け、街の外への道を歩き出した。
「ハァァァァ!!」
気合いと共にブラッドサージを振り抜く。その一撃は正確に鎧騎士、《ゴーストナイト・アサルト》の首をかっ飛ばす。ここ31層のサブダンジョンは怨霊の城塞という名前で、放棄された城を、鎧を纏った幽霊が大量に徘徊している。そしてこのダンジョンにはある一つの効果があり………
「お、もう15も上がってる♪」
武器スキルの熟練度に、成長スピードボーナスがつくのだ。そのスピード、およそ2倍。ほんの二時間の戦闘で熟練度が15も上がった。辺りを見回し、次の獲物を探し始めた時だった。キンッと、澄んだ金属音が響いた。
「剣戟音………?」
別にSAOじゃ大して珍しい音でもない。ここは人気の狩場なのでこんな時間に人がいても不思議でもない。なのに何故か、その音が気になった。
「……行ってみるか。」
近づいてみると気付く。
「強いな……というか、速いな。」
あり得ない速度で連続した剣戟が響き、やがて破砕音がする。その頃には索敵スキルでそのプレイヤーを捉えていた。どうやらこちらに向かって来るようだ。カソールはグリーン。少なくとも敵ではなさそうだった。
「………誰だ!?」
その声には聞き覚えがあった。
「キリト?」
「その声、アマギか………!」
そこにいたのは全身黒ずくめの片手剣使い。『黒の剣士』キリトだった。
「おま、それ………どうしたんだ?」
キリトの姿を見て、まず目に付いたのはぼろぼろの服だった。剣も刃こぼれしていて。何時間もダンジョンに籠り続けていることを表している。顔色も疲労困憊といった体で、誰の目にもオーバーワークは明らかだった。
「うるさい………、関係ないだろ。」
「ない訳ないだろ。目の前で今にもぶっ倒れそうな面しやがって。第一、俺の接近にも気付けなかったろ。俺より絶対索敵スキル高いくせに。」
痛い所を突かれたのかキリトが押し黙る。
「取り敢えず休め。何をそんな必死になってるのか知らんがそのままじゃ死ぬぞ。」
「死ぬか………、それもいいかもな。」
「………おい、それがいいなら今すぐ息の根止めてやるぞ?」
「冗談だ………。まだ死ねない。サチの声を聞くまでは。」
「………………?」
サチという少女の名前は知っている。キリトと彼女達、『月夜の黒猫団』になにがあったのかも。しかし、今のは………。
「………お前が何をするつもりか知らんが、死ぬなよ。お前が死んで、悲しむ奴は少なくないんだ。」
「…………。」
そこでキリトは気を失った。
「うわっ!?っと。んー、取り敢えずシエラさんにでも預けるか。」
キリトを背負い、俺は主街区へ足を向けた。
後書き
お気付きの方もいるんでしょうが、原作『赤鼻のトナカイ』辺りの話です。後もう2~3話続くと思います。
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