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成長

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3部分:第三章


第三章

 先生はだ。こう言うのだった。
「正座してまだ三分だけれど」
「あの、三分の正座って」
「ねえ」
「普通どころじゃないけれど」
 先輩の部員達も驚きを隠せない。そのうえでの言葉だった。
「もう当然のことだけれど」
「それで痺れるって」
「正座したことないとそうなのね」
「それでだけれど」
 先生は正座のことに驚きながら光子に尋ねた。
「お花をしたことは」
「ないです」
 それもだ。ないと答える。相変わらず痺れに苦しみながらだ。
「そういうのも」
「初心者なのね」
「それでもいいですよね」
「ええ、学校の部活で初心者お断りっていうのはね」
 それはどうかとだ。先生は言う。
「間違ってるから」
「そうしたおかしな部活もあるけれどね」
「うちの部活はそういうのはないから」
「安心してね」
 それはないという先輩達だった。それはないというのだ。
「じゃあ早速ね」
「ちょっとやってみて」
「お花、飾ってみて」
「わかりました」
 光子は痺れに苦しみながら何とかだ。花を手に取ってそのうえでだ。彼女は花を飾ってみた。その飾りは。
 先生をしてだ。目を点にさせ。こう言わしめるものだった。
「ええと、これって」
「駄目ですか?」
「アバンギャルド?それとも画伯なの?」
 何故かだ。画伯と言うのだった。
「それって」
「画伯っていいますと」
「最近ね。まあ何ていうか」
 先生はやや口ごもりながらだ。こう光子に話す。
「そうした感じの。今の宮原さんのお花みたいな感じの絵を描く人をね」
「画伯って言うんですか」
「芸風なのかどうなのかわからないけれど」
 やはり口ごもりながら話す先生だった。
「声優さんでそうした絵を描く人が結構いるのよ」
「私がそれですか」
「真似てるの?」
「いえ、はじめて聞きました」
 そのだ。画伯という言葉のそうした使い方はというのだ。
「そうなんですか」
「それじゃないのね」
「はじめて作りましたしはじめて聞きました」
 お花もだ。画伯という言葉もだというのだ。
「本当にどっちも」
「じゃあやっぱり」
「この娘って」
「そうよね」
「これって」
 先輩達がここでひそひそと囁く。光子が何かというのだ。
「あれよね」
「これは大変かしら」
「正座もはじめてだっていうし」
「これじゃあ」
 こうだ。光子が心配になってくる程だったのだ。ひそひそとこう囁くのだった。
 だが先生はだ。光子にこう言うのだった。
「それで宮原さんは」
「はい」
「華道部、入るのね」
「そうしていいですか?」
「だから。誰でもいいから」
 それでだというのだ。先生はそうした部活、学校のそれがどうあるべきかわかっていた。そうでない教師も多い中で先生はその意味で立派である。
 
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